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2005年05月28日(土)
「貴方より大切なものがある」
眠る前にカーテンを閉め忘れてしまった窓から差し込む陽光にイザヤは顔を顰めた。眩しさに思わず薄く目を開けてしまうが、今度はその明るさが目に痛い。反射的に再び瞼を閉じて枕に顔を埋め、とりあえずその心地良さを満喫してみた。元々目覚めは良い方ではないけれど、今朝はそれを他人のせいにできると思いながら。 「・・・・・・邪魔」 夢現の中、腰に絡みつく腕を鬱陶しそうに振り解く。それで目が覚めたのか、相手はイザヤの思惑とは逆って更に彼の身体に腕を回す。イザヤはそれから逃れようと身を捩じらせた。 「暑い・・・」 「うるせぇ・・・折角良い気分で寝てたのに起こしやがって・・・」 「起きたのはユエさんの勝手でしょ・・・それよりホント、邪魔なんで・・・そろそろ起きないと・・・・・・でも眠・・・」 「このまま寝とけ・・・俺ももう一回寝る・・・」 「あーつーいー」 だらだらと寝台の上で攻防を繰り返していると、いつの間にかイザヤはユエの腕の中にすっぽりと抱き込まれた状態で固定されていた。ユエが寝惚けているのかちゃんとした意識があるのかはわからないが、イザヤもいい加減に自身の眠気に負けてしまい、まぁいいか、とその場所に落ち着いてしまう。暑いのはこの際我慢しよう。 ふと無造作にシーツの上に散らばったユエの髪がイザヤの瞼に触れた。肩につくほどのそれを鬱陶しく思いながら、それでもイザヤの口から文句の言葉が出ることはなかった。 「・・・・・・今日はやけに大人しいな」 「睡眠最優先・・・」 「あー・・・納得・・・」 そう呟いてユエも本格的な二度寝に入る。 太陽が眩しい。誰かカーテンを閉めてくれないだろうか。 「お前達は朝っぱらから何をやっとるんだー!!」 眠りに落ちようとしていた二人の耳に、突然聞き慣れた叫び声が響いた。思考が働かないのか、大して驚いた様子もなく目を擦りながら身体を起こしたイザヤに、ユエもまた心底億劫そうに扉の方に目を遣る。そこには顔を引き攣らせたシュウの姿があった。 「ユエ!貴様が何故イザヤの部屋で寝てるんだ!?しかも同じ寝台で!」 ビシッ!とユエを指差して怒りも露わに怒鳴るシュウに、ユエはニヤリと笑って。 「ああ?んなの昨夜一緒に寝たからに決まってんだろ」 「な・・・っ・・・貴様よくもまぁ抜け抜けと・・・!」 「俺は事実を述べたまでだ。大体、誘ったのはイザヤの方だぜ?」 「それはありえないな!大方貴様が襲ったのだろう!」 「はっ、それはこの状況見てから言ってみろ!イザヤがそう簡単に俺に襲われるタマかよ!コイツはガード緩いようでマジで固ぇぞ!?」(言ってて悲しくないですか) 「だったらこの状況は何なんだ!?」 「だから見たままだろーが!」 「・・・シュウ、落ち着いて。ユエさんも誤解されるようなこと言わないで下さい」 ここでやっと頭のスイッチが入ったイザヤは、 疲れたように欠伸を漏らした。 「大体、何で襲った襲われたなんて話に・・・服着てることくらい見ればわかるでしょうに・・・」 イザヤの言う通り、二人はしっかりと服を着用しているのである。それなのにどうしてこんなにも騒がれなければならないのか。 「ではイザヤ殿、納得いくように説明してもらいましょうか」 「そうだ、説明してやれ。俺達がさっきまで如何に幸せな眠りについていたことを・・・っていきなり殴るか!?」 「あなたは黙ってて下さい」 「うるせぇな。実際幸せそうに寝てたじゃねぇか、お前。メチャクチャ顔緩んでた・・・っ」 もう一度ユエの頭を思い切り叩き、イザヤは隣で頭を押さえるユエを無視して口を開いた。 「あー、シュウ、何故彼が此処で寝ていたかというとですね・・・ユエさんの使ってた客室のドアの鍵が壊れて開かなくなったんデス」 「だからって何故イザヤ殿の部屋に・・・っ」 「他の客室が空いてなかった。しかも何処の部屋も寝台が余ってなくて・・・本当に、どうしようもないから、仕方なく、無駄に広い僕の寝台を半分貸しただけで・・・別に何があったというわけでは一切、微塵も、一欠片もないから」 「そこまで言うか・・・」 「僕は事実を述べたまでです」 それじゃあ、とイザヤは再び寝台に突っ伏す。スイッチオフ。 「じゃ、俺も寝よ」 「貴様はとっとと離れんかー!」 ゴロリとイザヤに引っ付くユエに、何処から出したのかシュウがハリセン一発。スパン、と小気味良い音の数秒後、ムクリとユエが起き上がった。藍色の瞳は既に喧嘩モードに突入している。 「俺とやろうってのか?戦闘にも参加できない軟弱軍師さんよ?」 「そうやって脅せば誰もが怯むと思っている辺りが愚かだな、馬鹿英雄」 「マッシュに破門されたような奴に言われたくねぇな、不良軍師」 「それこそお前に言われたくないわ、性格破綻者め!」 「・・・・・・煩い」 そんな一触即発の空気の中で何事もないように眠っていたイザヤだったが、不意に目を開くと低い声で呟く。そして淡々と、しかしどこか苛立たしげに二人を見た。 「ユエさん、早く部屋を出ていかないとルックに頼んでグレミオさん連れて来ますよ?」 「な・・・てめ・・・それは卑怯だろ・・・!」 「睡眠最優先なんで・・・」 反論しかけたユエの肩をシュウがポンと叩く。そこには勝ち誇ったような笑みが浮かんでいた。ユエからすれば物凄く腹の立つ笑顔である。 「さぁ、ユエ殿。イザヤ殿もこう言っておりますし、早々に出て行って頂きましょうか。寧ろ永遠に実家に帰れ」 「誰がてめぇの言う事・・・」 「衛兵、ルックのところに行って伝えて欲しいことがあるんだが」 「・・・っのやろ・・・・・・」 一瞬の沈黙の後、鋭い舌打ちを零してユエは不機嫌そうに部屋を出て行った。扉を閉める乱暴な音の後、シュウは大きく溜息を吐く。そして再び寝に入ったイザヤに目を向けた。 「ところでイザヤ殿、あと五分程で会議が始まるのですが」 「・・・・・・ぐー・・・」 「寝るなー!!」 軍主の部屋に本日二回目のハリセンの音が響いたとか。 --------------------------------------------------------------------- 実は昨日書いていた小話だったのですが、途中で眠くなって放棄しました。 本当に眠いのはイザヤじゃなくて私なんです。 ユエはグレミオが苦手です。何故なら勝てないから。母は強し。 ていうか小話にしては長いな、オイ。 |