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■千十の風になって
2009年04月30日(木)
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祝日の今日の朝ぼらけ。銭湯に行きたいと嫁が言う。

「近所に露天風呂付きの銭湯があるのよ!」

そんな情報を近所の奥様から仕入れてきたらしい。その銭湯なら僕も知っている。

「そこはな、露天はひとつしかなくて、週代わりで男湯女湯が交替するから要注意だ」

「え、そうなの」

「ていうか前、お前に話したことあるぞ。覚えてないのか?」

「ええー」

一度僕が「面白そうだから行ってみようぜ」と嫁に言ったことがあるんである。その時の嫁の反応は

「あー」

「はー」

筑紫哲也ばりの気の抜けた生返事ばかりで、まるで興味がないようだった。なので行くのは諦めた。

「それを今になってなんだっ」

いかに嫁が僕の言うことを聞いていないかが分かった。

「あはは…は…で、でもR(5才の娘)も『大きいお風呂に行きたい』って言ってるからさ」

嫁はしどろもどろになっていた。まあこのことは銭湯だけに水に流そう。

僕は大きいお風呂じゃなくて裸の女の子がいるお風呂の方がいいんだけどなあ…と思いつつも

「Rとタク(3才の息子)も銭湯行きたい?」

「いきたーい!」

そういうことになった。

「で、今週の露天は男湯女湯どっちなんだろう?」

と嫁が言うので銭湯のサイトを見てみると

「今週は…男湯!いえーい」

「じゃあ行くのやめよっかな」

「ふざけんな!」

全員をその気にさせといてそれは許されぬこと。とっとと銭湯に向かった。嫁と一緒がいいと言うタクは嫁と女湯へ、

「お外のお風呂に入りたい!」

と言うRは僕と男湯へそれぞれ別れて入った。男湯と女湯を隔てる壁を指して

「あの向こう側にママとタクがいるんだよ」

と教えてやるとRは

「たっくーん」

と叫び、向こうからは

「Rちゃーん」

とタクの声が返ってきた。神田川のカップルかお前ら。

「お外のお風呂にいきたーい」

Rに急かされて露天風呂へ。街中の銭湯なので、狭くて回りも高い目隠しで囲まれていて開放感はあんまりないのだが、そよ風を肌で感じながら

「あ、お月様だ!」

Rと並んで空を見上げて湯に浸かることは結構気分がよかった。

しばらく「広いお風呂だわーい」とはしゃぐRと銭湯デートを楽しみ、充分暖まったので出た。服を着てからジュースでも飲むかな…と自販機を見てみると、そこに今話題のSMAPの広告ポスターが貼ってあった。

「このひと、つままっちゃった(捕まっちゃった)んだよね」

Rは目聡く草なぎメンバーを指差して言った。幼稚園児でもこの事件を知っているとは。

「裸になって何が悪い!」

銭湯での言動だったら何の問題もなかったのにねえ…自販機の横でポカリをグビグビと飲み干すフルチンオヤジを見ながらそう思った。

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