【8】見守る子

 群青色の服に身を包んだ、線の細い男の子がいます。

 光ちゃんの話によると、母君が「流産した子の名前を海彦」と言っていたそうです。
 なぜか積木は京都のお寺で彼を供養してしまいました。つまり海彦君は、生きながらに供養されているのです。
 私は昔から海彦君を知っています。「彼が見てる」そんな確信があるからくじけませんでした。足長おじさん?

「海に行きたいんだよね?」
 部屋の隅にうずくまっている彼に声をかけてみました。

「ちがう。見てる」
「いつも見てる」
 両膝の間から上目遣いで、少し恨めしそうに言います。

「そうだったね。いつもいつも見ていたね」

「いやだった?」

「ううん、心強かったよ」

「それはよかった」
「ボクは見るくらいしかできないけれど、きっと忘れない」
 膝に顔をうずめてつぶやくように言いました。

「海の近くに住むといい」

 私はなぜか海に行くと寒くて寒くて凍えてしまいます。例えそれが夏だとしても、寒すぎて具合が悪くなります。

「何故だろう?」

「みんな海に沈んでる時計の所に帰ってくるよ」
「山彦はボクには見えないけれど」

「貝は昔の話をするんだ」
「耳を当てたら話し出す」

「ボクは見る、君は聞くの?ボクの話も?」

「思う存分しゃべったらいいよ」
「私は聞くくらいしかできないけれど、きっと忘れないから」
2005年07月30日(土)


 今「眼鏡ができた」と電話がありました。「取りに来てください」って。お金いくらだろう?と言うか、本当に注文した?

 一階の奥さんが「ブスタンブルありませんか?」と訪ねてきました。「なんだろう?なんだろう?」どうもブースターケーブルのことを言っているようです。車がどうの、バッテリーがどうのと言ってるので。

 光ちゃんの車につんであるんでしょうか?車のことはよくわからないので困ってしまいました。

 奥さんは「ぶーすたーけーぶる?そう言うものなんですか」と感心しながら帰っていきました。大丈夫かな?ケーブルを手に入れたとして、今度はショートさせたりして。貸してくれる人はわかってるはずなので大丈夫でしょうが…。

 蚊に刺されて目が覚めたら病院のソファの上でした。先生に久しぶりに会ったような、そうでもないような?

 いつものように「今週はなにかありましたか?」と言う質問。半年前だったのか先週だったのか曖昧だけれども、Mちゃんから電話がかかってきたことや、ヘルパーやカウンセラーの話、猫や犬、鳥や海の話をしました。

 ちなみに先生は本の引用が多いです。とても長い励ましの手紙や折鶴をI橋でもらっているのですが、それが誰だったのか思い出せないことや、そこでの友達の名前が一切思い出せないことを話すと、先生は「霧」と言う表現を使いました。「霧の中」だか「霧に入る」だか。何の本の引用だったのかな?私の知らない本です。

 でも、Mちゃんとの出会いに“17歳のカルテ”を引き合いに出されたのはこっぱずかしかったです。私達はそれほど若くもありませんでしたし、周囲だってお年寄りか中年ばかり。かの本のような瑞々しさは微塵も感じられません。それに私は多感ではなく、鈍感すぎて入院してたものですから。

 なにはともあれ、私の曖昧な描写を本からの引用でうまく抑えて行く手腕には驚かされます。考えてみれば、詩や文学の引用は、より緻密な共感にもってこいかもしれません。ワンクッション置けるので安心ですし。

 泣いた後はろれつが回らないほど頭がひどく痛むんですが、普通はそんなことにはならないそうです。交代時の頭痛と泣いた後の頭痛は似てます。微熱も出ます。

 それようの薬は次回処方してもらうかもしれません。処方してもらわないかもしれません。今は季節が悪いですしね。

 ちなみに光ちゃんがいません。「いってきま〜す」と言う意味深と言うか意味不明なメールが残っています。彦ちゃんがダイビングがどうのとかメモってたので、多分そこら辺だと思います。今いずこ…。
2005年07月29日(金)


 肩こってます。微熱があって鬱陶しいです。
2005年07月23日(土)


 この前のピカソ展はピカソではなくゴッホで、天王寺ではなく中之島だったようです。写真集を買ってきてくれてたので、ゆっくり観賞ができます。気持ち、ありがとう。



 本、注文しておきました。160円で郵送代340円。カードから引き落としで、明後日か明々後日には届くと思います。

 本当はセンターにあるんですけどね。私が通わなければ行くこともないでしょうし。

 今の光ちゃんは、物理的にお酒の量を減らしているので症状が軽くなっています。しかし認識が間違ったままなので、爆弾を抱えてるも同じでしょう。

 それでも日々の生活がよければ、改善のきっかけもあると言うものですが…。私と生活してたんじゃ無理ですよね。

 本には私が伝えたくて伝えられなかったことが書かれています。光ちゃんは臆病なので、人のいない静かな場所で読むことをお勧めします。

 私が虐めようとしてたわけじゃないこと、気付いてくれたらうれしいです。あの本には真実が隠れています。どうか自分を許すきっかけをつかんでください。
2005年07月19日(火)


 光ちゃんは殴らなくなったかわりに「馬鹿馬鹿」言うようになりました。「馬鹿」って言うヤツが馬鹿なんだ。馬鹿野郎ー!



 ところで今朝は光ちゃんママから電話がありました。夫婦で四国霊場を回っているそうです。

 パパは怒りっぽくて、怒りすぎて禿になったほどの人ですが、お参りの時くらいはおとなしくしようと心がけたんだそうです。ママは「まるで別人だった」と笑っていました。えらいえらい。

 それから今、天王寺の美術館でピカソ展をしているそうです。誘われたので金曜日に行ってきます。うれしいな。ピカソの絵を見るのは初めてです。



 午前、洗濯物を干しにベランダに出たら、甲高い声でなくツンツン頭の鳥がとまっていました。「ヒヨドリか」と、しばらくにらめっこしていたのですが、向こうも飽きたようで下へ飛んでいきました。

 子供が遊ぶ砂場にビニールがかけてあるのですが、そこに水溜りができています。羽の付け根の白い大様な体格の烏が二羽、水を飲んだり跳ね回ったりしていました。

 一羽がビニールの寄れた部分をくちばしでしきりに引っ張っていたのですが、もう一羽が傍で同じ事をしたら怒って飛び掛りました。二羽で夢中になってビニールをめくろうとしてます。

 寄れた部分から端に移って、羽をバタつかせながら必死。私は見飽きたので洗濯物を干して家に入りました。ここらへんは鳥が多くて楽しいです。昨日は白い鳩を見ました。



 ヒヨは祖母が何か言っていました。なんだったんだろう?悲しいことだったような気がします。
2005年07月06日(水)

寝言日記 / 杏