←ちょっと奥さん、押してって!ラーメン屋で麺を啜る僕ら家族。
「そういえば毎週ラーメン食べてるね」
と嫁が言うので
「そういえばそうだな」
僕もこのことに気付いたのであった。先々週は栃木の実家で佐野ラーメン、先週は青山の「麺屋武蔵」、そして今日は練馬の和風汁そば「じゃんず」。そのうち苗字が小池になってしまいそうなくらい、確かに毎週ラーメンを食べている。
どうりで毎日ザーメンが出るわけである。
この日注文したのは僕がつけ麺、嫁が塩ラーメン、娘・R(5才)と息子・タク(2才)には魚粉系のラーメン。それぞれ違う味を楽しみたいという策略である。タクも慣れたもので、運ばれて来るやいなやすさかず
「らーめん、つけめん、ぼくいけめん!」
と叫ぶ。隣に座っていたカップルの姉ちゃんがぶほっと汁を吹いた。ラーメン屋でマーライオンを見れるとは思わなかった。
「はあ…うまかった」
一心不乱に麺を啜り、素直に「うまかった」と言える幸せな味であった。このラーメン屋に来て良かった。そしてこのラーメン屋をチョイスした僕は偉い。
「どうだい、おいしいだろう」
呪われたようにガツガツと食べているRとタクにも父の偉業を認めさせるべく聞いてみた。しかしそれがいけなかった。タクはニヤリと笑い、なんと
「おいしくなーい」
と大声で叫ぶではないか。隣に座っていたカップルの姉ちゃんがぶほっと麺を吹いた。ホントにすみません。タクは「おいしいかい?」と聞くと必ずわざと「おいしくない」と天の邪鬼に答えることを忘れていた。
「そ、それだけ食べといておいしくないわけないだろ!」
店の人と周りの客の手前、わざとらしいがフォローしておかなければ体裁が繕えなかった。それでも店の人はさすが商売人である。会計時に
「これお子さんにどうぞ。かわいいですね」
ペコちゃんのキャンディーをRとタクにひとつずつくれた。もしかして褒め殺しか。いやアメ殺しか。
「たっくん、おいしくないなんて言っちゃダメでしょー。作ってくれる人は一生懸命なんだよ」
ラーメンはカツオだし。
塩ラーメンは鶏ガラだし。
そして息子には…ダメ出し。
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