狼森、笊森と盗森

2005年01月18日(火) まだ生きてます…の日

だいじょうぶ、だいじょうぶ。
まだ生きてますよv
そして、今日、この日記を書いている現時点でMoonlitLovers編
書き終わりしましたv
あとは地道にUPしていくだけですv
どうか最後まで愉しんでくださればさいわいv


第24話「エンジェル・スラップのミックスジュース」



タクトが謁見の間にはいったときには、すでに全員がそろっていた
「遅れてすいません」
「いやかまわんよ。で、レスターの具合はどうじゃ?」
「体のほうは…あとは、意識さえ戻れば大丈夫だとケーラ先生が」
「そうかそうか、一安心じゃわい」
ルフトは教え子の安否に、ほっと一息ついた
すると
「話をはじめてもいい?」
シャトヤーンのとなりにたっていたノアが口を開いた
「あぁ、お願いするよ」
タクトはそういうと、フォルテの隣りにたった

「じゃぁ、説明するわ。あのヴァル・ファスクの巨大戦艦オ・ガウブは周囲にネガティブ・クロノ・フィールドを貼っているの
だからクロノ・ブレイク・キャノンといえど、無効化されてしまい、本体にまで届かないの」
パッ
ノアの言葉にしたがって、全員の前にモニターが表示される
巨大艦オ・ガウブの周囲に広範囲の力場表示
「光の翼が生えた紋章機なら?たしか、黒き月のネガティブ・フィールドはそれで脱出したはずですが…」
「これは、黒き月のネガティブ・フィールドをヴァル・ファスクが更に改良したものよ。
改めてシュミレートしてみるとH.A.L.Oシステムのパワーアップ…あなたたちがいう光の翼状態の紋章機でも
機能させることは難しいわ。そもそも、あのクロノ・ブレイク・キャノンを無効化させたのだから」
「じゃぁ、そのネガティブ・クロノ・フィールドをどうにかしないかぎり、道はないということか…」
ピシッ
フォルテの手の中で、ムチが苛立たしげに鳴る
ノアはコクリとうなづくと
「そこで…」
ヴゥン
モニターにてをかざす
画面がかわった
「ためしてみた結果、ネガティブ・クロノ・フィールドは逆位置の時空波による相殺が可能だという結果になったの」
「相殺?」
「そうよ、まぁ簡単にいうと、ネガティブ・クロノ・フィールドの波と」
赤い波線が浮き上がる
そこに、ノアが対照的な青い波線を描く
「まったく正反対の時空波をぶつけることで…」
パッ
ふたつの線が同時にモニターから姿を消した
「フィールドを一時的に無効化することができるの」
「なるほど!」
「それで、その時空波をぶつける装置は?」
「今、急ピッチで作らせています…敵がくるまでの72時間で、なんとか完成するでしょう」
「ただ、このフィールド・キャンセラー装置には欠点があるのよ」
ノアが新しい画面をだした
そこには、白き月内部の兵器ドックが映し出されている
「あれが…?」
「そう、でも急ピッチで作っているがために、これはオ・ガウブに打ち込む形にならなければいけないの」
「なんだって?」
「有効射程距離が短いのよ。いま、これをオ・ガウブに運ぶ準備もあわせてすすめているわ…ただ」
「敵も、手をこまねいて見ているなんてことはしない…というわけですね」
「そういうこと」
パッ
ノアが手を払うと、モニターが消えた
「で、そこであたしたちの出番ってわけだ!」
「そのフィールド・キャンセラーが敵に届くまでの護衛をすればいいのね」
「あ、なるほど」
「やっと希望が見えてきましたわね」
「はい…」
「がんばりましょう、先輩っ」
エンジェル隊から明るい声があがる
そこに、声をかけたのはシヴァとシャトヤーン
「決戦は72時間後、それまでは皆、自由に行動してくれ」
「その間に、紋章機のリミッターは解除しましょう」
リミッター解除の言葉に、全員が反応する
「あ、じゃぁまたあの翼がバーンとなるんですね?」
「やったぁ、翼の生えた紋章機は宇宙最強だもんね」
「ありがとうございます。シャトヤーンさま」
「こいつは負ける気がしないねぇ」
「はい」
「ひかりのつばさ…」
シャトヤーンは全員の様子を微笑んでみつめている

「では、解散じゃ。みなハメをはずしすぎんようにな…それと、タクトとちとせはちょっと残ってくれるかの」
ルフトがパンパンと手を叩き、解散をうながした
「これから三日もあるのかぁ、なにしようかなぁv」
ミルフィーがうきうきしながら呟いた
「わたくしは買い物にいきますわ。ちょっと欲しいものがありますの」
そこにミントが嬉しそうに耳をピクつかせながら言った
「あ、いいな。ミント。あたしもついていっていい?」
「えぇ、かまいませんわよ」
「やったぁ、あ、じゃぁタクトさん失礼します」
「お先に失礼しますわ。タクトさん、ちとせさん」
二人はタクトとちとせに一礼すると、謁見の間をあとにする
「ランファはどーするんだい?」
「あたしはいつもどーりですよ。トレーニングして、占いやって、買い物して…」
指を折りながら今後の予定を数える
「あははは、ランファらしい。でもそうだね、あたしもいつもどーりかね。射撃練習して一杯ひっかけて」
豪快に笑いとばして、フォルテも予定を口にだす
「あ、フォルテさん。おごってくれるって前約束したじゃないですか」
「あん?そーだったかねぇ」
「そーですよ。ちょーどいいや、今日にしましょう」
「ったく、仕方ないね。と、じゃぁタクトあたしらもいくよ。ちとせをたのんだよ」
「じゃーねーvおふたりさん」
ランファとフォルテも連れ立って出口へむかった
そのうしろから
「それでは、私も失礼します」
ぺこりとお辞儀をしてヴァニラが
「ヴァニラ先輩はなにをなさるんですか?」
ちとせがたずねると
「わたしは、いつもどおりです…みなさんのお手伝いを」
「お手伝い、ですか…あの、私もあとで一緒にいってよろしいですか?」
「はい、大歓迎です…おまちしています。ちとせさん」
「はいっ」
「では」
ヴァニラはもう一度お辞儀をすると、足早に謁見の間をあとにした。

「ところで、話ってなんだろう?」
全員がいなくなり、タクトが首をかしげると
「察しのいいあなたのことだから、もうきづいてるんじゃない?」
ノアが、壇上で、つぶやいた
「え?」
「…」
タクトの表情がゆっくりと真剣なものにかわる
「ほら、やっぱり気づいてた」
ノアは愉快そうに笑った
「…あの、どういうこと、ですか?」
ちとせはわけがわからなくて、タクトにたずねた
すると
「フィールド・キャンセラーを運ぶのが誰か、ということですね?」
タクトの言葉は、ちとせへの返事ではなく、ノアとシャトヤーン、ルフト、それにシヴァへむけたものであった
「そのとおりじゃ…」
肯定の言葉はルフトから
「え、だれ?と、いいますと…」
「ちとせ。フィールド・キャンセラーをどうやってオ・ガウブの目前にまでもっていくかわかるかい?」
「それは、だから…うちこんで…」
「打ち込んで?どうやって?ミサイルみたいに?じゃぁ、誰が起動スイッチを押すんだろう?」
「…ぁ」
そこまでいわれて、やっと気づく
「そんな重要な装置をミサイルみたいに打ち込めばどんなにエンジェル隊が護衛したって打ち落とされる。
それどころか、衝撃で機能しなくなる可能性だってある。それに、構造はよくわからないけれど
波と波をぶつける繊細なシステムを、自動操縦で起動させるなんて、普通は考えない…ということは」
「そうよ。フィールド・キャンセラーは紋章機につけてオ・ガウブの目前に”運ぶ”の」
「紋章機に?!」
「…紋章機ほど今回の任務にふさわしい機体は、全銀河中を探したってないだろうね」
タクトは呟くと
「そして、俺と…ちとせが呼ばれたということは」
「本当にあなたって察しがいいのね。そうよ。フィールド・キャンセラーを搭乗した紋章機…
決戦兵器のパイロットには、烏丸ちとせ。あなたがなるのよ」
「わ、わたしが…?!」



父さま…



「わたしが、決戦兵器の、パイロット…?」
「シュミレーションの結果、1番成功率が高いのがあなただったのよ」
「ちとせ…」
「大丈夫です、マイヤーズ司令」
心配そうな声のタクトに、微笑みをかえす
そして
「では、フィールド・キャンセラーはシャープシュータ−に?」
「違うわ」
ノアは手をふりかざした
ヴゥン
再びモニターが映し出される
先ほどのフィールド・キャンセラー装置
そして、その隣りに映像がきりかわり
「あれは…?」
「実は、白き月から新たに発掘された紋章機は6番機だけではなかったのです」
答えたのはシャトヤーンであった
「これは、6番機シャープシューターと同時に発掘された、7番機」
「7番目の…紋章機…」
タクトとちとせの声が重なった
二人の視線は、解体されていく紋章機に注がれている
「7番機は、他の機体に比べ稼動部位がすくないために保留になっておったのじゃ」
「この7番機にフィールド・キャンセラーを搭載し、推進用のエンジンを追加するわ」
「でも、紋章機はパイロットとの相性が…っ」
「この7番機のH.A.L.Oシステムは他の6機のH.A.L.Oシステムと同化することができるのよ」
「え?」
「だから紋章機にのれる人間なら誰でも動かせるわ。ただし、今回は時間がなくて決戦兵器との調整が間に合わないの…
そこで単座式のコックピットを、複座式に改造しているわ」
「複座式?ということは、パイロットは二人?」
「二人、というか…オペレーターをのせることになるのよ。紋章機に本来ないはずの
フィールド・キャンセラー、推進エンジン、そしてクロノ・ブレイク・キャノンの管制用にね」
「クロノ・ブレイク・キャノンもつくんですか?」
「そうよ。フィールドがキャンセルされた時点で、そこからクロノ・ブレイク・キャノンを打ち込めば、いくらあの巨大戦艦も一撃のはず…」
「その、オペレーター役というのは?」
ちとせがノアの言葉をさえぎった
ノアは、一瞬、むっとした表情をとりながらも
「それもシュミレーションで打ち出したわ。だから、タクトもここに残ってもらったのよ」
「…え、おれ…が?」
「マイヤーズ司令が?」
「そうよ。オペレーターに必要な条件はただひとつ、パイロットのテンションを最高の状態に保てる人間
シュミレーションの結果、1番いいとでたのが、タクト…あなたというわけ」
「ですが、マイヤーズ司令は…っ」
「いいんだ、ちとせ」
タクトが遮る
ちとせはハっとタクトの表情を、みた
最初にあったときから、なにひとつかわらない
優しくて
でも、どこか悲しい
そのくせ
決意に満ちた眼差し
「わかりました。タクト・マイヤーズ。その任務、謹んでお受けいたします」
「すまぬ…タクト…お前も、こんな大変なときだというのに…」
泣きそうな顔で答えたのはシヴァだった
タクトは、にっこりと、いつもの笑顔にもどると
「大丈夫ですよ。シヴァさま。俺が一度だってシヴァさまの期待を裏切ったことがありますか?」
「…タクト」
「かならず上手くいきます。だから、ここで俺たちの帰りを待っていてくださいね」
「あぁ…あぁ、それでこそ、わたしのタクトだな」
シヴァの顔に笑顔が戻る
そして
「烏丸ちとせ、お前も無事に帰るのだぞ。エンジェル隊が一人でもかけることは、この私が許さぬからな」
「はい、ありがとうございます、シヴァさま…」
「うむ」
「二人とも、すまんの…」
「だいじょうぶですよ、ルフト先生」
「あぁ、あぁ…わかっておるよ、タクト。あとのことはわしらにまかせい。必ず、生きて帰るんじゃぞ?」
「はいっ」
「ちとせをたのむ、タクト」
「わかってますって」

タクトとちとせは、改めて作戦を確認すると、一礼して、謁見の間をでる

…タクトはさりぎわ
「ノア」
「なに?」
「この前、君がいっていた…その、残されたヴィジョンのことだけれど」
「…それが?」
「覚えていてくれて、ありがとう…できたら、どうかそのことを、忘れないでいてほしいんだ」
タクトはそういって、ノアの頭をくしゃくしゃとなでる
ノアは
「あなたにいわれるまでもないわ。私の記憶を私がどうしようが、勝手でしょ」
照れたようにぷいと頬をふくらますと、謁見の間の奥へと引っ込んだ
「…うん、…ありがとう」

「マイヤーズ司令?」
「あ、ごめん。今行くよ、ちとせ」

タクトは最後にそう呟くと、謁見の間をあとにした



2005年01月17日(月) 今週は残業WEEK…の日

今週と来週は残業強化週間です…
生きていられるんだろうか(遠い目)


第23話「重症焼き肉嘆き放題」

「では、レスターさんの意識はまだ戻らないのですか?」
「あぁ…命に別状はないらしいんだけど」
白き月でタクトのかわりにウォルコットたちを迎えたのは、フォルテだった
「それで、タクトさんは?」
「今、医務室のほうに…」
「中佐ぁ、いってやったほうがいいんじゃねーの?」
ココモがあまり気がのらない様子で声をかけた
だが
「いえ、今はやめておきましょう」
ウォルコットは首を横にふる
「中佐…」
「今わたしがいってタクトさんを慰めるのは簡単ですが、それではレスターさんに悪いというものです」
「でもよ…」
「ココモ。それは僕たちが口出しすることじゃなよ」
「だけどさっ、中佐はタクトの親がわりなんだろ?!だったら…」
「だからこそ、だよ。ココモ。親っていうのは子供を甘やかすだけじゃだめなんだ」
珍しく大人の表情でフォルテがたしなめる
ココモはしぶしぶ承知した
すると、ウォルコット中佐は笑って
「心配してくださってありがとうございますココモさん。事態が落ち着きましたらあとでみんなでお見舞いにいきましょう」
そういって、ココモの頭を優しく撫でた。

医務室
息をきらせながらちとせはそこに駆け込んだ
「烏丸少尉?」
びっくりした顔で、ケーラ女医が声をかける
そのうしろ
先ほどの戦闘での負傷者が手当てを受けている、後ろのほうのベット
一箇所だけ、カーテンが締められているところ
まっすぐにそこにむかう
カラッン
微かに音をたてて、カーテンの内側にはいれば
「…マイヤーズ司令」
「ちとせ…ご苦労さま」
タクトは少しばかり憔悴した顔で、だが、いつもの優しい表情で微笑んでくれた
「クールダラス副司令は?」
「ん…命に別状はないって。とっさの受身がよかったらしい。あとは意識が戻れば問題ないって」
タクトの視線がレスターに戻る
真っ白の医務室のベット
煤や血、小さな傷も綺麗にぬぐわれて、ただただ、眠っているだけのように見える
「もうしわけ、ありませんでした…」
「…え?」
「クールダラス副司令は…わたしをかばって…わたし、わたしが…」
「ちとせ…」
タクトがゆっくりと首を横に振る
「大丈夫、ちとせのせいなんかじゃ、ないよ」
「でもっ…」
「誰のせいでもないんだ。だから、だいじょうぶ」
「しかし…」

「あー、でも、まさかこんな日がくるなんておもわなかったなぁ!」

タクトはわざと大きな声で、ちとせの言葉をさえぎった
「ちとせ知ってる?俺ってさ、学生の頃くらいまで、こうやってけっこう入院することがあってね」
「…マイヤーズ、司令…」
「まぁ、だいたいはレスターが俺を病院につれていってくれたり、手当てしてくれたりしてね。
そんなときはいつだって、俺が病院のベットで目を覚ますと、レスターかウォルコット中佐がいてくれて…
あ、そうだ。ちとせはウォルコット中佐とはあったことないんだっけ?」
「ま、まだ…ですが」
「そっかぁ、あとであうといいよ。初老の髭のおじさんで、凄く優しいんだ。エンジェル基地でのエンジェル隊司令だからね」
「はいっ」
「俺の…えっと、親代わりのような人なんだ。チェスが強くてね、でもノーマッドには負けてばかりでさ、少女漫画が好き。
あ、ノーマッドっていうのはピンクのぬいぐるみなんだけど、中身は1万ギガヘルツのCPUなんだ。元ミサイル。ヴァニラと仲良しで…」
「話だけは、ヴァニラ先輩から…」
「あと、ココモでしょ、マリブでしょ…メアリー少佐に…ちとせもきっとびっくりするよ。なんせエンジェル隊に負けないくらい個性強いから、みんな」
タクトはそこまでいっきにまくしたてた
そして
「もしかしたら、レスターが起きる頃には、もう最終決戦も終わってるかもしれないなぁ」
ポツリ
つぶやき
「そしたら、後始末は全部レスターにやってもらおう。この忙しい時に、まったく…
でもそういうと、”普段、俺がやってるお前の分の仕事に比べればたいしたことない”とかいわれそうだ」
「…はい」
「あのころ…俺が目を覚ますと、そこにはかならずレスターがいてくれた
…でも、まさか、俺がこうやってレスターが起きるのをまってる日がくるなんて………」
ゆっくりと
声が沈んでいく
しばらくの沈黙
なにもいえなかった
声をかけることも
その
震える手を握ることさえ
「ごめんね、みっともないとこ…みせちゃって…俺、こわいんだ」
手を組む
震えはとまることなく
「恐いんだよ…俺、しらなかった…まさか、目を覚ますのをまつことが…こんなに、こわいなんて…」
胸が痛む
その場から逃げだしたかった
あやまったのだし
タクトはもういい言う
だが
ここで逃げることだけは、許されないのだと思った
だから

「マイヤーズ司令っ」

ちとせは、その震えるタクトの背中に声をかけた
一呼吸
そして
「クールダラス副司令はきっと目を覚まされます」
「…ちとせ」
「副司令はおっしゃいました、あの格納庫で、わたしに…」
目をつぶる
思い出せるのは、あのときの、真摯なレスターの姿
子供のように感情をぶつける自分に
正直な気持ちを、真剣に答えてくれた

”俺はいつだってタクトのそばにいたし、これからだってずっとそばにいてやりたい…
タクトの望むことはなんだって叶えてやりたい…俺は、タクトが幸せでいてくれればそれでいいんだ”

言葉をなぞる
そして、目をあけるとタクトの顔をみて
精一杯の笑顔を作った
「だから、マイヤーズ司令が目を覚まして欲しいと望めばすぐに起きてくださいます。かならず」
「…俺が…」
「そうです。だって、クールダラス副司令ほどマイヤーズ司令のことを想っている方を、私は他にしらないんですから」
「…うん、う、ん…ありがとう、ちとせ。そうだな、俺が信じなくちゃ駄目だよな…誰よりも信じなきゃ駄目なんだよな」
タクトは自分に言い聞かせるように何度も何度も呟く
ぽろっ
すると、タクトの瞳から涙がこぼれおちた
タクトはあわててそれをぬぐうと
「と、いけない…ちとせ。ごめん。今のナイショにしといてくれるかな?
俺、どうもレスターの前以外で泣くと、みんなにおしおきされちゃうらしいから」
「はいっ」
二人の顔を見合わせると、一緒に笑い出した

そこへ

「失礼します」
ヴァニラがはいってくる
「あれ?ヴァニラ…」
「ヴァニラ先輩?」
「タクトさん、手を出してください」
ヴァニラはそういうと、タクトの手をとった
タクトは首をかしげる
するとちとせが
「マイヤーズ司令っ、その手…」
「え、あぁ…あれ?いつの間に…」
タクトの手は火傷でボロボロになっていた
あちこち皮膚がやぶれて、血がにじんでいる
「そういえば、なんか、さっきから手の感覚がないなぁ、なんて…あ、いた、なんか急に痛くなってきた…いたた」
「治療します」
パァァァ
ヴァニラのナノマシンが光輝き、タクトの手を包む
「もしかして、あのとき…鉄材をどかしたときにっ」
思い出した
そうだ、熱であつくなった鉄材の山を素手で掘り返したのは…
「あ、そうか…って、イタタ…」
「だ、だいじょうぶですか?」
「う、うん。ありがとうヴァニラ」
「いえ。本当はあのとき直せればよかったのですが、出撃でしたので…」
ヴァニラはそういいながら、もう一度、ナノマシンを輝かせる
しばらくそうやって、治療すると
「とりあえずこれで応急処置は完了です。ですが、後日改めて治療してください」
「…うん、ありがとう、ヴァニラ」
「いえ」
ヴァニラはそういって立ち上がると、出口へむかう
その途中で
「それと、ルフト准将から…1時間後に謁見の間に集合するよう言付かっています」
一言つけくわえると、ペコリとお辞儀をして、その場をあとにした

「では、私ももういきます…マイヤーズ司令、またあとで」
「あ、うん。ちとせ…ありがとう」
「いえ…あの、それと…」
すぅ
はぁ
深呼吸
そして
「遅くなりましたけれど…わたし、やっぱりマイヤーズ司令とクールダラス副司令はお似合いだとおもいます」
「え?」
「お幸せになってくださいね」
バタバタバタ
最後に笑顔でつげると、足早にその場をあとにした
一気に医務室を出る
そして
廊下にでて、人がいないのを確認すると
「はぁ…」
どっとため息
「やっと、いえた…」
その場にうずくまる
どっと疲れが襲ってきた
だが、不思議な心地よさも同時に心に広がっていくのを感じる



「レスター、きいたか?」
ちとせがいなくなったあとの医務室
タクトはその言葉をかみしめるように、つぶやいた
「ちとせが、俺たちに”幸せになってください”だってさ…
お前、ちとせにいったいなにいってるんだよ。俺には普段、なにもいってくれないくせにさ」
思い出す

”俺はいつだってタクトのそばにいたし、これからだってずっとそばにいてやりたい…”

「うん、俺もだよ…俺も…ずっとレスターのそばにいたいよ…」

”タクトの望むことはなんだって叶えてやりたい…”

「だからかな?だから…お前は、ちとせを救ってくれたのか?俺が、喜ぶから?
馬鹿だ…お前はいつも俺のこと馬鹿っていうけど、お前だって馬鹿だよ、レスター」
ぎゅ
日ごろの恨みをこめて、ほっぺたをつねってみる
あたたかい
生きているモノのぬくもりが、つたわってくる
その心地よさにめをとじて
「でも、ちとせを助けてくれて…本当に、ありがとう…」

”俺は、タクトが幸せでいてくれればそれでいいんだ”

「俺は幸せだよ、ずっと幸せだ…お前のそばにいられるだけで、もう他に望みなんてないんだ…だから」

涙がこぼれた
それはポタポタとレスターの頬におちる

「だから、はやく目を覚ましてくれよ…レスタァ…」



2005年01月16日(日) なんとか終われそうです…の日

GA日替わり連載小説も、なんとか終われるメドがつきました
がんばりますともv


第22話「翼からボタ餅シャープシューターセット」



ピッピッピッピッー

赤いランプから翠のランプへ

ギュゥン
コンソールパネルを操作し、起動ボタンを押す
音をたてて、頭上にある天使の輪が光を増した
エネルギーを確認する
よし

「シャープシュータ−、烏丸ちとせ。出撃します!」

声とともに、加速装置が働く
次の瞬間、機体は宇宙へと放り出された
背中から押される浮遊感
それを確かめながら、視線を前にむける

『いいかいみんな、今回はタクトが動けない、全体の指揮はあたしとミントでとるよ』
フォルテから全機に通信がはいる
「了解しました」
「わかったわ」
「了解です」
「はい、わかりました」
そこに、情報が送られてくる
戦艦が4機、突撃艦が12機、戦闘機が4機
そして…
『ダークエンジェルが…』
『く、やっかいだねぇ』
紋章機とよくにた機体が6機
『思案していても仕方ありません。二手に分かれましょう。ミルフィーさん、ランファさん、私は上からくる艦隊を
フォルテさん、ヴァニラさん、ちとせさんは横からくる艦隊を』
「はいっ」

ドンッ
バァン

光の渦があちこちで爆発する
その合間をくぐりぬけながら
ひとつ

ドンッ

ひとつ

ドッ

確実に破壊していく
調子が良かった

「かえる、わたしは、かえらなきゃ…」

ちとせのその呟きを聞いた人間はいない
なぜなら彼女自身にもきこえてはいなかったからだ
それを知っているのは、シャープシュータ−だけで

「帰る…なんとしてでも、かえって…そして、マイヤーズ司令とクールダラス副司令に…」

ドンッ

標的がおちた
次を策敵する

「おふたりに謝るんだ…」

見つけた
狙いを定め
撃つ
ドッドンッ
2発命中
間髪いれずに、次を準備して
ドンッ
ドッ
4発目で仕留める

「あやまって、そうしたら…」

心は澄んでいた
不思議だ
焦っているはずなのに
気持ちは
いますぐにでも、エルシオールに戻って、タクトやレスターにあいたくて仕方ないというのに
恐いくらいに頭がさえていた

次の機体に標準をあわせる
ピタリッ
中心があった瞬間に、1撃、2撃っ
続けざまにぶちこむ
3撃っ
微調整、そしてとどめ

ギュンッ
テンションメーターがはねあがったのを横目で確認すると
「いきますっ、フェイタルアローっ」
長砲身レールガンから、青白い閃光が放たれる
バンッ
あたった
「もう一撃っ、フェイタルアローっ!」
間髪いれずに、次を放つ
ドンッ
空間がきしみ、爆発を繰り返す
調子がいい

そこに

『ちとせっ、横だ!』

「え?きゃぁっ」
衝撃
目がチカチカする
爆発音
体中が痛む
だが
歯を食いしばって、瞳を開いた
「邪魔をしないで…」
敵の艦影を、捕らえる

「私は帰る…そして、クールダラス副司令とマイヤーズ司令にあやまって…
遅くなってしまったけれど、お二人に…”お似合いです”っていうの、だからっ!!」

そのとき



バサッ

シャープシュータ−の中で、たしかに、ちとせはその音を聞いた
「翼が開く、おと?」
たしかに、そんな音
ありえない話だと思った、ここは真空の宇宙空間なのだから
けれど、それはたしかになにかが開く音だった

ピー

「な、に?」
目の前のコンソールパネルの一部が光りだし、それは連鎖を起こしながら広がっていく
そして

ピーガガッ…ガー…

音をたてて、シャープシュータの中を新しいなにかが塗り替えていく

「こ、これは…」
画面が新しくなっていくのとともに、光が増し、それはいつのまにかコックピット全体を包んだ
白い光
酷く懐かしい
そして、優しい
「まさか、これは…これが…」
そんなことを思っているあいだも、光はますます増えシャープシュータ−全体を包み込み
一瞬だけ塊となり収縮すると、刹那

バサァッ

今度こそ音をたてて、爆発する
いや、正しくは開いたのだ
「ひかりの…つばさ?」

話には聞いていた
あのクーデターのとき
黒き月のネガティブ・フィールドで窮地におちた、エンジェル隊とエルシオールを救ったという
紋章機の秘められた、力

『ちとせっ』

通信がまいこむ

「フォルテ先輩っ」
『どういうことだい?なんで、光の翼が…』
「そ、それが、わたしにもわからなくて」
『すごーい、どうやったの?ちとせ』
『やるじゃないっ、ちとせ』
「ミルフィー先輩、ランファ先輩」
『ちとせさん、大丈夫ですか?』
「はい、ヴァニラ先輩」
『どちらにしろ、このチャンスを逃すことはありませんわ。ちとせさんを軸に体制をたてなおしましょう』
「了解しました、ミント先輩」

通信をきり、光をたたえるシャープシュータ−に手を伸ばす
「すごい…これが、シャープシュータ−の本当の、ちから…これなら…」
テンションメーターをみる
さっき、フェイタルアローをうったのに、まだテンションメーターはMAXを記していた
「力を…かしてくれるの?シャープシュータ−?」
つぶやき
その問いに答えるように、シャープシュータ−の輝きが、増す
まぶしい
けれど、優しい光
「ありがとう…」
ぽたり
涙が、おちた
ぬぐう
そして

「退きなさいっ!フェイタルアロー!!」

三発目の光の矢が、銀河を駆け抜けた



「光の翼だって?!」
ブリッジになんとか戻ったタクトは、その光景をみた
漆黒の宇宙に、柔らかい白光の翼を広げる六番機
「ちとせ…」
そのとき
「マイヤーズ司令っ!敵の増援です」
「くっ、1番近い紋章機は?」
「トリックマスターとハッピートリガーです」
「トリックマスターのほうが足がはやいはずだ…ミント、聞こえるかい?」
『こちらミント・ブラマンシュ。タクトさん、よろしいんですの?』
通信を開く
めずらしく、ミントの驚いた顔がみれた
タクトは力なく笑うと
「なんとかね。それよりも…」
『増援ですわね、わかりました。トリックマスター戻ります』
ドッン
「うわっ」
通信が切れるのとほぼどうじに、敵からの攻撃がエルシオールを襲う
タクトはその衝撃を、司令席につかまってなんとかやりすごすと
「シールドっ!ピンポイントで!それからゆっくり後退だ!エンジェル隊がくるまで、みんながんばってくれ」
「はいっ」
「了解しましたっ」
ブリッジのあちこちで、返答がくる
だが
(レスター…)
ただいるだけで、安心感を与えるレスターがいないのは大きな痛手だった
だが
(馬鹿だな、だからこそ、俺がしっかりしなきゃ)
普段怠けている姿を思わせない勢いで、タクトが次々と支持をだしていく
ドッ
ドンッ
「きゃぁっ」
「うわっ」
衝撃がエルシオールをゆらす
光と音がせわしなく、襲い掛かり

ドゥンッ

ひときわ大きい衝撃が、ブリッジを襲った
「ぐっ」
タクトの体がはねあがり、司令席から放り出される
痛む体をおさえて、たちあがりながら
「どうした?!」
ほぼ、怒鳴るように状況報告をもとめた
すると



『おや、めずらしいですねー、いつも一緒のナイト様はどうしたんですか?』



画面いっぱいのピンク、ピンク、ピンク
「え?…ノーマッド?」
『タクトさんだけなんですか?レスターさんは?』
『あ、ほんとだ。めっずらしー』
次々に飛び込んでくるのは
「マリブ…ココモ?」
『そうですよ。嫌だなぁ、タクトさん、僕のこと忘れちゃったんですか?』
『遅れて悪かったよ、だからそんな情けない顔すんなよな、タクト!』
それは、ペイロー兄弟の姿であった
更に二人にかぶせるように映像がうかぶ
『ココモ、マリブッ、戦闘中は戦闘に集中しなさいっていつもいっているでしょう?』
『まぁまぁ落ち着いてください、メアリー少佐…タクトさん、だいじょーぶですか?』
そして
その優しい笑顔が、スクリーンに浮かぶ
タクトの瞳に涙がにじんだ
「…ウォルコット…中佐ぁ…」
緊張が切れ掛かる
だが
『おいおい、タクト…いったいどうしたというんじゃ?』
「な、なんでもありませんよっ」
ルフトの声で正気に戻ると、あわてて涙をぬぐった
そして
「よし、反撃だ!!」
タクトの言葉に、希望に満ちた返答がブリッジの至る所で聞こえた



2005年01月15日(土) 「まほらば」の日

はーい、遅れましたが、アニメ「まほらば」の感想です。
とりあえず、こっちも雑誌とかみるかぎりで心配していた作画が
意外に綺麗でびっくりー。いい感じでした。
というか、あのまほらばの雰囲気がでていて、かなりいい仕上がり
ずっとこのレベルなら心配なさそうです。最初の絵本風のやつも素敵だし。
でも、OPないのは仕様なんですかね?
(でも、鋼もそうだったんで、次からありそうですが)


第21話「副官の多い寿司」

交代のためにブリッジへいこうとしたレスターは、格納庫でその姿をみつけた
「烏丸少尉?」
「…クールダラス副司令」
「なにを…あぁ、紋章機の調整か」
なんとなく無視をするわけにもいかなくて、ちとせのそばによる
「はい、決戦も、間近ですから」
ちとせはそういって、紋章機の整備の手をとめようとはしない
「がんばるのもいいが、あまり根を詰めすぎないようにな」
その必死の姿と形相に、なにかただならぬものを感じて、レスターは呟いた
すると
「…ご忠告ありがとうございます。ですが、いまがんばらなければいつがんばるというのでしょう?」
かなり棘のある言葉が返ってきた
(なにか気に障ることをいったか…)
しまった
と、思ったときにはもう遅い
「クールダラス副司令こそ、早くブリッジにいかれたほうが宜しいのでは?」
(どうも、タクトのように上手くはいかんもんだな)
ため息
こういうときは、少しだけ、お気楽能天気な相方を尊敬したりもする
そのまま
”すまなかった”と一言あやまって、さっさとその場をあとにすればよかったのだ
だが
レスターのため息に、さらに苛立ちを募らせたちとせの言葉が一瞬早く、でた
「マイヤーズ司令がお待ちですよ」
むか…っ
あまりの言われように、流石のレスターもカチンときた
「君にそこまでいわれる筋合いはないはずだが?」
「…っ」
売り言葉に
買い言葉
二人のただならぬ気配に、整備班班長クレータをはじめ、まわりのスタッフが非難をはじめる
「それに、俺たちのことは君には関係ないだろう」
「…関係なくなんてっ、マイヤーズ司令は私たちの司令官です」
「だからといって、君に心配される必要もないし、口をだされる必要もない」
「………っ」
「それに今は仕事中だ、個人的私情をはさむのは関心しないな」
「私情なんてはさんでいませんっ」
ちとせの声が、格納庫中に響く
物陰からソノ様子を見守っていた格納庫スタッフが身を縮めるほどの怒号であった
「ふぅん?」
「私は、ただ…マイヤーズ司令が心配なだけで…」
言葉が上手くでてこない
「それを私情というんだと思うが?」
「ちがいますっ!」
必死になって否定する姿に説得力はなく
なく
…はぁ
レスターはもう一度ため息をついた
そして
「あぁ、わかったよ。すまないな、こういう言い方しかできなくて」
折れた。
そのままもう一度”すまない”と謝ると
「じゃぁ俺はもういくから…それと、わかっていると思うが、紋章機には体調も関わる。休養はとるように…」
クルリとむきをかえ、さっさと出口をめざす
「どうして、ですか…?」
その歩みをとめたのは、声
「ん?」
「どうして、私のような人間に、ここまでいわせておいて、それだけですませられるんですか?」
言っている意味がよくわからなかった
そんなことを思っていると
「私のような新人にここまでいわれて、どうして罰則もなにもなしで…」
「…」
「私が…反対なんかしたから、お二人はなかなかお会いになることもしなくなったのに…どうして…」
言葉を捜す
今度は少し慎重に
流石に、さっきの二の舞はごめんなので
それ以上に
彼女の問いに、精一杯答えるために
「タクトのためだからな」
「え?」
「普段冷静な君がそこまで怒るのは、つまり、それだけタクトのことを大事にしてくれているからだろう?」
言葉を紡ぐ
慎重に
「意見が食い違うのは、人間だから仕方ないが…それが、タクトのためになることなら、俺は別になんだっていいんだ」
誠実に
本当の気持ちを
「俺が許せないのは、タクトに危害を加えるモノだけだしな」
「マイヤーズ司令に…?」
「あいつはあれで、自分には無頓着な部分があるからあぶなっかしくてな」
やれやれと
「だから、タクトを利用しよとしたり傷つけたりするような言葉や行動には容赦はしない
だが、誰かがあいつのことを思って行動してくれる分には干渉しない」
「…」
一度として、その瞳は、そらされることなく

「俺はいつだってタクトのそばにいたし、これからだってずっとそばにいてやりたい…
タクトの望むことはなんだって叶えてやりたい…俺は、タクトが幸せでいてくれればそれでいいんだ」

「クールダラス副司令は…」
「ん?」
「クールダラス副司令は、それでいいんですか?ご自分のことは…」
「俺のことは、タクトが幸せにしてくれる…らしい(笑)…期待は、してないがな」
「………」
「俺の幸せは、タクトの幸せ。タクトの幸せは、俺の幸せ。
俺たちは今までそうやって生きてきたし、これからだってそうやって生きていく」
言葉はかえってこなかった
ふと、視線をあげると

ぽろっ

「なっ;」
ちとせの瞳から、涙がこぼれている
「そんな…」
声が
「ちょ…おい、烏丸少尉っ」
慌てた
エンジェル隊を泣かせた
なんてことが、タクトにばれたらとおもうと、流石のレスターも青くなる

「そんな…おふたりに、なんて…わたし、勝てないじゃないですか…」
小さなちとせの、つぶやき
言って、じぶんでも、びっくりした
飾り気のないレスターの言葉
だが、それが逆に心に響いた
そうだ
もう、納得していたんだ
ただ、認めたくなかっただけなんだということを
ずっと
ずっと…
だって、タクトは似ていたから
それが、恋人にとられてしまうようで
ただ、寂しくて、認めようとしなかった
それだけなんだと
自分でやっとそのことに気づく




「あぶないっ」




思考を遮ったのは、そんな怒号と騒音だった

何かが崩れる音
そして、遅れて届く
ビービービーッ
警報
「な…、に?」
バタバタバタ
人が走りまわる、おと
そして、赤
赤、赤、あか、赤…
「え…?」
それが、炎だと気がついたのはいつだったろう
随分と長い間、そこに座り込んでいた気がする

『敵襲…エンジェル隊は紋章機で出撃してください…敵襲…各クルーは持ち場に…』

放送
そして
「敵?あ、…うそ…っ」
それが、敵の急襲による攻撃でおきた事態だと認識する
艦内放送はせわしなくながれ、出撃を要請していた
消化班や救護班、そして、紋章機の出撃準備を整ええる整備班
「そうだ、出撃…っ」
強い衝撃に打たれて、まだ、あちこち痺れる体を動かす
少し痛むが大丈夫
確認しながら、手をつく
手をついて
立ち上がり
出撃をしないと…

ベチャッ

「…?」
滑った
手が上手くつけない
「え?…な、に」
不思議に思って、目を向ける



一面の、赤い絨毯

「…?」
わけがわからない
ここは格納庫で
床が赤い、なんて
だから
最初、それは、エマージェシーの赤いランプの色を反映しているのだと、思った
この辺りに立ち込める鉄の匂いは
先ほど、落ちてきた鉄材の匂いなのだ
そうだ
そうに、きまっている
でなければ

「ぁ、う…そ、うそっ」

で、なければ
そこで
直前まで、自分がいたソコに、かわりにいる人は誰だというのだろう?
あのとき
『あぶないっ』
そういって、自分を突き飛ばした人間が誰だったと?
鉄材の下で
そんなことはない
そんなことは、あってはならない
あってはならいのだ
そうでなければ
落下した鉄材の下に見えている、手は…



「クールダラス副司令っ?!」



絶叫
「うそ、うそぉっ、いや…へ、返事を…してくださいっ、クールダラス副司令っ、副司令っ」
駆け寄ろうと、した
した、が
手が滑って動けない
動かない
「いやです、いやっ…そんな、だれか…助けて、タスケテクダサイッ、副司令がっ」
ずるっ
べしゃっ
立ち上がろうとする
血がまるでぬかるみのように足をからめとり
前のめりに倒れた

「いやぁぁぁぁっ」
「ちとせっ?」

声が、届く
それは
それは、この場に、一番いて欲しくない人の声だった

「ちとせ、無事か?」
「マ、マイヤー…ズ、しれ…」
隠そう
一番最初に思いついたのは、その考えだった
あわてて、手を後ろに隠す
だが、床に広がる血の絨毯をかくせるわけはなく
「…え?」
タクトがそれに、気がついて…



ガシャンッ
ガラン

そんな音で気がついた
音は自分の背後から
うしろを、むく
ここ数週間でずいぶんと慣れ親しんだ背中
どこか、父ににている、その人の後ろ姿

ガシャンッ
ガラガラ

彼はなにかを…探している
鉄材を崩しながら…
熱くは無いのだろうか?
いや、熱いはずだ
攻撃で落ちてきた鉄材は、火災で熱されて
それを
素手で…
「…ぁ」
「レスターっ」
言葉は、彼の声で遮られた



「息が…っ、レスター、レスタァッ!!」
ガラッガラガラッ
音をたてて、その鉄材の山から長身の体を引きづりだす
救護班がかけつけてくる
そこに
「だいじょうぶ、息はあります…落ち着いてください、タクトさん」

ヴァニラは、レスターの呼吸と脈を確かめてそういった
「でも…っ」
「大丈夫ですっ!」
タクトには、それがなにか、最初わからなかった
「意識はありませんが…声をかけてあげてください…」
優しくそういわれて、やっと、今のが、ヴァニラの怒鳴り声だったのだと知る
「…うん…う、ん…レスタァ…」
言われてやっと、タクトはレスターの顔に手を伸ばす
いつもの端整な顔が、汚れて、若干青みがかかり、胸を締め付けた
だが、触れた肌は暖かくて
あかたたかくて…
薄い皮膚を通じて、微かに血の動きが伝わってくる
「よか、った…れすたぁ…」
涙がでた



「ちとせ?!」
放心していたちとせに声をかけたのは、フォルテだった
駆け寄ってくる
ミルフィー、ミント、ランファ
エンジェル隊がそろう
だが
「わ、たし…わたし!!」
「どうしたの、ちとせ?!」
「なにがあったんですの?」
「わたし、わたしの…せ…ク、クールダラス、副司令…が、かばって…わたしっ」
ブルッ
震えが、きた
それは瞬間、体中に伝わる
ガクガクブルブル
とまらない
「わ、たし…あ、あぁ…わたしっ」

バンッ

平手打ちはミルフィーユから
「ちとせっ、しっかりして!」
「…せ、んぱ…」
「しっかりしなさい、烏丸ちとせ!」
「…は、はい、はいっ」
コクコク
迫力におされて、うなづく
「わたしがわかる?」
「…はい、わかります、ミルフィー先輩」
「よし」
ミルフィーは笑うと立ち上がった
そして
「ちとせ、出撃だよ」
「で、でも…クールダラス副司令が…」
「レスターさんのことは、タクトさんにまかせるの」
「そんな…でもっ」
「ちとせ!」
「は、はいっ」
「シャープシューターには、ちとせしか乗れないんだよ?」
「…っ」
「そして、戦えるのは紋章機しかない。わかる?」
「はい、わかります」
うなづいた
立ち上がる
今度は、ちゃんと立てた
震えも、いつのまにか、止まっている
「ちとせ、自分のしなければいけないこと、わかる?」
「はい、ミルフィー先輩」
深呼吸
瞳をあける

フォルテが見えた
タクトに声をかけている
ランファが見えた
出撃調整をしながら、それでも心配そうにこっちをみてくれる
ミントが見えた
ヴァニラに声をかけている
ヴァニラが見えた
残って救助に参加したいだろうに、それでも出撃準備にむかっている
そして
ミルフィーユ

「烏丸ちとせ、出撃します。エルシオールと白き月を護りにいきます」



2005年01月14日(金) ペース配分の日

すいません、あからさまにペース配分まちがえてます;
ちょっと詰め込みが続きますが、最後まで全力疾走の方向で!


第20話「しんそうねこまんま」



本当に欲しかったものは…



「あれ?ちとせだ」
ミルフィーは味噌を溶かす手をとめる
バタバタバタ
普段はおちついているちとせが、なにやら必死の形相でかけぬけていったのだ
どんなに忙しくても、かならず自分にあったときにはあいさつをしてくれるのに
そんなことを思っていると
「どーしたんだい?ミルフィーユちゃん」
冷蔵庫から追加の食材をもってきた食堂のおばちゃんがたずねてきた
「え…あ、なんでもありません」
ミルフィーはあわててそういうと、止まっていた手を動かしだす
「すまないねぇ、決戦前でいそがしいっていうのに」
「そんなことありませんよ。お料理大好きですし、おばちゃんにはいつも世話になってますから」
「そういってもらえると、助かるよ…」
そこへ
「そうだよ、おばちゃん。ミルフィーは料理をつくってるときが一番幸せなんだからね」
声をかけたのは、フォルテであった
いつきたのか、カウンターに肘をついてこっちをみている
「あ、フォルテさん」
「いい匂いがするねぇ、今日の宇宙日替わりメニューはなんだい?」
「えっと、ごはんにお味噌汁、メインが宇宙イセエビチリソースかけスペシャル、それから筑前煮にお漬物です」
「お味噌汁はミルフィーユちゃん特製だよ」
「そいつはたのしみだ」
フォルテはかかかと豪快に笑った
ミルフィーは
「あの、フォルテさん。さっきちとせが凄い勢いで走っていったんですけれど」
「あぁ、なんでも面会人がきたらしいよ?」
「お客さんですか」
「親父さんの知り合いらしい」
「なるほど、そうだったんですか」
納得して、ミルフィーは再び味噌汁に神経を集中させる
フォルテはその様子を満足そうにみつめながら
「そういえば、フォルテさんはどうしてここに?」
味噌汁の準備がおわり、宇宙イセエビの下準備を始めたミルフィーがやっと気づいたように口にだした
「いや、特に理由はないよ。ミルフィーが食堂にいたんでなにしてるのかきになっただけさ」
「そうですか」
「よかったらなにか手伝おうか?」
「あ、ほんとですか?だったら、ちょっと頼みたい力仕事があるんですけど…」
ミルフィーはそういって、パタパタと奥のほうへ引っ込む
その後姿を見守りながら
「フォルテちゃん、なんかあったんじゃないのかい?」
亀の甲より年の功、食堂のおばちゃんが鋭い問いをなげた
フォルテはミルフィーがまだ戻ってこないのを確認すると
「…ちょっとね。タクトが忙しそうだから代わってあげたのさ」
「マイヤーズ司令が?へぇ、あの司令さんでも忙しいってことがあるのかい?」
「あはははは、あれでもタクトはよくやってるんだよ。ただ、今回ばかりはちょっと新人の力になってやってほしいからね。
本当はアイツも自分で見回るつもりだったんだけど、無理矢理かわらせたのさ」
「優しい娘たちだねぇ、あんたたちは…」
おばちゃんがしみじみと呟く
フォルテは照れたように笑った、そこへ
「おまたせしました。フォルテさん、この宇宙チリソースをですね…」
「おっけーおっけー、このフォルテさまにまかせておきな」



「あら、ランファさん」
コンビニでランファはそう声をかけられた
みると、駄菓子コーナーに白い耳
「なによ、ミントじゃない」
「ごきげんよう。ランファさんはなにをお買いになられたんですの?」
ミントはにこやかにわらって、ランファの買い物袋の中をみる
そこには
「宇宙激辛清涼飲料?」
「はいー、大人気のー商品なんですよーとくにーフランボワーズ中尉にはーよく買って頂いていますー」
どこか不思議に間の抜けた宇宙コンビニの店員の声が説明をしてくれた
「い、いいじゃないっ、人がなにをかおうとっ」
ランファはミントから袋をとりもどす
「飲み物、ということはランファさん、またトレーニングですの?」
「悪い?もう決戦前なんだから、占いだなんだとかしてるわけにはいかないし、司令官がアレだからあたしががんばらないとね」
「クスクス…ランファさんらしいですわ。そういえば、その司令官がなにをなさっているかご存知で?」
「え?あぁ、そういえば…ちとせのおとーさんの知り合いとかいう人がきてるからとかいってたわね」
「あら、ご存知だったんですの?」
「あったりまえじゃない、艦内のことで私の耳にはいってこないことはないのよ」
ランファはふふんと、自慢そうに髪をかきあげる
ミントはその様子をほほえましくみながら
「でしたら、ランファさんにフォローの必要はありませんでしたわね」
「フォローって?…あぁ、白き月と黒き月のことね」
「えぇ…」
二人は同時に、先ほど、白き月の謁見の間であった出来事を思い出す

シャトヤーンとノア
二人の「月の管理者」が発動させたのは、白き月に封印されていたEDENとヴァル・ファスクの戦いの歴史であった
先代文明EDEN
その高い科学力をもっていたが故に、ヴァル・ファスクと戦うことを余儀なくされた先祖
番人たる双子、楽園を囲み輪舞を踊る
それは「白き月」と「黒き月」という二つの巨大な兵器工場を生み出した
「白き月」は人が管理する
真白は不確か、されど無限
人の心やテンションといった不確定要素を取り入れるがために無限の可能性を生み出す「白き月」
「黒き月」は機械が管理する
漆黒は確か、されど有限
逆に人をいう不確定要素を完全に取り払い確実な成果を発揮するが故にその限界が限られる「黒き月」
二つの兵器工場は互いに競い合い成長し
そしてその「融合」によって、究極の兵器を生み出すためのモノであったのだ

「べっつにもう驚かないわよ。半年前に”実は白き月は兵器工場でした”っていわれた時点でね」
「それもそうですわね」
「なによ、あんた、あたしたちのフォローなんてして歩いてるの?」
ランファはやれやれとあきれた声をだした
ミントは、やっと決めたのか、いくつかの駄菓子を買い物カゴにいれながら
「タクトさんの代理ですわ」
「タクトの?」
「タクトさんは今、ちとせさんといっしょにちとせさんのお父様の部下という方にお会いしに行っていますの
でも、本当はその合間に、わたくしたちのフォローにまわられるつもりだったんですわ」
「馬鹿じゃないの?普段働いてないんだから急にそんな動き回ると、どっか壊すわよ」
アノ馬鹿、とランファが呟く
それは酷く優しい響きで
ミントはその言葉に気持ちよさそうに耳をかたむけながら
「えぇ。そうしたらフォルテさんが反対されまして…。表向き、ちとせさんの助力に全力を注いでほしい。ということで納得していただきました」
「ふーん…」
宇宙コンビニ店員のありがとーございますーという声とともに、二人はコンビニを出た



クジラルーム
ヴァニラはサクサクと砂浜を歩いていた
見えてくるのは管理人室
だが、そこへたどり着く前に
「あれ?ヴァニラさんじゃないですか」
先に自分をみつけて、声をかけてきてくれたのは
「クロミエさん、お久しぶりです」
「はい、おひさしぶりです」
にこにこと、クロミエが近寄ってくる
「今日はどのような御用ですか?」
「ムギムギたちをお散歩に…最近、忙しくてかまってあげられなかったので…」
「そうですか。それはムギムギたちも喜びますよ」
クロミエはにこにことそういって、ムギムギたちがいる温室の鍵をかしてくれた
「もうじき決戦なんですね」
「…はい」
「そういえば、宇宙クジラがびっくりしていましたよ?」
「え?」
「”災厄が目の前にあるというのに、この船のクルーの心は穏やかで静かだ…
しかし、諦めているわけでもない…実に不思議”とね」
「…たしかに、正体不明の敵は恐いです…ですが」
ヴァニラは視線を宇宙クジラのいるビーチへむけた
「勝つためにこの船のクルーすべてががんばってくれています。だから…」
「勝てる見込みは?」
「いま、シャトヤーンさまとノアさんがお話を…きっとなにか活路はあるはずですから」
そこへ
「うきゅぅー」
飛び込んできたのは
「あ、こら駄目だよ、子宇宙クジラ」
ぺしり
ヴァニラに飛び込んできた子宇宙クジラをクロミエがおさえる

「かまいません…」
ヴァニラはそういうと、子宇宙クジラをなでる
「うきゅぅうきゅ…うきゅー」
「すいません」
「子宇宙クジラは寂しいのかもしれません」
「え?」
「タクトさんが、いそがしいから…」
「…ヴァニラさんも?」
「わたしは…」
つぶやかれた言葉
子宇宙クジラがヴァニラの手をはなれる
そのまま、ヴァニラがむかうムギムギたちの温室へとんでいく
ふたたびあるきだしながら
「寂しくなんてありません…ただ、タクトさんが無理をされていないか、それだけが心配です」
「…」
「私の力は心まで癒してあげることはできませんから」
「だいじょうぶですよ」
そんな会話をしていると、温室の前についた
クロミエが鍵をつかって、扉をあける
「きっと、だいじょうぶですよ…根拠は、ないんですけどね」
扉をあけながら、ふりむく
いつも優しいクロミエの笑顔
その笑顔にヴァニラもつられた
「…はい、わたしも、そう思います」



本当に欲しかったものがある



「ちとせ?だいじょうぶかい?」
「あ、はい」
声をかけられて、正気にもどる
「だいじょうぶです」
「そっか」
「マイヤーズ司令こそ、私なんかよりも、みなさんを見回らなくても…」
「あぁ、いや、それはフォルテがやってくれるらしいから」
「フォルテ先輩が?」
「あぁ、”中途半端な努力より、全力でひとつのことにとりくみな!”だってさ」
そのタクトの言い方があまりにも似ているので、やっと笑いがこぼれた
そこへ
「失礼します。ヒュウガ少佐をおつれしました」
扉が開き、中にはいってきたのは、初老間近といった男
「失礼いたします。ヒュウガです」
「遠いところをご苦労さまです。ようこそエルシオールへ。俺が司令官のタクト・マイヤーズです」
めったにきけないタクトの社交辞令に耳をかたむけながら、その男へ視線をなげる
どこかであったことがあるか?といわれればあるような
ないような…
そんなことを思っていると
「彼女が?」
「そうです。彼女が、烏丸ちとせ少尉です…ちとせ?」
「あ、はい…っ」
名前を呼ばれて、あわてて頭をさげた
ヒュウガ少佐は酷く優しい視線をむけていて
それは、まるで
「なるほど、あなたが…面影がお父様にそっくりだ」
「ありがとうございます…」
「お忙しいところにお邪魔して申し訳ない、ですが艦長のお嬢さんがエンジェル隊にいらっしゃるとききまして…」
「いえ、かまいません。それで、お話というのは…?」
「失礼ですが、ちとせさん…あなたは、お父上のことをどこまでご存知ですか?」
「…父のこと、ですか?」
「其のことで、実は…私はあなたに謝りたかった」
「え?」
今まで優しく微笑みをたたえていたヒュウガ少佐の顔が悲しみで崩れる
鼓動が
ウルサイ…
「謝ることで許していただけるとはおもっていないのですが…しかし…」
「聞かせてくださいっ」
「え?」
「父のこと…とうさまのこと、どうか、教えてくださいっ」
「ちとせ…」
ヒュウガ少佐の重い口が開く
ドキドキ
「………あの事故は、整備班のミスが原因でした…」
どきどき…
鼓動がうるさい
話が聞き取りにくい
ヒュウガ少佐は、その時の状況をできるだけ詳しく説明してくれているというのに
ドクンドクン
鼓動が…
「艦長は最後まで全員が無事に逃げられるよう全力をつくされました…わたしが…」
うるさくて
「私が…あの最後の瞬間…艦長を無理矢理にでもつれていっていれば…」

父さま…
優しい父さま
大好きだった
大好きで
嫌われたくなくて
いつだって良い子にしていた
ぬいぐるみを
私が欲しいといってねだった犬のぬいぐるみを
届けてくれた
責任感の強かった、ひと…
自分が死んでも
わたしに、ぬいぐるみを…
優しい
大好きな
でも、だからこそ
わかるのだ

「ちとせ…」
「だいじょうぶ、です」
声が震えた
だが、涙はこらえた
大丈夫だ
顔をあげる
「父のこと、話してくださって、ありがとうございました」
「…ちとせさん」
「だいじょうぶ、です。わかっています…父は軍人でしたから…立派な軍人でしたから」
そうだ
立派だった父さま
最後まで
仲間を護るために命をかけた
「わかっています。だって、私の大好きな父さまですから…父さまは誰も恨んでいませんし、私も誰も恨みません」
わたしだってそうだ
命をかけたい
大好きなエンジェル隊の先輩たち
そして
今、この瞬間でさえも、隣りにいてくれるマイヤーズ司令
新人の自分にも分け隔てなく接してくれるエルシオールのクルー
威厳をもちながらも優しいシヴァさまに、シャトヤーンさま
そんな、自分の大切な、全ての人たちのために

命をかけて戦いたいと

思った



2005年01月13日(木) ネギま!の日

遅いですが、アニメ版「ネギま!」の感想。第一回。
とりあえず、ネギ先生かわいいです。でも出番すくないなぁ。
原作はとりあえずネギ先生視点で進むのに、アニメは、アスナ視点だったためか
嫌にネギ先生の出番が少なく感じました…。
赤松せんせPUSHのOPは確かにいい感じです。大好きですv
でも、EDのカモくんの動きも大好きだ(とりおまてぃっくみたいで)
後半はそれでも、魔法の出番とかもあったんで、それなり。よかったよかった。
やっぱり魔法シーンはアニメでみると迫力ありますよねv
あと、すごい彩色が綺麗です。(液晶でみたせいかもしれませんが)
正直、アニメ雑誌とかのカットだと不安だったんですが、やっぱ実際に見ると
ちがいますね。
次回もたのしみっす。


第19話「懐古御膳」

カフカフの樹の下でミルフィーユをみつけた
「あ、タクトさん」
「ミルフィー。なにしてるの?」
ザワザワ
空気循環のために吹く風が、樹をゆらす
それはやわらかな光と影の幕をつくりだして
「お祈りしてました。みんなが、無事でいられますようにって」
「そっか。よし!俺も祈ろうかな」
手を組み目をつぶる
1000年に一度だけ花をつけるカフカフの樹
みんなでお花見をしたのは、つい半年前のこと
「…また、みんなでお花見がしたいです」
ふいに、ミルフィーが呟いた
それは語りかけるような
それでいて、どこか、自分に言い聞かせているような
「この木の下で…ランファやミントやフォルテさん、ヴァニラ…
もちろん、タクトさんにクールダラス副司令も…それから、ちとせ…
みんなでわいわい楽しく…私、腕によりをかけて美味しい料理を作りますから…
みなさんに”美味しい”っていってもらえる料理、たくさん作りますから
それを、みんなで…食べたいです」
「ミルフィー…」
「戦うのは嫌いです…あのときだって、本当は誰も失いたくなかった…」
そのとき
タクトはミルフィーが祈る手の中に握りしめているものに気がついた
赤い
赤い薔薇の押し花
「…ごめん…」
言葉が続かなかった
ふんわり
暖かい手が触れる
かすかなお菓子の匂い
「そんな顔しないで下さい、タクトさん。私たちは戦いにいくんじゃありません。みなさんを護りにいくんです」
「…うん、そうだ。ミルフィーのいうとおりだ」
「はいっ」
小さくガッツポーズ
そして最後に、彼女はこうつけたした
「でもタクトさん。ここで泣かないで下さいね…タクトさんが泣いていい場所は一箇所って決まってるんですから」


トレーニングルームにはランファがいた
「あ、タクト」
「やぁランファ。あいかわらず精がでるね」
「あったりまえよ。もう決戦なんだもの。気合いれなきゃ!」
ランファはそういって、バンバンとサンドバックをなぐると
「そうだ、タクト。あんたもやる?」
「…え、あー、いや。俺はいいよ」
「そう?すっきりするわよ。その辛気くさいのもぶっとぶほどにね」
パァン
豪快なパンチが炸裂
その音を聞きながら
「俺、そんなに辛気臭い顔、してるかな?」
ミルフィーにもいわれたんだけど、とつけたした

「気づいてないの?重症ね」
やれやれ
はぁとため息をつきながらそういって、ランファは手近にあったスポーツドリンクに手を伸ばした
「いっとくけど、ここで泣くのは許さないよ」
「…ぅ」
「あんたが泣いていいのは、ここじゃないんだからね」
ガコン
空いたスポーツドリンクの空瓶をゴミ箱に放り込む
ナイスシュート
「ふふん♪さてと、次はなにやろうかなぁ」
ランファは上機嫌に鼻歌まじりでトレーニングマシーンを見回していく
「あんまり根を詰めるなよ」
「だいじょーぶよ。それにこれくらいで根をあげてるとどっかの熱血野郎に涅槃で馬鹿にされそうだし?
”情けないぞぉ!ランファ・フランボワーズ!我が終生のライバルよぉぉぉ!”とかいってね」
「あははは、に、似てるなぁ」
「ま、全部このランファさんにまかせておきなさいよ!ミルフィーもミントもヴァニラも、フォルテさんも
ちとせも…もちろんクールダラス副司令vも。バッチリ護ってあげるんだから」
「うん…うん、頼むよランファ」
「ま、あんたはどうでもいいんだけど、あんたがいなくなるとミルフィーとかが悲しむから…仕方ないわよねぇ」
「俺はオマケかよ?!」
「あははははは」
もうしばらく、ランファがトレーニングに励む様子を見届けると
新しい差し入れのスポーツドリンクをベンチにおいて、トレーニングルームをあとにした


ミントがいるのはティーラウンジだ
「あまりあの方のことばかり考えていると、またクールダラス副司令が嫉妬されますわよ」
開口一番
「ミント…たのむから、もうちょっと歯に衣をきせたような言い方をさ…」
「ふふ、今更ですわ」
ミントの前の席に座る
紅茶がゆるゆると温かい湯気をあげていて
「タクトさん。もちろん私の前でも泣くのは厳禁ですわよ」
「…みんな厳しいよ」
「タクトさんがつかんだ幸せに比べれば、ささいなことですわv」
「………ミントはさ」
その先を
言葉にするのをためらう
言ってしまうと、止められなくなる気がした
すると
「クーデターのときのことを、後悔はしていませんわ」
「…」
「あれはあの方たちが選んだ道ですもの」
こんなときはとくに、ミントの能力をありがたく感じる
「そう、だね。ごめん、変なこと聞いて」
「いいえ。こうして、どなたかと話ながら、自分の考えを整理するのもいい暇潰しですから」
にっこりとミントが微笑んだ
その笑顔に、どこか救われる
「タクトさん、どんなに理想を説こうと、結局、人は自分ひとり分の毎日しか生きれませんわ」
「…」
「でしたら、やはり…月並みですが、その毎日を生きることが一番の供養というものです。
亡くした人に思いを馳せるのも結構ですが、だからといって、そばにいる大切な人を失わないようにしてくださいね」
「…うん、ありがとう」
その短い一言に精一杯の感謝をこめていうと、席をたった
だから
去ったあとで、ミントが呟いた言葉は、タクト自身もしらない
「…そう、人にいうのは簡単なんですけれど………わたくしも、まだまだですわね」


銃声の響く射撃場にはフォルテがいる
「やぁ、司令官殿」
ダァン
銃声とほぼ同時の言葉
「フォルテ…」
「おや、めずらしいね?タクトでもそんな神妙な表情ができるのかい」
クックックッ
シニカルに笑われる
「フォルテもきっついなぁ」
はぁ
ちょっとばかり回る順番を間違えた気がしてきた
ダァン
ダァン
「なにがあったのか…聞いてやってもいいけど、ここで泣くのは許さないよ」
「わかってるよ。俺がないていい場所は決まってるんだろ?」
そのとおり!という言葉のかわりに銃声
ダァン
ひとつ
「ふふ。拗ねなさんなよ。あんたを慰めることはできないけど、そのかわり、このあたしがみんなを護ってやるからさ」
ダァン
「期待してるよ。フォルテ」
「フォルテ様だろ?」
「はいはい、フォルテさま」
ダァン
最後の一撃
ガシャン
バラバラ
手際よく古い弾をすて、新しい銃弾を詰め込む
その動作にみとれながら
「タクトも一発、打ってみるかい?」
「今日は遠慮しておくよ…」
「そうかい…銃はいいよ。一発撃つたびに震動が伝わってくる」
ダァン
「この一撃」
ダァン
「一撃が…」
ダァン
「命の重みなのさ」
「…命の?」
ダァン
「そうだよ。この一発には、撃たれた誰かの命と、その失われた命によって護られたあたしの命と…
そして、あたしが生残ったことで助かる仲間たちの命…その全てが詰まっているのさ」
「…」
ダァン
「生残るためにはそういう選択をしなくちゃいけないこともあるんだよ。大事なのは…
そのときの気持ちを忘れないってことだ」
ダァン
最後の一発が的にすいこまれていくのを見ながら
ただただ、その言葉に耳を傾けていた


医務室ではヴァニラとケーラ女医が珈琲を飲んでいた
「ヴァニラ」
「タクトさん、見回りですか?」
「うん。ケーラ先生。おひさしぶりです」
「マイヤーズ司令も元気そうでなによりだわ」
椅子のひとつに座ると、ヴァニラが新しい珈琲をもってきてくれる
それを受け取るときに
「タクトさん」
「ん?」
「ここで泣くのは駄目です」
ブゥッ
吹きだした
「ヴぁ、ヴァニラ???」
「と、タクトさんがきたら言うように、みなさんから言われました」
「…はい」
がっくりうなだれて返事
「あははは、あいかわらずねぇ」
「笑い事じゃないですよ。ケーラ先生…まったく、ヴァニラにまで根回しするなんて」
ヴァニラが笑うケーラ女医のとなりに戻る
「わたしはよくわかりません…」
つぶやき
だが、その言葉の芯には、不思議と決意のようなものがあって
「わかりませんが、お話をきいてさしあげるくらいならできます」
「…ありがとう、ヴァニラ。でも大丈夫だから」
「そうですか」
「うん、ちょっと…無くしたモノの重さに今ごろ気づいて、俺が勝手に驚いてただけ」
「驚かれたのですか?」
「そう。自分でもびっくり…でも、もう大丈夫だよ」
「問題ありませんか?」
「問題ありません」
ヴァニラのいつもの口調を真似してみる
すると、彼女はキョトンとした表情を作り
(あ、やば…はずした?)
そう、おもったそのとき
「…似ていません」
クスクス
小さく、笑ってくれた



「…マイヤーズ司令?」
ちとせは足をとめてつぶやく
彼はそこでぼんやりと宇宙をみていた
「あぁ、ちとせ。寝ないのかい?」
声をかけられたことに気がついて、タクトが振り返る
「いえ、ちょっと…紋章機の調整にとまどいまして」
「そっかぁ、あいかわらず熱心だね」
「わたしは、経験が浅いものですから…マイヤーズ司令こそ、おやすみにならないのですか?」
「…うん?」
タクトはあいまいな返事をかえすと、再び宇宙を見上げる
見えるのは
「白き月…もうすぐですね」
「あぁ…白き月に帰ったら………」
言葉は続かなかった
なにか考えているのかもしれない
いや、ちがう
暗い艦内
星と月の光をうけるその姿はまるで…
まるで
「マイヤーズ司令?なにか、あったのですか?」
「え?」
「あ、いえすいません…その、泣…沈んでいらっしゃるようなので」
泣き出しそうで、といいかけた言葉を寸前で飲み込み
なんとか別の言葉で取り繕う

「あはははは、ちとせにもバレちゃうか…重症だな」
タクトは困ったように笑った
「ちょっとね、半年前のことを思い出していたんだよ」
「…クーデターの?」
「そう、シヴァ様をかばって銀河をわたって…最後にはやっぱり、この白き月へ帰ってきて…
そのときも”白き月に帰ればなんとかなる”って思ってたんだよなぁ」
「今回は…どうでしょう?」
思い出を懐かしむタクトをみていたら
なぜか、ふいに、そんな言葉が口をついて、でた
不安で
でも、けっして口にはだせなかったこと
それが、なぜか、あっさりと
「この戦いに勝てるか?…か。そうだなぁ…」
うーん
タクトは少し考えると
ゆっくりと、ちとせの顔を、みて
微笑み
「それは、ちとせ次第かな」
「え?」
ドクン
鼓動
どきどき、する
あまりにもソレがうるさくて
その答えの意味を聞き損ねる
「さてと、もう寝なきゃね。ちとせもゆっくりお休み」
「マ、マイヤーズ司令!」
背伸びをして、去りかけた後姿に声をかけた
「ん?」
タクトはたちどまると、不思議そうな顔でこっちをみている
だから
「その…泣きたいときは、泣かれたほうがよろしいかと思います」
「…え」
「私…わたし、なにもできませんけれど、話をきいてさしあげるくらいのことしか、できませんけれど…
精一杯がんばりますから…だから、そんな悲しい顔、なさらないでくださいっ!」
声は
言葉は
通路中に響いた
馬鹿だ
いくら夜中といえど、ここは艦内で
しかも通路の一角で
他に誰か通るかもしれないというのに
そんな後悔が、ぐるぐる自分の思考を圧迫しはじめると
「ありがとう、ちとせ…」
「いえ…」
顔があげられない
だから、タクトの表情はわからなかった
「クーデターの時にね、高い理想をもっている人がいたんだ」
それは、まるで独り言のようなつぶやき
「その人は、その理想の高さゆえに、決してやってはいけないことをやってしまった」
(…それは)
思わず言葉にしかけた思いを寸前で止める
「酷い人だった…でも、優しい人でもあった…優しいからこそ、時には非情で、そして愚かだった」
「マイヤーズ司令は…その方のことを…?」
「好きだったのかな?それは俺にもわからない…でも、嫌いじゃなかったんだと思う。
彼はどこか俺と同じモノをもっていたから…嫌いには慣れなかった」
(それは…)
その人物の名前にこころあたりがある
だが、それを口にすることはできなかった
「彼の理想は高くて…高すぎて、そのせいで”黒き月”に利用されるかたちになってしまったけれど…
彼は最後まで、自分の気持ちには正直だった…本当はね、本当は………俺は、彼を救ってあげたかった」
耳が痛い
「救ってあげたかった…救えなかったけれど…本当は、みんな救いたかった…高い理想をもつ彼も、
その理想に命をかけた人も…そして、力のためにみずから人間を捨てた彼らも…もちろん、犠牲になった人たちも」
ちがう
痛むのは、心だ
その刹那さが、心に染みて痛く
知らない
ちとせは、彼らのことを、なにもしらない
だけれど
「ノアのデータに残っていたヴィジョンはね彼のものなんだ」
「…はい」
「ノアは…いや、黒き月は彼を利用していただけのはずなのに、どうしてそんなものが残っていたんだろう?
不謹慎だけれど、それが嬉しくてね…だから、俺はもう一度、思い出していたんだよ…
救いたかった人たち、救えなかった人たち、かわりに、俺が選んだモノ…俺が選んだ人たち…
そんなことを、最終決戦前に、再確認しておきたかったんだ」
言葉が
でなかった
なにか喋らなくちゃいけない
だが、言葉がみつからない
形にならない
気持ちだけが、胸のなかに、どろどろと渦巻く
タクトはそんな、ちとせを察したのか
「でも、これは、俺の勝手なきもちだから…みんなにはナイショにしてほしいな」
「は、い…はい…」
コクコク
うなづく
そして、その勢いで顔をあげた
少しだけ悲しそうな
それでも、どこか、さっぱりしたようなタクトの微笑みが目に入った
「だいじょうぶ、俺は泣かないよ。…どうも、俺が泣いていい場所はレスターの隣り限定らしいから」
「え?」
「さ。そろそろ本当に寝なくちゃね。おやすみちとせ」
ありがとう
去り際に小さくつぶやいて、タクトはその場をあとにした
その後ろ姿に
「おやすみなさい」
とあわててつけたして
彼の背中が見えなくなるまで見送る
「…再確認、か」
それは、実際のつぶやきだったのだろうか
それとも、自分が呟いたように感じただけだったのだろうか
「わたしが護りたいものは…」
目を閉じる
覚えているのは、父の背中のこと
あのころは、父だけだった
大好きな父さま
でも、いまは…
いまは
こんなに、護りたいものが増えるなんて、思いもしなかった
だから
見上げる
白き月は、かわらない優しさで、決意に満ちた表情を照らしていた



2005年01月12日(水) 寝不足です…の日

寝不足です…



第18話「真相つなぎ手打ちそばキヲクなし」
褐色の肌に金の髪をたゆたわせた少女は、音もなく降り立った
「ノア…」
タクトが少女の名をつぶやく
ノアは先ほど消えたときと変わらない、不機嫌な顔で
「なに、本当にまってたの?」
つぶやいた
なんのことかわからずにいると
「はい」
ちとせの返事
その心地よい言葉にノアは少し驚きをみせると
あきらめたようなため息とともに
「人間って、ほんと、わからないわ」
首をかしげた
そこへ
「ノアさん、約束です。根競べは私の勝ちです。だから…」
「わかってるわよ。私は、人間と違って嘘はつかないもの」
ノアはそういうと
トンッとおりたち
「とりあえず白き月につくまでの暇つぶしにでもするわ。なんでもききなさいよ」

ブリッジに現れたノアに敵意をあらわにしたのはシヴァであった
「ノアっ、きさまっ…」
「さっきからうるさいけれど、あんた誰?」
「なっ…私を忘れたとはいわさんぞっ」
それはもっともな言葉であった
クーデターの時、名指しで狙われつづけたのは、他の誰でもなくこの幼い少女だったのだから
そのシヴァをとめたのは
「シヴァ様…彼女はきっと、あのノアとは違う存在なのですよ」
「な、に?」
シヴァの勢いがとまる
他の誰が止めても無理だったろう
それがタクトの言葉でなければ
「タクトっ、お前もノアには辛い目にあわされたのだろう?」
「…ですが、彼女の反応をみる限り、あのときのノアと同一人物とは思えません」
「…っく」
シヴァがおとなしくひく
その様子を眺めて
「ふぅん、人間にしては察しがいいじゃない…
そうね、たぶんあなたたちがいってる“ノア”というのは“黒き月”が“白き月”を見つけるために作った“端末”のことよ」
ノアは興味深そうに笑う
タクトは珍しく、厳しく作った表情を崩すことなく
「端末?」
「えぇ、そうよ。黒き月の管理者であるあたしのデータを元に作られたんじゃないかしら?」
「その管理者というのは?」
「あんたたち白き月で“聖母”といわれている人間がそうよ。文字通り、月の全てのシステムを管理する者のことね」
「システムというのは…つまり、白き月本来の役割である“兵器工場”のことだね」
「詳しいのね。そうよ…白き月は人が管理し、黒き月は機械が管理する」
「ということは君も…」
「私は黒き月の管理者にして、黒き月自身。そして、黒き月で唯一意志をもつ存在」
「だから、黒き月の軍隊は無人戦闘機ばかりだったのか」
そこでちとせが口をはさんだ
「ど、どういうことですか?」
「つまり黒き月は、ノア以外のもの全てが機械、または人を必要としないシステムで成り立っている、ということだと思う」
「あなた、本当に飲み込みがはやいのね」
ノアの絶賛の言葉にもタクトは耳をかさず
「ところでノア、あのネフェーリアっていうのは何者なんだ?」
「あの女は”ヴァル・ファスク”よ」
「ヴァル・ファスク?」
全員がその名前を繰り返す
タクトの反応に少しばかり機嫌よさそうにしていたノアも、再び不機嫌な表情に戻ると
「そうよ、忌々しい…我らがEDENの敵」
「EDEN…それは、600年前の”時空震”で滅んだ先代文明のことだね」
「貴方たちがなんといっているかわからないけれど、たぶん、そう…」
「ヴァル・ファスクが敵というのは?」
「そのままの意味よ、あれは外宇宙から突如としてやってきてEDENを滅ぼそうとした敵。
そして、私と白き月はそんな外敵からEDENを護るために作られた防衛システムなの」
「なんだと?!」
激昂するシヴァ
タクトはシヴァを制しながら
「それがどうして?」
「知らないわ。どうしてヴァル・ファスクが600年も出現しなかったのか。どうして私が辺境惑星なんかで眠っていたのか。
情報が欠落しているのよ。どうもその”時空震”っていうのが関係しているみたいだけれど…」
「白き月にいってみないことには、ということか」
「そういうこと」

「認めぬぞっ」

「シヴァさま」
「さっきから、本当にうるさいわね」
うっとうしそうにノアが髪をかきあげる
シヴァはその様子に怒りを抑えながら
「だからどうだというのだ、どんな理由があろうとも、お前と黒き月の残した傷は消えぬのだっ!」
「私の端末が勝手にやったことを、私が知るはずないでしょう?」
「無責任にもほどがあるっ!」
「なんですって!?」
「シヴァさま、シヴァさまおちついてください…っマイヤーズ司令っ」
抑えられない様子に、ちとせがこまってタクトに視線をおくる
タクトは
タクト、は…
「マイヤーズ司令…?」
ゾクッ
ちとせの背中を冷たい何かがすべりおちた
ぞくぞく、する
底冷えするような、視線
それはまるで、冬の夜に浮かぶ月のように
暗くて、冷たくて、どこか、美しい
こんな彼は、知らない
知りたくない
そう、思っていると
「タクト」
誰かが、彼の名前を、呼んだ
ふいに
「…わかってるよ」
氷が溶けるように、表情が落ち着いた
ゆるやかに、空気がぬるくなっていく
そして、それはすっかり元にもどると
「シヴァさま、落ち着いてください」
「タクトっだが…」
「落ち着いてください…今は、”ヴァル・ファスク”の手からトランスバールを護るのが先です」
「…う、うむ」
「確かに黒き月の残した傷は深い…ですが、だからといってあの強大な敵に勝てる可能性を潰すのは賛成しかねます」
「…そう、だな……すまぬタクト。辛いのは…私だけではないのにな」
「いいえ、シヴァ様はお優しい…だから俺は、あなたのために命がかけれるんですよ」
シヴァの表情に赤みがさした
照れているのだろう
彼女はふいっと出入り口までいくと
「私は…もう休む。タクト、あとはまかせた」
「はい」
そういって、ブリッジをあとにした

はぁ
誰からともなく、ため息
「ノア、話してくれてありがとう。白き月まではもう少しかかるから、それまで自由にしていいよ」
「…あなた、変な人間ね」
「よく言われます」
そう、ノアと会話するタクトは、優しくて、ちょっとたよりない感じがする、いつもの彼である
ちとせはほぅっと知らずのうちに胸をなでおろす
そのとき
「ねぇ、私からも一つきいていい?」
ノアからの予想外の言葉に、全員の視線がわずかに彼女にむいた
「なんだい?」
タクトはわずかばかり首をかしげて聞く

「今もいったように、私は600年分の記憶が欠如しているの」
「うん」
「だから、貴方たちが言う半年前の黒き月のこともわからないのだけれど…」
「…それで?」
「データのすみに、気になるビジョンがずっとあるのよ…消そうと思ったのだけれど、どうしても気になるから消せないの」
そのときの
ノアの顔は
今までの、どこか威厳めいたものではなくて
ただ、ただ、その年頃の少女にふさわしい
そんな、表情で
「わかったらでいいんだけれど、それが何か心当たりがあるなら教えてくれないかしら?」
コクリ
喉を鳴らしたのは、タクトだったろうか?
ちとせは、彼が、緊張していることに気がついた
「そのヴィジョンというのは?」」

「長身で、金髪をひとつにくくっていて、肌の黒い…綺麗な男が…どこか寂しそうな表情で私の頭を優しく撫でるの」

「………」
「どうしても気になるのよ…」
タクトはなにも答えなかった
いや
タクトの真後ろにいたちとせにだけは
彼の、その、零れ落ちるような小さな呟きが
わずかに、だが、確かに聞こえたのだ

「エオニアさま…」

と。


 < 昨日なくしてしまったもの  もくじ  ポストの中の明日 >


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