退屈カフェ --五丁目に咲いた恋は絶対に結ばれないと人々は噂した

目次未来過去
過去に読んできた漫画と、その頃の思い入れを回想しながらだらだらと時間潰しに感想を書く。西日のあたるそんな場所です。
日本列島蝦蟇蛙 / ジョージ秋山 (1976)


もう今となりゃ、そりゃもうおもちゃの事だとかまで語るのを恥ずかしく思わなくなったり、男女のつがいにピュアな幻想を抱きはしないけれども、この作品の幼き情景は本当に素晴しいと思える。男女の仕組みを悟るシーン、過ぎ去った何かを冷徹に認識する田園風景の空の広さ。もうこれだけで泣けてくる。そして描かれるのは、例えば愛と性、心と身体を秤にかけて、揺れ幅に身を任す、そんな同棲時代。何度も同じことを繰り返してしまうから、青春。ゲコゲコゲコと泣く、蝦蟇蛙の。あと個人的に“吉田さん”の強烈すぎるヴィジュアルが夢に出てきて困ります。結構タイプ。



四次元世界 / 松本零士 (1977)


これ、松本零士の数ある作品の中でもズバ抜けて好きな短編集。メルヘンな昆虫達の世界に若者の夢や可能性が描かれたりして、恥ずかしくなるほど青くてイイんだ…。いつ読んでもしみじみと胸を打つこの熱さよ。恋愛と夢が等価なあの時期。自分の存在を認められるための必死さ。「寝食を忘れ精魂をかたむけて描いた」っていう、投影された著者自身の青春期こそ、ここまで感情移入できる要因なのかも知れない。中でも、「その日、少年の夢が消えた」ってナレーションで始まる短編。オケラの主人公が美しいウスバカゲロウに恋をし、自らの出自に苦悩する「幻想世界のアム」は出色の出来。キラキラと金色に輝いている。




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