狼森、笊森と盗森

2005年04月02日(土) 日記前借の日

1日1話UPできないのでは、日替わり連載とはいえないので
二つに分けた分は、1日としてカウントします
というわけで、日記がかなり前借状態となるんですが
まぁ、もうほとんど日記としての役割をはたしてないので無問題
では、15話後編

地上より永遠に…俺がいなくなったとしても

白き月・宮殿庭園
「あいかわらず、ここは凄いな」
感嘆の声とともに、タクトは宮殿庭園を歩く
「タクト…クーデターの決戦前、俺がここでいったこと、覚えているか?」
「え?」
その数歩あとを歩きながら,レスターがそんなことを、いった
振り返る
いつものクールな表情の副官から、その意図は汲めない
だから
「えーっと、ごめん…忘れちゃったよ」
正直にかえした
レスターは、その表情をみながら…
はぁ
ため息を、ひとつ
「なんか、大事なこと、だっけ?」
「いや、大したことじゃない」
レスターはそういうと
その長い腕をのばして
タクトを捕まえる
そのまま、ひきよせた
「レスター?」
「”あんまり遠くにいくなよ”あのとき、俺はそういった」
はしゃいでずんずん置くへいこうとするタクトにかけた言葉
タクトは、一瞬、納得したような顔になると
「あ、そうか。そうだったな…で、俺は"エオニア軍がたどり着くのは明日だし、ちょっとくらいは平気だって"って言ったんだっけ」
「…なんだ、憶えてるじゃないか」
ほっと
レスターは安堵のため息
「憶えてるよ…それが、どうかしたのか?」
タクトは不思議そうに首をかしげる

その光景をみつめる視線が多数
がさがさ
(ちょっと、押すんじゃないよ…きづかれちまうだろ)
(みえませーん)
(いたっ、ランファさん足をふまないでくださいまし)
(みえませーん…)
(ちょっと、ヴァニラ、あんたそのピンクの粗大ゴミ邪魔!)
(失礼な!だーれがピンクの粗大ゴミですか)
(燃えるゴミ)
(ヴァ、ヴァニラさーん)
(しっしずかに)

お約束の光景に、きづいているのかいないのか
レスターは言葉を続ける
「あのとき、俺はもっと別の意味でお前にそういった」
「…え」
別の意味?
それこそ、意味がわからなかった
疑問符をあげるタクトに、レスターは少し呆れた顔をすると
「お前が、俺のところから、離れていくと思ったよ」
その手をとって、頬にあてる
暖かい
「えーっと、それって…」
「士官学校からずっと一緒で、軍にはいって、お前の副官になれたとき…俺はこれでもうお前とはずっと離れないんだと思った」
握り締める
いつだって手を伸ばせば掴むことが出来た、優しい手
「ずっと、一緒じゃないか」
「あぁ。だが、この1年間で俺は何度もお前を手放しかけた…エオニアに攫われた時、お前を傷つけた時、俺がちとせを庇った時、
 そして今も…俺は恋人というだけで、お前の隣にいる努力をいつの間にかしなくなっていた」
「レスター…」
「エンジェル隊と出会って、お前がいつの間にか”皇国の英雄”なんて呼ばれるようになっていたときに気づくべきだったな。
 あの決戦前夜…俺はすでにどこかでは理解していたくせに、認めたくなかったんだ…だから、そんな言葉しか言えなかった」
「そんなこと、ないよ。俺はレスターがいるからどこにだっていけるんだ…お前が俺のことを待っていてくれるから…
 この1年間、どんなことがあったって前をむいて戦ってこれた…レスターが悪いことなんてなにひとつ、ない」
つかまれた手が、あつい
涙がでそうな、体温
「…エオニアに攫われたのは俺が油断したからだ、そのあともあの人を見捨てられなくて何度もお前を傷つけたのは俺のほうだ、
 俺のためにちとせを庇ってくれて…そして、お前は帰ってきてくれたじゃないか。いったろ?俺はレスターのそばにいるだけで
 幸せなんだって、こうして腕をのばせばお前がいてくれる。それ以上はなにも望まないって」
違う
あついのは、涙がでるからだ
いつのまにか、頬を雫が伝っていく

がさっがささ
(あのやろうっ、タクトを泣かせやがって!)
(フォ、フォルテさん、おちついて、おちついて)
(静かにしてくださいまし)
(泣いてるタクトさんもかーわいい)
(はい!先輩)
(酷い人たちだ、その点、ヴァニラさんは…)
(ちょー萌え)
(ヴァ、ヴァニラさ…)

「タクト…悪い、泣かせるつもりじゃなかったんだ」
空いている片方の手で、レスターはタクトの涙をぬぐってやる
タクトはしばらく泣きつづけた
「なぁ、タクト…俺もお前のそばにずっといたい」
「…ん」
「だが、ただ傍にいるだけじゃ意味がないんだ。傍にいたってお前を傷つけるだけじゃいないほうがいい」
「そんなことは…」
否定しようとした言葉を、さえぎる
譲れないものがあるのだ
「お前になくても俺にはある、俺は俺といることでお前が傷つくのが嫌なんだよ。
 俺は、俺の手でお前を幸せにしてやりたい」
「レスタァ…」
「いったろ?一人でなんでも抱え込むなって。俺はお前が苦しんでいるのを見るほうが辛い」
「…」
「それとも、タクト。お前…俺になんて話しても仕方ないとかおもってるのか?」
「そんなことあるわけないだろっ」
「じゃぁ、もう隠し事はなしだ」
ビクリッ
手を伝わって、震えが、はしった

(えっ?)×6人+1匹
茂みで聞き耳をたてていた全員も驚く

タクトの怯えた瞳が自分を見上げる
レスターは瞳を反らさない
ただ、ただ静かに言葉を、まつ
タクトは…
タクトは、一度目をとじて涙を払うと
「どこまで知ってるんだ?」
「ノアから一通りはきいてる、だが、お前の口から直接聞きたい」
「………」

一つ深呼吸
顔をあげる
まなざしを、かえす
そして

「エルシオールの司令席には、H.A.L.O.システムが使われていた」
「…」
「知ってのとおり、H.A.L.O.システムは脳に直結している…俺が倒れたのはあの時、エルシオールが暴走したときの影響が
 負荷としてかかったせいでもあるらしい…そして」
タクトはそこで言葉をひとつ、きる
少し迷う
それでも
「そして…負荷の影響の副作用として」
握られていた手を、握り返した
ちからをこめる


「記憶がなくなっていくって」


ざわっ…
風が吹いた

(なっ…)
(うそ…)
(タクトさん)
(あの馬鹿、またあたしたちに内緒で…)
(おちついてください、ランファ先輩)
(静かに…)
(続きがあるみたいですよ)
ごくりっ
息を飲んだのは誰だったのか

「ケーラ先生の話だと、新しい記憶からどんどん日を追うごとに消えていってるらしいんだ…」
「タクト…」
「本当をいうと…俺、倒れたときのこと覚えてない…目を覚ましたらいきなり白き月で、お前がいなくて…
 エンジェル隊のみんなもいなくて…ヴァインとルシャーティを追っていったって聞かされたけれど、信じられなかった
 だって、俺の中ではまだ二人とあってから数日しかたっていなかったんだ」
正直に打ち明ける
レスターはタクトを抱きしめた
肩ごしに、宇宙が、見え
それはあまりにも綺麗な夜空で、タクトの涙を更に誘う
「ごめん…ごめん…っ、お前を信じてないわけじゃないんだ…ただ、知らずにすめばいいと思ったんだよ」
深い考えは、ない
ただ、ただ、そこにあったのは、大切なひとたちに心配をかけたくないという、純粋な気持ちだけ
「馬鹿だな、本当に…いつまでも隠しとおせるわけないだろう?俺だけじゃない、エンジェル隊のやつらにも」
言っておくが、あいつらは俺より、タクトのことに詳しい、タクトマニアなんだ
と、つけたす

(そのとおり!)×6人+1匹

タクトは、少しだけ笑った
「ごめん…ありがとう、レスター…でも、お前にこうして抱きしめられて嬉しいって思うことも
 きっと明日には忘れてしまうんだろうな…ごめん、ごめんなレスター」
「馬鹿だな、そんなものはいくら忘れたっていいんだ」
「…え?」
レスターの言葉に、タクトは驚く
おそるおそる、その表情をみた
レスターは微かに笑うと
「いったろ?ずっと一緒だと。だったら俺は毎日、毎日、お前を抱くよ…お前が忘れたら、忘れた分
 いや、それ以上に抱きしめてやる」
「レスター…」
「好きだと伝えてそれを忘れるなら、毎日、好きだといってやる
 愛しているといってそれを忘れるなら、何度だって、愛しているというさ
 たとえお前が俺のことを忘れても…だ。いったろ?俺からお前を手放すようなことはしないって」
あふれる涙をぬぐう
何度でも
何度も
その涙が乾くまで
その涙が乾いても
夜空を見上げる
1年前、決戦前夜に見上げたのとは違う宇宙
だが、その美しさだけは変わることなく
どこまでも続く、星の海
「レスター…」
名前を、よぶ
タクトの腕に力がこもる
精一杯の力で、レスターを抱きしめ返す
「記憶がなくなるのは、正直、怖い…昔と同じように、きっと俺はどんどん”からっぽ”になっていく
 俺はいる、だけど今ここにいる俺という存在とは、それはやはり別の人間で…
 死ぬわけじゃないけれど、ここから、今の俺という存在は、永遠に消えてしまうってことだと思う
 昔は…あの頃は我慢できた…けど、今はもう駄目だよ、俺には絶えられない、みんなのことがわからなくなるのも
 そして…俺が記憶をなくすことで、みんなが傷つくのも」
抱きしめる腕に力をこめる
痛いくらいに
だが、その痛みは心地よく
心地よさに目をつぶり
その強さの分、勇気をもらう
「俺は…全力で解放戦に挑むよ。俺の全てをかけてEDENをヴァル・ファスクから救ってみせる
 たとえ記憶が戻らなかったとしても、平和になったEDENが、いまの俺がいた証として残るように」
「タクト…」
名前を呼ばれて、タクトは少しだけ悲しそうに微笑んだ
しばらく何かを考えるように、沈黙する

ぽろっ
最初に泣いたのは誰だったか
(ちょっと、ミルフィー、泣くんじゃないよ)
(だ、だって…)
(そうよ、きづかれちゃうじゃない)
(そういうランファさんも、ですわ)
(あ、あたしのは違うわよ、これは、汗よ!汗!)
(涙は心の汗)
(タクトさん…クールダラス副司令…)
(あの、ちとせさん、私で涙ふくのはやめてほしいんですが…あぁ、ぐちょぐちょ)

考えがまとまったのか、決心したのか、タクトはゆっくりと、口をひらいた
「レスター、甘え次いでに、ひとつだけお願いしてもいいか?」
抱きしめていた手を、少しだけ移動させる
まだ微かに青痣が残る顔を、大切なもののように触れ
視線を合わせる
レスターは微かに頷いた
だから、タクトは笑う
自分にできる、精一杯の笑顔

「覚えていて欲しいんだ。俺はお前のこと…タクト・マイヤーズはレスター・クールダラスを愛してるって
 お前が覚えていてくれるなら、俺は何度だってお前を好きになる、何十回何百回だって恋をする
 永遠に、愛してみせる…だから、それだけは忘れないでいて欲しい」

たとえ
地上より永遠に、俺という存在がなくなったとしても…
「タクト」
唇が重なる
「忘れねぇよ」
何度も、何度も、数え切れないほど
「忘れるものか…」
「ありがとう、レスター…愛してる、愛してるよ」

二人の頭上には、いつまでも優しく柔らかく
綺麗な夜空が広がっている

「地上より永遠に…俺がいなくなったとしても…この気持ちだけはお前のものだから」



2005年04月01日(金) 代休消化連休…の日

今日から、代休消化のための連休にはいりますv
そして、今日もまっぷたつ…すまんこってす

15話前半

第15話「パーペチュアルライス」

地上より永遠に…

その姿を、一番最初に見つけたのは自他共に認めるラッキーガールのミルフィーユだった
「あっ!!」
「なによ、ミルフィー…い?」
「う…」
「えぇっ!?」
「…おー」
「…!」
全員がミルフィーユと同じ方向をむき、同じように驚いた表情
そして、見事に次の行動が重なった

ドタドタバタンドタンッドタッバタッガンッ!

降りる、というよりも、ほとんど落ちるようにタラップを下る
全員が我先にと競い合うように地面に足をつけるのと

「みんなお帰り、おつかれさま」

その言葉が、重なった

「タクトさんっ」×2
ミルフィーとちとせが同時に抱きつく
「うわぁっ」
バターンッ
勢い良く飛び掛られて、そのまま、後ろに押し倒された
「あっちゃー、だいじょうぶかい?」
フォルテがかけよる
「び、びっくりしたぁ…」
目を回しながら、タクト
「ったく、しょーがないねぇ…ほら、つかまりな」
やれやれと、フォルテがタクトを起こした
「ごめん、ありがとうフォルテ」
「えへへへ、すいません。バーンとやっちゃいました」
「す、すいません」
ミルフィーとちとせも立ち上がる
「いやいや、両手に華で大歓迎だよ。ミルフィー、ちとせ」
「タクトさん、もうよろしいんですの?」
「やぁミント。心配かけたね、もう大丈夫だよ」
心配そうにそばによってきたミントに笑顔をかえし
それは、たしかにいつものタクトで
「よかった、です」
ヴァニラはほぅっと胸を撫で下ろした
「ヴァニラのおかげだよ。ありがとう」
そこへ
「………」
「ランファ?」
すっとタクトの前にランファが立つ
ランファは無言でタクトを見詰め
「えっと…ら,ランファ…な、に?」
その沈黙にそろそろ耐え切れなくなって、タクトが口を開くと
「馬鹿っ、ばかばか、この馬鹿タクト!」
ぽかぽかぽかぽかぽかっ
「ら、ランファ…」
「心配したんだから、この、ばかぁっ!」
「ごめん、ランファ」
早口にまくしたてるランファに、タクトは申し訳なさそうに謝った
と…

「タクトっ」

声がして、タクトは顔をあげる
駆けてくる、人影
タクトは…

「レスター?おまえ、その顔…どーしたんだよ?」

真っ青な痣のできている、副官の顔をみて、正直に一言
だが、レスターはなにもいわずに
「…っうわ、レ、レスター?」
抱きしめた
「まて、まてって、みんな見てるったら、レスター」
じたばた
事態の飲み込めないタクトは必死で抵抗するのだが、レスターは手放すどころか、ますます腕に力をこめる
「痛っ、やたらめったら痛いって」
「タクト…タクトっ………タクト…」
いつまでも自分を離そうとしないレスターから、なんとか顔をだす
「もう、なんだよ…みんなし、てぇえ?!」
その肩越し、タクトは、信じられない光景を、見た

「マイヤーズ司令!」
「タクトさーん」
「もうだいじょうぶなんですかー?」
「司令さーんっ」
「おあついっすー」
「無理しないでくださいよ、司令ー」
「おかえりなさい、マイヤーズ司令」
「おかえりなさいっ」
「タクトさん、おっかえりー」

エルシオールの窓という窓、出入り口という出入り口から覗く、ひと、ヒト、人の山
そして、おかえりなさいの大合唱
「な、なに?え?みんなどうしたんだよ?」
「みなさん、タクトさんが帰ってきてくださって嬉しいんですわ」
「はいっ」
「え?」
ミントとちとせが笑いながらいうが、タクトにはなんのことかよくわからない

「ほら、レスター。気持ちはわかるけど、タクトの帰りをまってたのはあんただけじゃないんだよ」
「そうですよ。独り占めはずるいですよ」
フォルテとミルフィーがレスターの肩をたたく
そこでやっと、レスターはタクトを手放した
解放されて、タクトはまず一呼吸
「タクトッ、さっさとみんなに顔みせてあげなさいよ」
「はい、みなさんお待ちです」
追い討ちをかけるように、ランファとヴァニラ
タクトは疑問符をだしながらも
「あ、あぁ…」
なんのことかわからないけれど、と顔には書いてあったが口にはださず
エルシオールにむかう
そして
「ただいま、みんなー」
叫ぶ

「おかえりなさいっ」

声は、まわりから7人分、そしてエルシオールから一つとなって帰ってきた



「え?じゃぁタクトさんの病気は完治したわけじゃないんですか?」
白き月の医療施設
その一室に、ミルフィーの声が響く
「えぇ。完治するためには病原体から血清を作る必要があるの
 けれど、残念ながらこの病原体はトランスバールでは未発見なのよ」
「具体的に、どのような病気なんですの?」
ミントが興味深そうに質問する
「進行性の神経麻痺ね。じょじょに体が動かなくなったり、頭が働かなくなったりするの」
ケーラ女医はわかりやすく説明する
「とはいっても、進行はきわめてゆっくりとしたものだから明日、明後日でどうにかなるものでもないわ」
「よかったぁ」
ランファが安堵のため息
それを、優しい微笑みでみつめると
「あなたたちの話が本当だとするなら、病原体はEDENまたはヴァル・ファスクにある可能性が高いわね」
「ってことは、EDENを解放すればタクトは完治するんだね?ケーラ先生」
「理論上ではそういうこと」
パタンッ
ケーラ女医は、カルテを閉じる
そしてにっこりと笑うと
「貴方たちならきっとできるわ、がんばって」
太鼓判を、押した

「じゃぁ、レスターのあの青痣はココモが?」
恋人の顔にあった痛そうな青痣を思い出しつつ、タクト
「あったりまえじゃん!ホントはあと2,3発なぐってやろうとおもったんだけどよ」
「メアリー少佐にとめられたんだよね」
クスクス、マリブが笑いながら言う
「仕方ねーだろ、それに中佐が我慢してるのに、俺がそうバカスカ殴るのも悪いしさ」
「ココモさーん、暴力はいけませんよ」
自慢の髭をいじりながら、ウォルコットの呟き
すっかりいつもの、冴えない老人に戻っている
「ところで、そのクールダラス副司令はどこにいかれたんでしょう?」
ちとせはあたりを少し見回しながら、レスターがいないのを確認し
「あぁ、なんでもノアと少し相談があるとかいって」
「ノアさんに、ですか?」
「ったく、またタクトほったらかしかよ!タクト、悪いこといわねぇって別れちゃえよ」
「コ,ココモ;」
「俺だってでっかくなれば、あいつなんかよりもっともーっといい男になるぜ」
「将来性でいうなら、僕もありますよ。タクトさん」
「マリブまで」
はぁとタクトはため息ひとつ
そして
「気持ちはありがたいけど、俺、レスターが好きだから駄目だよ」
にっこりと笑顔でお断り
(二人とも兄離れができないなんて、まだまだ子供だなぁ)
とは、兄代わりとしてのほのぼのとした意見なのだが
実は、双子はタクトが考えるよりもずっと真剣だったりするのだが、気づく気配はまるでなし
「ちぇー」
「残念」
ココモとマリブは同時に肩をおとしつつ
(ほんと、鈍いんだから)
(…そこが魅力的っていうと否定できないけど)
(まぁ、まだまだ先は長いし…)×2
それでもめげずに同じことを、考えた
性格がまるで正反対とはいっても、やはり双子、根っこの部分は同じなのである
そんな双子はさておいて
「しかし、流石の私も今回ばかりは生きた心地がしませんでしたな」
「すいません、中佐…」
「…タクトさん、子供の一番の親孝行は、親よりも長生きすることなんですよ」
「…」
「私の夢は、老衰で死ぬときにタクトさんやエンジェル隊のみなさんに看取ってもらうことなんです
 老いぼれのささやかな夢のために、どうか無茶はしないでください…」
そこまでいうと、老軍人は静かにお茶をすする
タクトはその姿に、若干、涙をうかべながら
「…はい、中佐」
はっきりと返事をかえした



「?」
ヴァニラはふと、足をとめた
「どーしました?ヴァニラさん」
ノーマッドがたずねる

「話し声が…」
「そういえば、なんかレスターさんがノアさんたちにお話があるとかないとか」
「…」
すす…
ヴァニラは扉に近づく
「あぁ,ヴァニラさん…盗み聞きするお姿もなんてお美しい…
 他の人たちがやればただの出歯亀なその行為も、あなたがするなら天使の所業です」
「静かに」
「…はい」
ノーマッドがだまる

「…ききとれない」
「それは残念です…どうします?なんなら私がちょこちょこっと内部にアクセスすることも可能ですが
 ヴァニラさんのためなら火の中、水の中、この私に不可能はありません」
「駄目」
「お優しい、なんてお優しいんでしょう、そのヴァニラさんの優しさを他の人たちも見習うべきですね
 もう感動の涙で前がみれません!…ぬいぐるみなんで涙ながせませんけど」
「自分で直接聞かないとおもしろくないから」
「…そ、そうですよねー。やっぱり盗み聞きというのは自分の耳で聞いてこそ意味がありますよね
 事の大小を問わず、全てにおいて全力投球、自分の力でやらないと気がすまないというその気高い精神
 すばらしいです、ヴァニラさーん」

ヴァニラとノーマッドが馬鹿なやりとりをしているころ
白き月の謁見の間では、ノア、シャトヤーン、シヴァ,ルフト…そして、レスターがいた
「では、タクトは…」
レスターの呟き
それはどこか、悔しさを含んでいた
ノアは呆れたように目を閉じると
「まぁ、あいつの性格だから言わないとは思ったけどね、いちおう、あんたにだけは教えておこうとおもって」
「…あぁ」
「教えたことをどうするかは、あんたの自由よ。ただし知ったからには何かしら役にたててよね」
「わかっている」
レスターは顔をあげ
そして
「このことを他に知っているのは?」
「ケーラ女医じゃ、だがもちろん口止めはしてある」
「クールダラス」
会話に、シヴァの声が割り込む
レスターは、シャトヤーンのとなりにいる幼い女皇に視線をむけた
真摯なまなざしとぶつかる
だが、どちらも目は離さずに
「タクトを、たのむ」
「おまかせ下さい」
「タクトは今回の一件、全ては自分の責任だと報告書をだした。もちろんわしのところで止めはしたがの…」
「ルフト先生…」
「心配そうな顔をするでない、軍部の連中も最初はいろいろわめきちらしおったが、タクトの代理の話になると
 顔色をかえたわい。お前とタクト以外にエルシオールとエンジェル隊を率いて前線に立とうという者などおらんよ」
「そうですね、エルシオールはともかく、タクト以外にエンジェル隊の司令がつとまるのはウォルコット中佐くらいのものでしょう」
レスターの顔にいつものクールな笑みが戻る
そして
「しかし、まさかエルシオールにH.A.L.Oシステムが組み込まれているなんて」
「紋章機ほど直接影響するものではないけどね、司令席に座っている人間のテンションが艦全体に影響するのよ
 タクトのテンションが常に一定値以上だったから今回の件がなければずっと発見できなかったかも」
ノアはなにかを考えるように手を組む
そして、しばらくしてから考えがまとまったのか
「タクトの病状が急激に悪化したのも、ヴァインがクロノ・ストリング・エンジンの制御系統に細工したせいで負荷がかかったのね
 そして、思わぬ副作用まで生んでしまった…」
「治療方法は?」
「こればかりはわからないわ、どのみちはやくEDENを解放して本来の病気を治療してみないことには…
 そのとき副作用も治るかもしれないし、別の治療法があるのかもしれないし…最悪、治らないって事も…」
「…わかった」
ノアの言葉を、レスターはさえぎった
そして、改めて全員を見渡すと
「お心遣い感謝します。あとのことはお任せください」
敬礼を一つ
全員を代表して、シヴァが口を開いた
「頼んだぞ、クールダラス」
「はい」

15話後半に続く




2005年03月31日(木) 今日でふげん勤務は終了です…の日

14話後編!

白き月を衝撃が襲ったのは、タクトが倒れてからちょうど一週間目のこと

「な、なんだ?」
地震のような縦ゆれに、レスターは病室を飛び出す
そこへ、通信がひとつ
『レスターさんっ』
それは、ミントからのものだった
「なにがあった?」
『すぐにエルシオールへ!緊急事態ですわ』
「どういうことだ?」
エルシオールが停泊している、内部ドッグへの道を急ぎながら、レスターは問いただす

『七番機が…奪われましたの』
「なんだとっ?!」

エルシオール艦橋
1週間ぶり
だが、酷く長い間はなれていたようだった
「…」
「副司令…」
心配そうな、ブリッジスタッフの声
レスターは、ひとつ深呼吸をすると
「だいじょうぶ、だ」
応えた
無人の司令席に、手をかける
そして
「通信をこっちにまわせ」
「はいっ」
アルモの返事とともに、モニターが浮かんだ
そこには
『タクトは間に合わなかったのね』
「ノア…」
『クールダラス副司令…だいじょうぶですか』
「お心遣いありがとうございます。シャトヤーンさま」
レスターは二人に向けて、一礼
顔をあげるのをまって、ノアは
『単刀直入にいうわ、7番機が奪われたの。なんとしてでも、奪り還して頂戴』
「犯人は?」
尋ねたが、レスターはその答えを知っている気がした
他の者たちの表情も、同じ
犯人はわかっている
だからそれは、確認、だったのだと思う
ノアは
『ヴァインとルシャーティよ』
「…」
『驚かないのね』
「驚いていますよ、充分にね」
レスターはゆっくりと、ノアの様子をみながら言葉を選んだ
ノアは小さくため息をつく
そして
『二人は、白き月を制御して持ち去ろうとしたの。私とシャトヤーンが気づくのがあと少し遅かったらやばかったわ
 失敗した二人はレストア中だった7番機を奪い逃走…クロノブレイクキャノンのおまけつきでね』
「目的は?」
『さぁね、ルシャーティがEDENの民であることは間違いない。だったら、すでにEDENがヴァル・ファスクの手先なのかも』
「…」
『どちらにしろ、二人をとっ捕まえれば全て片付くわ』
「了解」
レスターは敬礼をひとつ
「儀礼艦エルシオール、奪われた7番機奪還のために出航します」
『たのんだわ』
『マイヤーズ司令のことは、私たちにお任せください…どうか、ご無事で』
「…タクトを、おねがい、します」
そこで、通信は切れた

6色の紋章機が、駆ける
敵を蹴散らしながら
ヴァインとルシャーティの逃走が計画的だったことを裏付けるように
エルシオールと7番機の間に、ヴァル・ファスクの艦隊が立ちはだかった

「くそっ、どきなさいよっ」
ランファのアンカークローが伸びる
「ヴァインっ、ルシャーティ!私は納得しないんだからねっ!」
それは、次々と敵を撃破し

「どいてくださいっ」
ヴァニラのハーベスタ-のレーザー砲が逃げようとしていた敵艦を後ろから貫いた
「はやく、帰らなくては」
呟くと、新たな標的にねらいを定める

「早く追いつかなくてはっ」
トリックマスターのフライヤーが宙を舞う
「いきますわ、フライヤーダンス」
光の幕が、敵を一網打尽にしていく

「わーん、どいてくださーい」
ギュンッと高出力のレーザービームが、敵を一直線になぎ払った
「ヴァインさん、ルシャーティさん…どうしてですか」
泣きたいのをこらえて、必死でラッキースターの操縦桿を握る

「ちくしょうっちくしょうっちくしょう」
ガンッガンッガガンッ、殴りつけるような衝撃
「邪魔をおしでないよっ」
ガガッンッ、ハッピートリガーの引き金が怒声のように響く

「ヴァインさんっ、ルシャーティさんっ、とまってください!」
シャープシューターの、砲門が光る
「お願いですっ、お願いですからっ!」
収束した光は、次の瞬間、まっすぐに飛び、敵戦闘機に命中した

宇宙で爆発がおこる
それは、何度も,何度も繰り返し
そして
7番機以外の機体がなくなってはじめて
その通信は、開いた

『おや、みなさん…そんなに慌ててどうしたんですか?』

「ヴァインっ!」
モニターに、ヴァインの笑顔が浮かぶ
7番機の、オペレーター席
ネフェーリアとの対決の際、タクトが座っていた、その場所に
『こんにちわ、クールダラス副司令、それとエルシオールのみなさん』
ヴァインは、最初からなにひとつ変わらない笑顔でそういうと
少し首をかしげ、不思議そうな顔をして
『あれ?みなさんの大切な人の姿が見当たりませんね…タクトさんはどうかされたんですか?』
呟く
その瞬間、全員の背筋を冷たいなにかが滑り落ちた
「ヴァインさんっ」
耐え切れず、ミルフィーユが叫んだ
「どうしてですか?!どうしてこんなことを…」
『どうして?それは愚問というものでしょう』
「ルシャーティは?」
さえぎるように、ランファが割り込む
「ルシャーティもそこにいるんでしょ?!」
『えぇ、いますよ。姉さんになにか御用ですか?』
ヴァインはそういうと、モニターの視点を切り替えた
コックピット内部が映し出される
7番機のパイロット席
ルシャーティはそこに座っていた
「ルシャーティッ!」
『…』
だが、彼女の瞳はなにもうつさず、ただただ、虚空を見つめるばかりで
「ルシャーティになにをしたんだいっ、ヴァイン」
フォルテが叫んだ

『心外だな、僕が姉さんになにかするわけないじゃないですか?ねぇ』
姉さん、とヴァインがルシャーティに話し掛ける
その刹那、わずかばかり、ルシャーティーのサークレットが光を放ち
彼女はゆっくりと口を開いた
『えぇ、そうね…ヴァイン』
『ほらね』
「今のは…まさか………」
エルシオールのブリッジでレスターが呟く
同じ物を見たことがあるのだ
1年前のクーデターのとき
エオニアに攫われたタクトにも、同じ物が…
「なんてことを…」
ミントが目をそらして、呟く
「…酷い」
ヴァニラも悲しげな表情でこぼした、肩ではナノマシンペットが怒りに震えている
そんなエンジェル隊の反応に、ヴァインはつまらなそうな表情をすると
『お気に召しませんか?そうだなぁ、それじゃぁ』
キィン
耳の痛くなるような金属音がして、サークレットが光る
そして
『笑え』
ヴァインは、冷たい声で、そう、命令した
キィン
サークレットが光を増し
『うふふ、うふふふふふ…』
ルシャーティが微笑む
「やめてくださいっ」
ちとせの叫び声が、笑い声をさえぎった
「やめてください、そんな…こんな、ひどいこと…」
『これも気に入らないんですか?注文が多いなぁ』
ヴァインはやれやれと、ため息をつくと
『もういいよ、姉さん』
『…』
言葉とともに、サークレットが光を失い、ルシャーティの表情も戻る

「ヴァイン、貴様………」
『あぁ、そういえば姉さんは白き月でキチンと自己紹介したけれど、僕はまだでしたね』
にこりと
綺麗な、笑顔
画像が一度、ブレる
そして再びそこに映し出されたのは

『僕はヴァル・ファスク元老院直属特機師団長、ヴァイン』

白い肌
そして、ヴァル・ファスク特有の紋様
感情のない、瞳
「っ!?」
全員が、息をのむ音が、聞こえた
だが、それは、どこか予感めいたものだったのかもしれない
「どうしてよっ、あんた、ルシャーティの弟なんじゃないの?!」
「全部、嘘だったんですか?!」
ランファとちとせの声が、同時に響いた
『全部じゃありませんよ、姉さん…この女が、EDENのライブラリの管理者であることは本当だ』
「…嘘をごまかすために、一番効果的なのは、ほんの少し真実をまぜること」
ミントの呟き
『そういうことだね』
「なんのために…」
『もちろん、ネフェーリアを破ったという君達の調査のため…僕は君たちを高く評価しているんだよ』
「そいつはありがたいねぇ」
ありがたくって涙がでらぁ、とフォルテが自棄になって連呼する
『僕たちヴァル・ファスクには感情がない、存在価値は力できまる。君たちは合格だよ』
「合格…」
『そう。つまり…ヴァル・ファスクとして迎えてやってもいいってことさ』
ザワッ
その言葉に、ブリッジが揺れた

「断る」
ざわめきを切り裂いての、即答
それは
「クールダラス副司令…」
レスターは、モニターから瞳を反らさないまま
『もっとよく考えたほうがいいと思うが…』
「何度聞かれても答えはおなじだ」
『仕方ないな、僕も、この女も、君たちの事…とても気に入っていたのに』
お気に入りのおもちゃを取りそこなった子供のような顔
酷く残念そうで
しかし、本音の部分ではそれがわかっていたのだろう
ヴァインは表情を切り替えると
『じゃぁ残念だけれど、諦めるか…君たちを倒した後で紋章機とエルシオールは有効利用させてもらうけれど』
6色の翼と、白銀の艦を、ヴァインはみつめる
それは、品定めをするような目で
一通り見渡すと、ヴァインは思い出したように
『それと、白き月と…そこで眠っている優秀な司令官もね』
「タ、タクトさんに手を出さないで下さいっ!!」
ギュンッ
ミルフィーのレールガンが火を噴く
だが、それは7番機にあたることなく宇宙へと消えた
「ミルフィー、おちつきなっ!」
「だ、だって…」
『あぶない、あぶない…でも、この紋章機は本当に凄いな。ヴァル・ファスクの艦ならいまので落ちていたかも』
「タクトさんが、了承されるはず、ありませんわ」
ミルフィーユを慰めるミントの言葉
しかし、その応えはヴァインから
『そうでしょうね。でも、意志というのは関係ないものだ、こんな風に』
キィンッ
『あ、あぁ…っ』
サークレットが光り、ルシャーティが苦しげな声をあげた
「ルシャーティさんっ!」
『そうだな、姉がいたから、次は兄っていうのもいいな。彼は面倒見がよさそうだし…あぁ、大丈夫
 その時は、ちゃんとタクトさんの病気も治してあげますから』
「まさか…」
ヴァニラが震えながら、その言葉の先を迷った
ヴァインは笑顔を崩さずに、
『えぇ…タクトさんの病気は僕が仕掛けたんです』
そういうと、レスターに視線をむけて嘲笑う
『あの、キスのときにね。…ごちそうさまでした』
ペロリと、ひとつ、舌なめづり
「なんでタクトなんだいっ?!」
『総合的に見て、一番効果が期待できたからですよ。現実に彼とエンジェル隊の不仲、彼と副司令の不仲は戦闘にも響いた
 …それに彼は僕の正体にきづいているようだったし。あぁ、純粋に彼の才能が欲しかったというのも理由といえば理由ですか』
「ちくしょう、ちくしょう、ちくしょうっ」
ランファがカンフーファイターの中で、泣き叫ぶ
レスターは…
レスターは、ブリッジで、いつものクールな表情を崩さずに
「エルシオールに細工をしたのも、貴様だな」
確認を、した

ヴァインは少し拍子抜けしたような表情になったが
あらためて
『そうですよ、ビックリしたでしょう』
「…わかった」
目をつぶる
そして

「エンジェル隊っ!」

掛け声
『はい』
「出撃だ、攻撃目標は7番機!」
『了解いたしました』
「ただし、パイロットは両名とも捕獲する」
『難しいこといってくれるじゃないか』
「できんとはいわせん、お前たちにならできるはずだ」
『…はい』
「7番機は翼のでていない状態だ、クロノ・ブレイク・キャノンも撃てないと思うが気を抜くな」
『わかりました』
「以上だ、作戦開始!」
『やってやるわよっ』

ギュンッ
カンフーファイターが加速する
それは、7番機にむけて一直線に飛び
ワイヤーアンカーが伸びる


『そうだね、遊ぶのもこれくらいにしておこうか』

ヴァインの呟き
それとともに

ドドン

『きゃぁっ』
衝撃が、横から、カンフーファイターを、襲った
「なんだ?!」
「て、敵が…次々と、ドライブアウトしてきますっ」
「なんだと?!」
モニターを確認する
7番機の後方に、敵艦隊
「どんどん増えていきます、数の確認が…」
「うそ、そんな…」
「くっ」
次々と増えていく、敵艦表示をみながらレスターが拳を握り締めた


『迎えもきたので、僕はそろそろお暇します…エンジェル隊、エルシオールのみなさん
 もうお会いすることはないと思いますが…あなた方との日々はそれなりに楽しくもあった』

「ヴァインッ!!」

『これは、ほんの御礼です…受け取ってください』

キィィ…ィインッ
ヴァインの言葉とともに、ルシャーティのサークレットが光を増す
『う、あ…あぁぁぁぁぁっ』
「ルシャーティさんっ」
「あんた、ルシャーティになにするのよっ」
『君たちは強かった、けれど、心なんて不安定なものに頼るから、僕たちに勝てはしない』
キィィィィィ…
『あぁぁぁぁっ』
「やめてくださいましっ」
「やめろっ、ヴァイン、ルシャーティが苦しがってるだろっ」
『こんな女のかわりはいくらでもいる。そうだな、この女が壊れたら、次はタクト・マイヤーズでも使おうか』
「…駄目」
「やめてぇぇぇっ!」
キィィ…ンンッ…

バサッ

紋章機の中で、たしかに、エンジェル隊はその音を聞いた
「うそ…?」
呟きは誰のものだったろう
「7番機に…ひかりの、つばさ…が?」
でも
かつて、その7番機にタクトと乗り、ネフェーリアを打ち破ったちとせは
その真白の翼をみつめ
「なんて…悲しい、光」

レスターもブリッジで、その光景を信じられない瞳で見つめた
優雅に、白い光をはなちながら、7番機が光の翼をひろげて、いる

「しまったっ、エンジェル隊、7番機の直線上から引け!!」
「クールダラス副司令っ」
「エルシオールは前進だ、可能なかぎり斜め前に進めっ、とにかく射程から離れるんだ」
「は、はいっ」

ヴァインは最後に、いつもの綺麗な笑顔でにっこりと微笑む

『クロノ・ブレイク・キャノン…発射』



光の道が銀河を真っ二つに割った



衝撃が、エルシオールを襲う
しばらくの、静寂
そして
「た、助かった…のか」
さすがのレスターも、信じられないという風に、モニターを確認した
そして
「エンジェル隊はっ」
気がつくと、司令席から各紋章機への通信を開く
『ミルフィーユ、な、なんとか無事です〜』
『こちらカンフーファイター…ぎりぎりだけど、よけれました』
『ミント・ブラマンシュ…回避に成功いたしました』
『ハッピートリガー、フォルテ・シュトーレン…無事だよ』
『…問題、ありません』
『烏丸ちとせです、少し余波を受けましたが、損傷は軽微です』
6人の声と姿を確認
ほぅっと、胸をなでおろした

「敵艦隊、こちらにむかってきます!」
ココの言葉に、レスターは舌打ちを
そして
「エンジェル隊!体制を立て直せ」
『で、でも』
『どうするんですか?!』
「エルシオールは後退だ!追ってくる敵のみを紋章機で撃破」
『なんとかやってみますわ…』
『あれだけの数に、どこまでやれるか、わからないけどね』
「だが、やらねばこちらがやられる」
『…はい』
『ちくしょぅっ』

ヴァル・ファスクとエルシオールの一方的な追いかけっこが始まった

じょじょに消耗させられながら進むエルシオール
『もう、エネルギーが底をついちゃう…』
『ナノマシンも、です』
それは、まるで狩りのようでもあった
『フライヤーが1機、打ち落とされましたわ』
『アンカークローもよ、どこか壊れたみたい…』
時間がたてばたつほど、敗色が濃くなり、それは希望をも塗りつぶしていく
『くそっ、弾切れだ』
『…』

「俺じゃ…やはり、駄目なのか…」

レスターは、ブリッジで呟く
司令席に手をかけ
こんなとき、いつもここに座っているアイツならなんというだろう?
(タクトの顔がみたいな)
切実に、そんなことを、願った
腹がたつほど無邪気なあの笑顔で
”だいじょうぶだいじょうぶ、なんとかなるって”
そういってくれるだけで、心は救われるのに
今、必死で戦っている6人の天使たちも同じ気持ちのはずだ
いや…
このエルシオールのクルー、全てが同じことを思っていた

「タクト…」

そう、呟いた次の瞬間


『あきらめちゃだめです!!』


それは、シャープシューターから、聞こえた
「ちとせ?」
ラッキースターの中で、ミルフィーが顔をあげる
『あきらめるなんて、そんな…そんなの、エンジェル隊らしくないですよ!』
「…ちとせ」
カンフーファイターの中で、ランファもその声を聞く
『あのとき、ネフェーリアとの戦いのとき、諦めかけた私に
 ”あきらめるな”っておっしゃったのは先輩たちじゃないですか』
「ちとせさん…」
そんなこともありましたわね、とミントは、トリックマスターの中で微かに微笑んだ
『あきらめたらそこで終わりだって…私たちはいつも全員で帰るつもりで戦うんだって』
「ちとせ」
フォルテも笑った、するとハッピートリガーも心なしか調子を取り戻す
『わたし…死にたくない…死にたくない!…わたしは、帰りたい…みなさんと一緒に、かえりたいんですっ!』
「…ちとせさん」
ハーベスターのコックピットで、ヴァニラは姿勢を、正した

「そうだな、ちとせの言うとおりだ」

レスターが、応える
『クールダラス、副司令…』
「あいつも…タクトもきっと、同じことを言うだろうな」
司令席に視線を流す
何度だって、思い出すことが、できる
そこにあった
絶対に揺るがない
自分たちを信じてくれる、瞳
たとえ、いまは、ここになくても

「さっさと帰るぞ!白き月へ…タクトが、待ってる」

『はいっ!』
6人の声が同時に聞こえた
その、とき


ドドンッ
後方の敵艦隊から、爆音
「どうした?敵の増援か?!」
『大丈夫です、どんだけこようと、バーンとやっつけちゃいます』
「え、エルシオールの後方に…クロノ・ドライブ反応が…」
『挟み撃ちってわけね』
「数の予想は?」
『どれだけこようと、負けませんわ』
「…わ、わかりません」
『よし、二手にわかれるよっ』
「え、あ…で、でも…」
『…どうか、しましたか?』
「これは、この反応は…」
『…え?あ、あぁっ』
「まさか…」

全員が、注目したそこを、光の弾幕が過ぎ去った
それは、ヴァル・ファスクの艦隊に命中する
同時に

『ヴァニラさーん、ご無事ですかー』

通信
「…無事」
ヴァニラは、ぼそりと、応えた
『あぁ?!なんて酷いお姿に…御労しい…でも、もう安心してください、
 この私がきたからにはヴァル・ファスクなんてけっちょんけっちょんにのしてさしあげますよ』
画面いっぱいのピンクの物体の言葉とともに、再び、ワープアウトした艦隊から攻撃が延びる
それは、次々と、エルシオールに群がる敵艦を蹴散らして
『ふはははははは、私のヴァニラさんに手を出した報いをうけるがいい〜』
ノーマッドの攻撃は止むことがない

「あの、ピンクいのがきたということは」
『ピンクいうな!』
「はい、皇国軍の増援です!」
「どうしてこんなところに…?」
「…EDEN解放艦隊か?!」
その考えにいきあたった、レスターが叫ぶ


『そのとおりじゃ』
パッ
通信が、割り込む
見慣れた初老の男
「ルフト先生っ!」
『だいぶこてんぱんにやられたようじゃの、あとはわしらに任せい。レスター』
「…はい」
『まぁ、そうはいっても…わしの出番もなさそうじゃがの』
大見得をきったわりに、ルフトは困ったように頬をかく
「え?」
疑問符をだした、レスターに
『まぁ、あれじゃ…レスター、お前……歯の1,2本は覚悟しておくことじゃ』
ルフトは仕方ない、というふうに呟いた
「…わかっていますよ」

その横を、2機の戦闘機と少数編成の艦隊が抜く

『どこのどいつだっ!タクトをあんな目にあわせやがったのはっ!!』
ココモ・ペイローはそんなことを叫びながら、軽量級の戦闘機を倒し数をかせぐ

『たっぷりとお返しはしてあげないとね!』
普段は冷静なマリブ・ペイローも、ココモにあわせるように飛び回り
取り残した艦隊は、退却しようと反転したところを容赦なく、後ろの旗艦が宇宙の塵へとかえていく
そのブリッジでは人のよさそうな髭の老人がたっていた
名は、ウォルコット・O・ヒューイ
ただ…いつもと少し違うところは
彼のことを知る人間がみれば、思わず別人かと思ってしまうような、その表情
それはかつて”超新星の白き狼”と呼ばれていた全盛期のころのもので



こうして、なんとか窮地を脱出したエルシオールとエンジェル隊は
傷心したまま、白き月へと帰還したのであった



2005年03月30日(水) 今回も…の日

今日は第14話なのですが、やはり容量オーバーとのことなので
二日にわけます(><;)

第14話「裏切りのエンジェル隊、絶体絶命ホットドック」

白き月
封印区間の、内部ドックに、エルシオールが泊まっている
「エルシオールのクロノ・ストリング・エンジンに異常は発見されませんでした」
整備班が慌しく走り回る中、クレーター班長の声がよく通った
「…そう、ですか」
「やっぱり暴走の原因は、他にありそうね」
応えたのはノアとシャトヤーン
二人は、同じように白銀の儀礼艦を見上げる
「エンジンの制御系統になにかあったのかもしれませんが、壊れてしまっていて…」
「撃ち抜いたのはまずかったわね、まぁそれしか方法はなかったんだけれど」
「それに、もともと…エルシオールのクロノ・ストリング・エンジンの解析は紋章機ほど進んでいませんでしたし」
「なにもかもが裏目にでたってわけね」
深いため息
「修理にはどれほどかかりそうですか?」
「ほとんど取り替えですから、修理するよりかは早く仕上がると思います…あと、2日もあれば」
「わかりました、みなさんお疲れで大変でしょうが…がんばってください」
「はいっ」
シャトヤーンの微笑みに、クレーターは元気よく返事をかえした
そして
「あの、ところで…マイヤーズ司令は」
「まだ意識は戻ってないわ。原因も不明よ」
「そう、ですか…あのエンジェル隊のみなさんとクールダラス副司令に
 エルシオールのことはまかせてくださいってお伝えください」
「わかりました。かならず」
「では、失礼します」
頭をさげると、彼女はそのまま駆け足で作業場のほうへと戻っていく

「2日か…。EDEN解放艦隊が到着するのと、果たしてどっちが先かしらね」
ドッグから白き月の宮殿への通路を歩きながら、ノアが自嘲気味に笑った
「ノア…」
「それと、タクトの意識が戻るのもね。…あの、馬鹿」
そこまでいったとき、分かれ道にでる
そして
「私はタクトの様子をみてから戻るわ、じゃあねシャトヤーン」
「今日も、ですか?」
「そ。シヴァと約束してるの。タクトの様子を1日1回報告するって」
(そんなに気になるなら自分から来ればいいのに)
とノアは思ったが、口にはださない
シヴァの女皇としての立場も、十分に理解しているからだ
それになにより、それは自分への口実でもある
(まったく、わたしも人のこと言えないわね…随分と甘くなっちゃったわ)
そんなことを思いながら、でもノアは今の自分が嫌いではない
「ありがとう、ノア」
「できない約束はしない主義なの。ったく、面倒なこと頼まれちゃったわ」
ノアはぶつぶついいながら、医療施設がある右の通路へまがった
シャトヤーンはその後ろ姿をみつめながら
「…ほんとうに、ありがとう」
もう一度、ちいさく、呟く

エルシオールが回収されてから3日
タクトはいまだに眠りつづけたままであった
症状は落ち着いたが、意識は戻らない
それを、レスターとエンジェル隊が交代で看病する日が続いていた

「あの、お見舞いをしてもいいですか?」
ルシャーティが訪れたのは、午後を少し過ぎたばかりの時間
「ルシャーティさん。はい、もちろんです」
ちとせはにこにこと笑って、彼女を中に招き入れた

「あぁ、ヴァインさんも来てくださったんですか?」
「えぇ。なかなかこれなくてすみません」
ルシャーティのうしろから、ヴァインが現れる
ちとせは扉をしめながら
「そんなことありません。それに、どちらにしろ、お見舞いは1日1回だけですから」
そう
白き月に運ばれたあとも、エルシオールクルーをはじめとした見舞い客が絶えることはなかった
最初は喜んでいたエンジェル隊とレスターだったのだが、そのあまりの多さに最後には
”見舞いは1人1日1回まで”
と扉に張り紙をし、完全締め切り状態
「凄い、ですね」
部屋にはいったヴァインは、呆然と呟く
「…これ、全部、お見舞いですか?」
ルシャーティも同じ気持ちだったようだ
部屋の中は、色とりどりの花に、果物籠、さらには本を始めとした様々な見舞いの品で溢れている
ちとせは、二人のために椅子を用意しながら
「そうなんです。これでも、生ものなんかは早めに片付けたりして減らしてはいるんですが…」
「廊下にあったのも…?」
「えぇ。入りきらなくて…比較的大きなものは廊下に…さ、どうぞお座りください」
「ありがとうございます」
ルシャーティが座る
ヴァインは、タクトの隣に立ち、じっとその顔をみていた
「タクトさんは、本当に…みなさんにとって大切な方なんですね」
呟き
それは、なにか考えを整理しているような響きで
だが、ちとせは気づかず
「はい、もちろんです。私は、そんなタクトさんといっしょにいれること、とても誇りにおもいます」
はっきりと返事を返した

「…えぇ、早く目を覚まして欲しいものです」
ヴァインは微笑んで続ける
その笑顔
それは、かつてタクトが恐怖した”綺麗な笑顔”だったのだが
後ろを向いていたせいで、ちとせには見えなかった

しばらくの雑談のあと
「あ、いけない…クールダラス副司令と交代の時間」
「もうそんな時間ですか?」
ルシャーティとちとせが時計を確かめる
「僕たちがついていますから、クールダラス副司令を呼びにいかれてはどうですか?」
ヴァインはにっこりと微笑んで進めた
ちとせは、すこし考えてから
「そう、ですね。ではお二人とも少しの間、タクトさんをお願いいたします」
二人に頭をひとつ下げる
そして、もう一度だけタクトの様子を確認すると、ちとせは部屋をでていった

「ヴァイン?」
扉が閉まるのと同時に、ルシャーティが不思議そうな声をだす
ヴァインは
ベットの隣に、たち
そして
「姉さんも、タクトさんが、好き?」
ルシャーティは、少し、驚きながらも
「え、えぇ…好きよ。とても、優しくしてくださって…もちろん、タクトさんだけじゃなくて、エルシオールのひとたちみんなも…」
「エルシオールでの日々は、楽しかった?」
「えぇ。とても楽しかったわ…貴方がいて私がいて…タクトさんとクールダラス副司令がいて、ミルフィーさんのお料理を頂いて…
 ランファさんに占いをしてもらったり、ミントさんとお菓子を食べたり…フォルテさんの射撃を拝見して…
 ヴァニラさんと一緒にクジラルームの動物たちと遊んで、ちとせさんにあやとりも見せてもらったわね」
ルシャーティは微笑む
ヴァインはその微笑を見つめながら
「…そう、それは、よかった」
「ヴァインは?」
「…僕も楽しかったよ。はちゃめちゃで刺激的で、お祭りのような日々だった」
「そうね」
「僕もタクトさんが気に入った、もちろんあの艦と、その乗組員たちもね」
「…?」
ヴァインはすぅっと目を細める
「…ヴァイン?」
不思議そうにルシャーティが首をかしげた
その表情がゆっくりと…
ゆっくりと
「姉さん」
「…」
ルシャーティの表情が、無くなったのを確認すると、ヴァインは名前をひとつ呼んだ
予想通り返事はかえらない
満足そうに笑う
「だいじょうぶ、寂しくないよ。姉さん…すぐにタクトさんも、エンジェル隊も同じようにしてあげるから」
ふっ
ヴァインの手が伸びる
それは、懇々と眠りつづけるタクトにかざされて…

バンッ

ヴァインが手に力をこめるのと、扉の開く音が重なった
出入り口にいたのは
「なにを、している」
「…少し汗がでていたようなので」
レスターはつかつかと中にはいり
そして
「悪かったな、変わろう」
「………えぇ」
ヴァインはにっこりと笑うと、その場を、離れた
レスターは
「ルシャーティ?」
沈黙したまま、語らないルシャーティにきづく
近寄ろうとしたところに、ヴァインの手がのび
「姉は寝てしまったようで、僕がつれて戻ります」
「そう、か…」
レスターは呟き、二人に背をむけた
「お大事に」
ルシャーティを抱きかかえ、ヴァインはそう呟くと、扉を閉めた

>>明日に続く



2005年03月29日(火) 今月のRUSHの日

今月のコミック版GA
…どうしろと?(いっぱいっぱい)

第13話「うしなわれるもののつぼ焼き」

種を蒔くよ
幸せの種を…

「タクトッ」
悲鳴と動揺で騒ぐブリッジを駆ける
「ゲッ…ホ…ガハッ…グゥッ………」
ビシャビシャ
泡交じりの鮮血が飛び散った
血溜まりに沈んでいる体を抱き起こして
「タクトッ、おい、しっかりしろっ!!」
名前を、呼ぶ
しかし、もうすでに意識はなくなっているらしく返事はない
ぐったりと弛緩した体が、重く
「タクトッ」
何度も何度も、繰り返し、名前をよぶ
「…ハッ…グッ…ゴホッ…」
ビシャッ、バッシャ
言葉のかわりに、血液の塊が溢れ出すだけ
「くそっ」
(おちつけ、おちつけ…)
心の中で繰り返しながら
(色は、赤…鮮血ってことは、肺からの喀血…)
レスターは、タクトの胸元に指をかけると
ビリッ
次の瞬間、横に力いっぱい引きちぎる
服が裂けた
(次は、気道確保…)
「グッ…ゥ…」
指を、口の中に突っ込む
そのまま、届く範囲で、固形物がないのを確認する
ない、大丈夫だ
引き抜く、そのまま、上半身を起こすと、前かがみの姿勢で固定
「…ッ…ェッ…グ…」
バシャバシャ
まだ残っていた血が、重力にしたがって、床に落ちていく
だが、それが最期だったようで、喀血は止まった
(あとは、体温の確保と…)
上着を脱ぐ
そのとき、呆然としているアルモとココの姿が目に映った
周りのクルーたちも同様だ
「なにをしているっ、救護班に連絡は?!」
怒鳴り声
それに
「ハ、ハイッ」
アルモは反射的に返事をかえすと、通信機に手をかけ
「…いや」
その、後姿に、声
レスターは、一瞬、考える
アルモが振り返った
「ふ、副司令?」
「司令室、だ。司令室に呼び出せ」
「え?」
「これ以上の、パニックは避ける。急げっ!」
「は、はいっ」
アルモが通信機をつなげたのを確認する
脱いだ上着でタクトを包みながら
「緘口令をしく、このことは口外禁止だ」
ブリッジ中を見渡して、命令した
その後、一言
「特に…絶対に、エンジェル隊にだけは知られるなっ」
つけたす
シンと、少しばかりの静寂
その後、あちこちから気の抜けた返事
その中に、アルモからの報告も
「ケーラ先生と連絡、つきました」
「わかった、しばらく…ブリッジを頼む」
「はい」
「クールダラス副司令…」
「次の指令があるまで各自待機、いいか、これ以上の混乱はなんとしてでも避けるんだ」
はっきりと告げたあと、タクトの体を抱き上げ
そのままブリッジをあとにした



司令室
「もう、いいわよ」
呼ばれて顔をあげる
寝室のドアから、ケーラ女医がこちらをみていた
その隙間からベットがのぞく
「…タクト」
傍に行く
足取りが自分でもわかるほど、ふらふら、していた
情けない
そんなことを思いながら
「タクト」
名前を呼んで、触れる
冷たい
かろうじて、顔の血はぬぐわれていたが
服や、髪についた血はそのままに
顔色が真っ青で
そんなことを思っていると
「出血の量が多かったから、体温が低くなってるし、顔色も悪いけれど、今のところ命に別状はないわ」
ケーラ女医が、的確な回答をくれた
「原因は?」
「わからないわ。ヴァニラにも診てもらうけれど、詳しいことがわからないかぎり、ナノマシーンでの治療も不可能ね」
彼女はそこまで、いうと
「クールダラス副司令、私は医師としての立場から一刻も早い専門施設での治療を提案します」
軍医としての表情で、こちらをみながら
「わかって、いる」
「白き月の医療施設に連絡をとります、よろしいですね?」
「…あぁ、だが」
「大丈夫です。周りにばれるようなことは避けます」
にっこりと笑う
「それと、あとでヴァニラをよこします。彼女にだけは診てもらわないと」
「あぁ…」
それは仕方ない
そう、答えようとした、そのとき

ダンッ

凄い音とともに、扉が開いた
そして
「タクトッ」

その、声は
「なっ…」
駆け出す
寝室を一歩でたところで、こちらにむかっていた一団とはちあわせした

「タクトが倒れたってのは本当かい?!」

顔をみるなり、フォルテ・シュトーレンの第一声が飛ぶ
それに続くように
「タクトさんは?タクトさんはどこですか?」
「無事なんですかっ、ねぇ、副司令っ」
「どうなんですの?」
「クールダラス副司令っ」
ミルフィー、ランファ、ミント、ちとせ、その後ろにヴァニラ
エンジェル隊全員がそろって、いた
わけがわからない
「どういうことだ、緘口令を、しいたはずだぞ?」
「そんなことは、どうだっていいんだよ、タクトはどこだい?!」
フォルテはそういって、レスターの体を押しのける
ドンッ
壁にぶつかった
そして
「タクトッ」
寝室のほうから、6人の声が沸きあがる
「くそっ」
舌打ちをして、レスターは立ち上がった
(誰が漏らした?それとも、もう漏れていたのか)
あの混乱では、それも仕方ないことなのかも、しれないが
ともかく、いまは
「お前らっ」
「レスターっ!あんたいったいなにをやってたんだい!!」
怒鳴り声と、怒鳴り声が、ぶつかった
「ぐっ」
「タクトがこんな状態になるまで気づかなかったのか?!
 ずっと傍にいたくせに、なんでこんなことになるんだよっ」
「フォルテさんっ」
今にも殴りかかってきそうなフォルテをミルフィーが後ろから羽交い絞めにする
返す言葉も、ない
だ、が

「フォルテさん、静かにしてください!」

その声は、ベットのすぐ脇から
声の持ち主は
「ヴァニラさん…」
「タクトさんの体に障ります」
その厳しい表情に
「…悪かったよ、ヴァニラ」
フォルテもおとなしく従う
ヴァニラに毒気をぬかれたのは、フォルテだけではなく
「とりあえず、移動しましょう」
「えぇ、そうですわね」
「私は残ります、治療が、ありますので」
ヴァニラはそういって、タクトの隣に座りなおすと、目を閉じる
ナノマシンが輝きだす
その光を見ながら
「ヴァニラ…タクトを、頼んだわよ」
ランファはそう呟き、扉を閉めた



「まさか、エルシオールを撃ったのが原因とか言いやしないだろうねぇ」
「フォルテさん、考えすぎですわ」
「だけど…くそっ、タクト」
拳を握り締める
「タクトさん…だいじょうぶ、ですよね」
「大丈夫にきまってるじゃない!」
扉をみながら、泣きそうな声で呟くミルフィーユにランファの声が飛ぶ
それは怒りに満ちていた
「大丈夫にきまってる、だって、タクトなんて殺したって死ななそうだもの!」
「…ランファ」
「クールダラス副司令、タクトさんに、いったいなにがあったんですか?」
「俺は医者じゃない、わかるわけ、ないだろう」
「そんな…」
ちとせの戸惑う顔
目をそらす
そして
「それより、お前たち、どうしてタクトが倒れたことを知ったんだ?」
気になっていたことを、問いただした
すると
「どうしたもこうしたもないよ。あたしらがエルシオールに帰還したときには
 すでにその話題で持ちきりだった」
「…くそ」
「どのみち長く隠しておけることではありませんわ」
「あぁ、その通りさ。気に入らない、あたしは気に入らないよっ!
 みすみすタクトをあんな目にあわせたうえに、あたしらに黙っていようとするなんて!」
「そうですよ。水臭いですよ!クールダラス副司令」
5人分の非難の目
その痛みに耐えながら
「あぁ、これは…俺の責任だ」
認める
「だから、今回は…俺にまかせてもらおう」
そして、いいきった
「そんなっ」
言葉を、さえぎる

「俺は、あのときから…なにひとつ、変わっちゃいない」

あのとき
タクトの気持ちに目をつぶり、聞こえないふりをして
目の前でエオニアに奪われた
そして、憎むことばかりに気をとられて
大切なことを見落として追い詰めた
1年前のクーデター
そのときから、なにも、変わってはいなかったのだ

「泣かさないと誓ったくせに、あいつを一番傷つけていたのは、俺だ」

顔をあげる
「だから、俺は何があろうとも、タクトを救う。救ってみせる…。
 それは俺がやらなければ意味がない、俺以外の誰がやっても駄目なんだ」

エンジェル隊と目があった
「ですが、この状況で…司令と副司令を欠くのは現実問題として不可能ですわ」
ミントが口火を切る
「どうなさるおつもりですの?」
「白き月との合流を急がせる。明日、遅くても明後日には合流できるはずだ
 タクトを医療機関に下ろし、俺も降りる」
「エルシオールとあたしたちを見捨ててタクトをとるのかい?」
「そうだ」
試すようなフォルテの質問に、はっきりと返事
「タクトの容態にもよるが、あいつが司令に復帰できないようなら俺も同じだ。
 あいつのいない場所にいるつもりはない」
ふいに、先日の言葉を思い出す
”副官だからタクトの傍にいるんじゃない。タクトがいるから、俺は軍にいる”
まさか、それがこんなところで実行に移されるとは思ってもいなかったけれど
「アイツは…タクトは反対するだろうがな」
「そうだね、そんで…タクトは自分を責めることになるだろうね」
「あぁ、そうだな。だが、俺にだって譲れないものはあるんだ」
そのことに
気づくのが少し、遅かったけれど

「でも…」
ミルフィーが、少し考えるそぶりをしてから、口を開いた
「でも、タクトさんはきっと…自分のかわりはレスターさんにやってもらいたいって
 思ってるとおもいます」
「…」
「タクトさんが、今まであたしたちのことに気を配ってくれたのは
 いつだってブリッジにレスターさんがいてくれたからじゃないですか
 あたしが、あたしがタクトさんなら、自分がいない穴はレスターさんに任せたいです」
「ミルフィー…」
「職務と看病は、たしかに…一緒にはできないけれど、だったらあたしが手伝います」
「そう、ですよ。クールダラス副司令、二人のいない穴は、あたしたちがなんとかしますよ」
ミルフィーの必死な表情に、ランファも動く
「だから、なんでも一人で背負い込もうとしないでください。レスターさんに譲れないものがあるのはわかりました
 でも、あたしたちにだって持てる荷物くらいあるはずです」
「それに、タクトはあたしたちの司令官だもの」
二人は必死で語る
だが
「駄目だ、君たちに…無理はさせられない」
「そんな…」
「気持ちはありがたい、だが、タクトはお前たちが…本当に大切なんだ
 このまま、お前たちにまでなにかあったら、俺はもうアイツに合わせる顔がない」
「間違ってますよ、そんなの!」
ちとせが叫んだ
「間違ってます!大事にしていただけるのは、嬉しいです。でも…
 でも、同じくらい私たちだって、マイヤーズ司令のことも、クールダラス副司令のことも大事なんです!」
「…ちとせ」
「お二人が辛いときに私たちが助ける、それのどこがいけないんですか?」
「ちとせの言うとおりだ、あんたが責任を取りたいってのはよくわかったよ。
 タクトのことを任せるのもいい。だけど、だったらあたしたちにだって出来ることはさせておくれ」
「フォルテ…」
「二人がいない間、二人の居場所を護る。それくらいのことは、出来るつもりだ」
「そうですよ。事情を話せば…きっとみんな、わかってくれるはずです」

そこに
扉の開く、音

でてきたのは
「ヴァニラっ」
「タクトさんの様子は?」
「ヴァニラさんっ」
「先輩」
ヴァニラは、少しばかり疲れた顔をしていた
そして
「駄目、でした…」
「そうか」
「原因がわからないので対症療法しか」
そういって、ヴァニラは
「ヴァニラ?」
レスターの前に、たった
見上げる
意志の強い、眼差しで

「レスターさん、艦を降りないで下さい」

「ヴァニラ…」
「タクトさんが戻ってくる場所を護るのは、レスターさんの仕事だと思います」
「…」
「タクトさんは、きっと…たとえ病気に侵されていてもこの艦を降りることはしません
 だったら、そのタクトさんの隣に、ずっといてあげて下さい
 …いいえ、それこそがレスターさんの役目だと私は思います」
「俺の、役目…」
俺の、望み
いつだったろう
”俺はいつだってタクトのそばにいたし、これからだってずっとそばにいてやりたい…
 タクトの望むことはなんだって叶えてやりたい…俺は、タクトが幸せでいてくれればそれでいい”
そんなことを、言ったのは
俺は
おれ、は…

「知ってた、さ」
言葉が落ちる
「知ってたさ、アイツの望みくらい。タクトは、ほんとうに…
 この艦とこの艦に乗っている奴みんなが大好きなんだってことくらい」
「レスターさん」
「アイツはたとえ、自分が死ぬことになってもこの艦に乗り続ける
 俺に、それが止められないことくらいは、知ってた…それでも…それでも、俺は…」
失いたくない
タクトだけは
それだけは、失うわけにはいかない
たとえソレが、あいつを傷つける結果になろうとも
「タクトさんは、必ず…助かります」
ヴァニラは、はっきりと、言い切った
「そして、この艦に戻って来れられます。でも、今はちょっと疲れてお休みになっている
 その傍にずっとついて、起きるのをお待ちになるのはレスターさんのお仕事です」
「………あぁ」
「だったら私たちは、お二人のお帰りになる場所を護ります。
 だって、お二人は私たちの司令と副司令なんですから」
そこまでいって、ヴァニラはやっと、小さく笑った
レスター、は
その少女の小さな肩を、ポンッと叩くと

「エルシオールを、頼む…」

一言
その言葉に、6人の声がそろって返ってきた

「はいっ、おまかせください!」



種を蒔こう



レスターとエンジェル隊は一緒に扉をでた
今後の打ち合わせなどをするために
レスターに関しては、ブリッジを放り出したままなのである
扉が開く
そこに…

「え?」

ワッ
音が溢れた
扉の外は
「み、みんな?」
ひと、ヒト、人の大洪水状態
それは、司令室の前から銀河展望公園の方までぎっしりと続いている
あまりの人だかりで、通路が見えないほどに
「なんだ、どうしたっていうんだ?!」
混乱する7人に
「クールダラス副司令!マイヤーズ司令の容態はどうなんですか?!」
「大丈夫なんですか?」
「どうなんだい、ミルフィーユちゃん、大丈夫なのかい?」
「ねぇ、なんとかいってよ」
次々と、質問が押し寄せる
「ちょ、ちょっと、まて…これはいったい…」
なんとか事態を把握しようとするレスターのところに
「みんな、タクトさんが心配で集まったんですよ」
「クロミエ?!」
きゅぅきゅぅきゅううう〜
驚くその横を、宇宙クジラが司令室へとんではいる
「これ、みんな?」
「えぇ、そうです」
クロミエは誇らしく言った
改めて、7人は人だかりをみてみる
エルシオールの全乗組員がいるんじゃないかと思うほどの、人
「ねぇ、どうなのよ!」
「悪いんですか?」
「マイヤーズ司令はー?」
ザワザワザワ
騒動は治まることなく
仕方なく
「タクトなら大丈夫だ。今、眠ってる」
レスターは大声で説明した


ワァッ

更に大音響
「よかったぁ」
「ほんと、もう凄く心配したんですよ」
「大丈夫だってー」
「マイヤーズ司令、大丈夫だってさ」
「よかったー」
「まぁ、タクトさんだしなぁ」
人だかりの多さに、伝言ゲームのように、レスターの言葉が後ろへ伝えられていく
まるで波紋が広がるように、みんなの心配そうな顔に明るさが戻った
そこへ
「みなさんっ」
「クレータ班長?!」
整備主任のクレータが、人垣をかきわけて現われる
そして
「紋章機の整備、終わりました」
「えぇ?!」
「任せてください、ばっちり終わらせましたから。みなさんはマイヤーズ司令についてあげていてください」
「クレータ…あんた…」
「こんなときくらい、お役に立たせてくださいよ」
バンッ
クレータは自信満々の笑みで、胸をたたいた
続くように
「クールダラス副司令!」
「ココ、それにアルモまで」
「すみません、私たちなにもいわなかったんですけど、なんか気がついたらもう艦内中に噂が…」
「いや、いい…それよりもお前たち」
「あ、それなんですけど、ブリッジのほう仕事がもうないんです」
「なんだと?」
「白き月と連絡も取りましたし、ヴァインさんの協力で航路も確保しました」
アルモとココは、クレータと同じように誇らしい笑みで、そういうと
「だから、どうかマイヤーズ司令の傍にいてあげてください」
「あとのことは、私たちに任せて下さいよ」
「…だ、だが」
戸惑うレスター
そこに、あちこちから声
「いてやれよ、副司令」
「そうですよっ!やっぱ司令のそばには副司令がいないと」
「タクトさんもそのほうが、絶対よろこびますって」
「あとのことはまかせてください」
「そうだそうだ、ちょっとは俺たちのことも信用してくれよ」
「エンジェル隊も!」
「そうだよ、ミルフィーユちゃん、こんなときくらい、傍にいてやんな」
「ランファさん!」
「もう白き月と合流するだけだから大した仕事もないし、ねぇ、ミントさん」
「フォルテの姉御ー!頼みますよっ!」
「いつも手伝ってもらってるんです、こんなときくらい恩返しさせてください、ヴァニラさん」
「ちとせさん〜、こっちは〜まかせてください〜」
「わたし、この前、マイヤーズ司令に倉庫整理てつだってもらって」
「当直の時、差し入れもらいました」
「クールダラス副司令に、研究資料の解析みてもらったっす」
「マイヤーズ司令は、エンジェル隊の司令だけどさ、エルシオールの司令でもあるんだ」
「そうですよ、だから…」
ザワザワ
その騒動は治まりそうに、なく
「ほら、みなさんがうんといわないと、ここにいる人たちみんな、仕事に戻りませんよ?」
クロミエが笑った
その言葉に、クレータやアルモたちもうなづく
「そのとおりです」
「はい」
レスターは
一つ深呼吸
そして

「わかった!あとは、まかせる!!」

最奥まで届くよう、精一杯の声で、叫ぶ

「まかせてください」
「マイヤーズ司令を頼みますよ」
「はいっ」
「了解しましたー」
「がんばらなくちゃ」
ワァッ
あちこちから、返事
その声を聞きながら
ききながら…
「あぁ、そういう…ことだったのか」
理解、した

「レスター?」
フォルテが、レスターを振り返った
レスターは
「タクトが言っていたんだ…幸せの種を、蒔くって」
「…たね?」
「こういう、こと、だったんだな…今、わかったよ」



”種を蒔くよ”
ぱらぱら
タクトはかすかに手を広げて、種を蒔く仕草
それは、酷く神聖な儀式のように見えて
”不幸は、たとえば天災や事故のように突然やってきて全て奪っていってしまうものだけれど
幸せは、種のようなものだと思う”
だから、俺はたくさん種を蒔きたいな
ぱらぱら
今はまだ小さいけれど
いずれ大きくなる、幸せの種を
”何度奪われても、何度失っても、俺はきっと繰り返し繰り返し、種を蒔くよ
いつか、こうやって幸せの実を結ぶことを夢見て”
ぱらぱら
ぱらぱら
その意味をレスターは今、理解した
やさしく、やさしく、いとしく、やさしく
種をまくタクトの優しい手
永遠に忘れることはない

「あいつの蒔いた種は、こうして、ちゃんと…実を結んだんだな」

「はい、大きな実を…結びました」
ヴァニラが呟く
「タクトさんは私たちのことが大好きだっておっしゃってくださいました
 私たちは、そんなタクトさんのことが大好きです」
そういったヴァニラの表情は、酷く誇らしげであった



2005年03月28日(月) 収まりませんでした…の日

第12話なんですが、日記にかける容量をオーバーしてしまったので
二つにわけました(しくしく)


その衝撃は、次の瞬間、エルシオールを、襲った



「なんだっ?!」
叫んだのは誰だったのか

フ…ゥォォォオオオオオオオオオオオオッ

唸り声が、銀河中に木霊する
「何が起こったっ」
状況の確認を求める、怒鳴り声に答えたのは
「エルシオールが…」
アルモの、声
震えている
「エルシオールが?なんだ、どうしたんだっ」
会話の間も、ブリッジは揺れた
悲鳴があちこちであがり、物が倒れ、喋ると舌を噛みそうになる
アルモは、震える声のまま、レスターとタクトのほうを振り返り
泣き叫ぶように報告、した

「エルシオールが、暴走していますっ!」

「なんだって?!」
「貸せっ」
タクトの声と、レスターがアルモから通信機を奪う動作が重なる
それは、エンジンルームのクルーとつながっていて
「動力班っ、どうなってる!!」
『わ、わかりませんっ、クロノ・ストリング・エンジンがいきなり…きゃぁっ』
ザッザザ
「おいっ、応答しろ…っ……くそ!」
レスターは、砂嵐の音しかしなくなった通信機を叩きつけた

ォォォオオオオオオオオオオオオッ
エルシオールは咆哮をあげながら銀河を…

『クロノ・ストリング・エンジンの暴走だって?!』
「あぁ、詳しいことは調べてみないとわからないけれど、電磁波やらなんやらが酷くて近寄れないんだ」
モニターのむこうで、フォルテの驚愕の顔
『なんてこった…』
「フォルテ、そっちの様子はどうだ?」
『あらかた片付いたよ、だが、エルシオールの異常で、あの子たちのテンションも下がりつつある』
タクトはコブシを握り締めて、ディスプレイをみつめる
敵の数はずいぶん減っていた、あとは清掃戦だ
しかし、コントロールを受け付けないエルシオールは、とまることなく異常なまでのスピードで前進し続けている
万が一、敵の増援などがあれば袋叩きにあうのは確実で
ゴホッ
タクトは軽く咳払いを、する
そして、ブリッジを一通り見回した
突然のエルシオールの暴走に、一時は騒然としたブリッジだったが
タクトの切り替えの早い方針と、レスターの的確な指示で、なんとか落ち着きをとりもどしつつあった
『タクト…』
不安そうな、フォルテの、声
一つ深呼吸をすると
「こっちはギリギリまでなんとかしてみる、フォルテたちはまず、前方の敵を頼む」
『了解』
通信は切れた

『駄目です、エンジンルームには近寄れませんっ』
『このままじゃ、エネルギーの暴走で、エルシオールが自爆しますっ』
報告が舞い込む
タクトは、目を、閉じた
それは、短い時間だったが、酷く、ひどく…長く、感じる
「レスター」
目を開け、前をむき、副官の名前を、呼ぶ
振り向いたその視線と、視線がぶつかった
「Dブロック後部を閉鎖する」
「…な、に」
「Dブロック後部は閉鎖だ、エルシオール全乗組員は格納庫より前方、A,B,Cブロックへ退避」
レスターはなにかいいかけ、口を開くが
しかし
「わかった。通達を急げ!Dブロック閉鎖。エルシオール全乗組員は格納庫より前方、A,B,Cブロックへ退避」
タクトの命令を、復唱した
それを確かめると、クジラルームへ通信を開く
クロミエが、でた
「タクトさんっ」
「クロミエ、ごめん。凄い衝撃がいくと、おもう」
「…はい」
タクトの意図を汲んだのか
クロミエは小さくうなづく
そして
「宇宙クジラを…クジラルームのみんなを、頼む」
「わかりました」
苦しげなタクトの言葉に
クロミエは、小さく微笑を、返して、通信をきった

ゴホッゴホ
思い返したように、咳が戻る
胸が痛い
だが、そんなことはどうでもよくなっていた
モニターを見る
ハッピートリガーが、最期の敵を粉砕

すぅ
はぁ
深呼吸、そして
「敵は?」
「レーダーに反応は、ありません…」
「Dブロックの閉鎖は?」
「完了、しました。Dブロックはクジラルーム以外は無人です」
胸が痛む
酷く
だが

ォォォオオオオオオオオオオオオッ
エルシオールの叫び声が
その痛みすら、かき消した



「エンジェル隊!」
タクトは、全員の通信をオープンにする
6人の顔が、浮かんだ
『タクトさん、こちらは片付きましたが…』
ミントの報告を、さえぎる
そして
「ご苦労様、次の任務だ…攻撃目標は………」
言葉をさえぎられた、ミントの顔が驚愕で歪む
タクトは、視線を反らさず

「エルシオールの動力部…Dブロックの最後尾だ」

『…?!』
『タクトさんっ!』
声があがる、エンジェル隊から
『うそ…わ、私たちが…エルシオールを、撃つ、んですか?』
『できるわけないじゃないっ』
ブリッジのあちこちからも
「マイヤーズ司令っ!」
「タクトさんっ」
だが、タクトはその決意がかわらないとでもいうように
「このままでは、エルシオールは自滅する、そうなる前に、エンジンを止める」
『…タクト、さん』
「頼む、これは、君たちにしかできないんだ」
真摯な言葉
だが、それは、あまりにも衝撃的すぎて
『できませんっ』
叫んだのはちとせだった
『できません、そんな…エルシオールを、みなさんを…タクトさんを撃つなんてっ』
『そうよ、できるわけないでしょ、あたしたちにっ』
「できなくても、やらなければ、エルシオールは沈む」
はっきりと、言い返す
包むことなく、真実を
「誰か、一機…一撃でいい、エルシオールのエンジンルームを撃ち抜いてくれれば」
『簡単におっしゃらないでくださいましっ』
ミントの声が響く
普段、冷静な彼女には想像もつかない激しさ
タクトは、一瞬だけ言葉をつまらせる
その瞬間



ォォォオオオオオオオオオオオオッ

絶叫が衝撃となり、銀河を駆け抜けた
エルシオールが、泣く
悲しく悲しく哀しく悲しく

「頼むっ、エルシオールを救ってくれ!!」

耐え切れず、タクトも叫んだ
答えたのは

『わかったよ、タクト』

今まで、ずっと沈黙を保っていた
「フォルテ…」

『あんたが、あたしたちなら出来るって信じてるんだ』

フォルテは、今までみたこともない優しい笑みを浮かべ

『あたしはタクトを信じる。あんたが出来るって言うんなら絶対にやってやるよ』

そして、いつものシニカルな笑顔
タクトは
タクトは、泣いた

「ごめん…ごめんっ、エルシオールを、頼む」
泣いた
無力な自分が悔しくて
そして
その信頼が嬉しくて
フォルテは、ひとつうなずくと
タクトの涙に応える様に、ハッピートリガーの照準を、エルシオールにむけた



ハッピートリガー内部
フォルテは小さく深呼吸を
引鉄が、重い
この重さは、命の重さだ
大切なものの重さだ
重すぎる
しかし、今の自分なら、この重さにも耐え切れる気がした
タクトの
一度として、反らされなかった、瞳
その強い信頼が、自分を強くしてくれるのだ

「いま、助けてやるよ…エルシオール」

トリガーを引く
閃光が、駆け抜けた
それは、エルシオールに向けて一直線に伸び
エンジンルームのある、最後尾に、斜め上から貫通する
抜けた光は、尾をひいて、銀河の彼方へ飛び去った

エルシオールは…

「とま、った…」

エルシオールは、静かに、沈黙した
「は、ぁ…」
ドッとフォルテの力が抜けたところに
『フォルテさんっ』
ミルフィーの泣き顔が飛び込んでくる
「あぁ、大丈夫だよ」
フォルテは、やれやれと力なく微笑みながら、目を閉じた



エルシオール内部
思ったほど、衝撃は走らなかった
わずかばかり、揺れ
電気が、消える
そして長い沈黙
非常用の電源が働き、光が戻っても
ブリッジのクルーたちは動くことができなかった
だが、氷が溶けるように、ゆっくり、ゆっくりとあちこちで動きが戻りだす
「た、助かった…の?」
「そう、みたい…」
アルモとココは、互いの席にしがみついたまま、無事を確認する

タクトは
(ごめん、エルシオール…)
そっと、座りなれた、その司令席を撫でた
この艦に乗っていたのは1年にも、満たない
だが、大切なものに時間など関係ないとでもいうように
エルシオールは、自分にとって、大きすぎる存在となっていた
ゴホッ
思い出したように、咳が戻る
緊張、していたせいかもしれない
力が抜けてしまって、体の感覚が麻痺しているようだ
ゴホッゴホッ
口の中に、鉄分の、味
(?)
少し、それを不思議に思ったが、じょじょに戻っていく活気に正気に戻る
これからが、また、大変だ
気を引き締めなくちゃ
どこか、遠くで、そんなことを、おもった
(あれ?)
ゴホッ…
ふいに
ふいに、タクトは自分が立っているのか座っているのかを忘れた
どこにいるのかも、忘れかける
急速に、世界が遠のいていく気が、した
(やらなきゃいけないこと、いっぱい、あるのに…)
しっかりしろ、と思うことすらできなく、なる
ゲホッゴホ…
咳の音だけが、自分の、体内に、響いて
(お、れ…)
どうしたんだろう?
無意識に、タクトは、レスターを探した
その姿をみておかないと、後悔すると、思ったから
探す
目の前にいるレスターを探し出すのに、ずいぶんと時間がかかってしまった
まずは、無事を確認
立ち上がり、冷静さをあっというまに取り戻した優秀な副官は事後処理を開始している
(よかった)
でも、背中しか、みえない
顔が見たかった
最期に…みておきたかった
名前を呼んでみようと思って、手をのばす
届かない
その後姿に
(あぁ、まだ怒ってるのかな…)
とりとめもなく、そんな普通のことを考えた

レスター…

言葉のかわりに、口からこぼれおちたのは………



「タクト?」
名前を、呼ばれた気がした
だから、振り返る
”レスター”
確かに、タクトが、自分の名前を呼んだ、と思った



一面の、赤い絨毯

レスターが振り返るのと、タクトが、その赤い絨毯のようなものに沈むのが重なる

バシャッ

水の、音?
どうして、ブリッジで水音が?
そんなことを思ったブリッジクルーたちも、音の元に視線を向けた

ビシャ…バシャ…ン

零れ落ちる
それは、倒れたタクトを中心に、広がって
ひろがって………

「タ、クト…?」
レスターは名前を呼んだ
返事はない
かわりに



そこには、血まみれでタクトが倒れているだけで………



2005年03月27日(日) おでかけライブin福井14…の日

というわけで、おでかけ福井14終わりました〜。
おつかれさまです


第12話「暴走儀礼艦おこしの詰め合わせ」

その後姿に
(あぁ、まだ怒ってるのかな…レスター)
とりとめもなく、そんな普通のことを考えた

夢を見た…
”あぁ、これは夢だ”
意識のある夢というのはよくあることだ
ヴァインが立っている
「タクトさん」
「?」
「僕といっしょにいきませんか?」
綺麗な笑顔
最初は、酷く…怖い…と思った、その笑顔
ここ数日はそんなこともなかったのに
どうしてだろう?
今も、すこし…
背筋をはしった寒気に、応えるのを一瞬、躊躇した
伸ばされたヴァインの手が
俺に届いて………

バシッ

目の前で弾かれる
「くっ」
「?」
何が起こったか理解できない
俺は、ヴァインの手を弾いたその正体を確かめるために視線を流す

これは、夢だ
「去れ」
彼は、低い、よく通る綺麗な声で、はっきりと告げる
冷たくて優しい声
その声に聞き覚えがあった
いや、忘れることなんて、きっとできない
だから、これは夢なんだ
なぜなら、ヴァインの手を弾き、俺のそばにいてくれる
その人は…
「去れ、タクトに近づくな」


そのひとは…



「マイヤーズ司令?」
「え?」
名前を呼ばれて顔をあげる
心配そうな、アルモとココの顔
「大丈夫ですか?」
「あぁ、平気だよ」
傍らにいたヴァインも、声をかけてくれる
笑ってごまかした
なんとなく、視線をあわせずらくて誤魔化す為にモニターに目をやる
(今朝見た夢のせいだ…)
なんであんな夢をみたのか
自分でもよくわからない
ヴァインがいて
そして…
(ま、夢だからな)
気持ちを切り替えるために、思考にピリオド

「敵戦闘機、こちらに向かってきます」
そこに、レーダーをみていたジョナサンから報告がはいった
モニター画面をたしかめる
そして
「ちとせ」
『はい!』
「向かってくる戦闘機を撃破してくれ。シャープシューターの射程なら届くはずだ!」
『シャープシューター、了解』
「ランファ、ちとせの護衛をたのむ」
『おっけー』
指示をだした
紺にカラーリングされたシャープシューターが留まり狙いを定める
そのまわりに群がる敵機を赤いカンフーファイターが打ち落としていく
『落ちなさいっ』
正面に据えられた長砲身レールガンから光を放つ
それは、1本の光であったが、一寸のブレもなく、エルシオールの方へ方向転換をしていた戦闘機に命中
動力源を貫かれた鉄の塊は、爆発し、後には静寂が戻る

ゴホッゴホ…
「…よし」
タクトはエルシオールの傍で、敵影が消えたのを確認すると、2機に次の指令をだした
自分でも、少しばかり感心してしまう迅速な対応
(慣れって、怖いなぁ)
戦闘が、非日常でなくなったのはいつからだったろう?
クーデター当初、エンジェル隊と初めてであった時には想像もつかないこと
ずいぶんと、遠いところへ、きてしまった気が、する
ゴホッ
『タクトさん。エネルギー残量が半分をきりましたわ…まだ大丈夫そうですが』
ミントからの通信
タクトは少し考えてから
「いや、早めに補給しておこう。敵旗艦は手ごわそうだ。集中攻撃したい」
『了解いたしました』
フライヤーを回収し、ミントのトリックマスターがエルシオールへ進路をかえる
「格納庫に連絡、エネルギー補給の準備」
「はいっ」
レスターからの指示に、アルモが返答
タクトは…
その後姿に
(あぁ、まだ怒ってるのかな…レスター)
とりとめもなく、そんな普通のことを考えた

戦闘に意味なんて、ない
失うものばかりで、得るものはなく
負ければ、護りたいものがなくなってしまう
降りかかった火の粉は払うだけ
だから、戦闘に意味なんてないと本当は思っている
たとえそれが、戦略上重要な戦いであろうとも
トランスバール侵攻艦隊の拠点の奇襲作戦
ロウィルと名乗ったヴァル・ファスクの艦隊を
分艦隊と本隊の間に、クロノドライブで割り込み
分散した片方の戦力が戻ってくる前に、一方を叩き
残りの一方をも叩く
戦略としては負けることは許されない戦いであった
(負けるつもりなんて、ないけどね)
前を見据える
考えていても、はじまらない
ひとつ、ひとつ、目の前の問題を片付けていけば道は開けるはずだから

ピンク、赤、青、紫、翠、紺
6色の紋章機が、軌跡を描きながら、宇宙を駆ける

「ラッキースター、いきますっ!」
ご機嫌な声とともに、ミルフィーユは中距離ビーム砲のトリガーを引いた
敵の戦闘機や巡洋艦の間を縫って、閃光が走る
ラッキースターにも、敵の攻撃や破片があたるがエネルギーシールドが被害を和らげた
「やったぁ、命中v」
ミルフィーユは、自分が放った光が、ロウィルの旗艦オ・ケスラにあたるのをみるとご機嫌な声
実際、彼女は上機嫌だった
タクトと仲直り、というか、前のような関係に戻ることができたから
まだ若干の問題(たとえばタクトとレスターの不仲、とか)も残ってはいる
だが、それもこの戦いに勝てば、なんとかなるような気がした
いや、なんとかしようと企んでいる
侵攻の拠点を占拠すれば、あとはEDEN解放戦へ準備をするだけ
準備期間中というのは、どんな戦場であっても、それなりに時間をとることができる
あまり軍略等に知識のないミルフィーユでもそれくらいのことは理解できていた
(えへへ、みんなに協力してもらっちゃおう。そうだなぁ、やっぱりピクニックかな)
そこまで考えると、あと彼女の思考は”どんな料理を作るか”にかわる
楽しみなことを考えると、ミルフィーユのテンションはさらにあがった
気がつくと、エネルギーゲージがMAXをさしていて
「あ、やったぁvよーし、バーンとうっちゃいます!ハイパーキャノンっ」
絶好調の彼女に、敵は、いない



ミルフィーユの放ったハイパーキャノンの閃光が、宇宙を騒がせた
それは、瀕死であったオ・ケスラに最期の一撃となる
繰り返される、爆発
だが
ブリッジに立つ、ロウィルは、取り乱すこともなく
「…おかしい」
火の手があちこちであがる
迫りくる、死
だが、彼は落ち着いていた
「戦力を二つに分散させたとみせかけ、奇襲をかけてきた奴らを逆に叩く
 そういう、作戦だったのではなかったか…」
静かな呟き
「そうか、裏切ったか」
答えは一つしかなかった
その事実を知った今でも、表情が変わることはなかったが
諦めているのではない
絶望もしていない
だが、同じくらい希望も持ってはいなかったのだろう
ヴァル・ファスクには感情や心といったものがないのだ
「それもいいだろう。踏み越えられる私が愚かであるだけのこと」
宇宙を見据える
白銀の艦
6色の翼
「それが、ヴァル・ファスクであることの証…」
言葉はそこで、途切れた



同じ刻
「…うっ」
エルシオールのクジラルームで、クロミエが耳をふさぐ
苦しげに
宇宙クジラが、鳴いた
悲しく悲しく哀しく悲しく



「?」
悲しい声をきいた気がして、タクトは振り返る
だが、そこにはなにもない
ゴホッ
咳払いをして、視線を戻す
そのとき、ヴァインと目があった
にっこり
綺麗な笑顔
「…ヴァイン?」
声は震えていたと思う
思わず、声を、かけてしまった
その、笑顔が、あまりにも…
「はい?」
ヴァインはその笑顔のまま、タクトのほうをむいた
「あ、その…嬉しそう、だね…」
慌てて言葉を取り繕う
(落ち着け)
心臓は早鐘のように鳴っていた
どうしてかは、わからない
ただ、あまりにも
「えぇ、嬉しいですよ」
動揺するタクトに気づいているのか、いないのか、ヴァインは続ける
表情を崩すことなく
「ロウィルが死にました。こんなに嬉しいことはない」
笑顔
酷く、綺麗な、笑顔で
「………」
「タクトさんは、敵でも、誰かが死ぬのは嫌ですか?」
「そう、だな…俺は、平和が一番好きだから」
ゴホゴホッ
息苦しくて咳を繰り返す
ゴホッゴホッ
ヴァインはそんなタクトをしばらくみつめ
そして
ふっと、先ほどまでの表情にもどると
「だって、あいつはEDENを苦しめていた男なんです。
 喜ぶのはEDENの民として当然のことでしょう?」
もっともらしいことを言う
だが、タクトにはそれが
僕ハ間違ッタコトヲイッテイマスカ?
という風に聞こえたのだ
ゴホッ
咳が、止まらない


「マイヤーズ司令、まだ分艦隊が残っていますが?」
会話を中断させたのは、レスターだった
自分を”マイヤーズ司令”と呼ぶ、冷たい言葉
先日の一件以来、二人の間には、完全な亀裂がはいっている
レスターはタクトを上官として接し
初めは笑ってすまそうとしていたタクトも、その態度の腹いせに
”クールダラス副司令”と、部下として扱ってしまう悪循環
(なお、そんな二人のとばっちりを受けているのは何の罪もないブリッジクルー達である)
だが、この時ばかりは
「…あ、あぁ」
タクトは生返事をかえし、ヴァニラとの通信を開く
助かった
心のどこかでそんなことを思いながら
「ヴァニラ、分艦隊との交戦まで時間がない。全機の修理を頼む」
『わかりました。タクトさん』
翠の髪の少女は、モニターのむこうで小さくうなづくと
『みなさん、修理を開始します…リペアウェーブ』
ハーベスターに積まれていたナノマシンが左右のディスクポットから放出される
それは、ハーベスターを中心に、光の輪を何重にも描くと
爆発するようにエリアの端から端まで届き、傷を癒していく

「分艦隊!レーダーに反応!!」
「よし、あとひとふんばりだ!みんな、頼んだよ」
タクトは、司令席から、エンジェル隊全員に声をかけた
『はい、バーンとやっちゃいます』
『まかせておきなさいよっ』
『了解いたしました』
『エルシオールは頼んだよ、タクト』
『任務了解』
『いってきます、タクトさん』
6人の声が心地よく響いた
彼女たちとのモニターが消えたのを確認すると、タクトは司令席に座りなおす
それを合図に、新しい戦闘へむけて他のクルーたちも動き出した
(本当に、慣れたよな)
ゴホッ
タクトはそんなことを思いながら
ちらり、と…前方で指示をとるレスターに視線をむける
黙々と働く背中
その後姿に
(あぁ、まだ怒ってるのかな…レスター)
とりとめもなく、そんな普通のことを考えた
そして
(いや、いつまでもこんなんじゃ駄目だ)
思い直し、ぐっとコブシを握り締める
ゴホゴホッゴホ
その拍子に、咳がでたが、気にしない
気にしない
(みんなにも心配かけてるわけだし、いいかげん、仲直りしなくちゃ)
視線をモニターにむける
6色の紋章機
ミルフィー、ランファ、ミント、フォルテ、ヴァニラ、ちとせ…
喧嘩だってする、だけど、結局は、自分を信じてくれる彼女たちのためにも
(この戦闘が終われば、時間もできるし)
敵の拠点を占領し、トランスバールからの援軍を待つ
白き月も数日中には到着する
そうすれば、自分たちだけで、戦うということもなくなる
EDEN解放戦の先頭に立つ事にはなるだろうが
それでも、今のように身動きが取れないほど忙しいということもなくなるはずだ
だから
(この戦いが、終われば…)
ゴホッ
また再び、軽く咳を繰り返しながらも
タクトは希望のまなざしを、宇宙で戦う6人の天使たちへと…


容量オーバーのために、続きは明日に繰越!



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