ソレガワタシノ  2008年10月21日(火)
なぜだか知らぬがこの世にはひどく気になる人間というものがいる。それは地上を掠めて闇夜を切り裂いてゆく彗星のように明らかに、唐突に目の前に現れる。だが所詮は彗星。流れるままに、たとえ主観時間をぎゅっと圧縮して、1秒を永久に感じられるまでに脳細胞を焼き尽くしても、この両腕に何百という思い出と言葉を拾い集めても、別れは絶対に来る。彗星は地平線の向こう側に飛び去り、地上には、出会う前とはもう別の人間となってしまった私という一つの事後状態が取り残される。そこから歩みだして体感する世界というのは、面白いぐらい彗星の輝きの記憶に引っ張られている。もう無いはずの引力。支配は確実に行き渡っている。次の巨大な星と出会うまで、おそらくは魂を抜かれたように、音の無いフロアで残響だけで踊ってみるように、おぼろげな足取りでしか歩くことはできない。思いっきり踊り、夜という夜、闇という闇に跨って支配していた瞬間のことを、忘れることもなければ、それに立ち返ることもできない。そして咽喉が涸れ過ぎて苦しくて仕方のない日々の向こうに、また新しい、新種の星が現れるだろう。薄情なまでに心の帳を張り替えなおしてまた新しい夜に挑むことになるだろう。主観時間をぎゅっと圧縮しながら脳細胞を再び燃やしつくして、不毛な地上の夜を鮮やかに染め上げて、躍るように眠る。それが私の恋愛。




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