猫頭の毒読書日記
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2002年02月06日(水) 【「ブラックホーク・ダウン」】

◎ 2002/02/06(Wed) 21:07




冷泉彰彦さん 以下JMMNo151より引用
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「ブラックホーク・ダウン」リドリー・スコット監督の大作
ここ二
週間興行成績で一位の座をキープ、重苦しい内容の割りに大きなヒットとなっていま
す。国連主導のソマリアへの食糧空輸作戦に附随した米国特殊部隊のモガジシオへの
展開をドキュメンタリー風に描いた作品は、余りにもタイミングが良すぎて無気味な
くらいです。映画は1993年10月の2日間、当時首都のモガジシオを実質的に支配してい
た部族の頭目アイディードの参謀を叩くと称して無謀な市街戦に突っ込んで行った部
隊の惨めな敗北と、それを象徴するような最新鋭ヘリコプター「ブラックホーク」二
機の相次ぐ墜落をリアルに描写しています。

ジョシュ・ハーシュネットとユアン・マクレガーという米英の人気若手俳優を主役に
起用しつつ、一切情緒的な性格設定をしないで、「普通の若者」が悲惨な戦闘に引き
ずり込まれていく様子、そこまでは常識の範囲内なのですが、とにかく18名の犠牲を
出しながら失敗に終った作戦の是非をはじめ価値判断を避け、国連支配地域の市民も、
アイディード支配下のゲリラ活動で米兵を追い詰めた側の市民も公平に描いている点
はユニークでした。余りにも生々しい戦闘シーンや流血の惨状が画面一杯に展開され
て、私は少々辟易しましたが、不思議な印象を残す映画でした。

不思議といえば本当に不思議な映画です。国連主導の人道介入を支持する人には「失
敗した悲劇」に、孤立主義者には「米兵の血を流すに値する場所ではない」という印
象を与える可能性がある、つまりそれぞれの意見によって多角的な見方を許す作品な
のです。


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