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2004年10月18日(月)
セツナとフェイ
「頭領!頭領!」「そんな大声出すな。こっちは起きたばっかだっつーに」 「それが少し困ったことになりまして・・・」 頭領と呼ばれた男は寝癖のついた髪を無造作に掻きながら、部下の言葉に顔を顰めた。そして大きな欠伸を一つして、傍にあった額飾りを手に取ると、慣れた様子でそれを額に巻いて留める。それに付いていた飾りの羽根が、小さく揺れた。 最後に赤い上着を羽織り、棍を取る。その際にもう一度小さな欠伸を漏らした。 「困ったことって?」 「はぁ・・・頭領が寝てる間に小さな隊商が通りましてね、俺達てっきりハルモニアのもんだと思ったんですよ。そしたら・・・」 「違ったと」 「は、はい・・・」 申し訳無さそうに項垂れる部下を一瞥して、仲間が集まっている場所へと向かう。仲間は男に気付くと、呆れたように小さく溜息を付いた。 「昼寝も大概にしろよ、セツナ」 「悪い、ワイアット。で、状況は?」 「まぁ、なんというか・・・ちょっとばかり厄介かもな」 「へぇ?」 面白そうににやりと口元に笑みを浮かべたセツナに、ワイアットは再び溜息を漏らす。この男はどうも厄介事が好きらしい。するとワイアットの隣にいた黒髪の男――ゲドがクイと顎を動かし、この先を見てみろと促す。それに従いセツナは視線をそちらへ向けた。 「・・・これはこれは」 彼が見たのは一人の少年だった。隊商のメンバーを背後に庇い、双剣を構えている。彼の周囲には何人かのセツナの仲間が倒れていた。おそらく彼にやられたのだろう。 セツナは感心したように少年を見る目を細めると、彼へと近付く。そして数歩の距離を残して正面から少年と向き合った。 「俺はセツナ。こいつらの頭をやってる。部下が襲ったことは謝る。悪かった」 「・・・・・・なら、早く何処かに行って欲しいんだけど」 尚も双剣を仕舞おうとしない少年に、セツナは苦笑を浮かべた。少年の青い目からはまだ敵意が見て取れる。彼が盗賊から隊商を守るために剣を振るったことは容易に知れた。 「まあそう警戒すんな。俺らはハルモニアの奴にしか用はねぇよ」 「・・・ハルモニア?じゃあ君達が最近噂の盗賊か」 そうだと頷いたセツナに、少年はやっと剣を腰に下げた鞘に仕舞った。その動作は流れるように淀みがなく、そして無駄がない。 セツナは周囲の倒れている部下に目を遣ると、彼らがまだ生きていることを確かめる。殺さないでいてくれた彼に感謝するべきか。おそらく相当の手練であろうことは察しがつく。 「お前、強いな」 「・・・・・・」 「強い奴は好きだぜ。名前くらい教えろよ」 「・・・フェイ」 「フェイか。良い名だ」 そう言って屈託もなく笑ったセツナに、フェイも肩の力を抜いた。 「部下が失礼をしたお詫びに山を越えるまで送る。別にいいよな?」 「それは・・・後ろの人に聞いて」 「・・・雇われてるわけか?」 「少し違うけど・・・そうゆうとこ」 軽く肩を竦めた後に、フェイは後ろで成り行きを見守っていた人たちにもう大丈夫だと声を掛けた。セツナが彼らに見送りを申し出ると、彼らは戸惑いながらもそれを受けた。善意は受け取った方がいいとフェイが彼らを説得したのだ。 とりあえず負傷者を他の仲間に頼み、セツナ自らが数人の仲間を引き連れて隊商を送っていくことになった。そして出発した直後にセツナがフェイに囁く。 「・・・実は自分が楽をしたかっただけだろう?」 「なんだ・・・やっぱりバレてたんだ・・・」 悪びれた様子もなくそう返すフェイに、セツナは面白そうに笑ってみせる。フェイがセツナと共に行くことを隊商に説得したのは、つまり、そうゆうことなのだ。 「可愛い顔して侮れない奴」 「・・・君もね」 互いに口の端を吊り上げて、二人は小さく笑みを交わした。 -------------------------------------------------------------------- 調子に乗って炎の英雄と4主の小話第二弾。 突発的に出会いを書きたくなりました。 炎の英雄は頭領と呼ばれてて欲しいという願望があったりします。 いや、だって盗賊だし。 頭(かしら)でもいいですが。寧ろ頭の方がいいかも・・・?(書いて気付いた) どうやら今の時間帯は拍手が見れない様子。 お返事は少しお待ち下さい〜。 |