not ready

2004年06月01日(火) 誘う女

40歳を過ぎたであろう女3人組がアイスコーヒーを飲みながら旦那の愚痴を昼下がりの喫茶店にて言い合っている。

4人掛けの席に私から見て奥に2人手前に1人といった風に座り、奥にいる左側と手前にいる女性が煙草を吸っている。そのケムリの先は自らの命の灯火と言った所か、どこか悲しげに見えた。吸っていない奥にいる左側の女は他の二人より若く見えた。
3人とも金持ちの旦那持ちなのか、見栄を張っているのか着飾って若作りしている様子、それを3人とも意識しないで見せびらかしているのが、私のとってはとても気持ち悪く見えて仕方ない。首にしているネックレスも、腕にしているブレスレットも嫌な光を放ち、いかにも「高いのよ」と言わんばかりだ。

そのうちに会話も尽きたのか間ができ、それを埋めようとして奥にいる左側の女と手前にいる女が何らかの会話を始めた。会話に入れずにいた奥にいる左側の女が私の方を向いた。その瞬間、女性の目になったのを私は見逃さなかった。
―媚びるような、誘うような目をして―
目が合うと小さく笑みを浮かべて、見つめてきた。目を逸らそうとするとその女は「ダメよ」と言わんばかりにこちらを見ている。

私は焦り急いでタバコに火を点け、少しでも落ち着かせようとしたが、その間も女は目を合わせたまま、外させてはくれなかった。
そして、笑みを浮かべたまま右手を3本突き出した。
まさか…と思ったが拒否する様して首を横に振った。しかし女は勘違いして今度は5本の指を上に向けた。

その女性とベッドに入る姿を想像してしまった私はケムリを肺に入れすぎて、むせてしまいそれが逆に良かった、女の視線をようやく解くことができた。
すると女は声に出して笑った。話していた女二人がどうしたの?と言ったが、「何でもないのよ」と言って二人を会話に戻した。

恐る恐る視線を女に戻すと、声には出さず
―冗談よ―
と口だけで言った。
その時、全身の毛が逆立ち、毛穴という毛穴からじっとりした汗が吹き出た。
女は笑っている、まだ…。
私は…。


 < past  INDEX  will>


not ready [MAIL] [HOMEPAGE]

My追加