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■おすしとピーコ
2008年12月30日(火)
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しーすー。

久しぶりに寿司屋に行った。懐事情と娘・R(5才)と息子・タク(3才)が玉子と稲荷ぐらいしか食べられないので足が遠ざかっていたところ、嫁が日頃から寿司を食べたいと呪いのように呟くようになったので、それを不憫に思ったからである。

我が家が行く寿司屋となると、近所の通称「バイオレンス寿司」が定番である。この寿司屋は行く度に

「てめえ殺すぞ!」

座敷で客がケンカしていたり、カウンターで食っていると酔っ払いに絡まれたり、何かとトラボーに巻き込まれることが多い。北斗の拳に出てくる酒場のようなバイオレンスオーラが漂っているため僕と嫁はこの店をそう呼んでいる。

しかし久しぶりに店を運ぶと店内は改装されて小奇麗になっていて、Rとタクにはオモチャをくれたりして、以前のような危険な香りはすっかり払拭されてしまっていた。

「じゃあまず白身系を握って下さい」

「あいよっ」

板さんもさやわかである。

「あ、イクラも追加して」

「ハーイ、バーブー」

い、板さん。面白いじゃないか…。

「うまあ〜。うまあ〜。うまあああああ」

思う存分新鮮な海の幸を与えられた嫁は早速壊れた。僕も回転寿司にはない濃厚な魚の味わいと馥郁とした海の香りに感極まり涙が出そうになった。

それに比べてRとタクが食べているのは玉子と稲荷と納豆巻き。その落差に思わず呟く。

「なんだか僕ら、自分達だけいい物食ってる悪い親みたいだね…」

「モナちゃん(Rの幼稚園友達)はいっちょまえにトロだのウニだのガンガン食べるらしいよ」

「それは頼もしいけど恐ろしいね」

「子供が好きなメニューっていったら私らの時代はカレーとかハンバーグが定番だったけど、モナちゃんは大トロだって」

「スネオみたいにやな奴だね」

舌が肥えていないウチの子供達は玉子をパクパクと勢いよく食べる。その食いっぷりの良さを気に入ったのか、先程の板さんが何かとタクに

「ボク、おいしいかい?」

と声を掛けてくれる。そのうちタクがその板さんが通るたびに身を乗り出してじーっと見つめて「かまってオーラ」を出すようになってしまった。お前はナンパ待ちのギャルか。その板さんも忙しいのにわざわざ相手してくれていたのだが、ついテンションが上がり過ぎたのだろう、

「べろべろばー!」

とタクに大声でやってしまったものだから

「ぶわああああああ!」

虚を衝かれたタクはおお泣き。

「ああボクごめんねごめんね」

板さんも大慌て。

「いやいやいいんです。タク、お前がちょっかい出してるから悪いんだろ!」

「ぶわあああああ!」

板さんはもう一個オモチャを持ってきてタクにホイ、と手渡してくれた。タクはケロッと泣き止んだ。タカリ屋かお前は。

ともあれ、リニューアルしたバイオレンス寿司はすっかり危険な香りがなくなった訳ではなく、なんとなく危ない板さんがいることによってその伝統が少なからず残っており、僕は安心して寿司を食べることが出来たのであった。

あとは子供たちが寝静まった後、嫁に僕の「いなり」とか「タチウオ」とかを食べさせたいところである。

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