| 2007年04月30日(月) |
「魔笛」のゾロアスター |
妻が録画しておいてくれた「魔笛」を見ました。ロイヤルコベントガーデンオペラで指揮はコリン・デービス。聞いた名前は無いけれど殆どの配役が一定水準以上の実力者なので非常に安心して楽しめました。日本に来日するチャンスは少ないですがイギリスオペラの水準の高さを実感した公演でした。
さて「魔笛」というと色々楽しみがありますが、私は「ザラシュトラ」の扱いに注目しています。最初は悪の権化みたいに扱われますが、実は「智」を代表しています。タミーノに与える「試練」は非常に観念的で暗喩に富んでいます。ザラシュトラの台詞は非常に難しいものがあります。モーツアルトの時代においてもヨーロッパの人々(知識人)の「ゾロアスター」に対する印象がこのようなものであったのかと思うと非常に興味があります。
音楽でいうとリヒャルト・シュトラウスの「ツァラツシュトラは書く語りき」の冒頭の部分はあまりにも有名で印象的です。そしてモーツアルトは「魔笛」において意味深長な「謎かけ」を用意しました。西欧において随分昔からゾロアスターは気になる存在であったようです。ルネサンスをもたらしたのはイスラムでしたがイスラムの文化的な背景にはペルシャ文化で、ペルシャの宗教はゾロアスター教(拝火教)だったのです。
ゾロアスター教は「拝火教」と言われるとおり「火」を尊びます。この場合「火」は色々な意味があります。まず「太陽」があります。太陽の光の「恵み」は何時の時代においても「ありがたいもの」「かけがいのないもの」です。闇とか夜に対して光輝く朝日は「神の恵み」です。さらに「火」は「酸化」の象徴でもあるのです。「火」は燃焼そのものですが「物質の酸化」そのものも表しているようです。古代の人々がどのように考えたのかわかりませんが、「燃える」という物質の変化を随分深く考えたようです。
今回の「魔笛」の最後の部分では「月」に代わって「大きな太陽」が舞台に登場し闇の世界から開放されます。またザラシュトラの城では多くの学者達が一生懸命難しい研究をしている様子を紹介していました。ザラシュトラを演じたバリトン氏は風貌こそ立派でしたが「声の出入り」が気になりました。でも怪しげで神秘的な様子は良く出ていたと思います。モーツアルトがザラシュトラの問いかけをどのように考えていたのか。また強大なザルツブルク教会の影響下にあったモーツアルトが「イシス」の神を登場させたことにどんな意味があるのか興味が尽きませんね。
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