ガラス一枚隔てた向こうの世界は風炎に包まれ、息苦しさを感じさせる灼熱の地獄。 うがちゅはベッドに横になり目を閉じ、顔をマッサージされながら深い眠りについていた。 一時間半ほどのコースも、大抵途中で目が覚め、それでも動き出せない状態にもぞもぞと居心地の悪さを体験するのだが、今日ばかりは最後起こされてしまう爆睡っぷり。実に心地よかったのである。
それもそのはず。 前日の晩に終電まで6時間をかけて飲みまくり、熱くなりすぎて目を潤ませながら語り、帰ってきてすぐに寝ればいいものを、気がついたら3時。8時前に起きて、渋谷までの電車中、一本乗り遅れてしまったばっかりに乗換えを余儀なくされ、座ることもできない状態で、とろとろとまどろんだかどうかの状態で横にされたら、それは眠りこけるに決まっている。 もはや、乙女のやることではない。
場所を変える。 てっつかふぇ(と、うがちゅは心の中でそう呼んでいる。カフェ ド ナガイのようなものだ)で、ケーキセット580円を突きながら、CDでーたを捲る。置いてあるのだ。 ガラス一枚隔てた向こうの世界は相変わらずの風炎地帯。涼しい店内でぼんやりと過ごしていると、にぎやかな一団がやってきた。 「きゃは〜!なにこれっおもしろーい!」 注文端末に興味津々なご様子?はっきりいってうるさい。あたしの優雅な午後のひとときを返しやがれ! うがちゅはぶつぶつと文句を言いながら、倒れそうで倒れないケーキの壁を端から崩しにかかった。これ以上の永井…ぢゃねぇ、長居は無用である。 このティーポットいいなぁ、持って帰りてぇ… などと考えながら、カップに残った冷めた紅茶を胃に流し込み、CDでーたを元あった場所に戻して、店を出た。 考えてみなくても、酔狂である。 このくそ暑いに、通り道でもなんでもない、特別なサービスがあるわけでもない、安さは大満足だが、それ以上のものもないような店に行くのに、わざわざ坂道を登るのだ。
汗をできるだけかかないように、うがちゅはそーっとそーっと歩いた。 次の目的地は浅草。なんということはない、そこからなら座って寝ながら帰れる。それだけの話だ。 ところが。暑さが邪魔をした。松屋浅草の涼しさに負けて、ふらふらと突き進み、着いたところは電化製品売場のマッサージチェアの前。これがまた充実している。マニアにはたまらない。 ここで一息入れたら、クロダのアルバム買って帰ろう。 思ってはいた。しかし、「脚集中モード」でうとうとするうち、すっかり忘れて、そしてそのまま帰ってきてしまった。
ところでだ。 口を閉じて鼻で息をする際、肺から鼻へ(またはその逆)向かう空気は、一度喉の奥を通過するが、それがうまく処理できないのは異常なのだろうか? 普通に呼吸をしているだけのつもりだが、時々それが異物となり器官の入り口で暴れてくれる。何もつまってはいないのに、非常に息苦しい。 酸素不足で死ぬのだけは、嫌、なんだけど。
地元へ着いて。薬屋で日焼け止めとビオレのさらさらシートを買おうと思ったが、ない。日焼け止めは売り切れで、さらさらシートは詰め替え用がない。 しかたがなく、イトーヨーカドーに望みを…玉砕。せっかくポイントカードも作ったのに、まったくの空振り。
こんなもん、なんだよな。
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