終わりなき戯言
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2004年10月09日(土)
「・・・久し振り?」
「・・・・・・あー・・・」
 唐突に顔を覗き込まれた男は、顔の上から本をずらして相手を見上げた。逆光で暗い影が落ちたその顔を暫く眺め、そして思い出したように彼の名を呟いた。
「・・・ああ、そうだ。フェイだ」
「・・・・・・忘れてたんだ・・・」
「お前がいきなり現れるからだ。何年振り・・・いや、それより何の用だ?」
 誤魔化すように苦笑いを浮かべて尋ねた男に、フェイは表情を変えずに答える。
「別に・・・偶々通りかかって、偶々見かけた」
「・・・うーん・・・これでも一応行方不明の身なんだけどなぁ・・・」
「隠れるならもっと見つからないところに隠れないと」
「此処も充分見つかり難いと思うけどな。っつーか普通こんな所には誰も来ない」
 此処を見つけるのはお前くらいだと呆れたような溜息を漏らし、男は仰向けに寝転んでいた身体を起こす。周囲に散乱していた本が、風でパラパラと捲れた。
「・・・・・・ハルモニアと休戦協定を結んだんだってね、セツナ」
「あぁ、五十年の期限付きだけどな」
 だけど今はそれで充分だ。そう言って笑ったセツナに、そう、とフェイも軽く微笑む。休戦協定以来行方不明だという炎の英雄は、以前会った時と変わっていなかった。

 岩に囲まれたその場所で、フェイはセツナが今何をしているのか聞いた。セツナはこの近くの洞窟で生活をしているらしい。不便ではないのかと尋ねてみたが、慣れれば快適だとセツナは言ってのけた。
 彼の所在を知っているのは、炎の運び手の中でも幹部クラスの者達。そしてその彼らも真の紋章の所有者だとフェイは知っていた。
「そうだ、今はゲドが来てる。会うか?」
「・・・止めとく」
 あの人は少し苦手なんだ、と困ったように言うフェイに、セツナは楽しそうに声を上げて笑った。
 二人が初めて会ったのはセツナがまだ真の紋章を持っていない時だった。炎の運び手がハルモニア相手に盗賊紛いの事をしていた頃、偶然出会ったにすぎない。その後セツナが真の火の紋章を手に入れることを考えれば、それは数奇な運命だったのかもしれない。しかしセツナが紋章を手に入れ、炎の英雄としてグラスランドで崇められるようになった後も、フェイのセツナに対する態度は変わらなかった。あくまでも友人としてセツナに接し、決して仲間に加わろうとはせず、時折会う程度で。別段深い付き合いというわけではないが、それでもそれなりに親しくはなっていた。
 セツナはフェイが真の紋章を持っていると、とっくの昔に承知している。正確な年齢は知らないが、外見よりもずっと歳を取っているであろうことも。しかしセツナはフェイに気兼ねをするようなことはない。元々そうゆう性格なのだ。
 フェイはセツナの周りにある本に目を遣ると、そのうちの一冊を手に取って捲ってみる。シンダルに関する本だった。
「・・・・・・諦めてないんだ・・・」
 ポツリと零したフェイに、セツナはまぁな、と口の端を吊り上げる。フェイはその彼の表情を眺めて、そして自身の左手に目を向けた。
「本当に、出来ると思う?真の紋章を外すなんて・・・」
「やってやるさ。手応えはある。もうすぐで見つかりそうなんだ」
 胸の前で右手を握り締めて、自信に満ち溢れた表情でそれを見つめる。一陣の風が吹き、フェイの手元の本のページを音もなく捲っていった。
 セツナ本人からその話を聞いたのは何時だったか。いつか紋章が必要でなくなったら、外す方法を探したいと言った彼は、今よりも苦しそうな顔をしていた。真の紋章は力と不老を与えてくれるが、必ずと言っていいほど代償がつきまとう。フェイにはセツナがどんな苦悩を抱えているのか解らなかったが、それがどんなに大きいものかは想像するに容易かった。フェイもかつて似たような苦しみに襲われたから。
「・・・君は、それで幸せになれる?」
 無表情にそう訊いたフェイに、セツナは当たり前のように笑って。
「愛する人と一緒に歳を取れるってことは、幸せだ」
 そうやって言い切れる彼が、フェイには少し羨ましかった。
 たとえその幸せが数年という短さで終わっても、きっと彼には後悔はないだろうから。

 フェイは暫くセツナと共に久し振りの会話を楽しんだが、日が傾き始めると、出発すると言って立ち上がった。今日は泊まっていけと言うセツナの誘いを断って頑なに別れを口にするフェイに、セツナもすぐに折れた。
「それじゃあ。頑張ってとは言わないけど、いつか方法が見つかるといいね」
「あぁ。その時は教えてやろうか?」
 冗談半分でセツナが尋ねると、フェイは躊躇うことなく答える。
「遠慮する。僕は生きるよ」
 軽く微笑して即答したフェイに、セツナも満足そうに微笑んだ。
「そうか・・・元気でな。また、会おうぜ」
「君も、元気で・・・」
 どうか愛する人と幸せに。心の中でそう呟いて、フェイは歩き出す。
 少し後になってから首を回して背後を見ると、黒い服を着た男がセツナの傍に立っていた。 二人に一度微笑むと、フェイは再び顔を前に向けた。

「・・・フェイが、来ていたのか?」
「ゲド・・・あぁ、偶々だって言ってたけど、どーなんだろうな」
 フェイがその場から去ってすぐにやって来たゲドは、フェイの後姿を眺めてセツナに尋ねた。セツナはそれに溜息混じりに答えて、苦笑する。
「さぁな・・・」
 ゲドもまた小さく溜息を漏らす。
 その数日前にゲドの元にフェイが訪れてセツナの居場所を半ば強引に聞き出したということは、ゲドしか知らない。


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『4主とWリーダー』はよく見るのに、『4主と炎の英雄』は見ないなぁ、というわけで書いてみました。知り合いだと嬉しいじゃないですか。
でもこうなると必然的にゲドやワイアットやサナとも知り合いになるわけで。
そうなると幻水3で出しても楽しそう。
4主って本当に便利なキャラですねぇ。何でもアリです。
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