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■ウサギとドン亀
2008年10月25日(土)
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久しぶりに仕事から早く帰れた夜。家族とのふれあいを試みようと考えた。

「あれ〜パパだ〜!」

娘・R(5才)と息子・タク(3才)が珍しそうな顔をしてまとわりついてくる。珍獣扱い。そして

「ねえねえ、あのねえ。きょうねえ」

ふたりとも今日の出来事を一生懸命話してくる。同時に話しかけてくるステレオ状態。僕は聖徳太子ではないので聞き取るのが大変だが、聞いてやらねばならないだろう。

ただあまり喋っているとどんどん寝る時間が遅くなり、嫁の顔が徐々に凄みが増してくるので

「はい、そろそろ寝ましょうね」

と床に就くことにした。

「ねえパパ〜。お話しして〜」

「よし、じゃあウサギとカメのお話をしてあげよう」

物語を聞かせながら寝かせようという目論見であったが

「あータク。正座しなくていいから」

非常に礼儀正しく聞こうとするタク。非常に正しいが寝物語の趣旨を理解して欲しかった。物語も終わり、

「さ、寝るぞ」

おやすみ〜と今日の終わりを宣言すると、

「Rちゃんパパといっしょに寝る〜」

Rが僕にベタベタと甘えて来る。今宵もこうして抱き合って眠ることにしよう…。

ところが。

「あー!定期買うの忘れたー!」

通勤定期が今日で終わりだったのである。仕事帰りに買ってくれば良かったのに忘れてしまった。定期は僕の最寄り駅では買えないため、他の駅まで行く必要がある。今日中に買わなければ明日損してしまう…。

「Rちゃん、パパ定期券買いに行っていい?」

「ていきってなあに?」

「電車乗る時に駅でピッてやるやつ」

「えー」

そうだよねえ。やだよねえ。パパと寝る〜って言って甘えてる真っ最中だったのに。しかしRは

「いいよー。行って来なよー」

僕の背中をばんと叩いて送り出した。

「すまんね、R」

そんなわけで定期を買って帰って来た時にはもう全員寝ていた。翌朝、Rが

「ねえパパ、きのうね…」

昨晩の甘えが足りなかったのか、再びじゃれついてきた。

「きのうね、パパが行っちゃった後、ちょっとだけ涙が出ちゃったんだ…」

う、うおおおおおお。健気に僕を送り出しても、やはり寂しかったんだね…。

「ごめんね、R、寂しかったんだね。パパを許しておくれ…」

「うん。でもママとたっくんには内緒ね」

「よしよし、誰にも言わないからな」

ああ、定期を買い忘れるというマヌケなことをしなければ、そしてもっと早く買って帰ってくれば眠りにつく前に間に合ったのに。ウサギとカメの話をしたくせに僕がカメであった。

わ、私はドジでノロマなカメです!

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