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| 2003年03月09日(日) ■ |
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| 日記を書く気が起こらないから |
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「風羽ちゃん、俺が君の将来を占ってあげよう。おいでおいで」 紫紺の衣装を身に纏った(怪しい)青年が風羽に向かって手招きをする。 風羽はにっこりと笑って、駆けつけた。 「ほんと?」 「ほんとほんと」 そう云って笑う顔は、ものすごく胡散臭い。いかにも似非占い師のようだ。言葉を二度続けて云うのも、それに拍車をかけている。 「なんて云ったって俺は有能な占い師だから」 「町の人の評判もいいもんね」 「そうそう」 「あ、でも……風羽の将来よりも占ってほしいことがあるな」 にこっと笑えば天使にも見えるが、風羽という人物をよく知っている者にとっては、厄介ごとの予兆に過ぎない。 だが青年はそんなことも気にせず、なんだい?と先を促してくる。 「あのねぇ、波羽ちゃんの恋のお相手がいつ現れるか占ってほしんだ」 「波羽ちゃんの? いいよ」 「やったー!」 「でもなんで?」 「だって波羽ちゃんってば、バレンタインにわたしたち兄妹にしかチョコあげてないのよ? 可哀想じゃない。水羽くんのガードもあるし……」 妹なりに心配しているのが、本人のとったらいい迷惑である。 和気藹々と話すふたりの傍を空羽が通りかかった。 「そこでなにしてんの、風羽、ティンファン」 「占い」 「またか……風羽やめとけ、インチキだから」 「そんなことないよぉ」 「どうでもいいけどトラブルだけは起こすなよ」 儚い願いだ。けれど空羽にとっては切実だった。きっと今回も叶わないのだろうけど。 「信用ないな。大丈夫だって」 「ふん。で、なにを占うの」 「波羽ちゃんの恋の相手だって」 「波姉の? やめとけ……」 その言葉に風羽はぷぅと頬を膨らませた。 「空くんは、波羽ちゃんに彼氏ができなくてもいいの?」 「いや……そうじゃなくてもう」 「ひどいよ! あ、もしかして空くん波羽ちゃんが好きなの?」 「ちがう!!」 思い切り言い張る。 「そこまで断言しなくてもいいのに」 横から声が聞こえてくる。 振り向けば、水羽と波羽がいた。 「げっ」 サァーっと空羽の顔が蒼白になっていく。 「別にそのくらいで怒らないよ。ふつうは否定するでしょ」 「あ、うん。そうだよな」 びくびくとしながら、早くその場を退散したい空羽。 「でもわからないよ? 意外と逆かも」 「からかったら可哀想だって」 揶揄する水羽の後頭部を波羽はスリッパではたいた。 「はは。波羽ちゃんと水羽は仲が良いね」 「そう?」 「そうそう」 「駄目だよ、そんなの!」 微笑ましいと云うティンファンに対し、風羽は断固反対する。 「それじゃあいつまで経っても新しいお兄ちゃんができないじゃない!!」 「風羽ちゃんほしいの?」 「そういうわけぢゃないけど、波羽ちゃんには幸せになってほしいもん」 熱弁する風羽に波羽は聞こえない程度にぽそっと漏らす。あんたがもう少し大人しくしてくれると、私は幸せなんだけど、と。 「大丈夫だよ、風羽ちゃん」 ティンファンが励ます。 「波羽ちゃんの相手ならもういるさ」 ぎくっと波羽と水羽の表情が強張った。 「え?」 と双子の兄妹は興味を示す。 たっぷり溜めてから、ティンファンは云った。 「俺がいるからね」 右ストレートが炸裂する。 ばたりとティンファンは床に倒れた。すかさずそこへ精霊術が叩きこまれる。 ぷすぷすと焦げたティンファンの襟元をぐいっと引き寄せ波羽は睨んだ。 「次、そんなこと云ったらこれじゃあすまないわよ?」 「はひ……」 ぱっと話せば再びティンファンは床へ。それを水羽が引きずって外に捨てる。 「あいつはロクなことを云わない」 「まったくだわ」 怒るふたりに双子は冷たい汗が背を伝うのを感じた。自分たちも相当トラブル起こしたりするが、このふたりはそれ以上にもっと、とてつもなく怖いと。 そして捨てられたティンファンに同情すると同時に、余計なことは云わないよう心に刻んだ。
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