華のエレヂィ。〜elegy of various women 〜
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2008年08月04日(月)

like a boy,like a spy. 〜A subway station〜




<前回より続く>



俺はソファの片隅に小さく座るアキに覆いかぶさり、抱いた。
女として認めた者にしか、起こさないアクション。

アキは甘い小声で嫌…と嫌がる。


「嫌じゃないでしょ?」
 「だって、だって…」

「本当は、すごく感じてる。震えるくらい、融けだしそうなくらい」


アキは小さく二度三度と頷いた。

俺の確信…
アキは女を否定しているのは、誰よりも「女」だから。
きっと、自分が一番解っているのだ。

男友達から関係を求められた時。
きっとアキは女になっていたに違いない。

高まると、仕草も声色も、明らかに女になる。
男を興奮させる、媚薬のような危うさを帯びた、女の喘ぎ声。


「認めたね?」
 「…」

「女として感じちゃうのも、自分にとって戸惑ってるんでしょ?」
 「…なんで判るの?」

「俺、スパイだから」


アキは声を出して笑った。
女の子らしい、朗らかな笑い声。
初めて聞いた。


その隙にアキの履くGパンの上から、アキの突起の部分に右手を押し当てた。
途端に、アキの表情が変わり、甘い甘い声が漏れる。


 「はぅん、いやぁ、いやぁ、そこダメぇ…」
「アキ、俺の、欲しい?」

 「聞かないでぇ…」
「じゃ、いらないんだ?」

 「意地悪ぅ、イジワルゥ」
「じゃ、一緒にシャワーに入ろう」


俺は半ば強引にアキから服を剥ぎ取り、俺も脱いでバスルームに向かう。



俺はそこでも、アキを求めた。

 「やっぱ、明るい…から、嫌だっ…」


明かりを消そうとするアキを制し、細い身体をまさぐる。
直に触れる肌は、やはり肌理が細かく、綺麗だった。

ピンク色の乳首を俺の指で摘み、軽く押しつぶす。

甘い女の声が、浴室中に響く。


湯を張った浴槽にアキと向かい合わせで入る。

下からアキの尻を湯面へ持ち上げて、俺の前で両足を開かせた。

流れ出したアキの粘液が、早くも湯の中に糸を引いている。
その事を伝えると、アキは顔を背けた。

俺は両腿の内側を舌先で滑らせる。
さらに興奮するアキの声が浴室中と俺の脳内に響き渡る。

快楽に押されて腰を振るアキ。
その波紋が俺に届く。

俺も必死になってアキ自身を唇と舌で犯す。


ふらつきながらアキは浴槽を出て、粘液を洗い流そうとシャワーに向かう。
俺は後ろからアキに抱きつく。

熱気と湯気の中、俺は立ちバックでアキをいきなり奪った。
一瞬鋭い声を上げるも、すぐに甘く溶ける声が漏れる。


 「はぅ、あぅん、こんな強引なの、いやぁ…」
「嘘つき。全然嫌がってないぞ…抜くぞ?」

 「駄目、そのまま来てぇ」
「アキ、すごくエッチじゃないか?」

 「はぅ、はぅん…溶けちゃうぅ」


アキの感じている声が、尾を引くように甘く響く。


「そんなに感じた声出しちゃって…俺、中で出ちゃうよ?」
 「だめ、ぜったいだめぇ…あぁそこいぃ、そこいぃのぉぉ…」

「じゃ、その声、我慢して…」
 「できない、できないよぉ」

「じゃ我慢ね、用意、ドン!」


掛け声と一緒に、俺は激しくアキに律動する。

アキは一生懸命歯を食いしばって、声を我慢しようとする。
全身に力を入れているのか、アキ自身の締まりも増す。

堪えきれないのか、アキが絶叫する。


 「あぁ〜〜、イッちゃう、来るぅ!」


俺はアキへの律動を緩めた。


「だめ、まだイッちゃだめ」
 「まだだめ?まだだめなの?」

「ここ、まだベッドじゃないよ?」
 「じゃベッド、行くぅ」


すでに覚束ない足元のアキをエスコートしながら浴室を出た。
そして、ベッドに押し倒して、改めてアキを奪う。


アキの腿を大きく開き、薄いヘアに包まれたアキ自身をじっくりと観察する。
綺麗な色をした、小粒で可愛らしい深奥だ。


 「だめ、見ないで…」
「舐めるよ」

 「いや、だめぇ…はうぅ、うぅっっ…」


音をわざと立てながら、味わう素振りでアキ自身をいただく。
突起を舌で弄ばれ、唇で吸われるアキは、シーツを掴み、のたうつ。


「報告するよ、ものすごい…」
 「い、意地悪!言うなぁっ」

「アキの愛液で溢れてるよ」
 「あぁ、何で言うの?恥ずかしいぃぃ…」


アキは自分の痴態を言葉攻めされ、すっかり打ちひしがれていた。
俺は指を入れ、Gスポットを探るように動かす。
弄る指の動きに合わせて、アキが操り人形のように喘ぐ。


俺は、正常位で俺自身を再び差し入れた。
大きく足を開き、アキの身体を押し折る。

数度の激しい律動の後、アキは絶叫めいた声を上げ、身体を震わせて果てた。
俺はしばらく、労わるようにアキを抱いていた。


 「私、どうだった?」


着替え始める前、唐突にアキが俺に尋ねてきた。


「正直に言って、最高に抱き心地がいい女だと思う」
 「…それって、自信にしても、いいのかな?」


恥ずかしそうにアキがそう呟く。


「いいよ」
 「…そうなんだ」

「最初から判ってよ、俺は」
 「初めて。こんなにとことん抱かれたの…」

「怖かった?」
 「当たり前じゃない、誰にも見せたことないんだから」

「彼にも?」
 










あまりにあっさりとした白状。
その意外な展開に、今度は俺は驚きを隠せなかった。

考えて見れば、男を装っていても、それはかまわない。
予想だにしていなかった告白に、今度は俺が戸惑った。


 「奴にも見せたことないんだよ、こんな乱れた私を…」
「そっかぁ…じゃ、その時計は相方の?」

 「それは、内緒」


そう言い切った。

結婚していれば、確かに「彼氏はいない」。

一度脱いだ女は、肌を晒した男に対して、大胆さにも磨きが掛かる。
俺はろくに確かめもせず、彼女の言葉を次々と受け取らざるを得なかった。

先ほどとは攻守逆転といったところか。




帰り際。
動揺を必死で覆い隠す俺は、アキを車に乗せてホテルを出た。

アキと、俺。

身体の相性は悪くない。
そういう手ごたえもあった。


しかし裏では俺は都合の良い、小ずるい計算をしていた。
結婚しているなら、難しい話ではない。

アキとはセックスフレンドとして関係を続けられないか?と。

俺は、一度にしてアキの身体に惚れ込んでしまったようだ。



彼女の通勤用の自転車があるからと、地下鉄の駅前で降ろす。


「俺たち、これからも関係を続ける?」


俺はアキを降ろす前に、話題を振った。
アキは微笑を浮かべ、俺を見ずに答えた。


 「……やめとく」


様々な意図が暗示されているような、たっぷりとした間の後の言葉。

俺はそうか、と言うに留めた。



アキは降りた後、俺の車を振り返る事無く、立ち去っていった。

携帯電話を取り出して、アキの番号を検索し、消去を選択する。
一瞬の確認の後、俺の携帯からアキが消えた。


二度と戻らない時間。
満足しきった虚脱感。
どこともない虚無感。


俺はとっくに慣れたはずの空虚感に打ちひしがれながら、帰途に就いた。


映画の中では、女との情事が事件の顛末を解くカギを見つけるヒントとなる。
しかし、車の中で徐々にアキに対しての疑問が浮かび上がってきた。


 「……やめとく」


その前後の間。


それは結婚しているから、相方を裏切るからか。
それとも、自衛のための嘘をついたためか。
また、その嘘を「黙って受け入れて」という意図なのか。

そういえばアキの左手薬指には、指輪の存在も跡形も無かった。


あまりに生活臭のない女だったアキ。
果たして本当にアキは結婚していたのか?


動揺に気をとられ、全く確認していない俺。


電話番号は…そういえば先ほど消してしまった。


アキという女の謎う解決するどころか、深まるだけで解決する手はずを失った。
アキを暴くつもりが、新たな闇に包まれたまま逃げられた。


アキはその後、テレアポの店にも出勤していない。
無断欠勤を続けて、解雇された。

目的を果たした事で、もはや無用となったからだろう。


男と女の関係は、我を見失い、溺れた方の負け。

溺れた俺は、一発逆転の敗戦を味わった。


俺が諜報部員になれる日は、どうやら当分来そうにない。



☆猛暑厳しい残暑を迎えています。
 毎度のご愛読、誠にありがとうございます。
 
 本職の多忙さから、なかなか筆を執る機会も減りましたが、
 まだエレヂィを紡いでいきたいと思います。

 今後「華のエレヂィ。」は新たな展開に発展する可能性もあります。
 どうぞお気長に、お待ち下さい。

 季節柄、どうぞ皆様ご自愛のほどを。



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