終わりなき戯言
幻水&日和サイト共通日記。pixiv関係はこちら→ pixiv / 企画用ブログ / twitter
2004年12月09日(木)
紅夢
 目を閉じる。

 瞼に浮かぶ、紅蓮の炎。
 煌くのは、剣の鉾先。
 嘆きの声は、遥か彼方。
 空さえも濡らす、紅い雫。

 身を焦がすほどの、衝動。


「・・・何を泣いているの?」

 目を開くと深い海を思わせる青の瞳が桜焔を覗き込んでいた。
 それをじっと眺めて、桜焔は薄く口を開く。

「判らない。多分、僕が泣いてるんじゃないから」

 頬を伝う一筋の涙を拭うこともせず、そう答える。
 青い瞳はその意味するところを解せず、疑問の色を浮かべた。
 それを見つめたまま、桜焔は更に続ける。

「夢を見るんだ。僕の夢じゃない夢を。いつかの未来と、失われた過去と。誰かの想いと。僕はそれを見るしか出来ないんだ。無理矢理見せるくせに、何もさせてくれない。これはいつも、紅い世界しか見せてくれない」

 だから、紅い色は嫌いだ。
 そう呟いて再びゆっくりと瞼が閉じられる。
 暫くしないうちに微かな寝息が聞こえ始めた。
 彼の顔を覗き込んでいたフェイは、少し考えた後に柳へと振り向いた。

「彼は、何を見てる・・・?」

 問われて漆黒の瞳が青の瞳を捉える。
 無感情なその表情は、いつだって変わることはない。
 フェイはその内を、知ることはない。

「・・・・・・記憶・・・」

 ポツリと低い声で呟かれた声は、酷く単調で。
 そして手の甲に刻まれた引っ掻き傷から滲む血を、舐め取った。
 それは確かな痛みを伴っていたが、もう慣れていた。

「いつも、こう・・・?」

 言いながらフェイは桜焔の右手を取る。
 自身の手が血で濡れることを、厭わずに。
 沈黙の答えは、それだけで充分で。
 フェイは憐れむようにその双眸を細めた。

「・・・辛いね」

 始まりと終わりを見る者は。
 自分でも聞き取れないほど小さな声の後に、フェイは桜焔の涙を拭う。
 柳はただ、その様子を見ていた。
 何かを、思い出しながら。

 次に琥珀の瞳が開く時は、世界はまだ続いているだろうか。

---------------------------------------------------------------------

投票で「Wリーダー+4主」が現時点で一位だったので、ストックしていた小話を。
相変わらず管理人の自己満足でしかないような感じですが・・・。
いつも柳&桜焔なのは、ティル&リオンだと小説のネタバレになりそうな気がするから。
シリーズものに4主がちょこっと関わってきそうです。
と言いましてもまだ先の話。


拍手お返事は今日は休ませてください;
今日中にやらねばならないことが・・・っ。
SKIN by YUKIE