march forward.
りりかの独り言。

2003年01月14日(火) 人それぞれの限界

16時。

あいつと待ち合わせしてて。

あいつの家に行った。

あいつは、ちょっといつもと違った。

今、思えば。




「カラオケ、やっぱり難しいよ」

「うん、だから、歌わないでいいってば」

「いや、歌うよ。歌えって言ったの、りりかじゃん」

「でも、もういいよ、って昨日言ったじゃん」

「遅い。歌う」

「いいよ!嫌なのに、無理矢理歌ってもらっても嬉しくないし!今は歌って欲しいって余り思ってないし!」

「・・・。いいよいいよ、ってさっきから言うけど・・・。一度も謝らないんだね」

「昨日、メールで謝ったよ!」

「まぁ、昨日はね」




ため息つかれて。

あたしも素直に謝れなくて。

無言のまま。

時間が過ぎて。

先に、口を開いたのは、向こう。




「ねぇ。俺にだってコンプレックスがあるんだよ?」

「え?」

「俺は、歌が嫌いで。音楽の授業とかも嫌いで。それでも歌え歌えってりりかが言うから頑張って。その上、もう歌わないでいいよー?歌ってほしくないよー?何それ?」

「だって、嫌なのに歌うんでしょー?約束だからって理由だけで」

「りりかは、頑張ってね。とか言わないしね。あれして。って言ったすぐ後、やっぱいいや。とか。簡単にいうよね、人の気持ち考えないで」

「・・・。そう?」

「うん。だから、もう疲れました。うん」

「・・・。疲れた?」

「冷めました」

「・・・」

「俺にも限界があったりするからさ」

「・・・」

「俺さ、昨日もりりかと何度かメールしたけど、いつもみたいに楽しく無かったし。今日も、りりかとこうして一緒にいても、抱きしめたいって思えなくなっちゃったんだよね」




あたしは、口聞けなくなった。

なんて言ったらいいのか、分からなくて。

瞬きばっかりしてた。



「りりか。お別れで」







あの瞬間。

真っ暗になった気がする。

目の前が。


喉が、からからに渇いて。

あいつが飲もうと用意してたコップの中の日本酒を、一気に飲んだ。

水だと思ってて・・・。





甘えすぎてた。

あいつの優しさに。

調子に乗ってた。

不安なの、あたしだけだって思って。

わがままばっかり言って。

でも、あたしを愛しているからこそ、わがままも聞いてくれるんだね、なんて浮かれてた。





目が。

覚めた。




あいつにだって。

我慢の限界は、当たり前のようにある事。



やっと、分かった。


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