| 2006年01月26日(木) |
「中村屋のボース」 |
昨年出版された「中村屋のボース」。著者は「中島岳志」さん。中島さんは現在30歳。渋い話題に焦点をあてていて非常に興味深い本です。中島さんは大学でヒンディー語を専攻したので、インドの描写が生き生きしていて良いです。「R.B.ボース」はもう少し語られて良いと思います。
「インド独立」に関する脈絡で「R.B.ボース」はインドでは殆ど語られていません。というのも、彼は若くして祖国インドを離れ、日本からインド独立運動を展開したからです。さらに、インド独立の英雄は、インドではガンジーでありネルーなのです。自由インド軍を指揮して戦った「チャンドラ・ボース」でさえ忘れ去られようとしているのです。 さらに「インド」や旧イギリス植民地国には、矛盾しているように思えるけれどイギリスに対する「親近感」があって、大東亜戦争で「英・米」と戦った日本に庇護を求めた両ボースを「祖国の英雄」に列するには少し躊躇するところがあるみたい。従ってインドで「R.B.ボース」の本が書かれることはないのです。この本が英訳され、インドで出版されることを期待します。
この本の中で繰り返し語られている「アジアの心」は大切だと思います。西欧特にアングロサクソン文化が世界の中心的な思想であるとする風潮は今も非常に危ないです。インドブームの真っ只中でタイムリーな出版だと思います。「R.B.ボース」の考え方・行動を丹念に追って居て面白いですが、私には著者の「アジア主義」あるいは「宗教」に対する洞察に興味があります。今後そうした面での研究活動を進められることを期待します。また「スバシュ・チャンドラ・ボース」も書いて欲しいと思いました。
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