狼森、笊森と盗森

2005年04月16日(土) 25話後編の日

25話後編です
泣いても笑っても次回で最期ッス><
全力でがんばります!!


Angels Song…

その歌を最初に歌ったのは誰だったろう?
その歌を最初に聞いたのは誰だったろう?

聞こえるはずのない、翼の音を撒き散らし
光の粒子の羽を降らせながら
6色の紋章機が銀河を駆け抜ける
何の打ち合わせも、計算もない
だが、不思議と…自分以外の全員も同じことをしているのだという自信があった
その証拠に、6機は乱れることなく、同じ軌跡を描く
それは、背中を預けているような安心感へとつながっている
みんな一緒だ
想いも
願いも

あいたい

ただ、もう一度
その笑顔にあいたい
たったそれだけの、祈り
そのために飛び続ける
長い戦闘で、飛んでいるのが不思議なくらいの紋章機
光の翼も、バラバラと崩れ、雪のように抜け落ちていく
それでもこうして飛び続けていられるのは
みんな一緒だから
自分は一人じゃないから
一人ならきっと諦めてしまった
だけど…
ランファがいる
ミントがいる
フォルテがいる
ヴァニラがいる
ちとせがいる
シヴァが、ノアが、シャトヤーンが、ルシャーティが
エルシオールのみんなが
全ての想いが、形になって、この翼になった
たくさんの人たちのチカラで、自分たちは飛んでいる
この翼は御伽噺のように、なくなることはない
大丈夫
そう、信じている
戦うのは嫌いだ
それでも、今日まで戦ってこれたのは
『あきらめるな』
彼がそういって、自分たちを信じてくれたから
だから、今度は
自分たちが、彼を信じる番なのだ
彼は、いや…彼らはたぶん、今、この瞬間も、自分たちを信じてまってくれているはずだから
想い返すと、それは最初からだった気がする
エオニアのクーデターのとき
なんの説明もなしにいきなり戦闘に巻き込んだときも
黒き月で紋章機が動かなくなったときも
半年前
ネフェーリアとの戦いの時だって
いつだって、それは最初から変わることなく
絶対に揺るがない
自分たちを信じてくれる、瞳
そんな彼が大好きだった
けんかや、すれ違いもあった
でも、その何倍も、楽しい時間を過ごしてきた
いつだって、笑顔でいてもらいたいと思った
いつだって、幸せになって欲しかった
幸せ
それは
いつだって
みんなと、同じところにあるから
単純で、簡単で、それでも何よりも大きい幸せ
本当の幸せは、そこ
幸せってそんなものだとおもう
私が一番、いたい場所、私が一番、好きなもの
私が一番いたい、この場所。ここが私の幸せ
そして、ずっとそばにいたい人たち

辿り着く
幸せを迎えにいける場所へ
他の誰でもない
自分自身のために、この場所に、立つ

「バーンとやっちゃいます!」

合図もなにも、ない
だが、直感でココだと、わかった
ラッキースターのトリガーに手を伸ばす
ぎゅっ
祈るように、力をこめて、握り締め
そして

「ハイパーキャノンッ!」

ミルフィーの言葉とともに、光の路が走りぬけた
ラッキースターから放たれた、ピンクの光に真っ赤な閃光が加わる
「ブッ飛べぇ!アンカークローッ!!」
それは、カンフーファイターの2本のワイヤーアンカー
さらに
「私におまかせをっ、フライヤーダンスっ!」
トリックマスターから蒼い輝きが一つにまとまりながらあわさる
「いくよぉ!ストライクバースト!!」
紫の高エネルギーの塊は、ハッピートリガーから
「力を貸してっ、ナノマシン」
4色の光に、ヴァニラの祈りとともに放たれた翠のナノマシンが追いつき
「いきますっ、フェイタルアローっ!」
紺色に輝く光の矢が、全ての光を導くように、その一点に命中した

銀河が揺れる

「くぅっ」
衝撃に手を離しそうになった
だが
「負けません…」
ぐっ
握りなおす
血が沸騰しそうになる
ギシギシと骨が悲鳴をあげる
それでも
この手だけは、離さずに
重い
だが、この重さは、大切なものの重さだ
ピッ
皮膚が裂け、血が吹き出る
重圧が、増す
意識が遠く、とおく…
手放すな!
自分を叱咤し、両手で、包み込むように、握り締める
爪が食い込んで、新たな血が雫となって飛んできた
手放すな!
重いのは当たり前だ
これは、大切なものの重さだから
苦しいのは当然だ
これは、幸せの苦しみだから
負けるわけにはいかない
自分の大好きな人たちが
そして、自分を大切にしてくれる人たちが
みんなが笑って過ごせる明日のために
それ以上の何も望まない
みんなと同じ時間を生きたいだけ
願い
たったひとつの、純粋な、そして、酷くわがままな

Eternal love… ♪

歌が聞こえる
”…♪軌道、はずれる…こと、さえ…”
ミルフィーは朦朧とする意識の中、確かに、その歌を聞いた
歌っているのは…
「ラッキースター?」
答えるようにラッキースターの輝きが増す
心なしかかかっていた重圧が、軽くなった気がして
「力を…かしてくれるの?ラッキースター?」
つぶやき
その問いに答えるように、ラッキースターの輝きが、増す
まぶしい
けれど、優しい光
歌は途切れることなく、聞こえる
ラッキースターから
そして…

カンフーファイターの中で、ランファもその光に包まれていた
同じ歌が聞こえる
いつかと、同じ
”恐れぬっ勇気!あつくっ、ゲッタァウェイ!”

「全然うまくなってないじゃないっ、オンチ!」
”なんだとぉ?!ランファ・フランボワーズ!”
「せっかくのカンフーファイターの歌が台無しじゃないっ」
ランファが拳を握り締めかけ
”馬鹿野郎!その手を離すと終わりなんだろうがっ!”
「っと、いけないっ」
ギネスに言われ、思い出す
慌てて握り締めた
”ったく、しっかりしろ。それでもこの俺の永遠のライバルか”
「あんたのライバルになんて、なった覚えないわよっ!」
”なんだとぉ”
二人は操縦桿を握り締めたまま、器用にケンカを始めた

同じ頃、ミントのトリックマスターでも
「永久の…静寂の…なか、で〜♪」
歌声が聞こえた
”心、目覚めて…向かう、世界〜♪”
二人分
その響きはコックピットを満たし
トリックマスター全体を包み込む柔らかい光に変わっていく
「あら、ランファさんったら…こんなときにまでケンカしてらっしゃいますわ」
ピクリと自慢の耳を動かして、ミントは小さく笑った
”ふん、ギネスは熱血バカだからな”
リセルヴァは諦めたような声で溜息を一つ

「♪月にぃみちーびかーれてー 神秘のぅやみーを抜けるぅぅぅ」
ハッピートリガーのコックピットでは、演歌調
”あいかわらず、だな”
やれやれと、呟くのは
「悪かったねぇ」
レッド・アイにむかって、フォルテは笑いながら
「だけど、気持ちの良いもんさ。ほら、あんたのお仲間も歌ってるよ」
”あぁ…”
同じ歌が聞こえる
”♪深いうみのように…So…つつみーこんで…”
彼が歌うのを確認すると、フォルテは満足そうに笑い
「♪えたーなるっらぶ」
歌い続ける

歌い続けよう
この歌が
この声が
この想いが
貴方に届きますように
「♪君ぃの声が…響くぅ、この…銀河で…」
ハーベスターがヴァニラの歌にあわせて、輝きを増す
「あぁ、ヴァニラさん…素晴らしい歌声だ…微力ながら私も…」
”♪ほらっかがやーくー未来の天使ぃ〜”
ノーマッドよりも先にヴァニラとハモったのは
「なんてことを、私のヴァニラさんと一緒に歌おうなんて恐れ多いにも程がありますよっ、ベルモットさん!」
”面白いなぁ、このピンクの物体。体があったら分解して構造とか調べるところなのに、惜しいなぁ”
ぐるぐるの瓶底眼鏡をキラリと光らせて、ベルモットは楽しげに笑う
「ちょっとー、ピンクってなんですか、ピンクって!うわーん、ヴァニラさ〜ん」
「歌って。今日はみんなに合わせて歌わないと、ご飯の食べられない日です」
「…はい…♪エターナル…ドリームッ」

光と歌に溢れるシャープシューター
”ちとせ”
ボロボロのちとせの手を、優しく包み込んだ、大きな手
大好きだった
大好きで
嫌われたくなくて
いつだって良い子にしていた
ぬいぐるみを
私が欲しいといってねだった犬のぬいぐるみを
届けてくれた
責任感の強かった、ひと…
自分が死んでも
わたしに、ぬいぐるみを…
優しい
大好きな
わたしにぬいぐるみを渡してくれる、大きくて、優しい手
「父さま」
”がんばれ、ちとせ”
涙が溢れた
それでも
ちとせは、涙を拭わない
そのかわりに、笑う
最高の笑顔
「♪胸にだいて…翼…ひろげたなら…」
答える代わりに、ちとせは歌う
「♪きっと…歴史が…生まれる」
大丈夫
自分は、一人では、ないのだから

何度でも
翼を広げ
宇宙に歌う

そして
「カミュさんっ」
”やぁ、ハニー。元気かい?”
「どうして…」
”そうだね、いうならば、紋章機の力…かな”
「ラッキースターが…」
”そう。ノアがね僕たちのデータをそれぞれの紋章機に戦闘データとして加えてくれたのさ
 君たちの役に少しでも立つように、とね”
「ノアさん…」
”光の翼と、空間すら切り開こうとするエネルギーが、こうして僕たちを実態化させてくれた”
ポタリッ
涙がこぼれる
カミュは、彼にしては珍しく、少し困ったように笑うと
”泣かないでおくれハニー…どんな形にしろ、僕は…僕たちは君たちと再び出会えてとても嬉しいのだから
 さぁ、前をむいて…もうすぐだ…君になら、君たちになら聞こえるはずだよ”
「…はいっ」
ミルフィーは笑顔で、涙を吹き飛ばすと
歌いながら真正面を見据えた
6色の光の道
彼へと続く路
「♪エンジェル…in…まい・はーと!」

歌は歌を呼び
そして
いつしか、銀河中が歌っている


Eternal love… ♪


歌う…
「っ!」
ミルフィーは宇宙を見た
生まれたばかりの星空
閉ざされた世界
だが
それは宇宙から聞こえたのだ
かすかに
でも、たしかに
「♪月に、みまもられて…気高く…生きて…ゆける…
 時間は…砂のように…So…ながれる、けど…」
きこえるもの
聞こえる
漆黒の銀河を駆け抜け
絶望の空間を超えて
届く
君のために歌う
「Eternal love…♪」

Angels Song…

何度でも
翼を広げ
宇宙に歌う

天使たちのシンフォニー



音もなく
光が溢れた
それは、歌にあわせて輝きを増す
白い光
酷く懐かしい

「♪君に逢えた…蒼い、この…銀河で…」

まぶしい
けれど、優しい光

「♪いま信じて…飛び立つ…天使〜」

歌声すら、白い光に塗りつぶされていく
だが、その光は決して強いものではなくて…
どこか、不思議な柔らかさと優しさをもった
まるで、月灯りのように穏やかな光

「♪エターナル…ドリーム…」

白く塗りつぶされていくラッキースターのコックピット
ミルフィーは、その膨大な輝きの中で歌を聴く
その声を
その歌を
知っている

「♪光…浴びて…翼…広げたなら〜」

その歌を最初に歌ったのは誰だったろう?

私?
ランファ?
ミント?
フォルテさん?
ヴァニラ?
ちとせ?

その歌を最初に聞いたのは誰だったろう?

カミュさんたち?
エルシオールのみんな?
シヴァさまやシャトヤーンさま?
ウォルコット中佐たち?
宇宙クジラ?
紋章機?

「♪いつか…軌跡は…始まる〜」

「Angel in my heart…♪」



それは、星空の出会いから始まった物語



「すいません、ちょっとお聞きしてよろしいですか?」

ミルフィーは通信を一つ、入れた

『はい?』

返事が一つ

「そちらはトランスバール皇国軍儀礼艦エルシオールで間違いありませんか?」

『あぁ、間違いないが?』

返事が二つ

「それじゃぁ、タクト・マイヤーズ司令官って方はいらっしゃいますか?」

『マイヤーズは…俺だけど…』

タクト・マイヤーズはいつもと変わらない笑顔で

『ミルフィー』

名前を呼んでくれた

「タクトさんっ」

『ただいま』

「お帰りなさい、タクトさん」

銀河の片隅
星空の下で出会った一人の青年と、6人の天使たち



Angels Song…

何度でも
翼を広げ
宇宙に歌う

天使たちのシンフォニー

Eternal Love…♪

永遠の愛をこめて
光の天使より…



2005年04月15日(金) おまたせしました…の日

すいません、お待たせしましたっ
25話をお届けいたします><!
(日記上では翌日ですが、どうしておまたせしました。なのかは
 深く追求しないで下さい><ノシ)
そしていつもどおり、真っ二つです…(面目ない;)


第25話「EternalLoveピューレジュレ」

Angels Song…

何度でも
翼を広げ
宇宙に歌う

天使たちのシンフォニー


人々は空を見上げていた
その優しい白光が消えた後も、ずっと
ずっと…

誰も口にはださなかったが、心のどこかで理解していた
銀河が救われたことを
そして
その代償として、地上より永遠にいなくなった人たちがいるということを
素直に喜ぶことはできなかった
だから
未練がましく空を見上げる
彼らの姿を探すように
だが、無情にも、空は宇宙…
かわることのない星の光だけが瞬くだけで
不安で心が押しつぶされそうになる
それでも
瞳を反らすことなく、宇宙を見上げていられたのは

「あきらめるなっ!」

最初に叫んだのは
「アルモ…」
ココが隣にいる相方を見る
アルモは瞳に涙をためながら、空を見上げ続けていた
「あきらめないもん、クールダラス副司令は、絶対に還ってくるもん…」
反らされない瞳
「…うん、そうだね」
ココは一つうなづく
「きっと帰ってくるよね、クールダラス副司令も、マイヤーズ司令も」
そして、アルモと同じように空を見上げなおした
二人の姿に
「そう、だよなぁ」
パトリックが呟く
「あの人のことだもんなぁ、へらへら笑って”ごめんごめん”とかいいながら戻ってくるよな」
ジョナサンがうなづく
「そうだな!だって、あの二人は、俺たちの司令官で、あの連中の副司令なんだぜ!」
ガストが少し大きめの声をあげた
それは、音や光よりも早くその場にいた全ての人々の心に広がっていく
自分一人では信じ抜けなかった
だが
自分たちは一人ではないのだ
「そうですねぇ〜」
コンビニ店員が三人のことばにうなづく
その隣では、クレータ班長が空を見上げた
「えぇ、お二人はきっと、かえってきますよね」
「あんたたちも、たまにはいいこというじゃないか!」
バンッと、ガストの背中を叩くのは食堂のおばちゃん
他のクルーたちも、同様にうなづき、空を見上げる
「それに…」
パトリック、ジョナサン、ガスト
三人が空を見上げる
みんなも、つられて、空を見上げた

「それに、あそこにいる連中は…絶対にあきらめねぇ!」

連中のいくところ、かならずといっていい程、この三人の影があり
敵だったり、敵だったり、ごくたまに味方だったり、敵だったり、ただの野次馬だったりしながら
今日もこりずに悪巧みを繰り返し
意識、無意識かかわらず連中に邪魔をされては、玉砕する日々を暮らしてきた3人の言葉
その言葉が聞こえたのか…

『はいっ!』

返事は空から
いまだ、その光の翼を広げる、6人の天使たちから

「あきらめません」
「そうよ!諦めてたまるもんですかっ」
「えぇ、お二人にだけ良い格好はさせませんわ」
「そういうことだねぇ」
「…はい」
「必ず、タクトさんもクールダラス副司令も、連れ戻してみせます!」

彼女たちの気持ちに応えるように
紋章機の光の翼が輝きを増す
そこへ

『みなさんっ!』

息をはずませた通信がひとつ
それは
「ルシャーティ?」
モニターに移っているのは、淡い金色の髪の少女が
「ノアさん」
二人
ルシャーティを軽く押しのけて、ノアがモニターの中心に移動する
そして
『時間が惜しいから、簡単に手順だけ説明するわ、一回しかいわないから心して聞きなさい』
「え?」
『今、エルシオールの消失ポイントを検索しているの、場所が確定次第、全機でそこを集中攻撃して』
「エルシオールの…」
「消失ポイント?」
ノアの言葉に、全員が宇宙に視線をむける
むけられたのは、かつてクロノ・クェイク爆弾のあった場所
『そこには、まだ閉じきっていない”次元の切れ目”があるはずよ』
「次元の切れ目…」
『そ。空間と空間の境…私たちのいる銀河と、エルシオールが新しく作った宇宙を繋げる、ね』
「それって…」
「タクトさんたちを、助けられるってことですか?!」
『まだ閉じきっていないその次元の切れ目をこじあけられれば、ね』
ノアは溜息を一つ
続きをルシャーティが受け継いだ
『ただ、エルシオールの作った次元の切れ目は、ある特定のエネルギーでしか衝撃をあたえられないんです』
「特定の…エネルギー…それは、つまり」
『はい。エルシオールと同じクロノ・ストリング・エンジンから生み出される、エネルギー…』
「紋章機!」
『そうです。ただ…』
そこまでいって、ルシャーティの表情が曇る
だが、彼女は一瞬言葉をきっただけで、改めて視線をあげると
まっすぐに全員をみながら
『ただ、空間を再び開くエネルギーがどれほどのものかは…』
想像も、つかない、と
だが
「だいじょーぶだよ」
『フォルテさん…』
「あの二人を連れ戻せるんなら、なにがあろうと、あたしゃ、この手を離さない」
「そのとおりです!」
『…それも、問題なのよ』
「え?」
『これはつまり、エネルギーとエネルギーのぶつかりあい。もちろんその衝撃は、紋章機にもある程度返ってくるわ
 衝撃に負けて手を離せば、エネルギーの放出は止まる。仮にあんたたちが手を離さなくても、途中で紋章機が大破する可能性もあるわ
 …もし、大破しなかったとしても、その後…紋章機は使い物にならなくなる可能性が高い…』
「ノアさん、心配してくださってありがとうございます」
ノアの言葉を、ミルフィーユが遮った
ノアが顔をあげる
笑顔とぶつかった
「でも、大丈夫です!わたし、運がいいんです!」
「そーよ、ミルフィーの運は凄いんだから」
ミルフィーの言葉に
ランファが太鼓判を、押す
と、そこに一つの通信が、割り込んだ

『エンジェル隊!』

それは
「シヴァさま!?」
6人、そしてノアとルシャーティも驚く
『話は聞かせてもらった』
シヴァは、であったときからかわらない、皇族たる表情で全員を見回す
そして
『私からも頼む、タクトを…あの二人を連れ戻してくれ!』
叫ぶように、その言葉を口にする
ノアが釘を刺した
『シヴァ、いいの?…成功しても、失敗しても、紋章機はもう二度と使い物にならないっていってるのよ?』
シヴァは、迷うこともせず
『かまわぬ!それに、紋章機はお前たちの願いを叶えることを望んでいる』
言葉に、6色の紋章機が頷くように光を増した
シヴァはそれを確認すると、微笑んで
『この1年間、人々のために戦ってくれたお前たちだ…最後にお前たち自身の願いを叶えて何の悪いことがある?
 たとえ、この銀河中が許さなくても…この私が許す』
「シヴァさま…」
「ありがとうございます!」
『タクトとクールダラス…そして、エルシオールを頼む』
「はいっ!」
はぁ
溜息が、ひとつ
『ほんと、あんたたちって…』
ノアが呆れた顔をしていた
しかし、その表情はどこか優しい
彼女はもう一度、溜息をつくと
『さぁ、時間がないわ、今のうちに、いつでも最高の一撃が出せるようテンションの調整をしなさい』
「ノア…」
『あいつらを助けたいんなら、早くっ!』
それは
それは、ノア自身の言葉に聞こえた
だから
「了解っ」
6人はなにもいわずに、笑顔を返し、銀河を駆ける
ノアはそれを確認すると
一言だけ
『帰ったら、ルシャーティに感謝しなさいよ。ほとんど一人で、あいつらを助ける方法を見つけてくれたんだから』
付け加え、通信を切った

空を見上げる
翼を広げた6色の光
ピンク、赤、青、紫、翠、紺…
遠くからでも、誰が誰なのか、わかってしまうほど
まるで太陽のような輝きを放つ、光たち
「頼んだわよ…」
ノアはその光を見つめながら、呟いた
「きっと、彼女たちなら大丈夫です」
そのノアの背中に、声
言葉は力強く聞こえて
「…そうね」
ノアはうなづく
そして
「さぁ、もう一つしなきゃいけないことがあるわ」
気を取り直すと、再びルシャーティと作業に取り掛かった

「くそっ、どれがその”消失ポイント”なんだよ!」
ココモがコンソールパネルを叩く

「ココモ、落ち着いてよく探すんだ」
マリブの言葉に
ココモはぎゅっと拳を握り締めると
「わかってるけどよ!」
『ココモ、マリブ!こんなときにまで口論しないの』
二人の間に、通信が一つ
「メアリー少佐…だけど…」
『だけどじゃありません。いい?貴方たち二人は、今まで、あのエンジェル隊と互角に張り合ってきたのよ』
「…」
『そんな貴方たちに、できないことがあって?』
「メアリー少佐…」
「そう、ですよね…あの人たちのフォローができるのは、どんなに宇宙が広くたって、僕たちだけですよね」
『そういうことよ』
にっこりと、メアリー少佐は彼女にしてめずらしく、優しい笑顔を浮かべた
ココモとマリブが、互いに笑いあう
そして
「よっしゃ!必ず見つけてやるぜ!」
「うん!ツインスター隊の名にかけてね!」
双子は再び、宇宙を駆け出す

艦橋でウォルコットは自慢の髭をいじりながら
勢いを取り戻し、飛び出していった双子機を見送った
と、そこに
『ウォルコット…すまん…わしは……』
それはルフトからの通信であった
ウォルコット・O・ヒューイはルフトが口を開く前に
「知っていたんですよ」
一言
「知っていたんです。あの子を…あの人からお預かりしたときに言われましたから」
その表情は、遠くを見つめる優しい眼差しで
思い出すのは、優しい人
”タクトをお願いね、ヒューイ君”
彼女は、年老いて、病の床に伏せながらも
出逢った頃と、なに一つ変わらない、花が咲くような明るい笑顔で
”あの子は…なにか大きな運命を背負っている…そんな気がするの”
超新星の白き狼…そう呼ばれる以前、まだ新人のときに出逢ったときから
”私ね、人を見る目は確かなの。ヒューイ君はきっと凄い軍人さんになるわ”
そういって、自分を信じてくれた、人
そんな彼女の言葉だから、なんの根拠もなく、そう信じていた
信じてきた
彼女はもう、地上より永遠にいなくなってしまったけれど
人をまっすぐに見てくれた眼差しと、花が咲いたような笑顔
それは、受け継がれたのだ…彼に
自分に残された…否…託されたモノ
逝ってしまった彼女の代わりに見届ける
彼の運命を…
それは、自分の役目なのだから
「親という字は、木の上に立って、見ると書きます…親はただ、子供を見守る者…」
辛いこともあるだろう
苦しむこともあるだろう
だが、転んだ子供を抱き起こすようなことはせず
信じて待つ
自分の力で立ち上がり、再び、自分の足で歩き出すのを
そして自分に追いついたその時は、精一杯の力でほめてやる
その時を…
ただ、信じて
『ウォルコット…』
呟かれる名前に、ウォルコットは笑顔を返す
「ルフト…私は信じているんですよ、彼らの絆を…そして、彼女たちと彼の運命を」
何度も辛い試練を乗り越えた、その力を
それは、きっと、偶然だけではないのだから
『そうじゃな…ならば、わしも信じよう』
ルフトもついに観念したように、笑った
通信をきり、空を見上げる
どこまでも続く、無限の、大宇宙
光り輝く翼が、駆ける…



その歌を最初に聞いたのは誰だったろう?



キュォオオオオオオオオッ
銀河中に響き渡る、咆哮
だが、それは決して耳に痛いものではなく…
「うた?」
ラッキースターの中から、ミルフィーは首を小さくかしげ
その音の発生源を探した
漆黒の空
群青の闇の中を、何かが光の尾を引きながら泳いでいる
優しい歌とともに…
「宇宙クジラ!」
何万年という刻を、真空の宇宙空間で生きてきた、完全生命体
普段は、エルシオールのクジラルームでしか見なかったその巨大な体が、ゆっくりと空を飛ぶ
太陽の光エネルギーを受け、あまったエネルギーを時々、潮の変わりに頭上から吹いて
きらきら
光の潮は、七色に輝きながら、宇宙を舞う
キュォォオオオオオオッ
優しく歌いながら
ふいに
ミルフィーは気づいた
光が渦をまく
ぐるぐる
きらきら
ぐるぐる…
きらり
まるで台風の目のように、宇宙クジラは、そこを中心に飛ぶ
光は渦をまき、その真ん中を形作って
「そこに…タクトさんがいるの?」
ミルフィーの呟きとともに
通信がはいる
『そうです、ミルフィーユさん!』
「クロミエ!」
『宇宙クジラの指す場所が、路です』
宇宙クジラのパートナー、クロミエはいつもの穏やかな笑顔
だから
ミルフィーも、いつものように笑顔で応えた
「はい、あとはまかせてください!」

通信を閉じる
聞こえるのは、宇宙クジラの歌う唄だけ
ミルフィーは一つ深呼吸
そして
「タクトさん、レスターさん…エルシオール、かならず助けます!」
決意とともに、歌の中心へと向け、翼を広げた



2005年04月14日(木) あと2話です…の日

この話の夜ver(笑)をかきたくて仕方ないので、そのうち描きます。
なんにせよ、エオニア×タクトLOVEということで(レスターごめん)
そうです。今回はエオタクなんです。(ちゃんとレスタクもありますが)
まぁ、もともとこの日替わり連載事態、突発読みきりだったエオタクから
始まったものなので。原点回帰といえば、そう。
それにしたって、本当にこのシリーズはなんでもありですね

第24話「Final dish AngelicSymphony (後編)」

夢を見た…

懐かしい夢
青年は優しい人だった
その優しさ故に非情であった
そして愚かでもあった
好き、だったのだろうか?
…少なくとも
嫌いではなかったのだと思う
運命は二人を残酷に出会わせはしたが
きらいにはなれなかったのだ

『タクト…』

夢の中
彼の人は優しく微笑む
”あぁ、これは夢だ”
意識のある夢というのはよくあることだ
だからこれも夢なんだ
見知った顔がいる
手を伸ばされて
冷たい手がひんやりと…心地よい
『…タクト』
彼は、低い、よく通る綺麗な声で、俺の名前を呼ぶ
冷たくて優しい声
その声に聞き覚えがあった
いや、忘れることなんて、きっとできない
黒き月で、それでも自分を思ってくれていた優しい声

これは、夢だ
そんなことはわかってた
けれど…
俺はその冷たい手をとる
彼は少し驚きの表情をみせ
漆黒の礼服
滑らかな黒肌
流れる金の髪
そして…瞳
意志の強い綺麗な…
それは、生前となんら変わることなく
残された人間のわがまま
俺は弱いから…きっと、本当に貴方を失うことには耐えられなくて
みることはできなくても、傍にいてくれると安心したいだけで
これは俺のわがままだ
なぜなら、今こうして、俺のそばにいてくれる
その人は…
…いや、今だけじゃない、ずっと…ずっと、俺のそばにいてくれた
そのひとは…

「エオニアさま…」

呟きとともに、軽いキスが落ち
夢は掻き消え、眠りの終りを告げた

だが
「捕まえましたよ」
タクトはにっこりと微笑んだ
『…知って、いたのか?』
掴んだ手は離さないまま
「はい…知ってましたよ?…ずっと、貴方が俺のそばにいてくれたこと」
あのクーデターのあと
その優しい視線は、変わることなく自分に注がれていたことを
半年の辺境惑星調査の帰りにみた夢…
黒き月のコアを拾ったとき…
ちとせに気絶させられた自分を起こしてくれて…
エンジェル・スラップのときには護ってくれた
「確信が持てたのは、ヴァインに連れて行かれそうになった時ですけれど」
”去れ”
目の前で弾かれたヴァインの手
”去れ、タクトに近づくな”
ヴァインの手を弾き、俺のそばにいてくれる
そのひと…
『そう、か』
エオニア・トランスバールは、諦めたように小さく笑った
タクトはその笑顔に笑顔をかえしながら
「誕生日プレゼント…ありがとうございました」
『いや…大したことをしてやれなくてすまない…』
「いいえ、あれは…なによりの贈り物です」
『…タクト』
「さっき…エルシオールから手が離れそうになった、その最後の一瞬…
 離れないように上から握りこんで下さったのもエオニア様ですよね?」
『…あぁ』
「そんな風に姿は見せてもらえませんでしたけれど…あなたがずっと傍にいてくださってるって知ってましたから
 それがどんなに、心強かったか…特別なものなんていらないんです、ただ…ただ俺は…一緒にいられるだけで…」
他には何も望まないから
そらされない瞳
と、そこに

「みゅーっ」

飛び込んできた一匹の黒い物体
「子宇宙クジラ!」
「みゅーみゅみゅーみゅぅ〜」
ぱたぱたぱたっ
子宇宙クジラは、勢いよくタクトの腕のなかにもぐりこむと
「みゅーっ!」
目の前にいるエオニアにむかって威嚇をはじめた
その姿はさながら、悪い竜からお姫様を護る騎士のようで…
『なんだ、このボールのような生物は』
あからさまに気に入らないという表情でエオニアが一言
「みゅ!」
その言葉に怒りながら子宇宙クジラ
タクトが笑う

「しかし、まさかこうも堂々と浮気をされるとは思わなかったな」
背後から溜息とともに、あきれた声
「レスター!」
タクトが名前を呼ぶのと同時に
「うわっ」
長い腕が、タクトを抱き寄せた
「まったく、油断もすきもない」
「お、おいレスター!俺、浮気なんてしてないぞっ」
じたばた
がっちり抱きしめられた姿勢で、苦しげにタクトが抗議する
レスターはその言葉には耳をかさず
エオニアを睨みつけると
「まだ成仏されていなかったんですか?エオニアさま」
嫌味たっぷりに一言
『…タクトが心配でね。おちおち成仏もできないのだよ』
だが、エオニアもそこは慣れたもので、負け時と言い返す
「タクトには俺がついているのでご心配なく」
『それが心配だといっているのさ、現に今回も随分と辛い想いをさせたろう』
ぐいっ
「うわぁっ」
今度はエオニアがタクトを抱き寄せた
『タクト、こんな心の狭い男が相手だと、これからも苦労するよ?』
「タクトッ!戻って来い!」
ぐいっ
「っ痛…レスター、ちょっ…」
『酷い男だな、タクトが痛がっているじゃないか』
「貴様が離せば問題ない!タクトっ、お前まさかそのままその男と地獄まで一緒にいくつもりじゃないだろうな?」
ぐいっ
「…うわっ、エ、エオニアさまっ…」
『誰が地獄落ちだ、誰が!』
「貴様だ、貴様!他に誰がいるって言うんだ?!」
ぐいっ
「…っ…っ〜っ」
「みゅ、みゅー…」
右に左に綱引きされるタクトを、子宇宙クジラが心配そうに覗き込む
ぐいっ
『タクトっ!』
「タクトッ!」
二人の声が重なった
それと、同時に

「うるさーいっ!!」

怒り爆発
「二人とも大人げなさすぎ!っていうか、痛いって俺さっきからずっといってるのに!」
ふたり、正座させられ、延々と説教されること、数十分
「まったく…!」
「…悪かった」
『…すまない』
不幸中の幸いといおうか
この光景をみたら卒倒しそうな人間がいあわせなかったことだけが救いというか
うなだれた二人の様子に、タクトは一つ溜息をつくと
「怒ったらお腹すいたなぁ…食堂にいけばなにか食べ物あるかな」
「きゅー」
「子宇宙クジラはなにがたべたい?」
子宇宙クジラをつれて、ブリッジをあとに、した

食堂
ずるずるずる…
タクトは自分で作ったインスタントの宇宙塩ラーメンを食べながら
「やっぱり、エルシオールに残されているのは俺たちだけかぁ」
「あぁ、生体反応では人間が2人、動物が1匹となってる」
この短時間でレスターがまとめた報告を聞いていた
レスターの目の前には、同じく自分で作った宇宙エビチャーハンが湯気をたてている
「生体反応なし…ってことは…」
『私は、このエルシオールに残ったデータの幽霊のようなものだ』
「エオニアさま…」
小さく呟き、タクトはエオニアをみる
その顔には変わらない微笑が
『私は何度かこの艦に人としではない形でアクセスしたからね、それがデータとして残っているのだろう
 司令席に座っている者のテンションによってこの艦の中でのみ干渉が可能になる』
「H.A.L.Oシステム…か」
『光の翼と、別の空間を作り出すほどのエネルギーがこうして私を実態化させた
 今はまだエネルギーが残っているのだろうが、なくなれば、消える…』
エオニアはそこまでいうと
手を伸ばし、タクトの頭をゆっくりと撫でた
『そんな悲しそうな顔をしなくてもいいよ、タクト…これは、軌跡のオマケのようなものだ
 君が私に逢いたいと願ってくれたから…私はこうして再び君に触れられる…これ以上の喜びはない』
優しく、ゆっくり、愛しく…
流石のレスターも、それを止めるようなことはしないで
「さてと、問題はこのあとどうするか、だな」
「まぁ、俺たち二人と子宇宙クジラだけならなんとか生きていけるんだろうけれど…」
「自給自足でもしながら、帰る方法を探すか…」
溜息をつきながら、レスターが宇宙エビチャーハンを口に運んだ
『それならば、心配はいらない』
「え?」
宇宙塩ラーメンの残りスープにご飯をいれながら、タクトの視線はエオニアへ
彼は小さく笑うと
『だいじょうぶ、その時がくれば、タクトにはわかるはずだから』
「俺、ですか?」
タクトの疑問に、エオニアはただただ、おもしろそうな笑顔を返すだけで


食料のチェックや、艦内の見回り、生活品の確保…
二日ほどかけて、とりあえず生きていくうえで必要最低限のモノの確認を済ます
その作業が一段落つくと、タクトは数日振りに銀河展望公園へと足を運んだ
いつもなら、周辺宙域のデータを星空として写す立体フォログラフも
新しくできた宇宙のデータはないらしく、臨時に本星トランスバールの夜空をうつしている
『タクト』
しばらく星空にみとれていると、声
「エオニアさま…」
『ここにいたのか』
数日
ゆっくりとだが、エオニアの姿も次第に薄くなり始め
いまでは、若干だが向こう側が透けて見えるほどになっていた
「…ここで、エオニアさまにお会いしたんですよね」
『そうだな』

”あなたは…”

”タクト・マイヤーズ…か?”

『君は泣いていた』
「…それは、忘れてください」
くっくっくっと、エオニアは笑いを噛み締め
『あれから、色々なことがあったな』
「…はい」
そうして
二人でしばらく夜空をみあげ
少し考えてから、エオニアは一つの疑問を口にした
『タクト、君がこの状況でも慌てずにいるのは…彼女たちがいるからかい?』
「…」
いや、それは疑問ではなく確認
タクトはすこしだけ間を置いてから
「そうですね、そう考えていなかったか?といわれれば…」
循環のための風が吹く
サワサワ
それは、木々や草花を揺らして
『本当に、君たちが羨ましい』
「そうですか?」
『?』
「信じてる、っていえば聞こえはいいけれど、結局…俺は彼女たちの負担を大きくしただけかもしれない」
空を見上げる
上をむくその姿から、表情は読み取れない
「彼女たちは強い、強いけれど…本当はただの優しい女の子たちなんです」
いつも笑顔のミルフィーユ
明るく元気なランファ
知的で優雅なミント
姉御肌で面倒見のいいフォルテ
優しいヴァニラ
控えめでおとなしいちとせ
「俺は彼女たちが好きで、他の誰よりも大切で…だけど、戦ってほしいとも思う」
信じてるから
その言葉ひとつで
「皇国の英雄だとかいわれたって、俺のしたことは彼女たちを戦わせただけで…
 実際に誰かを倒す痛みを背負っているのは彼女たちなんです」
『タクト…』
「彼女たちは優しい、だから…誰かのために命をかけて戦える…
 でも人間で、女の子で…疲れたり、傷ついたりする、本当はやめてしまうことだってできたはずなのに…」
そんな彼女たちの背中を押したのは自分だ

『君でもそんな馬鹿なことを考えるのだな』
「…」
『タクト、私はね後悔しているのだよ』
「後悔、ですか?」
エオニアの言葉は優しくなく
『そうだ、たとえば…クーデターなど起こさなければ』
だが、それは決して冷たくも無い
『黒き月と…ノアと出会わなければ…あのときの戦いではこうするべきだった、こうすれば良かった』
「エオニアさま…」
『それは、私が途中で諦めてしまったからだ』
諦めた
腐敗した血族を立て直すことも
正統な手段で奪われた皇王の座を取り戻すことも
白き月を護ることも
そして
クーデターを成功させることでさえ
諦めたのは、自分自身の可能性だ
『自分を諦めたものは、死んだ後で後悔する…死んだ後で後悔しないのは…』
悔いなく死を迎えることの出来るもの
それは
『死んだ後で後悔しないのは、その死の瞬間まで諦めなかったモノだけだ』
精一杯やったのだ
そう、胸をはることが出来るのは
最後の最後
その一瞬の刹那まで
自分を信じきれたものだけなのだと
『しかし…人間は弱い。一人の力では限界がある…人は有限の生き物なのだよ』
有限…
黒き月
完璧であるが故に、データどおりの結果しか生み出さない
限りの有る存在
『だが、時として人は無限の可能性もしめす…なぜなら、人は一人ではないから』
「…ひとりじゃない」
呟くようにその言葉を繰り返す
『一人で出来ないことも二人でならできる、二人でできないことも三人でならできる…
 彼女たちは諦めなかった、確かに彼女たちは強い、銀河最強の天使たち…それでも限界はある』
あった
それは、何度もあったのだ
黒き月のネガティブフィールド
ネフェーリアのネガティブ・クロノ・フィールド
そして、先のヴァル・ファスクとの戦いのときだって
『だが彼女たちは勝ち残った、どうして?…それは、君がいたからだよ、タクト』
くじけそうになった
負けそうになった
自分を諦めかけたことだって
そのたびに
『自分一人では自分を信じぬけなかった、だが二人なら?自分が信じられなくても、誰かが信じてくれるなら?
 それはやはり、彼女たちの力になる。…なったんだよ、タクト』
その証として
銀河は救われ
彼女たちも生き残った
今はいっしょにいられないけれど
タクトもレスターも…そして、他のみんなも無事だ
「…はい」
溢れてくる涙をぬぐいながら、タクトはひとつうなづく
「ありがとうございます…」
涙とともに心が軽くなっていく気がした
この一年間
彼女たちとともに戦いながら
ずっと、ずっと…足かせのように重く心をひっぱってきたもの
その最後のひとつが音をたてて外れていく
エオニアはゆっくりとそのタクトの頭を撫で…
「きゅーっ!」
どんっ
飛び込んできたのは
『またお前かっ!』
「子宇宙クジラ」
「きゅーぅきゅーきゅー」
子宇宙クジラは自分も悲しそうに泣きながら、必死でタクトの涙を舐める
「く、くすぐったいよ子宇宙クジラ…」
「きゅー」
タクトがとめるが、子宇宙クジラは離れようとしない
そこに
「よくやった、子宇宙クジラ!」

「レスター」
入り口から足早にかけてくるのはエプロン姿も似合う副官がひとり
「タクト、夕飯だ」
「うん、わかった」
「で、皇子さまはタクトを呼びにいくのにどれだけ時間をかけていらっしゃるんですかね?」
『ふん…食事より大切なものなど、いくらでもあるんだよ』
「ほーぅ?タクト…」
「な、なんだよ?!浮気なんてしてないぞっ」
びくっと後ずさり
『そうだ、なぜならタクトの本命は私なのだからな』
「エオニアさま〜」
「あー、もうどうでもいい、さっさと夕飯にしろ。後片付けができんだろうが!」
「きゅー」

ここ数日、何度も繰り返される収拾のつかないその事態を
夜空はいつまでも優しく照らしていた



そんな日々があって
エオニアの姿が、もうほとんど見えなくなりかけた
ある日…

「あぁ、だが…そうだな。私も知っていたよ」

唐突なエオニアの言葉
「え?」
タクトとレスター、そして子宇宙クジラの視線がエオニアに注がれる
その視線に、彼は優しく笑いながら
「君がどれだけ彼女たちを愛しているのか、そして彼女たちがどれだけ君たちを愛しているのかを」
「…彼女たち?それは」
タクトがその名前を確認するより早く
「♪きゅーっ」
子宇宙クジラが鳴いた
まるで、何かに反応するように
「♪きゅきゅきゅーきゅー」
「子宇宙クジラ?」
小さな物体は、嬉しそうに空間を飛び回る
まるで歌うように鳴きながら
歌?
『夢の時間は終わりだよ、タクト』
見上げれば寂しい微笑み
自信に満ち溢れたようなエオニアが、時折みせた、その表情
そうだ
彼を嫌いになれなかったのは
それが彼の本当の表情だったからだ
そして、たぶん
自分も同じような表情をどこかに持っている
一方的で、しかし、確かな、シンパシー
だから、自分は彼に惹かれるたのだ
「エオニアさま…」
名前を呼ぶ
彼は改めて、優しく微笑むと
『さぁ、タクト…耳を済ませてごらん?君になら、いや…』
そこまでいって、エオニアは珍しくレスターをみた
ここ数日繰り返された、幼稚な喧嘩
それとはまったく別の表情で
言い直す
『君たち二人になら聞こえるはずだよ』
「♪きゅーっ」
エオニアの言葉にあわさるように、子宇宙クジラが歌う
歌う…
「っ!」
タクトは宇宙を見た
生まれたばかりの星空
閉ざされた世界
だが
それは宇宙から聞こえたのだ
かすかに
でも、たしかに
「まさか…」
レスターも同じような反応を示す
きこえるもの
聞こえる
漆黒の銀河を駆け抜け
絶望の空間を超えて
届く
君のために歌う
「天使の歌…」

Angels Song…

何度でも
翼を広げ
宇宙に歌う

天使たちのシンフォニー



2005年04月13日(水) 今週のマガジンは…の日

幸村×京四郎!激萌え!すげぇ萌え!
そんな俺の心情とは裏腹に、日替わりは昨日の続きです

「なんですか、今のは?!」
ノーマッドがヴァニラの膝からずり落ちそうになりつつ叫ぶ
ヴァニラは無言で周囲を見渡した
「今のは…」
ミントも同様にあたりを見渡す
そこへ通信がひとつ
『今のいったいなんなのよ、ミント』
「わかりませんわ」
ランファの質問に答えながら、銀河を揺らした正体を探す
「なんだっていうんだい」
『フォルテ先輩、今のがもしかしたらクロノ・クェイク爆弾だったのでは…』
「だったら、この通信だって使えないはずだよ」
ちとせの言葉に、フォルテは前方にある物体を確認しながら応える
銀河を壊すモノに変化は見られない
ならば…
「あーっ!」
全員の思考をかきけしたのは、ミルフィーユのそんな声だった


艦は、人間を護りたかった


「エルシオール…」
白銀の艦が、銀河を渡る

「そんな、どうしてエルシオールが?」
「みんな降りたんじゃなかったの?!」
ちとせとランファが同時に叫ぶ

『えぇ、エルシオールに生体反応はみられませんわ』
通信からミントの冷静な声がきこえた
「誰も乗ってないってこと?じゃぁ、誰が動かしてるのよ!?」
「タクトっ?タクト、どうなってるんだい?」
フォルテがタクトと通信をつなげる

「っち、つながらないか」
クロノ・クリスタルは反応をかえさず
「エルシオールは…もしかして…」
ミルフィーはポツリと呟いた
と、その呟きに応えるように
「護りたいんですよ…あなたたちを…」
「ノーマッド…」
ヴァニラが膝の上のノーマッドを抱きしめた
「私も同じロストテクノロジーですから…その気持ち、なんとなくわかるんです…」



艦は、人間が好きだった
自分に乗る人間たちはいつだって楽しそうで
いつだって幸せそうで
そんな人々を乗せていられることが幸せで
自分は幸せな艦だったのだ
戦艦として作られながら
こんなに
こんなに、幸せな艦は他にない
幸せだった
だから…
護りたかった
艦は、人間を護りたかった
自分の幸せは
今日まで自分を大切にしてくれた人々の幸せなのだから



「エルシオール…」
白き月
あわただしく駆け回っていたエルシオールクルーたちが呆然と自分たちの艦を見守る

「ノア?」
黒き月の少女が歩き出す
シャトヤーンがその背中に声をかけた
ノアは振り返らずに
「エンジェル隊は自分の役目を果たすために戦っている
 エルシオールは自分の役目を果たしにいった
 だったら、あたしはあたしの役目を果たすわ」
「…ノア」
「スカイパレスにいってくる、あとはよろしく」
「…」
シャトヤーンがなんと応えようか迷う
そこに
「たのんだぞ、ノア」
宇宙から、視線を外さないまま、シヴァが応えた
ノアは少しだけ驚いた顔をしたが
すぐにあきれた顔をすると
「わかってるわよ。あんたこそ、しっかりそこで自分の役目を果たしなさい
 …あの連中を信じて待つのは私の仕事じゃないんだから」
「わかっている」
二人の言葉の掛け合い
それは、酷く優しいやりとりで
シャトヤーンは微笑みを浮かべながら
「いってらっしゃい、ノア」
去っていくノアの後姿に、ひとつ、頭をさげた



艦は、人間が好きだった
艦は、人間を護りたかった
だが…

絶望で漆黒に塗りつぶされた銀河を白銀の艦が駆ける
その優しい光であたりを照らすように

だが、艦は忘れていた
自分に乗っている人間たちが
あきらめることを知らない
一筋縄ではいかない人間だということを

「おいてきぼりは酷いよ、エルシオール」
エルシオールのブリッジに人影
「お前の性格がエルシオールにもうつったんじゃないのか」
二人分
「どういう意味だよ…」
しくしく…
タクトは恋人の毒舌に傷つきながら、座りなれた自分の席に座る
「ま、ともかく、間に合ってよかった」
ほっと一息
実際、エルシオールが目の前で飛び出したときは流石のタクトも呆然としてしまった
レスターがとっさに近くにあったシャトルで飛び出さなかったら追いつけなかったかもしれない
こんなときはつくづく、機転の利く副官をありがたく思う
「まったくだ」
レスターも珍しく安堵の溜息
そんな風に二人が、いつもの調子で会話をしていると
通信が、ひとつ

『タクトっ!』

「あ、フォルテ」
パッとモニターが浮かぶ
『あ、フォルテ。じゃない!あんたいったいなにしてるんだい?!』
「なにって、やっとエルシオールにおいついて一息ついたところだよ」
タクトは普段となにもかわらない調子で応える
『あんた馬鹿じゃないの?!』
次にあらわれたのはランファ
「馬鹿って…」
「その通りだろうが」
容赦のないつっこみは隣から
『クールダラス副司令?!』
ちとせがタクトの隣にいるレスターの姿に驚く
『レスターさんもご一緒なんですか?』
1テンポ遅れて、ランファの隣にミルフィーユ
「あぁ、俺たちはいつも一緒だから」
その問いに、タクトが当然のように返す
『…はい』
ヴァニラがこっくりとうなづいた
最後にはいるのはミントからの通信
『お二人とも、まさか…最初からそのつもりで…』
「そういうこと。…ごめんね、みんな」
タクトはエンジェル隊全員を見渡して一言
だが、返事はかえってこなかった
なぜなら

タクトとレスターも忘れていたからだ
エルシオールに乗っている人間たちが
あきらめることを知らない
そして、なにより
自分たちと同じくらい
もしかしたら、それ以上に
エルシオールのことを大切に想っている人間ばかりだということを

人々は、艦が好きだった

ざわっ
騒がしくなる
「?」
タクトとレスターは同時に後ろを振り向いた
その瞬間、ブリッジの扉が開く
現われたのは
「きゅーっ!!」
「子宇宙クジラ?!」
泣きながら子宇宙クジラがタクトに体当たりをかました
「お前、どうして…」
「きゅーきゅーきゅきゅーっ!」
子宇宙クジラはバタバタとタクトにすがりついて泣く
タクトは仕方なく子宇宙クジラの頭を撫でる
と、そこに
「まにあったー」
「つ、疲れた」
子宇宙クジラの後ろに続いてブリッジに姿をあらわしたのは
「ココ?アルモ?!」
ブリッジクルーの中でも、とりわけ接する機会の多いオペレーター2人組
「お前たち、どうして…」
「どうしてもこうしてもないですよ!」
「そうですよ、なんで私たちを置いていっちゃうんですか!」
レスターの言葉をさえぎって、二人がつめよる
「う…」
流石の副官も、一歩あとずさり
「ほんと、ほんと」
更にパトリックが続く
ざわざわ
「みんな…」
一人、ふたり…
そんな風に、どんどんとブリッジにクルーが戻ってくる
全員は置いていかれた文句を口々にいいながら、表情は穏やかで
「ってことは、他の連中も…」
呆然とレスターがつぶやく
「あたりまえじゃないですか」
「エルシオールには誰が欠けたって駄目なんですから」
「言って置きますけど、もう誰も降りたりなんてしませんよ」
自分の席に座りながら、ココ、アルモ、パトリックが釘をさす
「お前ら…」
「無駄だよ、レスター」
言い返そうとした副官を、タクトがとめた
「タクト、だが…」
「みんな、エルシオールが大好きなんだ」
タクトの言葉に
「はいっ」
ブリッジクルーの声がひとつとなって、返ってきた

『いい気味よ』
ランファがふふんと髪をかきあげながら一言
『私たちを出し抜こうとなんてするからですわ』
ミントはいつもの微笑みで、辛口コメント
『その通りだよ』
フォルテもうなづく
『…隠し事はいけません。神の教えです』
『はい、先輩』
手を組んだお祈りポーズのヴァニラの言葉に、ちとせが答え
『タクトさん、戦うときは、みんないっしょですよ』
ミルフィーがにっこりと笑う
タクトはその笑顔に、笑顔をかえしながら
「そうだね、俺が悪かったよ。ごめんね」
あやまった
「まったく、どいつもこいつも…」
その隣で、レスターは深く溜息
『レスターさんはタクトさんと二人っきりになりそこなったのがそんなに悔しいんですか』
プププッと笑いながらノーマッド
「…殺すぞ、ピンク」
『スミマセン…』


人々は、艦が好きだった
だから、人々は艦を大切にし
艦とともに、最後まで戦うことを望み
帰ってきたのだ

「ねぇ、レスター」
「ん?」
いつもの活気に戻ったブリッジをみながらタクトは恋人を呼ぶ
「俺…もしかしたら…こうなることを知ってたのかもしれない」
「…タクト」
「だって、俺は知ってたんだ。みんながエルシオールのこと大好きだ、って…」
「そうだな」
タクトの言葉に、レスターも微笑をかえす

それはそんなに難しいことじゃないと想う
エルシオールは人々が好きで
そして、人々もエルシオールが好きだった
それだけのこと
好きだ
だから、一緒に戦いたい
最後の最期、その一瞬まで
それはあたりまえのことだと思う
みんな、同じ願いで、同じ想い

「前方、クロノ・クェイク爆弾から高エネルギー反応!」
モニターを確認したアルモの声がブリッジに響き
「くるぞっ、全員ショックに備えろ!」
レスターの指示が飛び、それぞれがそれぞれの場所で迫りくる衝撃に身を構える
タクトは
「みんな、あとはよろしく」
微笑みながら最後にそう言うと、答えを待たずにエンジェル隊との通信を切った
そして
「タクト」
名前を呼ばれ
顔をあげて、恋人をみる
手を伸ばしたのはどちらが先だったのか
力強く、お互いの手を握る
離れることはないよう、ぎゅっと…

次の瞬間


ピシィッ


氷が張るような音が銀河中に響き渡る
音もなく、光が、爆発、した
この世のものとは思えない色の光が走り
それは、瞬きする間もなく、全てを飲み込む
のみこんで
残されたのは…



バサッ

レスターの腕の中で、タクトが最初にその音をきいた
「翼が開く、おと?」
たしかに、そんな音がした
ありえない話だ、なぜならもうすでに紋章機の光の翼は開いているのだから
けれど、それはたしかになにかが開く音だった

ピー

「な、なんだ?」
司令席が淡い光に包まれ、それは共鳴を起こしながら広がっていく
そして

ピーガガッ…ガー…

音をたてて、エルシオールの中を新しいなにかが塗り替えていき

「エルシオール?」
光は、まるで歌うように、広がって
白い光
酷く懐かしい
泣きたくなるような優しい輝き
「そんな…まさか、これは」
そんなことを思っているあいだも、光はますます増えエルシオール全体を包み込み
一瞬だけ塊となり収縮すると、刹那

バサァッ

今度こそ音をたてて、爆発する
いや、正しくは開いたのだ
「ひかりの…つばさ…」

光の翼が軌跡を描きながら銀河を翔ける

「エルシオールに光の翼が…」
ハッピートリガーの中で、フォルテは呆然と呟いた
そして、きづく
「クロノ・クェイクが起こったのに、動ける?」
気づいた瞬間、通信がひとつ
『フォルテさん!』
「ミルフィー」
『エルシオールがっ…タクトさんたちが…』
「あぁ、わかってるよ…」
フォルテは小さく応えて、再びエルシオールに視線を戻した
光の翼は羽ばたくたびに
クロノ・クェイクの影響をかき消していく
その光景をみながら
「…いつだって、護られているのはあたしたちの方だったんだ」
呟き
それとともに
ぽたり
涙が、おちた
フォルテは愛用の軍帽を深く被りなおす
そして…
「レスター、タクトを頼んだよ」



いつもそばに…



漆黒の宇宙に、柔らかい白光の翼を広げるエルシオール
「大変ですっ!」
「どうした?」
そのブリッジに、ココの声が響き渡った
「それが…エルシオール内の生体反応が次々と転送されていってるんです」
「なんだって?!」
報告に、タクトとレスターは同時に司令席のモニターを開いた

ピー
電子の警告音とともに、表示されたのは
”緊急脱出装置作動中”
それとともに、艦内の生体反応確認数がどんどんと数を減らしていく
「緊急脱出装置…そんなものが…」
「転送先は?!」
レスターの声に
「…白き月です!」
クロノ・ドライブ反応を示すモニターをみていたパトリックがかえす
騒然とするブリッジ
「エルシオール…」
タクトは一つ呟くと、艦内放送のスイッチを入れた
『みんな、落ち着いてきいてくれ』
「マイヤーズ司令…」
ざわつく艦内に、タクトの声が響く
『エルシオールの緊急脱出装置が発動した、これはエルシオールの意志によるものだ』
「司令…」
ブリッジクルーの視線があつまる
『エルシオールは俺たちを護ろうとしている…』
タクトはそこまでいって、一つ深呼吸をすると
『だけど、みんなエルシオールを降りたいか?!』
「降りたくないですっ!」
アルモが叫ぶ
「降りたくない、だって、私たちはエルシオールのクルーなんですから!」
「そうだ!なんのために俺たちが帰ってきたとおもうんだよっ」
「最後までいっしょにいたいです!」
ブリッジのあちことから声が続く
艦内に残っている他のクルーたちも同じ事を叫んだ
全員の願いは一緒だというように
タクトはその声を確認すると
『と、いうわけで…全員、エルシオールにしがみつけっ!』
いつもの調子で高らかに、一言
ずるっ
タクトの隣でレスターが盛大に、コケた…
「タクトっ、お前には緊張感ってものが…」
抗議しようとしたレスターの声とかぶるように
「はいっ!」
ブリッジクルーから良い返事がかえってくる
「は?!」
レスターが驚いて、タクトからブリッジへ視線をむけるとそこには
必死で自分の席にしがみついているクルーたちの姿が…
「お前らまで…」
はぁ、とレスターは大きく溜息
「きゅーっ」
子宇宙クジラがタクトにしがみついた
タクトは子宇宙クジラの頭を撫でながら、いつもとかわらない副官の姿にクスクスと笑いをこぼすと
「レスター」
名前を呼んだ
「…ったく」
呼ばれた恋人は、もう一度だけ溜息をつくとタクトのほうを振り向いた
…っぷ
どちらからともなく笑いがこぼれて
あとは笑顔
二人は互いに笑い会うと、言葉のかわりに、手をつなぐ
絶対に切れることの無い絆
まるで、それを確認するかのように、力強く…



輝く翼を広げ、光の粒子で出来た羽を撒き散らしながらエルシオールが進む
漆黒の銀河を照らし出すように
その白い光に宇宙が共鳴する
そして
クロノ・クェイク爆弾に到達したエルシオールから放たれた白い光が、漆黒の空間を走り抜けた
だが、その光は決して強いものではなくて…
どこか、不思議な柔らかさと優しさをもった
まるで、月灯りのように穏やかな光
「きゃぁっ」
「うわっ」
光に包まれるエルシオール
ブリッジのあちこちで、クルーたちの声が聞こえた
「くそぅっ」
次々と、転送されていく
「タクトっ」
「レスター!」
ふわっ
二人の体も宙に浮く
互いに呼ぶ名前すらも、光の中に消えて…
それでも

繋いだ手だけは離さずに…

星空の下でかわされた、永遠の誓い
”ずっと一緒にいたい”
その願いのままに
離れることはないよう、祈りをこめて
ふたり、いっしょ、いつまでも、どこまでも
そう…
たとえ地上より永遠にいなくなることになろうとも



2005年04月12日(火) あと3話…の日

ほんっとーに、このシリーズではやりたいことばかりをやりました…v
そのメインのひとつは今回のお話です
というわけで、まいど書き込みすぎで、まっぷたつ(前後編のくせに;)

第23話「Final dish AngelicSymphony (前編)」

艦は、人間が好きだった

「ありがとう、エルシオール」

エルシオールから外されたクロノ・ブレイク・キャノン
それは、永遠の平和を願ってのことだったろう
人々はその美しい白銀の艦に戦場が似合わないということを知っていた
だからこそ、あえて主砲を取り外し
争いを避けるように、白き月を象徴する儀礼艦としたのである

人々は、艦が好きだった


「アンカークローッ!」
ドンッ
ドドンッ
カンフーファイターからの攻撃がクロノ・クェイク爆弾を襲う
しかし…
「うそっ、今の絶妙な攻撃が効いてないの?!」
戻ってきたワイヤーアンカーを回収して、ランファが信じられないといった声をあげた
戦艦でさえ時には粉砕する必殺技も、その装甲に傷ひとつつけることが出来ない
だが
「ま、だったら壊れるまで、やればいいのよね!」
そういいながら、ランファはさっさと次の攻撃に切り替えた

「ハイパーキャノン!」
膨大な量の光が、一直線に凝縮されて伸びる
光は周囲の敵を巻き込みながら、クロノ・クェイク爆弾に真正面からぶつかった
すさまじい熱量が、侵食するようにめりこむ
それでも
「あの攻撃が効いてないなんて…」
エネルギーがなくなり、光が霧散する
クロノ・クェイク爆弾はその跡に無傷で横たわっていた
ミルフィーは残念そうにしながらも
「よし、もう一度!」
笑顔をたやさず、再びラッキースターを駆る

「リペアウェーブ!」
ナノマシンで出来た光の輪がハーベスターを取り囲み
それは、2重、3重と幾重も輪を重ね
次の瞬間、爆発的に全方位に広がっていく
その光を見送りながら
「どうか、みなさんに力を」
祈るヴァニラの膝の上にはノーマッドが
最後の戦い
二人はずっと一緒であることを望んだ
「大丈夫ですよ、ヴァニラさんの治療は最高です。あなたは私の天使ですから」
饒舌にしゃべるピンクの物体の言葉に、ヴァニラはいつもの調子を取り戻す


だから、人々は艦を大切にし

「?」
ふいに呼び止められたような気がして、タクトは後ろを振り返った
白き月最深部、そのドッグには傷ついた翼を休めるように沈黙するエルシオールが留まっている
「タクト」
そこに、レスターの声がして現実に引き戻された
「こっちはOKだ。全員の避難を確認した」
「わかった」
「けっこう時間がかかったな」
「仕方ないよ…」
タクトは少し困ったように笑うと
「みんな、エルシオールが大好きなんだ」
感情をこめて、一言
「大好きなんだよ…」
「そうだな」
二人、エルシオールを見上げる

「…?」
「タクト、どうした…?」
「いや…なんでもない」
小さく首を横に振る
(きのせい、だよな)
自分にいいきかせ
気を取り直すと
一つ深呼吸
顔をあげてタクトはまっすぐにレスターをみた
レスターは柔らかく微笑んで、うなづく
その笑顔に押されるように
「いこう、レスター!」
「あぁ、タクト」

艦は…


「ストライクバースト!」
紋章機中最強を誇るその全ての砲門が開かれる
それは膨大な出力を食い物に、一筋の光となって目標まで飛んだ
ドドドドドッ
爆発が爆発を呼び、空間を振るわせる
「っち、やっぱり効いてないか…」
舌打ち
だが、フォルテは操縦桿を握る手を緩めることなく
再び狙いを定めると
「じゃぁ、これならどうだい?!」
考えるよりも先に、ハッピートリガーが次の閃光を放つ

「フェイタルアロー!」
光の渦があちこちで爆発する
そのわずかばかりの隙間から、狙いを定め
ひとつ、ひとつ、ひとつ
計3発の光の矢を、確実に命中させていく
「そんな、傷一つつかないなんて…」
呆然と、その物体を、見る
だがあきらめない
ちとせは、あきらめるということをやめたのだ
「お願い、力を貸して…」
その呟きに、シャープシューターが答えるように出力を増す

「フライヤーダンス!」
トリックマスターの遠隔操作ユニット・フライヤーがクロノ・クェイク爆弾をとりかこむ
ミントの言葉とともに、それはまるで花が咲くように一斉に開き
あとには、光の雨が降り注ぐ
しかし
「駄目ですわ…」
攻撃はあたっている、確実に
だが効いている様子はみられない
それでも
「では、これでしたら?」
それでも、ミントは微笑を絶やさず戦い続ける


艦は、人間が好きだった
人々は、艦が好きだった
だから、人々は艦を大切にし
艦は…


”…姉さん”
ふいに
「ヴァイン?」
呼ばれた気がして、ルシャーティはあたりを見渡した
もちろん、周りには誰もいない
しかし
確かに、声が

”姉さん”
「ヴァイン、なの?」
声が聞こえる
怖い、とは思わなかった
”ねぇ、姉さん…”
声はどこからともなく聞こえる
空から
隣から
そして…
自分の心から
”姉さんは、どうしたい?”
なにを…
とは、言わなかった
今、その質問の答えを、ルシャーティはひとつしか、しらない
「私は…みなさんの力になりたい…」
”そうだね”
戦いたい
たとえなんの力になれなくても
だが
彼女たちの足を引っ張ってしまうということも解っていて
解っているから
どんなに戦いたくても、それはできない
だから、せめて、自分はここで待つのだ
彼女たちの戦いから目をそらすことなく
彼女たちを信じて

”姉さん…人にはそれぞれ役割があるんだよ”
「役割?」
”そう、そして…今、姉さんにしかできないことがあるんだ”
「わたしにしかできないこと?」
言葉を反芻し、意味を理解しようと思考を巡らせた
そして
たったひとつのその考えにいきつく
そのとき…



銀河が揺れた





2005年04月11日(月) あと4話!の日

泣いても笑ってもあと4話でラスト!!
最後の最後まで全力疾走がんばりますとも!

第22話「銀河天使の最終決戦納豆」


それは、星空の出会いから…

『すいません、ちょっとお聞きしてよろしいですか?』

「はい?」

銀河の片隅
星空の下で出会った一人の青年と、5人の天使たち
「よし!」
タクトは気持ちを落ち着けると
宇宙に浮かぶ、6色の翼と向き合う
そして…

「…ミルフィー」
『はいっ!タクトさん』
ミルフィーユ・桜葉
ピンクの髪に白い花のカチェーシャがよく似合う17歳
料理が上手でエンジェル隊のごはん・おやつ係でもある
いつもマイペースで明るく優しく、紋章機”ラッキー・スター”を自在に操る彼女はどこでも人気者
「ミルフィーの最強の武器は、その笑顔だ」
『タクトさん…』
ぎゅっ
ミルフィーの手の中には、赤い薔薇の押し花
「どんな強運も、ミルフィーの笑顔には敵わないよ…最後まで、笑っていて欲しい」
『はいっ!バーンとやっちゃいます!』
最強の笑顔でミルフィーが答えた

「…蘭花」
『なに、タクト』
蘭花・フランボワーズ
紋章機”カンフー・ファイター”をのりこなす天使
強気で押しが強く、運動神経に優れ、とくにカンフーという格闘技は達人クラス
そのわりに、占い好きという女の子らしい一面を持っていたりもする
「ランファの元気でみんなを引っ張ってくれ」
『わかってるわよ』
ランファは頼もしく胸をはる
タクトは先日もらったお手製の御守りをみせながら
「ランファが護ってくれるなら安心だ…よろしく!」
『まかせなさいよ』
最高の笑顔でランファが答える

「…ミント」
『はい…タクトさん』
ミント・ブラマンシュ
おっとりしていて人当たりはよいが、少ししたたかなエンジェル隊きっての知性派
遠距離専門の紋章機”トリック・マスター”のパイロット
ブラマンシュ財団の一人娘であり、俗に言うテレパシストで人の考えたこと、おもったことを読む能力をもつ
「ミントがいつも冷静でいてくれたから、俺はここまでこれたのだと思う」
『お褒めいただき光栄ですわ』
ミントが優雅に微笑む
その笑顔に、どこか救われる
「ありがとう、ミント…帰ったら、みんなで注文した駄菓子を食べよう」
『えぇ、楽しみですわね』
ミントの答えは嬉しそうな笑顔とともに

「…フォルテ」
『なんだい、司令官殿』
フォルテ・シュトーレン
赤い髪に黒い軍帽、照準あわせのためのモノクル…と、他の少女たちにはない大人の色気を振りまくエンジェル隊の隊長
姉御肌のさっぱりとした気質をもち、面倒見が良く、他の隊員を実の妹のように可愛がっている
銃火器のコレクションを趣味にもち、彼女の愛機”ハッピートリガー”も攻撃専門の機体
「フォルテがエンジェル隊のリーダーで本当に良かった」
『おやおや、おだててもなにもでないよ?』
嬉しそうに笑いながら
愛銃を構える仕草
「だって俺、フォルテほど彼女たちのことを思ってる人間を他にしらないからさ…みんなをよろしく」
『あぁ…このフォルテ様にまかせておきな!』
フォルテの答えと笑顔はどこまでも優しく

「…ヴァニラ」
『…はい、タクトさん』
ヴァニラ・H
エンジェル隊最年少で13歳という年齢ではあるがナノマシンを使った治療・医療技術は抜群で欠かせない存在
彼女のあやつる紋章機”ハーベスター”は唯一の回復能力を持つ
地方の宗教惑星出身の彼女は、あまり表情を表に出すようなことはしないが
「ヴァニラがまるで自分のことのように傷を治してくれたから、俺たちはここまでくることができた」
『タクトさん…』
感情をあまり表にださないヴァニラが微かに笑顔になる
タクトはその笑顔をみつめると
「俺はそんなヴァニラの笑顔をみていると、自分が救われた気がするんだ…本当にありがとう」
『はい』
笑顔で返すヴァニラの膝の上では
『あたりまえです!ヴァニラさんは天使ですから』
いつも一緒にいるピンクのぬいぐるみ(一応ロストテクノロジー)ノーマッドが…

5人の天使たちと出逢い
そして、力と心をあわせて戦ったクーデター終結から半年
辺境惑星の調査から帰ってきたタクトをまっていた
月の下での出逢い


『こちらMoonAngel隊所属、GA-006”シャープシューター” 搭乗者、烏丸ちとせ少尉です』

6人目の天使

「…ちとせ」
『はい!タクトさん!』
烏丸ちとせ
エオニアのクーデター後、白き月で新たに発見された6番目の紋章機”シャープシューター”との相性を認められ
新人としてエンジェル隊へ配属された礼儀正しく控えめな、大和撫子
「ちとせを強くしたのは、君自身の向上心だ」
『…はい』
引き締められた表情
タクトは最初こそ真剣にそれをみつめたが、肩の力をぬき
「あせっちゃ駄目だよ、ちとせ…ちとせは、ちとせのペースでね」
『わかりました』
ちとせは笑ってこたえる。柔らかい笑顔だ


「いこう、みんな!…これで、終わりにしよう」
銀河の片隅
星空の下で出会った一人の青年と、6人の天使たち
「頼んだよ、エンジェル隊…いや………」
タクトはもう一度、気持ちを落ち着けると
全員の笑顔を確かめる
そして…
星空の出逢いから、一年

「ギャラクシーエンジェルっ!」

『了解っ』×6

タクトとエンジェル隊、最後の戦いが
いま、はじまる



♪Eternal Love…

「♪とおく、かぎりない、そらへ…ゆめをさがしてまよう…ファーラウェイ」
ラッキースターのコックピットでミルフィーは笑顔で歌う
歌う…ひたすらに
心を占めるのは、たった一つの願い
”みんなを護りたい”
ただ、それだけ
たった一つの純粋な祈り
まるで、その想いに答えるように
ラッキースターが輝きを増す
「いきますっ!ハイパーキャノン」
光がミルフィーの前に道を作った

「♪とわの、せいじゃくのなかで…こころみだれて、みちをまよう…」
カンフーファイターのコックピット、蘭花も元気よく歌っていた
歌声はあたりに響く
空間に、銀河に、心に…
”あたしがみんなを護るんだから”
それは他の誰のためでもない
自分のための願いであり、誓い
誰ともあえなくなるのが一番嫌なのは自分なのだから
カンフーファイターがそれに答える
「鉄拳制裁!アンカークローッ!」
自分の手で、自分が進むための道を作る

「♪つきに…みちびかれて…けだかく…いきていける…」
トリックマスター内部、ミントが歌う
歌いながら、銀河を駆ける
宇宙は広い
”護ってみせますわ”
欲張りな、願い
新しい宇宙は心を躍らせる
まるで、駄菓子のおまけのように、なにがでるのかわからない楽しみ
トリックマスターがご機嫌にエネルギーを放出し
「ごめんあそばせ。フライヤーダンス!」
新しい宇宙の道をどこまでも…



集中攻撃の嵐
それは、強固な要塞すらも、まきこんで
一際大きな爆発がおこる
「やったか?!」
エルシオールの艦橋で、タクトは破壊される要塞に注目した
だが
「いや、あれは…」
驚愕の声は、隣にいる副官が
崩れ落ちていく…その中からあらわれるもの
それは…

「あれが、クロノ・クェイク爆弾…」

ゾクッ
背筋を冷たいものが滑り落ちた
まるで背骨が氷になってしまったかのような、悪寒
禍々しいそのシルエットに
なんともいえない、嫌な予感が駆け抜けた
そのとき
通信が、ひとつ

『我が名はゲルン…ヴァル・ファスクの…この宇宙の王』

パパパパパッ
モニターに、いっせいに映し出される強面の顔
「これが、ヴァル・ファスクの…王」
『降伏せよ』
ゲルンは下卑た笑いを浮かべ
『降伏せよ、さすれば命ばかりは助けてやろう
 いや、お前たちの強さならば我が下に加わるのも許してつかわす』
「ッ!?何様のつもりだ」
その態度に、レスターがあからさまに不快な感想を
タクトは…
「断る」
静かに、一言で、それをかえした

『もったいない、今ならちょうど、犬死したヴァインの席があいているというのにな』
「犬死…だって?」
ゲルンは愉快そうに笑い
『アレは死んだのだろう?それが犬死ではなくてなんだというのだ?
 心など、くだらんものに迷わされた、ヴァル・ファスクのクズが………』
「なるほど…」
タクトはひとつうなづいた
そして
「わかったよ」
にっこりと、笑顔をむける
『ほぅ…人間にも理解力のあるやつがいるようじゃの』
「勘違いしないで欲しいな。俺がわかったといったのは
 どうしてヴァル・ファスクが俺たちに負けるのか。という敗因についてさ」
『…』
「あなたのような奴が、何千年も王として君臨できるようじゃヴァル・ファスクもたかがしれてる
 ヴァル・ファスクは王であるあなたの愚かさによって滅ぶんだ」
『言いおるわい』
ゲタゲタゲタ…
ゲルンは、不快な笑いを振り撒くと
『ならば小僧、いいことを一つ教えてやろう…
 クロノ・クェイク爆弾とわしの脳波は直結しておる…わしが死ねば自動的にアレは起動するのだ』
「…」
『仮にお前たちが勝ち、わしを殺したところで、クロノ・クェイク爆弾はとめられぬ』
トントン
軽く指でこめかみを叩く
『破壊と征服こそがわれらの全て…わしが滅ぶときは、全て道連れじゃ』
「…遠慮しますよ。あなたは、ひとりで滅べばいい」
『…』
「…」
沈黙が支配する
『後悔するがいい、あの世でな』
にやりと、ゲルンは不気味な笑みを残して、モニターを切った
タクトは一つ深呼吸を
そして…
「みんなは?!」
さっさと思考をきりかえて、空にまう翼へ視線を戻した



「♪ときはすなのように…そぅっながれるーけどー!」
ハッピートリガーの中でフォルテが拳のきいた熱唱をしていた
力強く、優しく、そして愛しく、歌う
歌う、心のかぎり
”護ってやるよ”
誰よりも大切な、妹のような仲間たち
家族のない自分にとっては、家族以上に大切な
それと、手間のかかる弟も
その全てを護るために、ハッピートリガーの引鉄を、ひく
「いくよっ、ストライクバースト!」
立ちはだかる敵は全てなぎ倒して、わが道を

「♪えたーなる…らぶ」
ハーベスターでヴァニラも小さく歌う
それは小さいが、しかしはっきりと
歌いながら
”護りたい”
今までも
そして、これからも
自分はみんなといっしょに生きていたいから
ハーベスターはまるで頷くように
「ナノマシン全方位発動…リペアウェーブ」
その祈りは、道半ばに傷ついた翼に力を与えて

「♪きみにあえた〜…あおい、このぎんがで」
シャープシューターにもちとせの歌が響く
柔らかく、暖かく、穏やかな
まるで今のちとせの心をあらわすかのような、歌声
”わたしが、護りたいもの”
心は澄んでいた
不思議なほどに
護りたいもの、その答えに、迷いはないから
シャープシューターがそんな想いに力を貸してくれる
「そこまでです!フェイタルアロー!」
道は続く、どこまでも、はるか…

天使たちが道をつくる
その道をエルシオールが進む
煙をふき、炎をあげ、それでも前へと
繰り返される爆発の中
白き月を象徴するような美しさは、もうほとんど原型をとどめておらず
しかし
留まる事を知らずに
「砲手っ、どこを狙っている!」
「消化班いそいでっ」
バァッ
ドンッ
閃光がかけるたびに衝撃が容赦なく襲い掛かる



「エルシオールが…」
白き月
一際大きな爆煙をあげて、グラリと傾いた白銀の船
シャトヤーンの心配そうな声とともに
「流石に、一筋縄じゃいかないわね」
その隣にいたノアも、悔しそうに宇宙をみつめる
そこに
「♪いま…しんじて…とびたつ天使」
歌声は
「シヴァ?」
「あんた…」
シヴァは、二人ににっこりと微笑み返し
歌い続ける
瞳には揺るがない信頼
そらされること無く、宇宙を、見つめ続ける
その姿に
シャトヤーンとノアも歌いだす

歌は歌を呼び

「「♪エターナル…ラブ…!」」
光線の雨霰をかいくぐり
螺旋状に軌跡を描きながら飛ぶのは
「いくぜぇ、マリブ!」
「了解!ココモ」
双子の星
対照的な二人は、それでも、まるで互いが互いをカバーするかのように
飛びながら、敵を叩き落していく

そして、いつしか…

「♪ひかり、あびて…」
ツインスターの後方から、増援を集中砲火するのはウォルコットとルフトが率いる皇国軍艦隊
タクトとエンジェル隊を除けば
皇国最強といっても過言ではない、双璧
「♪つばさ…ひろげたなら…」
老軍人ふたりは、まるでしめしあわせたかのように歌いながら指揮をとる
遠い日々に想いをはせながら
その戦いは、いま、戦場にたって戦う
娘のような6人の天使と、息子のような一人の青年のために

クジラルーム
「♪きっと…軌跡は…はじまる〜」
クロミエが宇宙クジラに手をそえて歌っている
それはクロミエの歌のようであり
また、宇宙クジラの歌でもあった
小宇宙クジラもあわせて歌う

「♪エンジェル…イン、マイハート…」
スカイパレス
その夕焼けに染まる、そのテラスでルシャーティも宇宙を見上げていた
閃光が煌いては、消えていく
その輝きを見つめながら
歌い続ける
うたいつづける
彼女たちが歌い続ける限り

いつしか、銀河が歌っている

ドンッ
「うわぁっ」
エルシオールを一際大きな衝撃が襲った
「敵旗艦…エルシオールを射程距離に収めました!」
被害状況を確認した、アルモが、そう、告げる
モニターに映し出されるのは、巨大なシルエット
特別戦闘艦…ギア・ゲルン
だが、それもエルシオールに負けるとも劣らず傷ついていた
爆炎があがる
航行しているのが不思議なほどに
それでも、攻撃の手を緩めることはなく
ドドンッ
ドン
続けざまに、二度、三度とエルシオールが揺れる
「タクト」
あわただしくブリッジスタッフが駆け回る中
レスターは静かにその名を呼ぶ
タクトは、補給指示のために開いたミントとの回線をきると
「…あぁ」
小さく頷いて、レスターと視線をあわせた
言葉はいらない
くすっ
二人は小さく笑いあう
そして…

『みんな、聞いて欲しい』

その声は、エルシオール中に響いた
ざわっ
一瞬のざわめきのあと
『これから、エルシオールは白き月に降りる』
「マイヤーズ司令?」
ココとアルモが不思議そうにタクトをみつめた
他のブリッジクルーたちも同様だ
『そのとき…』
ブリッジだけではなく、エルシオールのクルー全てが、タクトの言葉に耳を傾けた
タクトは言葉をとめず
まっすぐに、天使たちが戦う宇宙をみつめたまま


『エルシオールクルーはすべて、白き月へ避難すること』


誰もが、その、言葉の意味を理解する前に
『これは、俺の最初で最後の命令だ。みんな…あわてず騒がず迅速に避難してほしい
 詳しい避難経路などはレスターから指示がある』
そこまでいって、タクトはちらりとレスターを見た
レスターはひとつ頷く
「どういうことだよ?!」
ジョナサンが叫んだ
「俺たちにエルシオールを降りろって…そんな…」
「そうです!それに、エンジェル隊のみなさんはまだ戦っているんですよ」
アルモが続く
「そうですよ、司令ッ!俺たちはエルシオールに残ります」
「残ります、たとえ…最後になろうとも!」
「そうだ!そうだ!」
更に、他のブリッジクルーたちも同様に騒ぎ出す
きっと艦内にいる人間すべてがおなじだろう
「みんなの気持ちはわかる、だけど…」
タクトは静かに
しかし、はっきりと

「だけど、俺は認めない」

静寂
誰も、その言葉に逆らうことはできず
時間にしてはわずかだが、長く長く感じる沈黙が、あって
「だいじょうぶ」
タクトはにっこりと笑う
全てを溶かす微笑で
「マイヤーズ…司令…」
「それに、エルシオールから降りるといったって…戦わないわけじゃない
 エルシオールが飛べなくなったら、紋章機の補給は白き月でしか行えないからね
 みんなには白き月でやってもらうことが山ほどあるよ」
ざわざわ…
和んだ空気に、ざわめきが戻り
「みんながいてくれるなら、エルシオールは何度だって宇宙を飛べるから
 そのためにも、今、ここで、みんなを失うわけにはいかないんだ」
タクトの言葉がエルシオール中に届く
届く
心に…

「わかりました」
最初に答えたのは誰だったのか
「またエルシオールに乗るために、今は降りることに、します」
「そう…ですよね」
「これで、終わりじゃないんだもん」
希望が
タクトの言葉とともに
エルシオールにのっている者すべてに広がっていく
「あぁ!みんな、よろしく頼む」
その言葉に
全員が答えた
「はいっ!」

活気が一瞬にして、戻る
タクトは安堵の溜息をひとつついて、司令席に座りなおした
そして
(…ごめん、エルシオール…だけど、一人にはさせないから)
心の中で、つぶやく

「ご苦労さん」
ねぎらいの言葉が、ひとつ
「…レスター」
見上げる先には、優しい表情の副官が
タクトは手を伸ばして
自分より幾分か大きめのレスターの手に触れる
その手を握り返して
「あとは、全員を無事…白き月に送り届けるだけだな」
「あぁ」
ぎゅっ
心細くなって、握り締める手に力をこめた
そうすると、不思議と、勇気がわいてくる気がして
(しっかりしろ、自分で、決めたことじゃないか)
言い聞かせる
決めたことだ
みんなを傷つけることになろうとも
それでも、救いたい
ここで終わりにはさせない
今日は無理でも明日
明日は無理でも明後日
…いつかくる、平和な日々のために
その日々のなかで、みんなが笑っていられるように
お祭りのような騒がしくて楽しい日常
地上(ここ)から、銀河中をまきこんで
はちゃめちゃで刺激的で
でも、どこか優しさと暖かさに満ちた
そんな毎日がずっと続くことを、願っている
そう…
たとえ、その日々に二人がいられないとしても
地上より永遠に…俺とレスターがいなくなることになろうとも

「敵旗艦から、攻撃、きますっ!」
モニターを確認したココの声
「タクトっ」
名前をよばれ、思考を振り払う
そして
「だいじょうぶだよ」
力強く一言
そのまま、にっこりと笑顔で立ち上がる
絶妙のタイミング
まるで、最初から打ち合わせていたかのように

6色の光の翼が、エルシオールを護るように舞い降りた

「参りますわよ!フライヤーダンス」
トリックマスターから3基のフライヤーが踊り出る
それは、ミントの言葉と共に一斉に開くと
エルシオールに向かう攻撃をすべて相殺した
その隣では
「ナノマシン…全方位発動、リペアウェーブ」
ヴァニラの祈りとともに、ハーベスターから淡い光が広がる
まるで雪のようにキラキラと輝く柔らかい光
宇宙に降る雪は、傷を癒し

銀河を駆ける翼

「いっけぇ!アンカークロー!」
時間差で2つのワイヤーアンカーが敵旗艦に向かう
敵の攻撃をかいくぐって、ランファのカンフーファイターが宙を舞う
華麗に、そして力強く
そのランファに向かう敵を
「退きなさいっ!フェイタルアロー」
シャープシューターからの3連続光速弾が打ち落とす
ちとせは視線を反らさない
前を見据え、戦い続ける

美しく…最強の天使たち

「バーンとやっちゃいます!」
「これで終わりにするよっ!」
敵旗艦まで一直線
その空間に舞い降りる、二つの翼
ラッキースターとハッピートリガー
「ハイパーキャノンッ!」
「ストライクバースト!」


光の路が銀河を真っ二つに…


ドンッ
その衝撃に、ゲルンは自分の最期を悟る
「ふはははははは…わしは、ヴァル・ファスクの王」
だが、その態度はかわることなく
「わしが死ぬときは、宇宙の終わり」
両手を広げる
全てを飲み込むかのように
「せいぜい、華々しく散るがいいわ!」
高らかな笑い声は
最期のその一瞬まで途切れることはなかった

ヴァル・ファスク
その最期をタクトは見届けると
6っつのモニターと向かい合う
「みんな、ありがとう」
銀河の片隅
星空の下で出会った一人の青年と、6人の天使たち
『こちらこそ、ですわ。タクトさん』
『はい…タクトさんがいてくださるから、私たちは今日まで戦ってこれました』
ミントとヴァニラの笑顔を確認する
『礼をいうのはまだ早いんじゃないかい?司令官殿』
『そうよ、タクト。本番はこれからなんだから!』
フォルテとランファの言葉で、気持ちを落ち着けて
『タクトさん、最後のご指示を』
『いきましょう、タクトさん!』
ちとせとミルフィーユに笑顔をかえした



それは、星空の出会いからはじまった物語



2005年04月10日(日) 今日は21話なんですが…の日

本日は21話なんですが、あとあと書き直すかもしれません…

第21話「星空の誓い 鯛づくし」

…それは、遥か未来
星空の下でかわされる、永遠の誓い

「…タクト?」
レスターは足をとめてつぶやく
彼はそこでぼんやりと星空をみていた
「レスター…。ブリッジはもういいのか?」
声をかけられたことに気がついて、タクトが振り返る
「あぁ、まぁ最後のクロノ・ドライブにはいったからな。正直…もうすることもそんなにない」
「ご苦労様」
「いや…。それより、話っていうのはなんだ?」
「…うん」
タクトはあいまいな返事をかえすと、再び星空を見上げる
見えるのは
「なんか、ずいぶんと遠いところにきたんだな…」
「…あぁ………」
言葉は続かなかった
何か考えているのかもしれない
いや、ちがう
夜の銀河展望公園
星と月の光をうけるその姿はまるで…
まるで
「…なにを考えている?タクト」
「ん?」
「お前が静かなときは、ろくなことを考えていない時だからな」
答えは無い
レスターはため息をつくと
手を伸ばす
長い指が届いてタクトの手首を掴んだ
そのまま引き寄せる
透き通るような月灯りに、その細い輪郭が溶けて消えてしまいそうだったから
抱きしめて、静かに、次の言葉をまつ
しばらくそうやって、互いの暖かさをわけあって
二人の体温が同じくらいになったころ

「クーデターの時にね、高い理想をもっている人がいたんだ」

それは、まるで独り言のようなつぶやき
「その人は、その理想の高さゆえに、決してやってはいけないことをやってしまった」
(…それは)
思わず言葉にしかけた想いを寸前で止める
「酷い人だった…でも、優しい人でもあった…優しいからこそ、時には非情で、そして愚かだった」
「…タクト」
「好きだった…俺は、あの人のことが…彼はどこか俺とおなじモノをもっていたから…
 共鳴というか、惹かれたんだよ…言い方があるとしたらそれくらいしかないけれど………」
(…それは)
その人物の名前にこころあたりがある
だが、それを口にするこはできなかった
「彼の理想は高くて…高すぎて、そのせいで”黒き月”に利用されるかたちになってしまったけれど…
 彼は最後まで、自分の気持ちには正直だった…本当はね、本当は………俺は、彼を救ってあげたかった」
耳が痛い
「救ってあげたかった…救えなかったけれど…本当は、みんな救いたかった…高い理想をもつ彼も、
 その理想に命をかけた人も…そして、力のために自ら人間を捨てた彼らも…もちろん、犠牲になった人たちも」
ちがう
痛むのは、心だ
その刹那さが、心に染みて痛く
「救いたかった人たち、救えなかった人たち、かわりに、俺が選んだモノ…俺が選んだ人たち…
 そんなことを、最終決戦前に、再確認しておきたかったんだ」
言葉が
でなかった
なにか喋らなくちゃいけない
だが、言葉がみつからない
形にならない
気持ちだけが、胸のなかに、どろどろと、渦巻く
ただ、抱きしめることしかできない自分に、タクトは申し訳なさそうに微笑んで
「ありがとう…レスター」
一言
その言葉で、気づく…
それは、自分に向けられた言葉ではなかったことに
タクトは名残惜しそうに、レスターの腕をはなれると
少し離れた草の茂みに近寄る
そして

「ごめん、みんな。今日だけはレスターと二人っきりにしてくれるかな?」

がさっ
風もなく草木が揺れた
がさがさ
がさ…
それは、しばらく続いたが
やがて沈黙

「よし、おっけー」
「まったく、あいつらは…」
レスターがやれやれとため息
「今日の話ばかりは、聞かれるわけにはいかないからね」
その呟きに
はた、と思い当たったことをきいてみる
「タクト、まさか…さっきの話はそのための前置きだったのか?」
タクトはあっさりと
「そうだよ。最初っから”二人っきりにしてくれ”って言ったって、みんな納得してくれないだろうから」
「…あいつらもあいつらだが、お前もお前だ」
彼女たちも一筋縄ではいかないが、この恋人も一筋縄ではいかないということを
改めて思い知る、レスターであった…
「ひどい言われようだなぁ」
しくしくと泣きながら、タクトは視線を空へもどす

二人の頭上には、いつまでも優しく柔らかく
綺麗な夜空が広がっている

「綺麗だよな」
「まぁな」
「でも…こんな綺麗な空も見上げず、宇宙を壊す準備をしている奴もいるんだよな」
不安そうなタクトの言葉
いつか、スカイパレスのテラスでかわされたのと同じもの
レスターは…
「俺たちには銀河最強の天使がいるから、大丈夫なんだろ?」
そのときのタクトの言葉をなぞってみる
だが、タクトの表情は晴れないまま
「…そう、彼女たちは強い…強くて、優しい…銀河を護る、最強の天使………」
「タクト?」
「彼女たちならきっと…」
そして言葉は同じところで途切れた
タクトの瞳がレスターを見上げる
レスターは瞳を反らさない
ただ、ただ静かに言葉を、まつ
タクトはそれを確認すると

「彼女たちならきっと、この銀河を救ってくれる」
 たとえ、それが…自分の命を犠牲にすることになったとしても」

風が吹いた
「命をかけて」
声が響く
「だけど、俺は嫌だ!…そんなのは、いや、なんだ」
響く
あたりに
星空に
心に
「世界が平和になったって、ミルフィーが、ランファが、ミントが、フォルテが、ヴァニラが、ちとせが…
 エンジェル隊のみんながいないなんて…そんなのは、嫌だ!」
「タクト…」
手を伸ばそうとして、やめる
タクトの告白はまだ終わらない
抱きしめてやるには、まだ、はやい
「1年前…クーデターの、あの日…あの星空の出逢いから、俺の世界は広がった
 暗黒時代だった人類に白き月が天恵を与えて、世界を広げたように
 レスターやウォルコット中佐たちだけだった俺の世界を広げてくれたのは彼女たちなんだ」
にぎりしめられた拳が震える
「彼女たちがいなければ、お前と…こうして、向き合うことも…きっと、なかった」
「…あぁ、そうだな」
自分の気持ちに正直に
そういって、本心を押し殺す癖のあるタクトと
気持ちに不器用な自分の背中を押してくれるのは、いつだって彼女たちだった
「これは、俺のわがままだ…世界は救いたい、だけど…彼女たちを失うのは嫌で…
 俺は弱い…目の前で、彼女たちを失うのが耐え切れないんだ…」
心の弱さ
たとえ、最悪の結末になろうと
そのとき、その一瞬の刹那まで
彼女たちを信じ、見守ることのできる強さが…ない
無い
その命の重さを、背負う自信さえ…
「…俺には選べない、世界の運命か…彼女たちの命か…その両方を天秤にかけることはできないよ」
命をかけて護りたいものがありますか?
それとも…
やはり、命より大切なものなんてないのでしょうか?
答えは、たぶん、でない…
人間が人間である限り、永遠に
「でも、レスター」
タクトはそこで、やっとレスターの顔をみた
優しくて
でも、どこか悲しい
そのくせ
決意に満ちた眼差し
「俺に、選べるものが、ひとつだけ…ある」
その答えを、自分は、知っている
レスターはそんなことを、思った
天秤にかける、もの

「世界の運命と、俺の命…それだったら俺にも選べるんだ」

クロノ・クェイクへの唯一の対抗策
そのために必要なもの…無限の可能性を秘めた特殊なクロノ・ストリング・エンジンとH.A.L.Oシステム
銀河広しといえど、それが使われている戦闘機は7機(そのうち1機は大破してしまった)
だが…戦闘機以外で、一隻…同じものが使われている船がある
紋章機が白き月で発掘された時、同じように発掘された「動く宮殿」
この宇宙で唯一、紋章機を収納することができるロストテクノロジーの結晶
儀礼艦エルシオール

「タクト、お前…自分がいってることを理解してるだろうな?」
「わかってる。もちろん、その時は、他のみんなには降りてもらう」
「…それが、逆にエンジェル隊のやつらを苦しめる結果になると知っててか?」
「そうだ」
答えに迷いは、ない
あぁ…
あぁ、そうか…
そういうものなのかもしれない、人間なんて
弱くて
脆くて
でも…
自ら、別れを選ぶ強さも持っている
本当は、彼女たちと、一番離れたくないのは自分だろうに
憎まれることになるだろうに
それでも…彼は選んだのだ
だったら俺も迷うことは無い
「わかった」
言葉は、ひとつ
それを確認すると
一つ深呼吸
顔をあげる
まなざしを、かえす
そして
言葉をまつ
今日、今、ここに…
俺が呼ばれた、本当の、理由
その言葉を
「それで…レスター」
タクトは震える手を、前で組む
まるで祈るように
「お願いが…あるんだ…」
震えている
だが、まだ抱きしめるには、早い
”わかってるから、なにもいうな”
そういってしまうのは簡単だけれど
「俺は…」
タクトをまつ
ただ、ただ静かにその言葉を、まつ
それは、彼の口から直接聞かなければ、意味のないものだから
たったひとつの願い…



「レスターとずっと一緒にいたい…」



ふたり、いっしょ、いつまでも、どこまでも
そう…
たとえ二度とこの世界に戻ってこられなくても
「俺、死ぬのは怖くない…だけど、一人は怖いんだ…レスターと一緒にいられないのが何より怖い…
 だから…だから、最後のその一瞬まで、どうか一緒にいてほしい」
答えの…
言葉のかわりに、手を伸ばす
捕まえて、抱きしめてやる、やっと
随分と長いあいだ、お預けを食らっていた気分で
「レスター?」
「俺は…」
抱きしめる腕に願いをこめるように、力をこめながら

「俺はいつだってタクトのそばにいたし、これからだってずっとそばにいてやりたい…
 タクトの望むことはなんだって叶えてやりたい…俺は、タクトが幸せでいてくれればそれでいいんだ」

星空の下でかわされる、永遠の誓い
その証として、キスをひとつ…贈った

俺の幸せは、タクトの幸せ
タクトの幸せは、俺の幸せ
俺たちは今までそうやって生きてきたし
これからだってそうやって生きていく
二人の願いはいつだって同じだった
ずっと…
たぶん、出逢ったあの日から、なにひとつ、かわることなく
「ごめん…ごめん、レスター…俺、おれ…お前になにもかえせない…」
タクトが子供のように泣き出す
「いつも迷惑かけてばっかりで、命まで欲しいなんて…そんな風に願うのに…
 俺から…お前にしてやれることなんて…ないんだ」
「なにいってるんだか」
その涙をぬぐってやりながら
「お前、俺を愛してくれてるんだろ?それ以上があるっていうなら俺が知りたい」
それはそんなに難しいことじゃないと想う
俺はタクトが好きで
そして、タクトも俺を好きだといってくれる
それだけのことなんじゃないかと…
好きだ
だから、一緒にいて欲しい
どうか傍にいて欲しい
それはあたりまえのことだと思う
二人とも、同じ願いで、同じ想い

いつもそばに…

だったら、なにを悩む必要があるんだろう?
「ごめん…ありがとう…レスター…でも、俺の命は…お前のものだよ」
「タクト…」
「俺の全部はお前のものだ…俺にできることは、それくらいしかないけど…」
「それは、まぁ…なんというか…」
コホン
咳払いが、ひとつ
「お前…俺のこと誘ってるのか?」
今のは、かなり、きた
少しやばいくらい
「…え?…ぁっ」
その意味を理解して、タクトの頬が真っ赤に
…っぷ
どちらからともなく笑いがこぼれて
あとは笑顔
タクトが笑ってくれるなら
もう、俺は他になにも望まないから

「あ、流れ星だ」
「んー?」
銀河の運命を背負って立つその尊い姿を
俺はただ抱きしめてやることしかできないけれど
それでも
それが、それだけが俺にできることだというのなら
この命が続く限り…最後の一瞬まで
タクトの望みどおり
ずっと一緒に…
「なにを願うんだ?」
「そうだなぁ、やっぱりみんなのことかな」
「…今までの流れだと…普通、そこは俺とのことじゃないのか?」
「あははは、やだなぁレスター」
タクトはひとしきり、笑うと
「だって、わざわざ流れ星に願わなくても、お前は俺といっしょにいてくれるんだろ?」
「…それも、そうか」
なにかに叶えて貰うのでは、それは確かに意味がない
願いはひとつ
永遠の誓いは、タクトのために
ならば祈りは、戦う彼女たちのために
「そういえばレスター…今、この銀河で彼女たちがなんて呼ばれてるか知ってるか?」
「いや…?」
タクトは小さく笑うと
「銀河を護る最強の天使たち…その名は………」



…それは、遥か未来
絶望で漆黒に塗りつぶされた銀河を駆け抜ける
6人の天使と1組の恋人たちの物語



その名は…





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