琥珀色の時
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2003年06月28日(土) |
ジェーン・S・ヒッチコック「魔女の鉄槌」 |
鉄槌ってなんだと思います?ハンマーです、おっきいかなづち。 そんなもの原題を見れば大わかりだった、「The witches's hammer」 表紙からして、実際に1497年に出版された魔女裁判の本「マレウス・マレフィカールム」に載っている木版画を使用してるので、なかなか本格的な魔女ものかと思って読み出した。
ヒロインのビアトリス(ダンテの神曲ベアトリーチェより命名)・オコンネルは本の下調べを職業とする×いちの出戻り娘。 父は有名な外科医で、稀覯書の収集家でもある。 このお父さんが手にした「魔法書」がそもそもの発端で、殺人事件が起こる。 父と浮気の事で喧嘩になり(主人公はダンナの浮気で離婚)家を飛び出して、戻ってみたらお父さんの死体。 父との喧嘩の原因は、清い人と思っていた父もかって浮気をして(そのせいで母が苦しんでなくなったと思うビアトリス)いたとの告白。 父にしてみれば、男とはこのようなものと自分の過去を話したつもりだが、ビアトリス(カトリックのいいトコのお嬢さん育ち)には許せなかった。
出だしから、とても女性には共感できる話立てで、訳者浅羽莢子の読みやすい訳もあってずーんと引き込まれる。 秘本の「魔法書」の秘密はとても意外で、そこにいたるまでに本の半ばまで行ってしまうので、オイオイこの話一冊でおわるんかいと心配になる。
狂信的な団体がその本をねらっているのだが、その団体の強さと来たら、個人ではどうにもならない、警察に訴えても信じて貰えない怖さである。
ラストはちょっと破天荒であるが、最後はすっきり、いやあもうすこし引っ張って欲しい気もする。
男と女の性愛と心の問題、父と娘の関係などアメリカ女性にしては珍しいくらい、ウンウンとうなずきたくなる描き方でした。 復縁を迫ってくる元夫もいい感じなんだが、最後はねえ…
魔女=男が怖がった女、中世の魔女裁判も現代的に解釈すればこういう事かな。
それにしても、お父さんが残した本の数々を始末するのになかなか困っている様子のビアトリス。 貴重な本、高価な本やはりバラバラになるのはもったいないので寄付しようか、それにはどこへと悩む娘。 故人には宝物でも、継ぐものが不必要だということはあるので、ものを必死に蒐集するむなしさを感じましたね。 まあ、生きている間楽しんだんだから、それで十分と割り切るしかないですね。
ふーん思わず我が書棚を見る、全部捨ててよいぞ、子供達心配するな(笑)
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