KENの日記
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2007年04月25日(水) クリュイタンスのベートーベン

会社の仕事がピークを過ぎたので久しぶりの平日更新しています。通勤電車の中で「iPOD」で音楽を聴いています。会社の帰りの疲れた時には「名曲」を聞くと心が洗われる感じですね。今日はベートーベンの田園を聞きました。演奏は「クリュイタンス指揮のベルリンフィルの演奏です」。他にはワルターとカザルス盤が入っていますが、疲れたときにはクリュイタンスの「凛」として演奏がとても清清しく感じました。


クリュイタンスのベルリンフィルによるベートーベン交響曲全集は名演の誉い録音です。ベルリンフィルの初めてのベートーベン交響曲全集だということです。録音年代は以下の通りです。田園は合唱と並んでまず最初に録音されたようです。


第六番、第九番:1958年
第五番:1959年
第一番、第二番、第四番、第七番、第八番:1960年
第三番:1961年


フルトヴェングラーが亡くなりカラヤンがベルリンフィルの常任指揮者に就任したのが1955年です(私の生まれた年でもあります)。カラヤンがベートーベンの交響曲全集を録音するのが70年代と80年代の二回です。ベルリンフィルはカラヤンを迎えて、急激にカラヤン色に染まっていき「いわゆる」全盛期を迎えるのだそうですが、私にはこのクリュイタンスの録音は、カラヤン色に染まる前に、何とかしてフルトヴェングラーのベートーベンをステレオで残そうと考えた人達の遺産に思えて仕方ありません。それほどこの演奏は立派です。録音は古いですがその音楽は驚くほど立派ですし、何といってもベルリンフィルが上手い。


個人的な趣味ですが、カラヤンの指揮ではベルリンフィルの演奏が「滑る」ことがあると思います。テンポが速いこともあるでしょうが何か落ち着かない感じで居心地が悪いのです。それに比べ「クリュイタンス」の指揮では非常に安定していて「座り」が良いのです。これはオケの全セクションが非常に上手なことに加えて、中低弦がしっかりしていることと木管が飛び抜けて上手いことによるのでしょう。田園ではニ楽章で木管の本領が発揮されています。


さてここから難しいのですが「クリュイタンス」は「曲作り」においてどの程度指導力を発揮したのか。田園が録音された時代はフルトヴェングラーが亡くなってから3年しか経っていないのです。フルトヴェングラーの音楽はまだ楽団員の身体に十分染み付いていたはずです。私の想像ですがクリュイタンスはできるだけベルリンフィルにフルトヴェングラー流の演奏をさせたのではないかと思われるのです。1905年生まれのクリュイタンスは1958年には53歳。まだ若いです。自分流のベートーベンの交響曲を録音する機会がまだまだあるはずでした。その当時クリュイタンスはフランスNo.1のパリ音楽院管弦楽団の主任指揮者の地位を固めていました。慣れていないベルリンフィルで自分流の全集を作る必要など全くないと思います。しかし本当はフルトヴェングラーの音楽と非常に親和性があるということでクリュイタンスが選ばれたのかもしれません。


田園を聞いていると、フルトヴェングラーの天才的で強靭な構築力とクリュイタンスの丹精で謙虚な音楽に加えてベートーベン・フルトヴェングラーへの尊敬の念が重なって聞こえてくるようです。




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