琥珀色の時
DiaryINDEX|past|will
2004年02月19日(木) |
清水義範「偽史日本伝」 |
ずっとファンな清水義範のパスティーシュ、マンネリだとかいう人もいるけれどパロディが好きな人にはやめられない読み物です。 今回はパラレル・ヒストリー・ワールドと銘打って日本国の歴史をおもしろく授業してくださる。 歴史に弱い私にはぴったりな本でした。
こんな風に教えてもらったら日本史もよく覚えただろうに、特に近世に近くなると学年末が近くなって駆け足の授業、これではさっぱり訳が分からぬ。 特に歴史的な事件は教わるけれど、その時該当者がどんな気持ち、どんな意識で行動を起こしたかは(勿論、真相は分かるわけもなく…)よくわからないままだ。 この人がこれこれのことを起こした…昔からどうしてそんな風に考えたのかなあと疑問だったので、この本は駆け足ではあるけれど、結構本気で読めた。
初出は小説すばるで、93年から97年まで。
『おそるべき邪馬台国』 邪馬台国はどこにあったのか?あちこちに邪馬台国の散らばる訳は? つまりは邪馬台国銀座というわけで、ちゃんちゃん。
『大騒ぎの日』 御存知、大化の改新ですな、中大兄皇子、中臣鎌足のおこした蘇我入鹿殺害クーデター。 一市民が朝のニュースや昼のワイドショーで事件を知り、夜のニュースで背景を解説してもらう。 ハハハ、ニュースショー、やはり大事件の時はチャンネルを変えてよく見ますよね、そのノリでした。
『封じられた論争』 これが私的には一番うけたかな、清少納言と紫式部のあざとい論争。 清少納言は「沓草子(くつのそうし)」を続編として発表、式部は「続・紫式部日記」を発表して丁々発止とやり合うという話。才女もかたなしの面白さだ。 (これを読んだ後すぐ、某サイトでこの二人に小野小町を加えた、いわゆる雛人形三賢女のパロを読んだ、いゃあ、めちゃめちゃおもしろかった。枕草子、源氏物語の文体まねっこはおもしろいなあ)
『苦労判官大変記』 アッと驚く、入れ替え物語。どっちにせよ弁慶はいいよなあ。 源の兄弟がどうして仲悪くなったのかがよーく解ると思う。
『嵐』 この辺で嵐と来ればもうあのことしかないでしょう。 蒙古来襲ですね。何故台風が起こったのか、うむむ、神風をおこすには…!!
『日本一の頑固親父』 さあ、またよくわからない南北朝時代のこと。やあ、もうわかる名前は後醍醐天皇だけかなあ(不安) して頑固親父は…北畠親房クンです(はあ、聞いたことがあるような、ないような…)
『種子島であったこと』 鉄砲伝来は種子島。鉄砲を売りつけ大もうけを企てるポルトガル人を後目にハイテク・メカ好き日本人はすっかりコピー術を身につけ鉄砲自主生産。 さて種子島にもう一つ伝わったことは…??
『転がらぬ男』 家康の性格がわからない、動向が読めない。秀吉は悩む。 鳴くまで待とうホトトギスの男である。 NHKの大河ドラマでもよく放送される時代、でもほとんど見てない…(やはり苦手)
『戦国情報ウォーズ』 戦国時代をおもしろくした忍びの者達。昔も今も諜報員は大活躍。 霧隠才蔵。ああ、なんだったっけ?ナメクジやガマが出てくる漫画(大昔)えっ、ちがう?
『人殺し将軍』 八代将軍吉宗公、なんやかやで転がり込んだ将軍職、ちょっとうまくいきすぎじゃない? ひょっとしたら、あの運の良さは人殺し? 尾張藩松平通春(みちはる)はつぶやきます。通春は清水先生お好きなのか小説になさっているはず。
『天保ロック歌撰』 ひょんな事から雨宿りのボロ地蔵堂に集まったのは…鼠小僧次郎吉、高野長英、安藤広重、大塩平八郎、佐竹の福次郎(都々逸坊扇歌)片山直之助(直侍こと片岡直次郎) 身の上話をしているうちに、雷が三味線を直撃、しぇきなべいびー♪になっちゃった。
『どうにもせい』 ますます時代物好きな方におもしろい幕末ですね。 尊皇攘夷、倒幕開国、揺れる時代に優柔不断な殿様は長州の毛利家。 攘夷と開国がどうせめぎあうのか、歴史の先生はあんまり上手く教えてくれなかったよなあ…
『人生かし峰太郎』 これもおもしろかったほう。この題から想像できる者があの人とは! シュワちゃんもびっくりのたーみーねーたー→みねたろう ま、人斬り半次郎の逆だわね。坂本龍馬を未来に運んでどうする…??
『開化ツアー団御一行様』 岩倉使節団(米欧回覧団)の内情は… しかし、この使節団を迎えたアメリカ側からの映画でも見たい気分になる。 日本史と西洋史がいつもばらばらな私はこの時代のアメリカが具体的に想像できないの…
非常に久しぶりな清水本でしたが、最後まで読み切ったのは、やはり人間の心の動きがよく描かれているせいだと思った。 歴史的な流れは最低限に、工夫はあれこれと、縦横無尽に清水節が語ります。 歴史苦手組はいい勉強になるんじゃない??
|