スリランカの作家「スリヤクマラン」さんの小説「キラーリ・クロッシング」を翻訳しています。現在第三稿です。第一稿は単に英語を日本語にしただけ。第一稿では前編「です・ます調」で書いていました。第二稿はそれを読み直したもの。この間インド転勤になって余りはかどりませんでした。これでは仕上げに程遠いと思い、日本に帰国してから最初から読み直し、小説全体を「である調」に変えました。これが第三稿です。この第三稿を妻に読んでもらって、校正作業を進めています。現在A5版で171ページ。
小説の内容は「スリランカの内戦を原因とした愛する者の死」を中心としたものですが、タミール人の故郷の「ジャフナ」の自然を謳いあげた描写も非常に面白いものがあります。現在のスリランカは内戦(シンハラ政権とタミール人反政府組織の争い)で、ジャフナへ行くこともできないし、そこに通ずるA9国道も封鎖されています。しかし私がスリランカに居た頃はちょうど和平ムードが盛り上がり私はジャフナに2回旅行しました。有名なエレファントパスの周辺の景色も実際に見てきたし、ジャフナの素晴らしさを体験できたのです。その体験の思い出が「翻訳」を進める原動力になっています。
この小説でもうひとつ重要な柱があります。それはイギリスあるいはイギリスの「ロマン派の詩」です。作者のスリラクマランさんはイギリスのロマン派詩人特に「シェリー」の詩が好きなようで、シェリーの詩を幾つか引用しています。他には、オマール・ハイヤーム、ダンテ、ワーズワース、中国の古い詩などを引用しています。スリヤクマランさんは昔イギリスに留学していたので嘗てのイギリス特にロンドンのことにも触れています。ロンドンのスリランカ人社会の描写も大変興味深いです。
翻訳を終えた後のことはまだ何も考えていません。何とかして小部数でも出版できればいいなと思っています。
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