狼森、笊森と盗森

2005年03月26日(土) お誕生日おめでとう…の日

タっくんお誕生日ー(いぇい)
おっめでとーv(><)ノシ
でも、日替わり連載のためにお誕生日記念SSはないのでした
(ネタかぶっちゃうからね)
残念><ノシ


第11話「なかなか治らない仲オチ」

種を蒔こう

「あれ?タクトは?」
ブリッジにはいって目的の人物がいないので、ランファが最初に口を開いた
「マイヤーズ司令なら先ほど、おやすみになられましたよ」
応えはアルモが
「すれ違ってしまったようですね」
ちとせが残念そうに呟いた
「そのようですわね」
「残念、です」
ミントとヴァニラが仕方ない、という表情
そこに
「なんだ、お前たち。全員そろって」
ブリッジに戻ってきたレスターから不機嫌そうな、声
「あ、クールダラス副司令」
ミルフィーが道をあける
そこから、ブリッジ内にはいると
「タクトならいないぞ」
そう言って、さっさと仕事へ移った
「タクトがいないんなら仕方ないねぇ」
フォルテがやれやれとため息
「マイヤーズ司令に、なにか御用だったんですか?」
なんだったら伝えておきますけれど、とココが
それには全員が首を横にふって
代表してミントが
「いいえ。これからお茶をするのでお誘いしようと思っただけですの」
「そうですか…」
ココはしばらく考えるそぶりをすると
アルモと視線をあわせて、ひとつ、うなづき
「あの、みなさん…」
ひっそりと、耳打ち
視線がちらりと、レスターにながれる
彼は気づかずに、先日ルフトから下された指令書に目を通しているところだった
確認すると続ける
「その、マイヤーズ司令とクールダラス副司令のことなんですけど」
「…えぇ、実は私たちもそれが気になっていたのでここまできたんですわ」
お茶のお誘いは口実のひとつであった

ロウィル艦隊との戦闘で、エンジェル隊とは完全に仲が戻ったタクトだが
レスターとはあいかわらず不仲が続いているのだ

「まぁ、あたしたちにも責任がないわけでもないしね」
ランファがちょっと居心地悪そうにつぶやく
「お二人の喧嘩ははじめてではないんで、時間がくれば解決すると私たちもおもうんですけれど」
「ここ数日、マイヤーズ司令の体調も悪いですし」
「今日も、ずっと咳こまれてて、おやすみになったのも、クールダラス副司令に怒られて、なんです」
「精神的な影響もあるのかも、しれません」
ヴァニラが呟く
「あれ以来、戦闘がないのか救いかねぇ」
「戦闘がなくてもなにかと忙しいですものね」
フォルテとミントの会話に
「そうなんです。特に航路などではヴァインさんに協力を求めることが多くて…」
「入れ違いとか、交代勤務も多いですし」
火に油状態が続いているという
「タクトさん…」
ミルフィーが泣きそうな顔で呟く
全員が同じ気持ちでいるところに

「アルモ、ココ、仕事に戻ってくれ」

レスターから声
「は、はい」
「わかりました」
アルモとココはそろって返事をすると
「みなさん、クールダラス副司令はあたしたちがなんとかしますから」
「マイヤーズ司令のこと、どうかよろしくお願いします」
二人は去り際にそういって戻った
気がつくと、他のクルーたちの視線がこちらに集まっている
どうやら、全員、同じ思いのようで
「はい、わかりました」
ちとせが力強く返事をかえした



ブリッジをでて移動する途中
「タクト!」
ランファがその姿を、みつける
「あれ、みんな」
「みなさん、こんにちわ」
タクトとルシャーティが仲良く歩いていた
「タクトさん、おやすみになられたのでは?」
ヴァニラが心配そうにかけよった

「あぁ、うん。途中でね…」
「その…お恥ずかしいかぎりなのですが、わたし…道に迷ってしまって」
ルシャーティが耳まで真っ赤にしながら告白
「タクトさんがいらしてくれなかったら、ずっと迷ったままでした」
「いや。お役に立ててなによりだよ」
照れたように笑うタクトは、いつもの彼で
エンジェル隊は小さく安堵

ゲホッゴホ
「タクトさん」
「あぁ、大丈夫。なかなか咳がとれなくて」
「大丈夫なのかい?」
「ケーラ先生に診てもらったし大丈夫だよ。ほんと咳だけで熱とかもないしね」
微笑んでかえす
「あまり、無理はなさらないでくださいね」
「ありがとう。ルシャーティ」
穏やかな会話

「そうだ。ちょうどいいわ。タクト、ルシャーティ、あたしたちといっしょにお茶しない?」
「あぁ、みんなはお茶しにいくところだったのか」
「そうですわ。どうでしょう?お二人とも」
「お茶ですか、えっと、そう…ですね、お邪魔でなかったら」
「うん。なんか、みんなでお茶するのも、久しぶりだなぁ」

ティーラウンジ
「ルシャーティさんって、方向音痴なんですか?」
期間限定”宇宙苺ミルフィーユ”を食べながら、ミルフィー
遠慮のない会話
それは、すっかりルシャーティがエルシオールになれた証でもあった
「実はそうなんです…EDENでも、いつも迷ってばかりで」
紅茶をまちながら、ルシャーティ
その表情は、最初とくらべて柔らかく優しい
「じゃぁ移動とか、どうしてたの?」
真っ赤なとうがらし味アイスを食べながらランファ
「移動は、あまりしませんでしたから」
「ライブラリの管理者というのも、大変なお仕事なんですね」
カモミールのハーブティーをおいて、ミント
「…あ、でも。ヴァインがよく、外へ連れ出してくれました」
「ヴァインがかい?」
「はい。機会があるたびに、いつだってあの子は私の手を引いてスカイパレスへ
 夕焼けが本当に綺麗なところなんです」
フォルテの前に、焼き鳥の皿が置かれた
「暖かいオレンジと優しい夜の色がゆっくりと混ざるあの時間は、なによりの宝物です」
「ぜひとも、みてみたいです」
ほぅと、お茶を飲む手を止めてヴァニラ
「はい、是非」
「そのときは、ルシャーティさんが私たちを案内してくださいね」
団子の串をおいて、ちとせが
「喜んで」
「あ、じゃぁ私はそのときお弁当つくっちゃいます」
「それはいいなぁ。みんなで夕焼けピクニック」
タクトがうきうきと同意した
「ミルフィーの強運に巻き込まれて、凄いことになるのがオチよ」
「でも、なんだかんだいいながら、きっと楽しいですわ」
「そうだねぇ」
「はい」
「楽しみです」
その後は、しばらくどうでもいい話が続く

ゴホッゴホ…
タクトは今日、何度目かの咳をした
すると
「タクトさん、大丈夫ですか?」
心配そうな、ルシャーティの声
「あぁ、平気平気」
タクトの言葉に
ルシャーティは少し安心したような表情をすると
次の瞬間、意を決したように
「…タクトさん、その先日はヴァインが失礼なことをして」
「え?」
いきなり話題がかわって、タクトが混乱
ルシャーティは
「その、もしかしたら私たち姉弟のせいでタクトさんとクールダラス副司令の仲が…」
言葉は最後まで続かなかった
「あははは」
タクトが小さく、笑う
ゴホゴホ
咳き込んだ
「タクト、さん?」
「いや。なんか前にも同じ事聞いたからさ。ごめんごめん」
変な意味じゃないんだよ、と
エンジェル隊は、そんな二人の様子をじっと見詰めて
「ヴァインがね、同じ事を前俺にいったんだ。やっぱり姉弟なんだね」
そのときは、エンジェル隊とタクトだったが
「そうなんですか…」
「うん。でもほんと全然平気だからさ。安心してよ」
「…」
「それにしても、ヴァインはほんとルシャーティのことを大事にしてるんだね」
タクトが、話題をかえた
だから
「そうよね、それに働き者だし。もうすっかり整備班の間じゃアイドルだもん」
ランファが意図をくんで、話にのる
「この前、宇宙コンビニでお会いしたときも、ジョナサンさんのお手伝いをしていらっしゃいましたわ」
「あ、私も食堂でガストさんのお手伝いしているの見たことありますよ」
「昨日、医務室のほうのお手伝いをしていただきました」
そこに
追加オーダーをもってきたティーラウンジのウエイトレスも
「つい先日も、うちの掃除を手伝っていただきましたよ。お優しい方ですよね」
「へぇ」
「クジラルームでもお手伝いされていたそうですよ。クロミエさんがおっしゃっていました」
「働き者だねぇ」
全員が感心したように、うなづく
「えぇ、ヴァインは本当に優しい子なんです」
ルシャーティが自分のことのように喜ぶ
「でも、やっぱりヴァインはルシャーティが特別なんだとおもうよ」
ゴホゴホッ
タクトが咳をしながら、感慨深そうに呟く
「え?」
「そうですね。なんというか、雰囲気が特別優しいもののように感じます」
ちとせが同意した
「それになんていったって、顔がいいもの」
「ランファさんったら、そればっかりですのね」
ランファの言葉に、ミントがあきれたように答えると
「ランファらしいや」
ミルフィーが笑う
その笑顔は、全員に感染して

ティーラウンジは、久しぶりに明るい笑い声で満ちている


皇国暦412年
トランスバール皇国は、ヴァル・ファスクに占領されたEDENの解放にむけて
儀礼艦エルシオールを中心に、白き月とEDEN解放艦隊をブリス星系に集結させつつあった


種をまこう
幸せの、種を

「あれ?ヴァイン…」
みんなとティーラウンジでわかれ、部屋に戻ろうとしたタクトが先に気がつく
と、向かい側からやってくる彼も
「タクトさん。おやすみなったのでは?」
にっこりと、いつもの、微笑み
その手には
「?」
「あぁ、これですか」
ヴァインはもっていたものをみせた
それは、色とりどりのキャンディがはいった瓶
「さきほど、エンジンルームのほうのお手伝いをしまして
 お駄賃として頂いたんです」
お一つどうですか?とヴァインはピンク色のキャンディをひとつ
タクトはそれをもらうと
「そっか、ヴァインが手伝ってくれるからみんな本当に助かってるよ。ありがとう」
素直にお礼をした
「いえ、お世話になっているのですから、これくらいは…」
ヴァインは少し戸惑ったような表情
ゴホゴホッ
タクトの咳が、通路に響く
「大丈夫ですか?」
「あぁ、うん」
「お休みになられたほうがいいですよ。部屋までお送りしましょう」
ポンポン
ヴァインはタクトの背中を軽くさすると、司令室まで先立って歩き出した

「でも、タクトさんもよくみなさんのお手伝いをされているんですよね」
「え?」
「みなさんが”前はマイヤーズ司令が手伝ってくれたのに”っておっしゃってましたよ」
「あははは、前回とか前々回とかは結構、暇だったりもしたんだけど」
タクトは申し訳なさそうに笑う
実際、今回は事務仕事などが山積みで、日課でもあったエルシオールの巡回が
あまり行えていない状況であった
「だから、なおさら、ヴァインが手伝ってくれるのは助かる」
「…お役に立てているなら幸いです。でも、タクトさんは司令官なのに
 どうしてそんなに働かれるのですか?」
「へ?」
いつも”もっと働け”とまわりから言われている身としては
聞きなれない言葉に、おもわずききかえしてしまった
「タクトさんだけではなく、エンジェル隊のみなさんもですが
 暇さえあればどなたかのお手伝いをされていますよね」
お仕事、お忙しいでしょうに

「情けは人のためならず。って諺しってる?」
タクトはゆっくりと言葉を選ぶ
「…はい。人のためにした良いことは、必ず自分に返ってくる。という意味でしたか」
「そういうことだよ。ヴァイン、幸せっていうのは種をまくことだと、俺はおもう」
「種、ですか」
「そ。今すぐには結果がみえなくても、いつか実を結ぶときがくるんだよ」
ぱらぱら
タクトはかすかに手を広げて、種を蒔く仕草
それは、酷く神聖な儀式のように見えて
「だから俺は、種をまく。たくさん、ね…それは早かったり、遅かったり
 ときには、芽を出さなかったり、思いがけないところで成長したりする
 でも…いつか、自分に返ってくるんだよ。だからそれは、俺自身のためでもあるんだ」
「なるほど…」
そんな話をしていると、司令室の前につく
ゴホゴホッ
「じゃぁ、ヴァイン。わざわざ送ってくれてありがとう。助かったよ」
「いいえ。タクトさんも、よく姉を送ってくださるでしょう?
 姉は方向音痴なので、僕も助かっていますから」
タクトは、そのヴァインの穏やかな表情に少し考え
「君は本当に、ルシャーティのことが大切なんだね。羨ましいよ」
素直にそう想う
タクトにも兄が二人、いた
もう…名前も顔もよく思い出せないけれど
(いや、もともと覚えていないのかもな)
マイヤーズの家を勘当される前でさえ、顔をあわせる機会が両手分にも満たなかった
「二人っきりの姉弟ですから」
「そうだね…そうだ、ヴァイン。部屋によっていくかい?お茶くらいしかないけど」
きくと
「そう、ですね。でも姉もまっていることですし」
「ルシャーティなら、エンジェル隊とお茶してるはずだよ」
「では…」
お邪魔します、とヴァインの言葉は続かなかった
さえぎったのは

「なにをしているんだ?」


「レスター」
タクトが振り返る
通路の突き当たり、ブリッジの出入り口
そこから、レスターがこちらに歩いてくるところだった
(ブリッジをでたすぐ左側が司令室なのである)
ゴホゴホッ
「タクト、やすめっていったろう」
「わかってるよ」
冷たい言葉に、どうしても返す言葉も冷たくなる
「わかっていたら、なんでまだこんなところにいるんだ」
イライラしているのが手にとるように

「タクトさん、僕…やはりお暇します」
「ヴァイン」
「また誘ってください」
ヴァインはにっこりと笑うと
「では、クールダラス副司令、失礼します。タクトさん、早くよくなってくださいね」
そう頭をひとつさげて、若干足早に、その場をあとにした
後姿を見送りつつ
「あーぁ、レスターが怒るから」
タクトは非難がましくそういうと、司令室の扉をあける
「…あぁ、そりゃぁ悪かったな。お楽しみの邪魔をして」
「なんだよ、それ」
はいりかけたタクトの足が、とまる
ゴホゴホッ

「…別に」
「レスター、言いたいことがあるならはっきり言えばいいだろう」
「自分の胸にきけよ」
「なっ」
ゴホゴホッ
感情が昂ぶるせいか、咳の回数が酷くなって

「エオニアの次は、あのガキか?…ったく、やってられないのはこっちだ」

その一言
そう、それは”禁句”という部類に入るであろう、ソレで
一気に
冷えた

「…レスター」
涙が出ないのが不思議だった
その声の響きに
「…っ」
レスターは、一瞬だけ”しまった”という表情をみせたが
声にしてしまった言葉を取り消すことはできず
だから
苦しそうに、目を、つぶると
「さっさと、その咳、なんとかしろ」
それだけいって、もう二度とタクトをみることはしなかった

去っていく後ろ姿をみつめる
いつまでも
みえなくなっても
だが
ゴホゴホッ
呼吸をするのも忘れていたのか、咳がもどって
はじめて、自分がまだ生きていることを思い出すと
部屋の中にはいって、扉を、しめた

プシュッ

扉がしまり、背後で壁になる
トンッ
軽く、その硬い感触に背中を預けて
ズルズルズル…
そのまま、急に、立っているのも面倒になって
その場に座り込んだ

「ばかやろう…」

眠りにおちる寸前の、その呟きが
レスターに対したものなのか
それとも、自分へのものだったのか
タクト自身にもわからない

しかも、誕生日にこの話かよ…;



2005年03月25日(金) 花束…の日

今日は花束をもらいました(わぁい)

第10話「破壊者来訪紅茶」



想い返すと、それは最初からだった気がする
エオニアのクーデターのとき
なんの説明もなしにいきなり戦闘に巻き込まれたときも
黒き月で紋章機が動かなくなったときも
半年前
ネフェーリアとの戦いの時だって
いつだって、それは最初から変わることなく


宇宙に戦火の花
「きゃぁっ」
「ミルフィーっ」
ラッキースターに群がる敵を、ハッピートリガーが打ち落とす
「だ、大丈夫です〜ありがとうございます。フォルテさん」
目をぐるぐる、ナルトのようにまわしながらもミルフィーが体制をたてなおし

銀河に響く破壊音
「シャープシューターの装甲がっ…あぁっ」
ドッドドッン
たて続けに攻撃をくらったちとせが絶叫を
そこに
「ちとせさんっ」
ミントのトリックマスターのフライヤーが、むかってくるミサイルを相殺
だが
「きゃぁっ」
頭上から、今度はトリックマスターに攻撃が降り注ぐ

死の世界が広がる空
「ヴァニラっ」
ランファのカンフーファイターのアームが、ハーベスターに狙いを定めていた戦闘機を打ち落とす
「…ありがとう、ございます」
「かまわないわ、それより補給に戻ったほうがいいわね」
「はい…」


ゴホッゴホ…
「劣勢だな」
咳を繰り返してから、タクトは困ったように呟いた
今日はこれで、3度目の戦闘となる
ついに現われたヴァル・ファスクは、容赦なくその牙をエルシオールにむけていた
未知の宇宙
未知の艦隊
そして、ここ数日のぎくしゃくとした仲によるエンジェル隊の不調
悪条件が、重なりすぎている


ヴァル・ファスク
旗艦オ・ケスラ
そのブリッジにたつのは一人の男
名をロウィルといった
トランスバール侵攻艦隊総司令官である
ネフェーリアとおなじような白い肌に、ヴァル・ファスク特有の紋様
だが、彼はその優勢とは裏腹に、無表情に宇宙をみつめていた


「ハーベスター、補給完了。戦場に戻りました」
報告と、ともに
「マイヤーズ司令!敵の増援ですっ」
「なんだって?!」
驚愕の声とともに、モニターには新たな艦影の表示
ゴホッゴホ
タクトは咳こみながら、次の指示を
そこ、へ

「失礼します」
一人の青年がブリッジへ姿をあらわした
「ヴァイン?」
タクトが首をかしげるのと
「戦闘中はブリッジへの立ち入りは禁止だぞ!戻れっ!!」
レスターの激昂が重なった
タクトは、その怒鳴り声に顔を若干しかめつつ
「いや、いいよ。レスター」
「…っ」
とめた
レスターは、なにかいいたそうに表情を歪めた、が
「勝手にしろっ!」
一言はき捨てる
ゴホゴホッ
「ヴァイン、なんだい?」
「はい。もしかしたら役にたつのではと、その…これを」
ヴァインは一枚のディスクをさしだす
ゴホッゴホッ
咳をしながら、タクトはそれをうけとり
「これは?」
「宙域のデータです」
「?!」
タクトはそれを、いそいでココに手渡した
「ヴァル・ファスクから逃げ出すときに、なんとかそれだけは『ライブラリ』から」
パッ
画面にあらわれるのは、詳細なまでの宇宙航路図
「すごい、ヴァイン、これは凄いよ」
ゴホッゴホッ
喜びすぎて、再び咳き込む
だが、すぐに復活すると
「お役にたてましたか?」
首をかしげるヴァインに
「あぁ、しかもこの地形…うまくいけば」
タクトはそう呟くと、しばらく考え
そして、エンジェル隊との通信回線を開いた


「みんな、聞いてくれ」

『タクトさん?』
ミルフィーが顔をあげる
「今、ヴァインから周辺宙域の星系データをもらった。転送する」
パッ
ミントはそう聞くと、送られてきたデータを開く
『助かりましたわ、これで地形の不利という条件はなくなりましたわね』
「あぁ、そこで今から作戦を発表する」
タクトは一呼吸、おくと
ゴホゴホッ
咳込む
コホンッ
咳払い、そして

「まずは、全機この迂回路をとおって、逃げろ!」

自信満々の顔で

『あんた、馬鹿じゃないの?!』
ランファの怒鳴り声が舞い込んできた
『逃げてどうするのよっ、逃げて!!』
同じく
「せめて撤退といえ、撤退と!」
レスターからも非難が
それでもタクトはめげずに
「じゃぁ、いいかえる。戦術的撤退だ」
『なにか考えがあるのかい?』
フォルテの問いに
「あぁ。まずは紋章機が先行、エルシオールはぎりぎりまで敵艦隊をひきつけておく」
タクトの言葉にあわせて、ヴァインからもらった新しい星系図にポイントがうかぶ
それは、6っつのマークが迂回路を回り
『あ、わかりました』
ちとせが嬉しそうにいった
「そう、紋章機のスピードなら迂回路をとった先、つまり…敵艦隊の背後をとれるはずだ」
『…はい』
ヴァニラが小さくうなづく
全員の顔に、若干、希望の色
しかし

「タクトさん、ですが…エンジェル隊のみなさんもかなり消耗していますよ」
ヴァインが進言する
「今お渡ししたのは、星系図だけです。それに、その作戦だと紋章機が背後をつけなかった場合
 逆にエルシオールが危険にさらされることになると思いますが…」
全員がタクトに注目、した
表情が明るくなっていたエンジェル隊も不安そうに、タクトをみる
タクトは


「だいじょうぶ」


一言。
「だいじょうぶ、って」
「俺はエンジェル隊を…みんなを信じる。彼女たちなら…いや」
タクトはいいなおして
ヴァインから視線をはずすと、モニターのエンジェル隊全員をみた
「この作戦は、君たちじゃないとできない」
声は不思議な響きをもって伝えられる
「君たちにしか、できないんだ」
それは、ひどく穏やかな表情

想い返すと、それは最初からだった気がする
エオニアのクーデターのとき
なんの説明もなしにいきなり戦闘に巻き込んだときも
黒き月で紋章機が動かなくなったときも
半年前
ネフェーリアとの戦いの時だって
いつだって、それは最初から変わることなく

絶対に揺るがない
自分たちを信じてくれる、瞳

『仕方ないわねぇ』

最初に、応えたのは
「ランファ」
カンフーファイターのコックピットで、ランファは自慢の長い金髪を一度かきあげた

『そうよね、あんたの無謀な作戦ができるのは、あたしたち以外にはいないわよね』
「あぁ」
タクトがうなづく
笑顔で
返されるランファの表情は、いつもの勝気な彼女のもの
「ランファとカンフーファイターのスピードは銀河1だ!」
『わかってるじゃない!さぁ、いくわよっ』

ギュゥゥ…ン

カンフーファイターのクロノ・ストリング・エンジンは、小さく小さく唸ると

ギュッ…ン
音すら置いて、加速、した

「カンフーファイター、出力上昇中!」
ゴホッゴホッ
その報告をきくと、気が抜けたのか、タクトは再び咳こんだ
だが、息をする暇も、なく

『あ、まってよ。ランファ〜』
ミルフィーの声がして、ラッキースターも駆け出す
『早くこないと、あたしが敵を全部やっつけてお手柄にしちゃうんだから』
『タクトさん、いってきます!』
「いってらっしゃい。でも早く帰ってきてくれよ。だって、ミルフィーはエルシオールの幸運の女神なんだからね」
『えへへ。バーンといってバーンとやっつけて戻ってきますから待っててくださいね』
「ラッキースター、出力回復…いえ、同じく上昇していきます」
「あ、ハッピートリガーも」
『仕方ないねぇあの子達は、タクトっちょっとの間、いい子でまってるんだよ!!』
「お願いします、フォルテ様」
光の帯をひきながら、2機をフォルテが追う

「まさか、そんな…」
ヴァインが信じられないものを見るように、呟く
それは、誰にも聞かれることはなかったが

周りのクルーたちは、しかしさすがになれているのか、次々と対応をして
「ハーベスター、シャープシューター、出力戻りました。上昇中です」
『信頼に、お応えします』
「ヴァニラ、みんなを頼むよ。君がいてくれるから彼女たちは安心して戦える」
『…はい』
『いってまいります、タクトさん』
「あぁ。ちとせに狙い撃ちされたらどんな艦でもイチコロさ!」
ハーベスターとシャープシューターが寄り添うように2本の軌跡を描き
「これで全機です。トリックマスター、でます!」
『では、タクトさん。またあとでお会いしましょう』
「みんなのフォロー、よろしくね。ミント」
『えぇ』
最後に、ミントがにっこりと優雅に微笑んで、モニターが全て消えた

ゴホゴホッ
一息つく
苦しそうに咳こむタクトのそばに、ヴァインが
「だいじょうぶですか?タクトさん」
「あ、あぁ…ありがとう、ヴァイン。君のおかげでなんとかなりそうだよ」
「いえ…」
ヴァインは少しだけ戸惑うように視線をながすと
意をけっしたのか
「でも、さすがはタクトさんです。まさかあんな劣勢がこんなにも好転するなんて」
「俺はなにもしてないよ。みんな、彼女たちのおかげだ」
タクトは当たり前のように返した
「いいえ。タクトさんの言葉で彼女たちは調子を取り戻した
 それどころか、まさか紋章機にまで影響があるなんて」
「それは、H.A.L.Oシステムのせいだよ」
「ヘイロウ?」
「Human-brain.and Artificial-brain.Linking Organizationシステム…
 頭文字をとってH.A.L.O。紋章機特有の操縦システムで、脳の一部とリンクして
 電算処理や確率計算なんかを…あー、つまり…彼女たちの調子やテンション…
 心の力によって性能がかわるってことだよ」
「なるほど…ですが、それだとあまりにも不安ではないですか?
 心というのは人間の中で一番不安定なものでしょう」
「確かに安定性には欠けるかもしれない。
 でもね、ヴァイン。だからこそ、彼女たちは時に考えられない力を発揮する」
ヴァインは…

「タクトっ!まだ戦闘は終わってないぞ!」

ヴァインが応えるより先に、レスターの声がブリッジに響いた
ブリッジクルー全員が、その声に、ビビる
「わかったよ。じゃぁ、ヴァイン。本当にありがとう」
タクトはもう一度ヴァインに礼をいうと、指揮にもどった

ゴホッゴホッ
「ったく、エンジェル隊にまかせっきりで、いいご身分だな」
「…悪かったよ。そんな言い方、しなくてもいいだろう?」
コホ…ン
「それと、その咳。本当になんとかしろ」
「わかってるったら」
振り切るようにタクトはいうと、モニターに目を向けた
6色の紋章機が、ロウィルの艦隊を蹴散らしていく
作戦は成功だ
レスターも実務にもどる
ブリッジにも、活気が、もどった

だから
ヴァインがブリッジをでていくときの表情も
「不完全な心…だったら、完全に制御された心で戦えれば…」
小さなその呟きにも
気づいた人間は、誰もいなかったのである





2005年03月24日(木) 今日は友達とご飯を食べに行くので…の日

今日は友達とご飯を食べに行く予定なので
早めに日記をかいてから出かけます
なにたべようかなv


第9話「喧嘩かき揚げ」

コホッコホッ

「風邪ひいたかな…」
コホコホッ
軽い咳を繰り返しながら、目覚ましのベルをとめる
妙な気だるさが、体の芯に残っていた
「慣れない事したからかなぁ」
ため息が、ひとつ
コホコホッ
咳を繰り返す

コホコホッ
「風邪ですか?タクトさん」
ブリッジ
今日も今日と、仕事にはげむタクトに声をかけたのは報告書をもってきたヴァニラであった
「あぁ、うん。ちょっと朝から咳がね」
「治療をしたほうが…」
「ありがと。でも、咳だけだし」
だいじょうぶ、といいたかった
しかし、それよりも早く
「治療してもらえ。うるさくてかなわん」
釘をさされた
「…レスター」
コホコホッ
軽い咳の合間に、その名前を呼ぶ

呼ばれた相手は、こちらを向きもしないで
「体調管理も仕事のうちだ。肝心なときに倒れられでもしたら迷惑するのはこっちなんだからな」
「…わかったよ」
長い付き合いから、ごまかすのは不可能と悟ると
タクトはおとなしく
「じゃ、ヴァニラ。お願いしてもいいかな?」
「はい」
ヴァニラは小さく頷き、ナノマシンを輝かせた
魔法のような光
優しく淡い緑の光は、しばらく輝くと一際大きくなったあと収束する
ゆっくりと目がなれて
名残として残ったのは、ちいさな錠剤
「これで咳は収まるはずです」
「ありがと」
「お水を…」
ヴァニラはタクトに錠剤を手渡すと、水を汲みにその場をいったんはなれた
その姿を見送る


(ねぇ、ねぇ、なんか今日の副司令,不機嫌じゃない?)
(うん、ピリピリしてる…)
アルモとココの会話
(そりゃそうだろ、昨日の今日だしさ)
そこにジョナサンが加わり
(なんせいきなりアレだもんねぇ)
アレとはつまり
(予告なしだったもんね。それも目の前で。ヴァイン君のキス)
昨日、タクトがヴァインにキスされたことについてであって
(恋人だって言った直後だったのに)
(あぁ、それに副司令ってけっこう嫉妬深いところがあるし)
(マイヤーズ司令も、次から次へと、災難だよなぁ)
更に、他のブリッジクルーもまざって話がどんどん広がっていく
(でも、マイヤーズ司令って男運いいよね)
(うんうん、クールダラス副司令にエオニア様でしょ?)
(ペイロー兄弟もね。そのうえで、ヴァイン君までだもん…いいなぁ)
女性クルーが羨ましそうにいうと
(つーか、男が男運よくてどーすんだよ;)
(だよなぁ…)
(ところで、エンジェル隊は女運がいいにはいるのか?)
(どーだろう、俺だったらちょっと自信ないけど…)
ざわざわ
がやがや
好き勝手に言いたい放題
他人の不幸は蜜の味、というか
エルシオールという限られた空間の中での数少ない娯楽、というか
スキャンダラスは飯の種、というか
盛り上がっていると

「お前たち、少し騒がしいぞ」

あからさまに不機嫌な声が一括した
そのとたん
ピタリ…
と、静寂がおとずれる

コホコホッ
タクトの咳だけが、響いた

プシュッ
吹き抜ける空気の音
ヴァニラがコップに水を汲んで戻ってくる
「ありがとう、ヴァニラ」
「いいえ」
薬を飲むのに適温の、ぬるま湯
タクトは大人しく、それで錠剤をのみこんだ
だが
コホコホッ
もう一度、軽く咳こみ
「タクトさん?」
「あぁ、いや大丈夫だよ」
「ですが…」
「本当に大丈夫だから。それに風邪とかいう漠然としたものじゃナノマシンでも治療しにくいだろうし」
「…すみません」
「そんなことないよ。だいぶ楽になった」
ほら、と
落ち込むヴァニラの前でタクトは少しばかり大げさに動いてみる
しかし
コホコホッ
「タクトさん…」
「うーちょっと調子に乗りすぎたかな」
「…では、あとでケーラ先生に診ていただいてください」
「うん、そうするよ」
タクトはもう一度、ヴァニラに礼をいった
それと、ほぼ、同じくして
プシュッ
再び、扉の開く、音
全員の視線が自然と、出入り口にあつまる
そこにいたのは

「ちょいと邪魔するよ」
「お邪魔しまーす」
「お邪魔いたします」
はいってきたのは3っつの人影
フォルテとランファ、そして
「ヴァイン…」
「こんにちわ、タクトさん」
ヴァインは優雅に微笑んだ
「…いいかげんにしろ、お前たち。ブリッジは遊び場じゃないと何度いえば………」
「遊びにきたんじゃないよ。用事があってね」
聞いただけで背筋が寒くなるほど、怒りのこもったレスターの言葉にはっきりと返事をかえしたのはフォルテ
(さすが…)
こんなときになんだが、タクトは素直に感心する
「ヴァニラに用があってきたのよ」
ランファはそういうと、さっさとヴァニラの前へ
「わたしに、ですか?」
「ルシャーティがね、頭痛がするっていうの。だから少しみてあげてほしいんだけど」
ランファのうしろで、ヴァインも頭をさげた
「お願いいたします」
「わかりました」
ヴァニラはひとつ頷く
「今、医務室にいるからいってやっておくれ」
悪いねぇ、ヴァニラとフォルテ
「いいえ。では、失礼します」
ヴァニラは入り口付近でひとつ礼をすると、ブリッジをでていった

「ルシャーティ、大丈夫なのかい?」
タクトは近くにいたランファにきいてみる

「大丈夫でしょ、ヴァニラがみにいったんだし」
タクトのほうを見ることはしないが、ランファは短く答えて
「そっかぁ…」
コホコホッ
「おや、タクト…風邪かい?」
「馬鹿は風邪ひかないっていうけどね」
「うん、ちょっと朝から咳が…」
コホッコホッ
会話は続かなかった

「タクト、お前も医務室いってこい」
「え、大丈夫だよ。レスター」
「お前が大丈夫でも、他の連中に風邪がうつるかもしれないだろうが」
「…」
なにかを訴えるように、レスターをみる
だが、レスターはそんなタクトを無視して作業を再開
コホコホッ
「タクト、副司令のいうとおりだよ」
見かねたフォルテが、やわらかく、そういった
「えぇ。随分と回数も多いようですし、僕たちこれから医務室へいきますから…ね?タクトさん」
ヴァインが心配そうにタクトの顔を覗き込む
そのとたん
ピキッ
気温がさらに、1度ほど、下がった
コホッコホッ
タクトは、もう一度、咳き込むと
「わかったよ。じゃぁしばらくブリッジを頼む…」
諦めたように、一言
だが
「もう帰ってこなくていい」
「…レスター」
それだけ一方的にいいきると、レスターはもうなにもいわなかった
「…」
コホッコホッ
「ほらいくよ、タクト」
ぐいっ
「え、ちょ…フォルテっ」
がっちりと腕をひっつかんで、フォルテは出口へ歩き出す
「ではみなさん、失礼いたしました」
「お邪魔しました-」
ヴァインとランファがそのあとに続いた
ブリッジを一歩外にでるとき
「じゃぁ副司令、タクトは借りてくよ」
レスターを探るように、フォルテが一言
しかし、それに返事が帰ってくることはなく
ため息が、ひとつ

扉が、しまった

「今日のクールダラス副司令、ちょっと迫力〜」
ランファが興味深そうに、つぶやく
タクトをひきづりながら歩くフォルテはあきれたように
「あぁ、ったく。あんた達は1シリーズに1回喧嘩しないと気がすまないのかい?」
「…1シリーズってなんだよ、フォルテ」
タクトが力なく、かえした
「喧嘩?お二人は喧嘩をされてるんですか?」
「はは、いやだなぁヴァイン。喧嘩なんかしてないよ」
「嘘つきなさいよ、あからさまに副司令怒ってたじゃないの」
ランファが笑いながらいった
「そんなこと、ないよ。あいつは不器用だからああいう言い方しかできないだけで
 本当は俺のことを心配してくれてるのさ」
「でも、それにしては言い方がきつすぎるわよ。あんた、また無神経なことやって副司令を怒らせたんでしょ」
コホコホッ
言葉のかわりに咳
「ランファ、やめないか」
「もしかして、昨日のことが原因ですか?」
フォルテの仲裁と、ヴァインの言葉が重なった
「昨日?」
「違うよ、ヴァイン」
タクトがやわらかく否定の言葉
「ヴァイン、なにかしたの?」
しかし、ランファが続きをさとした

「昨日、そのお二人が恋人同士だという話を聞きまして…その、少し興味があったものですから」
「うんうん」
「ランファっ」
「タクトさんにキスを…」
ヴァインは泣きそうな感じに、申し訳ない顔をした
そして
「行動が軽率でしたね、タクトさん、すみませんでした」
頭をさげる
タクトは
「あ、いや…ほんとに違うよ。ヴァイン」
困ったように笑いながら
追い討ちをかけるように
「そうよ、キスくらい」
ランファが続けた
「こいつ、もーっと凄いこといろいろやったんだから、ヴァインがきにしなくていいの」
そういって
「ほら、元気だして。ルシャーティもまってるし。いこいこ」
ぐいぐい
ランファはヴァインの腕をひっぱってさっさと先へ進む
コホコホッ
取り残されたのは、タクトとフォルテ
コホッ
「タクト、本当にだいじょうぶなのかい?」
「うん。ヴァニラにも診てもらったし」
フォルテは心配そうにタクトをみつめ
ふぅ
ため息をつくと
ポンポン
その頭を2,3度撫でて
「ランファのことはあんま気にするんじゃないよ」
「だいじょうぶ。ランファに悪気が無いことくらい俺にだってわかるから」
コホッ
「…さてと、それじゃさっさと医務室へいこうか」
「あぁ」
二人は再び歩き出す
途中、フォルテが空気をかえるように
「そうだ、タクト。暇になったんだから、たまにはあたしらとお茶でもどうだい?」
いつものシニカルな笑みでそういった
コホッ
タクトは、もう一度小さく咳こむと
少し間をおいてから
「いや、今日くらいは大人しく寝ることにするよ」

コホコホッ

(っ痛…)
軽い咳だが、何度も繰り返したためか
胸が痛んだ
鈍い痛み
それは、あまりにも鈍くて
本当に胸がいたむのか、それとも
痛いのは心なのか、区別がつかないほどに
タクトは無意識に、心臓のあたりを掴んだ
胸が痛い…
しかし
「そうだねぇ、あまり…無理をおしでないよ」
心配そうなフォルテの言葉に
「あぁ、だいじょうぶだよ。ありがとう、フォルテ」
小さく微笑みを返すと、その痛みもいつのまにか、わからなくなってしまったのだ

コホッコホッ






2005年03月23日(水) 弟に…の日

車ぶつけられました(涙)


第8話「とらぶるプティング」

「タクト、お前…熱でもあるのか?」
「へ?」
なんの前触れもなく、そういって額に手をあててきたレスターにタクトは驚く
大きな手
(…いいなぁ)
同じ男としては、ちょっと羨ましい
そんなことを思っていると
「熱はないか」
「あるわけないだろ。…なんだよ、いきなり」
「いや、ここ数日…お前がエンジェル隊とお茶もしないで仕事ばっかりしてるから」
そういうレスターの後ろでは、アルモ、ココをはじめとしたブリッジクルーが同意するようにうなづいている
(日頃の行いかなぁ…)
トホホ…とタクトは心の中で泣いてみた
白き月での謁見以来、ヴァインとルシャーティと会話する機会が多くなり
それにともなって、仲直り…とまではいかないが、エンジェル隊との仲も徐々に元に戻りつつあった
一部のいじっぱりな人物(誰とは特定しないが、例えるなら辛いもの大好きな彼女)が
恥ずかしがって顔をあわせれば鉄拳で空の彼方までぶっ飛ばされるのを除けば(笑)
まぁ、それはそれでいつもどおりといえないこともないし
とはいうものの、流石に前と同じように戦闘中以外はいつも一緒…というのも気まずい
そこまで戻るには、もう少しばかり、時間の流れが必要なわけで
自然と、タクトのすることは仕事しかなくなってしまった
それだけ、だったの、だが…
「俺が仕事しちゃわるいのかよ」
「誰もそこまでいってないだろう?」
不貞腐れた言葉に、レスターがやれやれとため息
そして
「エンジェル隊はいいのか?」
「あぁ。みんな率先してヴァインとルシャーティにかまいっきりだもん」
もともと、かまいたがりであるところに、まるで人形のような姉弟
それは彼女たちの格好のおもちゃであった
「ヴァインとルシャーティか…」
「レスターは、二人のこと、どう思う?」
話題にでたところで、参考意見をもとめてみる
冷静沈着な副官は
「どう、ってな。そういったことはお前の得意分野だろうが…いっておくが、俺に人を見る目はないぞ?」
万能型の天才である副官は、自分でなんでもできるので他人に興味が薄い
あっさりといいきった
「なんだ、なにか気になることでもあるのか?」
「…というわけでもないんだけど、なんていうかな、ヴァインが…」
そこに
「お二人ともとてもお優しい方だとおもいますけど」
二人の会話をきいていた、アルモが意見を
そのアルモにひとつうなづいて、ココ
「えぇ。昨日も資料を運んでいたら手伝ってくれました」
「あ、俺も俺も」
「わたしもです」
あちこちのブリッジクルーからコメント
「へぇ…」
タクトはひとつ感嘆の言葉
まさかここまで、二人がエルシオールに馴染んでいるとは
「それになにより、お二人ともすっごい、綺麗じゃないですか」
「ヴァインさんなんて、整備班のお手伝いなんかもしてくれるらしくて、すっかりアイドル扱いだとか」
整備班
「整備班、ってことはクレータ班長か」
美少年アイドルのおっかけが趣味の彼女らしかった
「女どもの考えることは、わからん」
レスターは二人の会話をききながら、ひとつため息
「そーいえば、アルモ、ココ。俺も一昨日、データ整備手伝ったじゃないか。俺はアイドル扱いにならないの?」
その横でタクトがアホな質問

「あはははは、マイヤーズ司令ですし」
「ねぇ」
アルモとココは冷や汗たらたらで、ごまかした
「どーいう意味だよ…」
しくしくしく
タクトは泣きながら、自分で言ったことを後悔する
そこに容赦なくとどめ
「ま、けっきょくは顔ってことです」
…悲しかった(涙)
そんな馬鹿なことを繰り返していると
最後に
「まぁ、なんだ…あんまり、無理はするなよ」
ポンポン…
レスターは、ひとつ咳払いをしながら、タクトの頭を二度はたく
軽くて優しい音がして
「…」
視線を投げると、照れているのか、さっさと実務に戻る相方の後姿
そんななんでもないことが嬉しくて
タクトは、おもわずにやけてしまうのだ

そんな風に
ブリッジでいつもの光景が繰り返されていると

「お邪魔いたします」
そういって入ってきたのは
「ちとせ…と、それに」
「こんにちわ、タクトさん」
「お仕事、ごくろうさまです」
ちとせの後ろには、ヴァインとルシャーティ
先ほどまで話題に上っていた二人の姉弟は、優雅な仕草で一礼
タクトはとりあえず、ちとせに声をかける
「今日はちとせが案内役?」
「はい。エルシオール巡りもブリッジで最後です」

「ブリッジは遊び場じゃないんだぞ」
「遊びじゃありません。交友を深めるための見学です」
あきれたレスターのものいいに、ちとせははっきりと言い返した
(ちとせもだんだん、みんなに毒されてきたなぁ)
タクトは口にはださす、そんなことを思う
そこに
「あなたが、クールダラス副司令ですか?」
ヴァインが、レスターに視線をむけながら言った
「あ、あぁ」
まさか自分に話し掛けられるとはおもっていなかったレスターが返事を
タクトも
「ヴァイン?」
不思議そうに、ヴァインを見た
ヴァインは小さく笑って
「突然失礼しました。エンジェル隊のみなさんによくお話を伺っていたので、どのような方だろうと思って」
「へ?」
「俺の?」
「えぇ。エンジェル隊のどなたにお聞きしても、自分たちが戦ってこれたのは、
 タクトさんとクールダラス副司令のおかげだとおっしゃるんです」
「そんなことを?」
タクトは思わずちとせに視線をなげる
ちとせは
「はい!」
力いっぱい答え
「私たちのチームワークの中心となっているのは、タクトさんとクールダラス副司令の絆なのです
 先の大戦の時も、新人の私が大役を勤めることができたのは、お二人がいて下さったからなんですよ」
「先の大戦というのは、ヴァル・ファスクのネフェーリアを破った…という?」
ヴァインが興味深そうにたずねると
「はい!」
手を組み、夢をみるように語る
その目には、少女漫画のような、きらきらの星
「…ち、ちとせ」
帰ってこーい、とタクトは小さく手招き
「絆、ですか」
ヴァインは何か考えるように呟く
その隣で、ルシャーティが
「でも、クールダラス副司令って本当にかっこいい方なんですね」
「…」
普段ならば、くだらんと一言で切り捨てるレスターだが相手がルシャーティだったので、寸前のところで思いとどまる
「エンジェル隊のみなさんや、他の女性クルーのみなさんも口々にかっこいい方だとおっしゃっていたので
 どんな方だろうって、とても楽しみにしていたんです」
「それにとても優秀な方だと伺っています。文武両道で、機転に長け、信頼も厚いのだとか」
ヴァインとルシャーティは無邪気に、レスターに関する話を
当の本人は、返事をかえすことも、かといって無視することもできずに固まっているのだが
(こまってるこまってる)
(ファイトです、クールダラス副司令)
ちとせとタクトはそんなレスターを微笑ましく眺める

「でも、そんなに優秀な方がどうして副官なのですか?」
「え…」
「あぁ、失礼。深い意味はないんです。ただ、ひとつの艦に優秀な指揮官が二人いるよりかは
 2艦に分かれた方が、戦略なども広がるのではないか…とおもっただけで」
ヴァインは綺麗な笑顔で微笑みながら
「クールダラス副司令の階級は中将でしたよね?普通なら艦隊司令や参謀長官などもできる高官でしょう
 それをわざわざタクトさんの副官でいるのは、正直もったいないと思ったので」
「ヴァイン?」
ルシャーティが首をかしげて、弟をみる
ヴァインは、まるで理科の実験結果をまつ小学生のように、どこかウキウキとした眼差しでレスターの答えをまっていた
「あ…」
きまづい空気にちとせが隣のタクトに視線をながす

「タクトさん…」
ちとせには、タクトが泣き出しそうに、見えた
実際は、いつもとかわらない笑顔だったのだが
そっと手を伸ばす
だが、ちとせの手がタクトに届くよりも、はやく

「俺はタクトの副官以外をやるつもりはない」

レスターの言葉
きっぱりと
そして、どこかしら怒りを含んでいるようにも聞こえる言葉
その姿に、ちとせは以前、タクトを傷つけるものには容赦しない。といったレスターの言葉を思い出す
ヴァインはきづいているのか、それともただ気にしないだけなのか
「それは、なにか理由でも?」
堂々ときりかえし、次の言葉をまつ
弟の態度に、ルシャーティは不安そうに、その服のすそを掴んだ
だが、ヴァインはそれを無視して、視線はいまだレスターに注がれたまま
「理由なんてないさ。ただ、タクトには俺が必要ってだけだ」
「そう、なのですか?…でも」
次に、ヴァインの視線はタクトへ
視線があう
びくっ
タクトは無意識のうちに、一歩、後ろへ下がった
ヴァインは笑顔を崩さず
「タクトさんはどうなんです?」
「どう、って…」
「本当にクールダラス副司令が副官として必要なのでしょうか?」
「え、そ、そりゃもちろんだよ」
「どうしてです?だって、僕がみたところタクトさんはとても素晴らしい司令官だ
 でも、クールダラス副司令も優秀な方なので、そのありがたみが薄れている感じがするのですが」
「そんなことないよ。俺、怠け者だからレスターがいないと、困る…」
タクトの語尾が、段々弱くなって
「クールダラス副司令と限定する必要があるんですか?たとえば、そうエンジェル隊のみなさんとか」
「レスターとは、士官学校からずっといっしょだったし。気心がしれてるというか」
「…でも、人はいつまでも同じ関係を保つことは難しいでしょう。歳をとれば、立場もかわります」
ザワザワ
ブリッジクルーが騒ぎ出す
空気が、いつのまにか、冷たいものにかわっていた
ヴァインは、しかし、それすらも気にせず続ける
「それに、自分と同じ…もしかしたらそれ以上の能力の方が副官だと、劣等感や、心配事が絶えないでしょう?
 そう、たとえば…”彼は無理をして自分に付き合ってくれているんじゃ……」
ヴァインの言葉は最後まで続かなかった
ぐいっ
「へ?」
タクトの視界が、ゆれる
気がついたときには、すでにレスターの腕の中
レスターはタクトを片手で抱きしめつつ
睨む様にヴァインに視線をあわせて
「俺のいい方が悪かったな。言い直そう」
ひとこと

「俺にはタクトが必要だ」

言い切った。
「副官だからタクトの傍にいるんじゃない。タクトがいるから、俺は軍にいる」
「レ、レスター…そ、そのぅ、みんなみてるんですけど…」
ブリッジクルーの視線は一点集中
さすがのタクトも、恥ずかしくて顔が真っ赤だ
しかし、タクトのささやかな抵抗は
ヴァインによってかき消され
「なるほど、一番大切なのはタクトさん、ということですか…
 わかりました。不躾な言い方になってしまってすいません」
言ってから、頭をひとつ、さげる
だが、レスターはまだ警戒しているのかタクトを手放そうとはせずに
「ヴァインさんは、少々、難しく考えすぎですよ」
空気が若干和んだのをかんじて、ちとせが間に割って入った
「そう、ですね。…でも、なんとなくわかった気がします。これが皆さんがおっしゃる”絆”というものなんですね」
それは、まるで最終確認をするような口調で
答えたのは、ちとせ
「はい、こんな風に本当に心から信頼しあっておられるお二人がいて下さるからこそ
 私たちはどんなに苦しい戦いのときも、前を向いて戦ってこれたんですよ」
「なるほど。羨ましい」
力説するちとせに、ヴァインは優しく微笑みかけ
と、今まで不安そうにしていたルシャーティも緊張がとけたのか
小さく微笑みながら
「羨ましいです…でも、タクトさんとクールダラス副司令ってご親友というよりも、まるで恋人かご夫婦のようですね」
正直な感想
(そのとおり。しかもバカップル)
↑これは、声にこそでなかったけれど、ブリッジクルーが全員同時に思ったこと
そして

「えぇ、そうなんです。お二人は恋人同士なんですよ!」

更に馬鹿正直に答えたのは、ちとせであった
「…」
少しの沈黙
(あ、あれ…?)
ちとせが、そう、思った瞬間

「えぇー?!」×2

ヴァインとルシャーティの声が重なって、ブリッジ中に響いた

「こ、恋人同士って、お二人とも…男性、ですよね?」
おずおずとルシャーティが
さすがに、同じ男であるヴァインは言葉がでないようで
「えーと、まぁ、そうなんだけど…」
タクトは心の中で”もうどうにでもなれ”とやけになりつつ答える
「トランスバールでは、同性同士のカップルが多いのですか?」
「ど、どうでしょう…エルシオールでは結構多いのですが…」
でも、それがタクトとレスターの影響だとちとせは知らない(笑)
「あぁ、でもなんとなく納得いたしました。お二人ともお似合いだと思います」
「…ありがとう、ルシャーティ」
タクトはトホホと泣きつつ
レスターの腕からやっとの思いで抜け出した
そして、固まってしまっているヴァインに声を
「び、びっくりした?ヴァイン」
「え、えぇ…少し」
「ごめんね。でも、えーっと、その…」
タクトはなんとかフォローの言葉を探して視線をながす
目があうとあわてて職務に戻るブリッジクルー(そして視線が外れると再び注目)
あからさまに不機嫌な様子で職務に戻るレスター(今夜が怖い…)
レスターとタクトのラブラブ話に花を咲かせるルシャーティとちとせ(女の子ってこういう話題好きだよなぁ)

「あ、いえ。だいじょうぶです。わかっていますよ。クールダラス副司令は
 男性が好きなのではなくて、タクトさんが好きなんですよね。たまたまお二人が同性だったというだけで」
「…あー、うん。そういうこと」
あまりにもあっさりと理解してもらえたのでタクトは若干、拍子抜け

ヴァインは再び、先ほどの考える表情にもどると
ちいさく
「…男同士、か」
つぶやく
「え?」
聞こえなくて、タクトがヴァインの顔を覗き込んだ
視線があう

「?!」

目がすぐ、近くまで…
息が、できない
そんなことを、タクトが思ったときには
すでにヴァインの唇は、タクトの唇から離れていくところだった
コクリッ
唾、だろうか?何かが喉の奥へ滑り落ちて
「へ?」
空気のぬけるような、間抜けな疑問符
そうして、やっと
(俺、いま…)
キスをされたのだ、とタクトが自覚するのと
ヴァインが、美味しそうに舌なめずりをしたのが重なる

「あぁ、すいません。ついうっかり。…ちょっと興味があったものですから」

悪びれる様子もなく、ヴァインは優雅に微笑むのであった



2005年03月22日(火) 自分でも予期してなかったんですが…の日

なんか気がつくと、ヴァイン×タクトとかはいってるかもしれません
今回は完璧に無意識です
こわいなぁ…


第7話「真実三昧菖蒲酒」

白き月
トランスバール皇国に浮かぶ純白の人工惑星
謎の天災・クロノ・クエイクで滅びかけた人類に
天恵(ギフト)として失われた技術(ロストテクノロジー)を授けた救世主
それにより人類は爆発的な進化を遂げることに成功したのである
だが
白き月は本来、先代文明EDENの物であった
その高い科学力をもっていたが故に、ヴァル・ファスクと戦うことを余儀なくされたEDEN
それは「白き月」と「黒き月」という二つの巨大な兵器工場を生み出す
「白き月」は人が管理する
人の心やテンションといった不確定要素を取り入れるがために無限の可能性を生み出す「白き月」
「黒き月」は機械が管理する
逆に人をいう不確定要素を完全に取り払い確実な成果を発揮するが故にその限界が限られる「黒き月」
二つの兵器工場は互いに競い合い成長し
そしてその「融合」によって、究極の兵器を生み出すためのモノであったのだ

エオニアのクーデターの際、「黒き月」は破壊されたが、その管理者であるノアは生き残った
今では、「白き月」で暮らしている

そして

「そして、白き月がやってきた。というわけか…」
エルシオールの艦橋から、その優しい白光を放つ惑星をタクトは見上げていた
皇国暦412年
永遠の平和の象徴であった白き月は、トランスバール本星軌道上を離れ
ガイエン星系までの移動を完了した



「タクト・マイヤーズとエンジェル隊。EDENよりの客人をお連れいたしました」

白き月宮殿

やわらかい光を放つステンドグラスの前に大小二つの影
一人は、やわらかな白い布をたっぷりとつかった儀礼服を着た背の高い女性
もう一人は、褐色の肌に黒紫のドレスを身に付けた少女
「ごくろうさまです…そして、ようこそEDENからのお客様」
背の高い女性…白き月の管理者・聖母シャトヤーンは柔らかく微笑んだ
見るもの全てを優しい気分にさせる、そんな笑顔
「私は、この白き月の管理者…シャトヤーンとお呼びください」
「あたしのことはノアでいいわ。もうないけれど、黒き月の管理者よ」
その横から、ノアが一歩進み出ていった
(あいかわらずだなぁ)
タクトは懐かしさをこめて少し笑う

「…タクト」
「は、はいっ」
ジロリとにらまれた
あわてて姿勢を正す
後ろにいるエンジェル隊から小さく
「…馬鹿」
と一言(たぶん、ランファあたりだろう)
そんなやりとりは無視して

「…ルシャーティと申します」
「弟のヴァインです」
緊張した面持ちのルシャーティと、落ち着いたヴァインの声がして

「さっそくだけど、あんたたちがEDENの民だっていう証拠をみせてもらおうかしら?」
単刀直入にノアがいった
「ノア…」
「これだけははっきりさせておかないとね。タクトもエンジェル隊も、シャトヤーンも…
トランスバールの人間は平和ボケもいいところなんだから!騙されてからじゃ遅いのよ」
「騙すなんて、そんなっ…酷いです。ノアさん」
きつい言い方にミルフィーが抗議
だが、ノアは聞く耳もたないというふうにルシャーティとヴァインを正面から見据えると
「さぁ、なにか証明できるものはあるの?」

沈黙

そして
「…わかりました」
ルシャーティは目をつぶり、一歩前に出る
「これが、証拠になるのかどうかはわかりませんが」
そう呟くと、ゆっくり手を…

瞬間
世界が一転した
それは、いつか、どこかでみた景色
そう
「これはたしか、以前…白き月にアクセスしたときの?」
ちとせが呟いた

ネフェーリアとの戦闘
白き月に現われたノアがシャトヤーンとともに起動させた
”月の記録”
それは白き月が自動で収集した情報の集合体
そこにはEDENとヴァル・ファスクの戦いの歴史
更には、黒き月と白き月の詳細な情報
大小関わらない宇宙で起こった出来事が余すことなく記録保存されている

それはまるで、プラネタリウムに浮かぶような感覚
誰もがその宇宙の美しさに言葉を失いかけた
そのとき
「あれは…」
呟いたのはノアだった
タクトが見る
ノアは驚愕にわずかばかり震えていた
「ノアさん?」
声をかけたのは、ちとせ
すると

「あれは、惑星ジュノー…」

ノアが見つめる先には、蒼い星
綺麗な惑星
「ジュノー?」
「そう、あれは…ジュノーよ。EDENの首都星…わたしの、生まれたところ」
「なんだって?」
全員の視線がそこにうつる
蒼い星
そのまわりには
「あれ、もしかして…白き月?」
「黒き月もありますわ」
双子のようによりそう、黒と白の惑星

そこで、映像は途切れた

世界が白に戻る
漆黒の宇宙から、光あふれる下へ
しばらく、目が痛んだ

「あんた、いったい何者?」
ノアが口を開く
「管理者も知らない、白き月の記憶にアクセスできるなんて、そんなこと…」
ルシャーティは一歩前にでた
そして

「私は…EDENの『ライブラリ』の管理者なのです」

一言
「EDENのライブラリ?」
「はい。宇宙の全ての叡智が集まる場所…それがライブラリ。
白き月や黒き月にある”月の記憶”はその端末なのです
そして、ライブラリに干渉できる管理者は一族の人間のみ」
「なるほど…」
ノアはしばらく考える仕草

一方、そのころ
(ねぇねぇ、ランファ…)
(なによ)
(今のってどういう意味?)
(あんたって子は…)
ため息
(つまりですね、一軒の大きなケーキ屋さんがありますでしょ)
(うんうん)
(そのケーキ屋さんはとても美味しいので、スーパーやコンビニなんかにもケーキを出品してますの)
(へぇ、すっごくおいしいんだ。いいなぁ、食べてみたいなぁ)
(問題はそこじゃないの)
ポカリッ
(いたー)
(そのコンビニやスーパーに出品されているケーキが、白き月や黒き月の記憶。というわけですわ)
(ほぇー)
(そしてそこにケーキをだしている大きなケーキ屋さんがEDENのライブラリと呼ばれる場所なんですの)
(え、じゃぁEDENのライブラリっておっきなケーキ屋さんなの?!)


「わかったわ。あんたたちがEDENの人間だっていうのは信じる」
ノアが諦めたように呟いた
ルシャーティはほっと胸を撫で下ろした
「では、我々の話を聞いてくださるのですね?」
ルシャーティのとなりにヴァインが並んで、きりだす
「えぇ。聞かせて頂戴」
ノアは短く返事をすると、黙って二人の言葉をまつ

「EDENは今、ヴァル・ファスクの支配下にあります」
言葉はヴァインから
「僕たちは、管理者の一族の生き残りとしてヴァル・ファスクのためにライブラリで生かされていました
 そこで、先の大戦の際ネフェーリアを破ったあなた方のことを知ったのです」
「つまり、もうヴァル・ファスクはあたしたちのことを知っている。というわけね?」
「はい…白き月、そして黒き月には定期的に情報をライブラリへと送信する機能があり
それはクロノ・クエイクによってEDENと二つの月が離されたあとも継続して行われていました」
ルシャーティが不安そうにヴァインをみる
震える手をゆっくりとのばせば
ヴァインは、軽く、その手を握り返して
「ヴァル・ファスクは次のねらいをあなた方…トランスバール皇国へむけています。
 僕たちはその隙をついてなんとか逃げ出すことに成功したのですが、追っ手におわれてしまって…」
「逃げ出して、どうするつもりだったの?」
「…あなた方にお会いして、EDEN解放へのお力添えを願うつもりでした」
「じゃぁ、本当にラッキーだったんだ。あそこで私たちと出会ったのは」
ラッキーガール、ミルフィーユが感嘆とともに呟いた
「はい」
ルシャーティは少しだけ笑みをこぼしてうなづく
「これも運命ってやつなのかもね」
ランファも同意
「どうかお願いです。EDENを…私たちをお救いください」
ヴァインとつないだ手は離さないまま、ルシャーティがシャトヤーンとノアを見上げる

「一つだけ答えて欲しいことがあるの」
ノアは感情のこもらない声で一言
「なんでしょう?」

「EDENがヴァル・ファスクに占領されたのは、いつ?」

ビシッ
空気が凍るような音
時間が固まる
酷く長い時間がたったような気がした
答えたのは、ヴァイン

「ライブラリの記録によると、およそ600年前…
 クロノ・クエイクによって衰退していたEDENは一晩でヴァル・ファスクに占領された、と…」

「どうしてですの?クロノ・クエイクは天災なのでしょう?」
「それもそうだね、EDENとヴァル・ファスクの技術力は同じくらいだったんだろう?
 なのにEDENだけがクロノ・クエイクの被害を受けたっていうのかい?」
ミントとフォルテが簡潔にまとめる
全員の視線が姉弟にあつまった
そして

「クロノ・クエイクは…天災などではありません」

ゆっくりとヴァインが言葉を選ぶ

「え?」
その疑問符を出したのは誰だったろう
どういう意味なのか問いただす間もなく語られたのは

「あれは、ヴァル・ファスクが人工的に作り出したものなのです」

長い
長い沈黙が、あったと思う
「ヴァル・ファスクがクロノ・クエイクを?」
全員が驚愕に言葉を失うなか、ただ一人
「そう…なるほどね」
ノアだけが納得した表情をしていて
「ノア…」
「馬鹿馬鹿しいけど、効果的な方法だわ」
「でも、宇宙規模の災害なんておこせばヴァル・ファスクだって…」
「知っているのと知っていないのとじゃ対処の仕方が違う。その後の対応もね」
「はい…更に言えば、ヴァル・ファスクには寿命がない」
ヴァインはゆっくりとつけたした
「寿命がない?それってつまり…」
「歳をとらないっていうこと?!」
「まさか、そんな…」
「不老不死というわけではないのでしょうが、ヴァル・ファスクが私たちよりも長命であることはたしかです
 ライブラリにあるクロノ・クエイクを起こしたヴァル・ファスクの王の名はゲルン…そして、今現在のヴァル・ファスクの王も名をゲルンと」
「それは、たとえば…シャトヤーンさまのように名前だけ受け継いでいるということではなくて、ですか?」
「はい、ライブラリの記憶が正しければ」
「ただ記憶をためるだけのライブラリが間違いを起こすことは考えられないわ。それは全て事実よ…」
ノアは呟くように肯定する
「そして、ヴァル・ファスクはネフェーリアを破ったあなた方を警戒している」
「第二のクロノ・クエイクが引き起こされる可能性がある…ということですね?」
「えぇ、それもかなり高い確率で」

きゅっ
その時
タクトは、ルシャーティの手が震えるのを
そしてヴァインがその手をもう一度、強く握りなおすのをみた
それとともに、緊張でかたまっていたルシャーティの表情にわずかだが柔らかさがもどるところも

「私たちがこうしている間にも、EDENの人たちはヴァル・ファスクに酷い目にあわされているんですね」
ミルフィーが泣きそうな顔で呟く
「許せないっ、そんなやつらこのあたしがギッタギタにのしてやるわ」
胸をはってランファが
「一刻も早く、お救いしなくては」
普段は無表情なヴァニラも、決意に満ちた表情をしている
そんなエンジェル隊の言葉に押されるかのように、ルシャーティは一歩前へ
そして
「お願いいたします…どうか、我々を…EDENをお救い下さい」
「お願いいたします」
ヴァインも、その後ろで頭を下げた
「シャトヤーン様、あたしたちからもお願いします」
続いたのはフォルテ
「えぇ。事はもうEDENだけの問題ではありません」
そしてミント
「シャトヤーン様」
祈るようにちとせが
だが

「馬鹿ね、あんたたち」

答えたのはシャトヤーンではなく、ノアであった
「ノアさんっ」
「いい?今回、あたしたちはそこの二人が本当にEDENの人間なのか確認にきただけなの。
 ついでにいっちゃえば、皇国軍を動かす権利もない。それは政府の人間の仕事でしょ」
「ノア…」
「ヴァル・ファスクを倒してEDENを解放しました。はい、おしまい…ってわけにはいかない
 そこには、政治とか、情報とか、そういった細かくてややこしい問題が山積みなのよ」
長い金色の髪をうっとうしそうにかきあげる
それは、光をはらんできらきら眩しい
「じゃぁノア!あんたこのままEDENを見捨てろっていうの?!」
ランファがつかつかと前にでた
そのまま、ノアをきっと見据える
ノアも負けじと
「本当に馬鹿ね!そうやって一時の感情だけで行動するなっていってるの!」
「なによっ!この冷血漢!」
「脳みそまで筋肉の、格闘技馬鹿にいわれたくないわっ!」
今にも互いに掴み掛からんばかりの勢いでにらみ合う二人
その
二人の間
火花が散る、そこへ、影が、ひとつ

「はいはい、そこまで。そこまで」

「タクト、さん…」
ルシャーティが小さく呟く
タクトは、いつもとかわらない、ちょっと間の抜けた表情で
「ほら、二人が喧嘩してると、いつまでたっても話が先にすすまないよ?」
「なによ、タクトっ、邪魔する気?!」
がしっ
肩をひっつかむ
タクトは
「…ランファ」
名前をひとつ
「っ」
視線があう
ランファの鼓動が一つ、はねた
ドク…ンッ
「EDENはノアにとって故郷なんだ。本当に…見捨てるわけがないだろう?」
「………ぅ」
返事に詰まる
普段となにもかわらない、優しい声
だが、真ん中に一本、しっかりとした芯のある言葉
そして、瞳
優しくて
でも、どこか悲しい
そのくせ
決意に満ちた眼差し
「もちろん、わかってると思うけど」
ふにゃ
空気が抜けるように、タクトはいつもの笑顔に戻った
ランファは、小さく、息を吐くと
「あ、当たり前でしょ」
そういって、タクトの肩から手を離す
心臓はまだ、ドキドキいっている
そのまま背を向けた
背中越しに、タクトの、声
「ノアも…本当はわかってるはずだ。こんな風に他人の痛みを自分の痛みとして感じることができる彼女たちだからこそ
 これまでの戦いに勝ってこれたってことが」
「………わかってるわよ」
「大丈夫、心配しなくてもいいよ。EDENはきっと俺たちが解放してみせるから」
「…心配なんて」
それはまるで
兄が妹に昔話を聞かせるような優しい響きで
「大丈夫」
タクトはもう一度、はっきりと言い切った
「ま、すぐに…というわけにはいかないけどね」
へにょっと、いつもの表情と声に戻る

「マイヤーズ司令のおっしゃるとおりです。今すぐに、とはいきませんが…
 私からも、シヴァ女皇に頼みましょう」

「シャトヤーン様…」
柔らかなシャトヤーンの言葉に、エンジェル隊の表情に明るさが戻っていく
それは、ルシャーティとヴァインにも
シャトヤーンはもう一度、優しく微笑んだ



「タクトさん」
「ん?」
エルシオールの通路でタクトを呼び止めたのは
「ヴァイン…どうかしたかい?」
「さきほどは、ありがとうございました」
綺麗な笑顔で、頭をひとつ下げる
タクトは疑問符をだしつつ
「さっきって…?」
「白き月で、ノアさんとシャトヤーン様にお口添えをしてくださったことです」
「あぁ、あれは俺が言わなくてもあの結果になってたよ」
笑ってごまかす
そして
「シヴァ女皇は、とてもお優しい方だから、きっとEDEN解放に力を貸して下さるはずだ」
「はい」
ヴァインはほっと安心したようにうなづいた
そして
「それにしても、ノアさんとランファさんの喧嘩の仲裁はお見事でした。流石は司令官ですね」
尊敬のまなざし
「あはははは、まぁ、慣れてるからね」
照れ隠しのために、タクトは少しばかりおおげさなリアクションで返した
「本当は少し心配していたんです…僕たち姉弟のことでタクトさんとエンジェル隊のみなさんの仲が悪くなったんじゃないかって…」
ヴァインが申し訳なさそうにいう
タクトはあわてて否定した
「あぁ、いや…あれは俺が悪かったんだよ。君たちにも嫌な思いをさせてしまったね」
「いいえ。タクトさんの行動は間違ってはいない…この艦とエンジェル隊のみなさんを護るためには必要な行動です」
「…そういってもらえると」
少しだけ、救われる気がした
ヴァインは無邪気に会話を続ける
そこからは、今まで感じた違和感は感じられなくて
「ところで、ノアさんにおもしろいことをおっしゃっていましたよね?」
「おもしろい、こと?」
なんだろう、と思い返す間もなく
「”こんな風に他人の痛みを自分の痛みとして感じることができる彼女たちだからこそ、これまでの戦いに勝ってこれた”
 と…それが、エンジェル隊の強さの秘密ですか?」
「うん、俺はそう思うんだけれど…」
「それは、つまり…他人の苦しさを自分のことのように感じる分、他人のために働くことができる。ってことですよね?」
「まぁそういうことかな…でも、ヴァイン?どうして、そんなことを?」
いつのまにか、尋問されている気分になってタクトは息苦しさを感じる
と…
「いいえ。…少し興味があったので。ヴァル・ファスクを破ったエンジェル隊の強さについて
 僕たちにとって、あなた方はEDENを救ってくださるヒーローなんですから」
ヴァインは笑う
それは、それは綺麗に
「エンジェル隊のみなさんにもお聞きしたんですよ」
「へぇ…みんなは、なんて?」
「護りたいものがあるから戦えるのだと…」
「あはは、みんならしいや」
そう言ってる様子が想像できて、タクトは微笑んだ
ヴァインはその微笑をみながら、小さく呟く

「本当に…うらやましい…でも………」

それは、あまりにも小さすぎて、呟いたヴァイン自身にも聞こえなかった



2005年03月21日(月) Xファイルの日

Xファイルなんて見てみる
むかーし、深夜枠で放映してた話。なつかしー。


第6話「バラバラ心の音せんべい」

沈む夕日
絵の具が混ざるような空
永遠の時間のひとかけら
つないだ小さな手と手
伸びる影はどこまでもどこまでも一緒で

クジラルーム
「こんにちわ、タクトさん」
さくさくさく
砂を踏む軽い音をさせてタクトは中にはいった
そのまま、まっすぐ宇宙クジラとクロミエの傍による
そして
「クロミエ…その」
「わかっています。あの姉弟のことですね?」
にっこりと微笑まれて言われると、それだけでもう何もいえない
素直にひとつ、うなづいた
「宇宙クジラがいうには、あの二人の心を占めているのは漠然とした不安…
そして、お互いに対する深い想い…微かな希望」
「…そう、か」
「タクトさんが心配されるようなことはないと思いますよ?」
「あぁ、ありがとう…クロミエ」
そこまで聞いて、やっと心が軽くなったのを感じる
タクトはひとつため息
「それよりも、むしろ心配なのはタクトさんだと」
「え?」
クロミエをみる
ついさっきまでにこにことしていた表情が違うものになっていて
「宇宙クジラからの伝言です”君は君の存在の大きさを知るべきだ”と」
「存在の…大きさ?」
考える
それは、つまり
「それは、俺がエンジェル隊に与える影響ってことかな?」
皇国、いや今では銀河一を誇る”紋章機”
それは乗り手であるエンジェル隊のテンションによって性能が変化する
彼女たちのテンションが高く、精神的に安定されればされるほど高性能に
逆に、テンションが低く、不安定な精神で扱えば動くことすらままならなくなるほど極端に
エンジェル隊司令であるタクトの1番の任務は、彼女たちのテンションの調整なのだ
確かに、ここ数日、タクトは件の姉弟のことでエンジェル隊と今までにない不仲状態である
気まぐれで個性的。そしてかなりの癖がある彼女たちと、それでもタクトは仲良くやってきた
その絆こそが、先の2度に渡る大戦の勝因といってもいいほどに
だから、いま、タクトに問題があるとするならそのことだろう
しかし、クロミエは少し困った顔をすると…
「それもありますが…でも、宇宙クジラがいうのはもっと大きな意味だと思いますよ」
「大きな,意味?」
意味がわからなかった
「はい…つまり…」
クロミエの最後の言葉は聞こえることなく…


「タクトさん」


「ミント…」
名前を呼ばれて振り返ると、そこにはミントがにこにこといつもの笑顔で立っていた
「こんにちわ」
「こんにちわ、ミントさん」
ミントはクロミエと簡単に挨拶をかわすと
「タクトさん、今、銀河展望公園でルシャーティさんとヴァインさんの歓迎ピクニックを開いておりますの」
「え、あ…そうなのか」
「えぇ。それでタクトさんにも是非出席して頂こうと思いまして」
「わかった、今いくよ」
タクトは二つ返事を返し
「クロミエ、いろいろありがと。それじゃぁ、また」
「…はい」
クロミエに一つお辞儀をしてから、先にまつミントの後を追った
「…」
クロミエはしばらく、タクトとミントが仲良くでていったクジラルームの出入り口を見つめていたが
キュォオオオオンッ
宇宙クジラの鳴き声がひとつ
「そうだね、宇宙クジラ…」
それに答えるように…壁のように視界をふさぐ宇宙クジラを撫で
「何度も危機を乗り越えた彼らだもの、今回もきっと…」



テクテク…
「でも、ミントが俺の迎えにきてくれるなんて珍しいなぁ」
銀河展望公園への通路を歩きながら、話題はタクトから
ミントは軽く笑うと
「あら、お嫌でしたか?」
「ううん、凄くうれしいよv」
慌てて否定
テクテク…
テクテク…
話題はそこで途切れ、無言の時間に再び戻る
テクテク
先に耐え切れなくなったのは、タクトだった
「…えーと、その、みんなまだ、怒ってるかな」
「怒ってなんておりませんわ」
「…」
切り捨てられるような言い方に、返事ができなくなる
言葉を捜してタクトは少しばかり考え
ミントは、そんなタクトの様子をみると
はぁ
ひとつ、ため息
そして
「怒っていましたら、ピクニックになんてお誘いしませんわよ」
「…うん」
「ですが、タクトさんのあの判断には私もフォルテさんも理解はしますが賛成できません」
「ミント…」
「表向きだけでも、あの姉弟の言う事に素直にうなづいて下されば、こんなことにはなりませんでしたわ」

『お願いです…どうか、どうか私たちのEDENをお救い下さい』

すがってくる瞳
そうだ
ミントの言うとおりだ
たとえ本心がどうあろうとも
あの場で、いつものようにうなづいていれば、こんなことにはならなかった
星空の出会いから
数えれば一年にも満たない、短い間だが
それでも、彼女たちと自分は上手くやってきた
それが
こんなにも簡単に崩れようとするなんて

「タクトさん、この前から、なにを考えていらっしゃるんですの?」
いつの間にか、歩みはとまっている
ミントの視線
自分の心の全てを見透かしてしまうような
そらすことのできない瞳
「前は、テレパスなんて使わなくても私たち、心を通わせることができましたわ」
「…」
「ですが、今は…私に貴方の気持ちはわからない…不安がまるで氷のように心を固めてしまっている」
そっ
ミントの伸ばされた手が左胸にあたる
あたたかさ
だけれど
「ミント、ごめん…」
こぼれた言葉は一つだけ
体をひく
ミントの手は、追うこともなく、ゆっくりと落ちた
逃げるようにその場から歩き出す
後姿に
「タクトさんっ」
「ごめん、俺にも、わからないんだよ…」
搾り出した言葉は、冷たくて
冷たい、これが、本当に、自分の声なのかと疑いたくなるほどに
酷く怖かった

「…タクト、さん」
見えなくなる後姿に一言
ミントは、行き場のなくなった自分の手をしばらくみつめ
そして、ゆっくりと祈るように結んだ
「そうやって、一人で抱え込まれてしまっては…私たちはどうすればいいんですの?」



銀河展望公園

開けた視界が、目に痛かった
光になれてくるころ
「タクトさーん」
ミルフィーの声
「あ、きた」
ランファが続く
声のしたほうに視線をむけると、ビニールシートをひいた上に7人の姿
「ごめんごめん、待たせたね」
「タクトさん、こちらへどうぞ」
ヴァニラが席をあけてくれる
そこへ座った
「あ、あの…」
その目前には
「お疲れ様です、マイヤーズ様」
おろおろと取り乱す金の髪の少女と
逆に落ち着いた声で挨拶をしてくる同じ髪の色をした少年
「いや。えっと、ヴァインって呼んでいいかな?」
「はい。どうぞお好きなようにお呼びください」
「ありがとう。…あと、俺のことはタクトって呼んでほしいな」
「いいんですか?」
「あぁ。どうもそう呼ばれるのは慣れてなくてね」
少し笑ってみせる
と、ヴァインの緊張も緊張が解けたのか
「では、そういたします」
かすかに微笑んで答えた
タクトは、そのまま隣に座るルシャーティの方をむくと
「ルシャーティもそれでいいかな?」
「………は、はい」
真っ赤になってコクコクとうなづく
まるで少し前までのちとせを見ているようだな
そんなことを、思っていると
「おやおや、なんだかちょっと前までのちとせを見ているようだねぇ」
フォルテも同じ事を思っていたらしい
「え、わ、私ですか?!」
もっていたお茶を落としそうな勢いで、ちとせが返事をした
「そうですねぇ」
「ほーんと、あのころはちとせもガチガチだったもんね」
ミルフィーとランファも笑いあう
やわらかな日差し
微かな風
のんびりとした時間
それは、数日前までエルシオールでよくみかけられた風景

…だったはず、なのだが

「あっ」
カシャン
カラコロ…
平穏に入る小さなヒビ
「ご、ごめんっだいじょうぶか?ヴァイン」
「いえ…」
「ちょっと、びしょ濡れじゃない」
タクトがお茶を受けそこない、近くに座っていたヴァインは頭からそれをかぶってしまった
「だ、大丈夫なの、ヴァイン?」
「心配ないよ、姉さん」
「大丈夫じゃないわよ、これはもう着替えるしかないわね」
ランファはヴァインの髪をハンカチで拭きながら
「…そうですね、では失礼します」
「あ、案内しようか?まだ、艦内に慣れてないでしょう?」
「えぇ、助かります。ミルフィーユさん」
ミルフィーがヴァインの手を取って銀河展望公園をあとにした
その姿を見送ってから

「もう、なにやってんのよ!この馬鹿タクト!」
ランファの鉄拳が飛んだ
「いったー」
「いったー、じゃないわよ。せっかくのピクニック台無しにして」
「わ、悪かったよ…ランファ」
タクトとランファのどつきあい
エルシオールでならそれこそ日常茶飯事であるはずの過激なスキンシップ
だが、今回ばかりはきまづい空気が流れる
「謝ればいいってもんじゃないのっ」
「…う」
「だいたい、この前からちょっと変よ!タクト。ヴァインに恨みでもあるの?」
「そんなわけないだろ」
「どうだか、あーぁ、タクトなんて呼ぶんじゃなかった!」
「ランファ先輩、いいすぎですっ」
ちとせが止めに入る
だが、それがますます気に入らなかったのか
「…はいはい、どうせ悪いのは私ですよーだ」
ランファはくるりと背を向けるとすたすたと出口へむかいだし
「ランファっ」
タクトの声もむなしく
ひらひらと手をふると、ランファの姿は銀河展望公園の外へと消えた

「ったく、しょうがないねぇ」
やれやれと、フォルテがため息
彼女は豪快な仕草で、髪をかきむしると
よいしょ、と立ち上がって
「仕方ない、タクト。ルシャーティを頼んだよ」
そういって、ランファのあとをおった
ヴァニラとちとせもそのあとに続く
「あ、あぁ…」
タクトはそういわれてはじめて、隅で震えるルシャーティにきづく
いきなりはじまった喧嘩に戸惑っているのはあきらかで
「あの、ルシャーティ?」
とりあえず、名前を呼ぶ
「は、はい」
微かだけれども、返事
タクトはほっと一息ついて
「ごめんね、驚かせて」
「いえ、その…こちらこそ、弟のことでみなさんが…」
「いや、ヴァインは悪くないよ。あれは俺の不注意…ほんと、ごめん」
タクトはもう一度頭を下げると、ちらかった物の後片付けをはじめた
ルシャーティもそれを手伝う
しばらくの沈黙
先に破ったのは、彼女から
「でも、私…本当は少し安心しているんです」
「え?」
「ヴァル・ファスクを破った英雄ってどのような方たちだろうって…ずっと考えていました」
タクトはルシャーティを見る
柔らかな春の日差しに、その輪郭が溶けて消えてしまいそうな
儚い少女
「もしかしたら、ヴァル・ファスクよりも怖い人たちだったら…なんて…」
馬鹿ですね、私
くすくすくす
小さな笑い
春の陽だまりのような笑顔
「ミルフィーユさんってとてもお料理が上手なんですね」
「あ、あぁ…ミルフィーの料理は絶品だよ。お菓子から和洋中華までなんでも作れちゃうんだ。
 ルシャーティもなにか食べたいものがあったらミルフィーにいってみるといいよ」
「はい」
「ランファはああ見えて占い好きなんだ、きっとそのうちルシャーティのことも占わせて〜ってくるよ」
「占い、ですか」
「そ。この前は髭占いとかいってったな。でもミントはあたらないっていってた」
「ミントさん、あの不思議なお耳の方ですね?」
「うん。あの耳の話を聞くとルシャーティ、きっと夜トイレにいけなくなるよ?」
「え、えぇ…?!」
「フォルテはあのとーり俺よりしっかりしてるエンジェル隊のリーダーで、火薬を使った銃を使わせたら右にでるものはいない。
 俺も良く射撃訓練に付き合わされるんだけど、なかなか上手くは…」
「ヴァニラさんが連れていらしたのは?」
「あれはナノマシンペット。かわいいよね」
「はい」
「それと、ちとせはね”あやとり”って遊びができるんだよ」
「”あやとり”ですか?」
「うん。こう輪にした紐でいろいろな形を作る遊び」
「楽しそう…」
ほぅ、とルシャーティは目を閉じる
そよそよ
穏やかな、風
「…ここは、スカイパレスに似ています」
「スカイパレス?」
懐かしむルシャーティ-の声
その名前を、タクトは反芻する
彼女はやわらかく微笑んで
「スカイパレスは、私たちEDENの中心です…私はそこで生まれました」
「…」
「ヴァル・ファスクに捕らわれの身となってからはめったにいくことはできませんでしたが
それでも、弟…ヴァインは何度も私をこっそりと連れ出してくれて………
幼心に見たあの夕日…暖かいオレンジと優しい夜の色がゆっくりと混ざるあの時間は、なによりの宝物です」
遠くを見つめる
彼女の目には、きっとその光景が浮かんでいるのだろう
沈む夕日
絵の具が混ざるような空
永遠の時間のひとかけら
つないだ小さな手と手
伸びる影はどこまでもどこまでも一緒で
「きっと、また見れますよ」
タクトはゆっくりと言葉をつむぐ
「タクトさん…」
「そのときは、俺やエンジェル隊のみんなも一緒に」
「はいっ」

ルシャーティの無邪気な笑顔
それにタクトは、ゆるゆると心を覆っていた不安が溶けていくのを感じた



2005年03月20日(日) 3悪登場…の日

この話はできたら「わるものがいく!」を聞きながらお読みください


第5話「三悪参上のツミレ」

「パトリックでぇーす」
「ジョナサンです」
「ガストですっ!」

エルシオール艦内に怪しい三つの人影

「三人あわせてぇ」
「パト・ジョナ・ガストです」
「せーの…」

「「「祝!初登場ー!!」」」

パンパンッパパンッ
クラッカーが鳴り響き
ポンッ
更に小さなくす玉まで割れた
”初登場おめでとう”の文字
ちらしやらリサイクル用紙やらで作った紙ふぶきが舞う

「いやぁったぁ、まにあったー、まにあったぜぇ…くぅ」
「あぁ、ほんと。もうこのまま一生出番ないんじゃないかと思ったな」
「でもさ、やーっぱ、俺たちがいないとGAじゃないっしょ」
だよな、だよなと三人がうなづく
背が高くて老け顔のパトリック
茶髪ロンゲで少したれ目なのがジョナサン
チビでふとっちょのガスト
エンジェル隊のいくところ、かならずといっていい程、この三人の影があり
敵だったり、敵だったり、ごくたまに味方だったり、敵だったり、ただの野次馬だったりする
今日もこりずに悪巧みを繰り返し
意識、無意識かかわらずエンジェル隊に邪魔をされては、玉砕する日々なのだ
「で、なーんで俺たち、この艦にのってるんだっけ?」
「さぁ?」
「深く考えるな、考えたら負けだ、とりあえず出番があったことを喜べ」
「「「わーい、わーい、わーい」」」
三人無邪気に万歳三唱
「と、思い出した!俺たちは今回、このエルシオールのクルーなんだった」
「あっ、そっかぁ…家賃が払えねぇから”エルシオール乗組員募集”のバイトに応募したんだった」
「そうそう、最前線だけあって時給いいんだよ。でもさ、面接でお前らと偶然出会ったのは、ほんと運命だよな」
「おうよ、そんでまた三人揃って受かっちまうんだから」
「よし、じゃぁしっかり働いてたまってる家賃返そうな!」
「「おう!」」
パトリックの呼びかけに、ジョナサンとガストがガッツポーズ
三人はそうやってひとしきり団結を深めた後
「そういや、ジョナサンはどこなんだ?」
「俺?俺は宇宙コンビニ。夜勤シフト」
「おっ、いいなぁ。廃棄品とか試供品とか!」
「そういうガストはどこなんだよ?」
「俺は食堂だ」
「いいねいいね、ミスオーダーとか、まかないとか、残り物とか」
「いいなぁお前ら…俺なんてブリッジだぞ?食費とかそういったのが浮く要素は皆無だ」
パトリックの声に、ジョナサンとガストは少々なぐさめるように
「なーにいっちゃってんの?!ブリッジなんて戦艦の花形じゃん!」
「そうそう!男ならやっぱ、ブリッジでしょ!」
「だけどよ…」
「心配すんなって、廃棄品も試供品も俺たち3人でやまわけしよーぜ」
「俺だって俺だって、まかないとかミスオーダーとか残り物とか、やまわけしよーぜ」
「お前ら…」
「俺たち三人、いつもいつもいつもあの女どもにいいところで邪魔されてよ、出番はだんだん少なくなるし
やーっと出番があったと思ったら変な猫の覆面させられて…」
「”とりあえずだしときゃいっかぁ”程度の認識のヤラレ役専用のキャラだけどよ、それでも俺たち明日は主役になれると
信じてがんばってきたんじゃねぇか」
「「主役になるときは三人いっしょだ」」
びっ
ジョナサンとガストがいい笑顔で親指をたてた
パトリックは若干、涙を滲ませながら
「…あぁ、あぁ!そうだ、そのとおりだ!よしっ、がんばろう!!」

三人はがっしり手と手をとりあい、お互いの友情を確認しあった
そして、最後に一言

「でも、奴らも同じ艦にのってんだよな…」
「…それは、いうな」
「あぁ…」

そんな風に3悪が盛り上がったり落ち込んだりしているのと同じころ

「?」
「どーしたんだい?タクト」
「いや、別に」
タクトは首をふって、ケーラ女医からの報告書に目を通した
「ん。身体的な異常とかそういったものはないんだな」
「あぁ、健康そのものだそうだよ」
報告書をもってきてくれたフォルテにもう一度確認をとると
「よし、じゃぁ行こうか」
そういってレスターに合図だけ送ると、ブリッジをでた
向かうのは居住区
そこには先日保護した、EDENからの使者…ルシャーティとヴァインの姉弟がいるのである
「しかし、びっくりしたよ。タクトも一応軍人なんだねぇ」
フォルテはなにか面白いことをみつけたかのような声でいった
「…うん」
姉妹は、先日の戦闘でネフューリア率いるヴァル・ファスクの艦隊を打ち破ったタクトに
今なおヴァル・ファスクに支配されているEDENを救ってほしいと亡命してきたのである
かつて
宇宙の支配者ヴァル・ファスクと唯一対抗しうる力を持っていた高度文明EDENは
クロノ・クエイクによって星系間のネットワークをたたれ、文明を失い
わずか一夜にしてヴァル・ファスクに落とされ、今もなお、苦しめられているという
姉弟からその話をきいたとき、すぐに助けにいこうというエンジェル隊に対し
タクトは首を横にふり
本国トランスバールに報告したのち、検討し、指示をまつこと
そして、感染症などの安全面が確認されるメディカルチェックの結果がでるまで、姉弟の外出を禁止したのだ
「なにかあってからじゃ、おそいからね」
答えるタクトの声は、心なしか、重い
その表情をみると、流石のフォルテも悪いことをしたという顔になってから
「あんまり、きにするんじゃないよ。あんたの指示は間違っちゃいないんだから」
声の調子を変えて、しゃべりだす
「………」
思い出すのは、そのときのエンジェル隊のこと
フォルテとミントを除いて、残りの4人はあからさまに不満な顔をした
以来、喧嘩をしたというわけでもないのだが口をきいてもらえないのである
「あの子たちだってわかっちゃいるんだよ。これがあたしらだけの問題じゃないってね」
「…」
「ただ…まさか、あんたがそういう人を疑う意見をだすなんておもっちゃいなかったから、びっくりしちまっただけさ。
…そうだねぇ、そいうのはほら、レスターの旦那の仕事だろ?」
「まるで、俺は人を疑っちゃいけないみたいだ」
「いけないってわけじゃないが、雰囲気的にね。まぁ、なんにせよあの姉弟の監禁がとければあの子たちだって機嫌をなおすはずさ」
いいきってから、フォルテは自分が墓穴をほったことにきづいた
あわててフォローをいれようとする
「あ、いや…タクト…あたしはべつにあんたを攻めてるわけじゃ…」
「わかってるよ。わざわざありがとう、フォルテ。…迷惑ついでに、みんなに二人の監禁がとけたって伝えてくれないか?」
「…あ、あぁ」
「ミルフィーとか、きっとピクニックなんかを計画してるだろうからね」
「そ、そうだね」
にっこり笑ってそういうと、フォルテも納得した顔してその場をあとにした
タクトはその後姿が完全に見えなくなるのを確認する
そして
「…よし」
気合をいれて、姉弟のいる部屋の扉をノックした

コンコン…
軽い音に続いて
「はい、お入りください」
微かな返事
「お邪魔します…」
タクトは短く、しかし丁寧に言葉を選ぶと中にはいった

「あれ?お休み中だったのかな」
中ではルシャーティがソファーで眠っている
その傍にヴァイン
ふっと足がとまった
「えぇ、姉は少し疲れてしまったようで」
ヴァインは小さく笑うと、ゆっくりとルシャーティの髪をすく
優しく、優しく、愛しく、優しく
それは酷く、大切なものを扱う手で
「あの…」
ヴァインにそう声をかけられるまで、見とれてしまうほど
「あ、そうだ。えっと、メディカルチェックの結果、君たちに異常は認められなかったよ」
「そうですか。これで、僕たちの疑いも晴れたということですね」
にっこり
ヴァインは笑ってそう付け足す
タクトは困ったように笑い返すと
「きついなぁ…そんなつもりじゃなかったんだけれど」
「仕方ありません。いきなり飛び込んできた正体不明の人間を信用しろというほうが無理ですから」
「とにかく、これからは艦内を自由に歩いてもらってかまわない。ルシャーティが起きたらそう伝えてもらえるかな」
「姉でしたら今…」
「いや、いいよ。気持ちよく眠ってるようだし…起きてからで」
「そう、ですか」
ほっと、ヴァインは安心した顔
そこには、初めてヴァインを見たときに感じた違和感はなく
(やっぱり、俺の思い過ごしだったのかな)
タクトはぼんやりと、そんなことを、思いながら
「あと、艦内の生活で何か困ったことがあれば俺に言ってください
規則とはいえ、数日も監禁するような形になってしまって申し訳ありませんでした。
遅くなりましたが、エルシオールはお二人を歓迎いたします」
「お心遣い感謝いたします」
形式的な挨拶をかわす
そして、寝ているルシャーティの傍でこれ以上話をするのもまずいかな、と考えると
「では、これで」
短く挨拶だけをすまし、扉に手をかける
その、刹那

ゾクッ

背筋を冷たいものが滑り落ちた
まるで背骨が氷になってしまったかのような、悪寒
あわてて振り返る
そのまま背中をむけていたら?
そんな思いが頭を過ぎるほどの、危機感
だが、そこにいるのは先ほどと変わらない笑顔を浮かべるヴァインだけで

「どうかしましたか?」

問われてしまうと

「い、や…」
なんとか言葉を搾り出す

トンッ
足音
ヴァインが一歩ちかづいて…
「お顔の色が悪いようですが…」
心配そうな声
でも

(怖い…)

そんなことを、思った
「少し…冷房がききすぎてるみたいだ…この艦ではよくあることで」
「…へぇ」
恐怖を振り切るように無理矢理、笑顔を作ってごまかす
ヴァインは足をとめた
「よくあるんだよ、暖房が,効き過ぎになったりとかね。気をつけないと…」
「えぇ、ご忠告ありがとうございます」
「風邪なんかひかないようにね、体調には気をつけて」
「そうします」
ヴァインはいうと、くるりと向きを変え、ベットまでいくと毛布をもってきてルシャーティにかけた

ほぅ

ため息とも安堵ともつかぬ重い空気が体からぬける
「それじゃぁ、おやすみ」
タクトはそういって、逃げるようにその部屋をあとにした


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かみぃ [MAIL] [HOMEPAGE]