「おまえの目は黒いな」 これがクラピカのことばでなければ、 なにをいまさら。 と鼻で笑っていた気がする。 でも実際のオレはかれの腰にまわした腕にすこし力をこめ、 「うん」 とあまく微笑むのだ。 そして空いた手をのばし、クラピカのすこし長めの前髪をかきあげて白皙の額を見上げた。 「きみのおでこにも十字が必要だ」 と言ってやると、クラピカはかすかに両目を見開いて、 ばかを言うな。 とまじめに、それでもあくまでもやさしく答えた。
ああ、わかってるよ。 こんなオレたちが周囲にどんなふうに見えているか。 でもそんなことすらもオレには蜜の味だよ。
だって知らなかった。 誰かをこんなに愛することができるなんて。 いっしょにいるだけでいいなんて。 奪うのでなく与えたくなるなんて。
休憩中、オレたちは一応(クラピカがいやがるから)人目につかないように撮影トレイラーのかげにかくれるようにして話をしていた。 大きな衣装箱に座って本を読んでいたクラピカのあしもとに膝立ちになって、オレは下からかれの腰に腕をまわして見上げた。 すごい。 どんな角度から見てもきれいなんだ。オレの恋人は。
「わたしたちは仇同士だろう?」 やわらかいくちびるがちょっと笑みをふくんだことばを送り出す。 うん、たしかにこの物語内ではそうだね。 オレはきみの一族を滅ぼし、その後復讐者としてあらわれたきみはオレの仲間を殺しオレの能力をうばった。そういう話だ。 でもその二人−実名を役名としてつかうのがすきな監督だった−、クロロとクラピカはそうやって誰にもほどけない運命の絆にともにからめ捕られたんじゃないのか? こうやってオレたちが恋に落ちたみたいに。
そう言うと、クラピカはいつものように クロロはロマンチストだな。と笑った。
その笑顔があんまり綺麗で。
胸と、それからもっと下がずくんときて。
「いってええええ!なにするのクラピカ!」 オレは涙目になった。なったぞ。 「うるさい!どうしておまえはいつもいつもそうなのだ!」 クラピカも負けずに大声をあげる。
「なにがいけないんだよ?」 「なぜ初秋にコートを着ておきながら下は裸などという破廉恥な格好なのだ!」 え。だって。 オレは股間を押さえて一瞬考えた。 「コートで暑いから」 襟と袖口にはファーまでついてるんだぜ。そりゃ、衣装係は黒のタンクトップとか七部丈シャツとか用意してたけどさ。 「今は何時だと思っている!」 あ。そのことか。 「だってきみがきれいでセクシーだか」 そこまで言ったら、またクラピカが今度はオレの股間を蹴りあげようとする。 でも二度は食わないよ。
つかまえたクラピカの足を捧げもち、オレは靴の上からキスをする。 きみ、足指舐められるの好きだよね。とくに左。
そして上目遣いで(これ必殺)ささやいた。 「オレのここがつぶれたら困るのはきみでしょ・・・?」
・・・え?!
今度は顎を押さえてオレはひとり呻く。さっきの×蹴りはまあ手加減されていたが今度はかなり力が・・・。 「痴れ者!」と叫んでクラピカは立ち去ってしまった。
なんであのセリフで落ちないの?
だいたいまず愛しい恋人と身体をふれあわせて勃起したののどこがいけないんだよ。休憩はあと25分はあるんだしオレのトレーラーに行けばちょっとあわただしくもスリリングなセックスだって問題なくできたのに。こんなときには挿入我慢するくらいちゃんと心得てる辛抱強いオレさまなのに。
うーん、お子さま相手の恋はちょっとたいへんだな。
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アホかクロロ。 そしてもちろんドアホかあたい。
Treasureに展示してあるヨカダさんからの「クロクラ抱擁目線が逆」をごらんになってから読んでいただけるといい、かもね。
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