un capodoglio d'avorio
passatol'indicefuturo


2002年11月22日(金) 同じ鞄

きょう、自転車こいでるとき、結構寒かった。
マフラー巻いて手袋してたのに。

ウーサブッ・・・

ってマフラーに口を埋めてつぶやいたときふと、
昔のことを思い出した。
自分の中で一番寒かった記憶。

それはアラスカではない。
アラスカは寒いのではなくて冷たい記憶だ。
寒かったのは、ヨーク。
冬の北部イングランドの寒さは、ちょっとどうかと思うくらい。

ヨークの南の外れ、ホルゲイトのホストファミリーの家を出て、
ミクルゲイトバーの前で左に折れて、
シティウォールを右に見ながらそれに沿って右折、
したら左手にヨーク駅が見えてくる・・・
そのあたりの車道を駆け抜けていくときの記憶。

ホストファミリーから借りた赤いマウンテンバイクで、
今日着てたのと同じコートに同じマフラー、
同じ鞄を肩から後ろに回してさげて、
大学の寮にいる友達を訪ねていくときの記憶。

実はその訪ねていく友達のことを、
どかは脇目もふれない程まっすぐに気に入っていて、
でも相手が同じ気持ちでいてくれるという期待が怖くて怖くて、
今こいでいるペダルから、一瞬自分の意志が抜け落ちて、
すうっと空っぽになったシーン、
左手には過ぎ去るヨーク駅、
右手には中世の香り残すシティウォールが延々続く、
車もまばらな曇天の薄闇に染まりつつ、
ヨークミンスターの鐘の音を遠くに聞いたあのとき。

・・・あのころの自転車よりも良い自転車を今こぎながら思い出した。
あのときの寒さは、とてつもないくらい鋭く身体を削っていたのだ。
7年前の空っぽのどかは削られていく自分すら自覚できなくて、
薄闇に染まっていったのな。


どか |mailhomepage

My追加