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2005年07月16日(土)
七万
七万打有難う御座います!今回もキリ番取って下さった方がいらっしゃって嬉しいです。 毎回恒例御礼絵も頑張って早く描きたいと思いますので期待しないで待ってやって下さいませ。 掲示板お返事は明日にでも必ずや・・・っ! TVでトゥーブラザーズを観て幻水短編集の「森の詩」を読みたくなりました(笑) あれはキニスキーのバイブルでございます(と勝手に思っている) シロに肉を食べさせる場面が好きです。 ---------------------------------------------------------------------- 【Arcadia 2】 その人が笑う時はいつもどこか寂しそうな笑顔だった。諦めに似た明るさと、足掻くことを止めた己への無力感。世界なんて碌なものじゃないと見下しながら笑い飛ばそうとして、笑うしかないのだと自分に言い聞かせているようにも見えた。 白髪に近い髪と高い背は何処にいても目立った。更に本人が派手好きで、いつも何かしらのアクセサリーを身につけていた。「邪魔にならないか」と誰かが尋ねたら、片目だけ細める彼特有の笑い方で「ない方が落ち着かない」とあっけなく言った。 「この仕事をしていると長生きはできないな」 いつだったか、冬夜はそう言われたことを思い出した。 「先生みたいに年取って引退するってのは稀だぜ?それに死んだら何も残らない。ソイツが生きていた証拠も、存在した記録も、全部なくなっちまうんだ。何か馬鹿らしくないか?そのうちに自分が何なのかって考えること自体がとんでもなく馬鹿みたいに思えてくる」 今にして思えば、それは何に対しても本気ではなかった彼が唯一見せた本音だったのかもしれない。いつも力を抜いて立っていた彼が、疲れたように呟いた瞬間。 彼が何を思ってその言葉を吐き出したのか冬夜は知らない。 今となっては知る術もなかった。 桂が死んだ。 甲斐によって明確な言葉として示された事実を、冬夜はどこか冷めた頭で聞いた。同じ仲間が死んだことくらい、今まで何度かあったことだ。否、冬夜にとってそれらは『仲間』ではなかった。あくまでも自分と似たような場所にいる『他人』でしかなかった。 「ここ数ヶ月の間にウチの人間が何人か死んでいるの。主に情報収集とか下っ端の人間だったから形だけの調査だけしてあまり気にしなかったけど、今回は桂が殺された。彼は簡単に殺されるような人じゃないし、何より彼の死には不審な点も多い」 「それまでの事件と桂の死とが関係していると?」 「ええ・・・一度全部洗いなおしてみたら桂の仕事内容と他の人間の関わっていたものにいくつか共通点が出てきてね・・・多分、これらは同じ事件よ」 眉間に僅かな皺を寄せて静流が告げた直後、ばさりとテーブルの上にファイルが投げられた音が響いた。静流が視線を動かすと、冬夜が鋭い紺碧の瞳で彼女を睨んでいた。 「それで?僕達にそれを調べろっていうわけ?」 「ええ、そうよ」 「何で僕達が?そうゆうのは情報部の連中にやらせたら?」 刺すような冷ややかな目を真正面に捉えながら、静流は動じた様子もなく膝の上で手を組んだ。 「桂が死んだ理由、気にならない?」 「・・・・・・」 「桂ほどの人間が殺されたのよ。そこらの人間じゃ同じことの繰り返し。だからあなた達にお願いしているの」 「・・・お願い、ね・・・・・・冬夜、我侭はその辺にしておきなよ」 断れないのは知っているくせにと、どちらに対しての呆れかわからない言葉を声に出さずに呟いて甲斐はわざと大きな溜息を漏らした。何故自分が場を取り持たなければならないのかと不服ではあったが、とにかく面倒な話はさっさと進めたいのである。 「でも・・・僕もある程度は冬夜と同じ意見だね。大体、桂のパートナーはどうしたの?彼女なら何か知ってるんじゃ・・・」 「清音(きよね)は行方不明よ。連絡もつかない」 それまでと同じ調子で答えた静流に二人は多少の驚きを隠せなかった。それを察して静流は軽く肩を竦めてみせる。こんなものは別に何ともないと言うように。 「あなた達を呼んだもう一つの理由がそれ。彼女の失踪が今回の件に関係しているのは間違いないわ。既に死んでいるのか、連絡の取れない状態なのか、それとも――。とにかく、彼女のことも指令内容に入っているから宜しくね」 「もし、彼女が裏切っていたら・・・?」 「・・・だからあなた達なのよ。国家に仇なすものを排除するのがあなた達の役目でしょう?それに非公式である組織(ここ)の情報が外に漏れるのは好ましくない、というのが上の判断ね」 静流は言いながら表面の冷静さを崩さず、決して感情を表さなかった。それが本音なのか偽りなのか冬夜と甲斐には判らない。何故なら彼女は今までも彼らの前でその仮面を少しでも外したことはないのだから。 「あんたはそれでいいわけ・・・?」 咎めるでもなく尋ねた冬夜に静流は微かに苦笑する。愚問だと諭すように。 「双子の妹だからって・・・血の繋がった兄弟だからって全てを理解できるわけではないことをあなたは充分に知っている筈よ、冬夜」 そして静流はただ淡々とそう答えた。 |