un capodoglio d'avorio
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2002年05月02日(木) 池澤夏樹「新世紀へようこそ」

池澤夏樹が昨年9月11日の事件を受けてはじめたメールマガジン、
「新世紀へようこそ」の最初の51回をまとめた本。
著者が発信したメールに対する幾つかの読者の返信、
さらにそれに対する著者のコメントなどが掲載されている。
何となく小説以外の本が読みたくなって、最初ノンフィクションを探していたんだけれど、
池澤という作家を信頼していたこともあるので純粋なノンフィクションでは無いけれど、
書店で平積みになっていた黄色い表紙に手をのばしてみた、それから2週間、読み終えた。

この人の文体は小説でもそうなのだけれど才気煥発というわけでは決して無い。
わりと純朴でまっすぐな、美辞麗句とは懸け離れた文体の人で、
メールマガジンの文体ではその発表形態との関わりだろうけれど、さらにその傾向が強い。
言い換えれば、ふつうの人がふつうに丁寧に書いたかのような文章。
でも彼は文体よりも内容の人で、今回はいつもにもまして直接的にメッセージが載っている。
一番読んでいて気持ち良かったのは、受信者(一般読者)に対して、
「彼が知識を披露する場」では無く、徹底して自分の特権的立場を崩して受信者の目線の位置を、
常に意識し続けているところだった。

さて、内容、だけど。

う〜ん、面白かった。

「テロは許されない、だから」という論法と、
「テロは許されない、しかし」という論法が二つある。
池澤は直感的に後者を選び、それを少しずつ吟味し、前に進めていった。
僕には少しこの内容を消化する時間が必要かもしれない。
でも直感的にはどかも既に分かっている、採るべきは後者だ。

特に面白くて惹かれたテーマが幾つかあったがそのうちの一つが・・・

「小泉氏の話法のファシズム性について」
どかが前々からずぅっと強烈に違和感を抱いていた小泉純一郎の物言いを、
極めて明解に分析してその構造を示してくれている。
この点に関しては「まさにその通り!」と思った、つまり・・・

a:テロは悪い
b:テロは根絶しなければならない
c:徹底的に戦わなければならない
d:そのために英米はじめ国際社会が団結している
e:日本だけが何もしないではいられない(だから自衛隊を出します)
f:戦闘地域には行きません
g:武力行使もしません
h:人道的支援をするだけ
i:それがなぜいけないのですか!

論理を次のステップに進めるときにいくつもあるはずのオプションを全て外して、
あたかも一本道で真実まで辿り着いているかのような勢いで熱弁を振るうのが小泉流。
しかもその一つ一つのステップで、
言葉の定義は限り無く曖昧にぼかしていることも、自分の熱弁とスピードで覆い隠そうとしている。
dからeにかけての論理的飛躍は不合理だし、fghの言葉の定義は滅茶苦茶。
そうしてiは決して相手への問いかけでは無く、全ての反対意見を圧殺する決め台詞。
平田オリザや青年団の役者ならきっと、鼻で笑うんだろうな、この人の「対話能力」の無さを。
「半疑問文」を濫用するほうが100倍ましに思える。


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