高校時代の担任に会いに、また例の面子で出かけた。 このA先生は生徒に対しては割合淡々とした人で、特に何かエピソードがある訳ではないのだが、一番印象に残る先生というとA先生なのだ。ただ単に大学に行かなかった私にとっての最後の担任だから、という訳ではなく、A先生自体がユニークな人だからだと思う。 A先生は定年前に退職し、悠々自適(に見える)な一人暮らしをしていらっしゃる。訪れるのはニ度目になる先生のマンションは相変わらずものすごく綺麗に片付いているが殺風景ではない。う、羨ましすぎる。ちなみにA先生は女性である。
先生は数年前、大きな病気をされた。独身であるということ、女性であると言う事、既に退職しているということ。私だったら不安で押しつぶされてしまうのではないだろうか。病を乗り越えた先生は相変わらずつやつやとした頬で、元気に山登りや旅行を楽しんでらっしゃる。中国には何度も、それも長期で訪れていらっしゃるらしい。一人旅も多い様子。物静かで抑制のきいた話し方、少女っぽくさえ感じられる潔癖な雰囲気、そんな印象とは裏腹なその行動力、その多面性に私は惹かれているのだろうか。
高校生の頃、私が密かに(いや、大っぴらに)ファンだったKという先生がいた。その先生がアフリカを旅した時の写真を見せてもらったことがある。放課後、数人でわいわい言いながら小さなアルバムをめくっていると、A先生が教室にやって来て一緒に写真を眺めた。 アルバムの最後のポケットに、プライベートなメモと言おうか手紙が挟まっていた。K先生はきっとその存在すら忘れているのだろうが、見える範囲の文面からすると、同居している(た)女性へ宛てたのか、受け取ったのか、という感じ。ちょっと読むのがはばかられる。けれどそのメモに一番興味を露にしたのがA先生だった。 「見てみましょうよ」と声を弾ませて。あの一たらしの俗っぽさがまた、不思議に嫌らしくなかった、そんな人である。 いや、結局広げて読みましたけどね、メモ。K先生ごめんなさい。
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