un capodoglio d'avorio
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2003年04月10日(木) 松本大洋「ナンバー吾(3)」

勘弁してください、とゆるしを請いたくなるほど。
それくらいに強靱な精神が、ここにはある。
大洋フリークを自認するどかですら、
フォローしていくことの険しい道のりにめまいを感じる。

共感を越えた共鳴というセンスで繋がることのできる虹組メンバーは、
野島伸司がスワンレイクで言うところの「感性による選民思想」、
そのピラミッドの頂点に位置する究極の人類かな。
野島伸司はアン・ドゥ・トロワ・キャトル・サンクの5人兄弟の誰をも、
ついに救うことは適わなかったが、この構造は、
創造的な作業に携わる人たちが想像力をもって挑むに足る、
魅力的なプロットなのだと思う、誰もが夢見る・・・

しかし、この魅惑的なユートピア的プロットを暗闇につつむことで、
真なる絶望を自らの内にいったん、引き込んだ後でどこまで、
パースペクティブを覆して重力に逆らって加速度を求めることができるか。
それこそがおよそ、クリエイターの才能の端緒ではないのかなー。

スワンレイクの湖の底にわずかな「明かり」を見つける旅に出る野島伸司は、
自らのアイデアと機転、物語の凝集力に拠って立つ想像力だった。
そして白鳥座X-1の中に「明かり」を見つける絶望的な旅に出た松本大洋は、
自らの精神の強靱さ、ひたすら鍛え抜いたその鋼のような想像力がパスポートだった。
そのパスポートを携えた筆致は、あまりにも鋭く速く強く、
あっという間に太陽の重力場を振り切り太陽系を飛び出し、
漆黒の闇の中、さらなる闇をもとめて、一直線に白鳥座を目指す。
そのあまりのスピードには優しさも悲しさも、
読者が抱く全ての感情は置き去りにされ、ただ、
まなざしのみがページにすがりついて引きずられ。

引きずられて、結婚式のコンバーチブルの後ろにくくられた空き缶状態。

かん、からから、かっかっかん、からかん・・・

痛いよ、痛いってば。
感情が追いつかなくても、身体的な感覚は意地でも追いついてくるらしい。
松本大洋初心者には、薦めないかも「ナンバー吾」は。

でも究極を見たいならば、多少の痛みを覚悟できるならば。
痛みの代償を求めて、予定調和の瓦礫を越えて、宝探しができるなら、GO!
きっと、この才能は、裏切ることはないと、思うの。






大チャン、がんばれ。


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