ジョージ北峰の日記
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2008年11月11日(火) オーロラ伝説ー続き

 ところでこの話を聞いて、皆さんが不思議に思われたことは、この国が国としての拠るべき規範又は法、あるいは又国体の基盤が何処にあるのかということではないでしょうか?このことについては、私自身でさえよく理解できないまま、不思議で仕方がありませんでした。
現代の文明国では、人々の自由は「最大多数の最大幸福」という民主主義の基本理念に基づき、職業選択の自由、信仰の自由、言論の自由などの権利を享受することが出来ます。それに人々相互間に争いが生じた場合も、一定の法に基づいて善悪が判断されるでしょう。しかしラムダ国には、国としての明確な理念、又は法のような規範がないように思えたのです。にもかかわらず、国内では、人々の間にほとんど争いらしい争いは起こりませんでした。人々は、自分の仕事に忠実で、男女関係も極めて単純なシステムで、好きな者同士が自由に愛し合うことが出来る、がしかし男女の問題で、私たちの国でよく見られるように、恋する又は愛する相手を拘束するような事はなかったのです。だから恋愛に関わるトラブルも皆無でした。
それは、この国のセックス又は子育てのシステムが私達の世界と全く異なっていたからかも知れません。
私のように、複雑な男女関係が当たり前の人間社会にどっぷりつかって来た人間にとって、この国の男女関係のあり方が、私の想像力をはるかに超える意外な出来事の連続でした。だから、私とパトラが結婚することは、この国本来のあり方とは根本的に違っているように思えたのです。
パトラと私が恋人同士の様に愛し合う行為そのものが、この国では考えられないこと、または禁止されていることだとさえ思っていたのですから--。
パトラは私をこの国へ連れてきた時、恐らく、私をこの国にとって利用できる研究者の一人と考えて連れてきたのでしょう、しかし最近では(読者の皆様もすでにお気付きのことと思いますが)、私を単なる研究者の一人としてではなく、恋人と思っているような素振りを見せるようになっていたのです。
 しかし最初私は、パトラの私に対する行為は、愛情表現ではなく、未知の国へ連れてきた女王としての責任から出てくるものと考えていました。恐らくパトラは男女の愛憎関係など全く知らない女性だと考えていした。
ただ、この国へ来てから、私は一方的に(皆様もご存知の通り)普通の男として、パトラに対して愛や嫉妬を抱いていると思っていたのです。
私が彼女を思う心なんてパトラには決して理解できないだろうと思い込んでいました。
 しかしパトラの父、老博士の、「パトラと結婚して故郷に帰っても良い」という言葉や、そして今夜現実に、私と女王パトラと結婚する運びとなり(それはそれで夢の様な喜びを感じてはいたのですが)しかし一方、ラムダ国の事情を知るようになった私には、やはり私達の結婚がこの国の国家体制を崩すことになりはしないか?とか、今後老博士を中心とする国の中枢部がこの国を如何しようとしているのかなどと、不安が募る一方でした。
私はパトラとの行く末に漠然とした不安を感じざるを得ませんでした。
しかしそんな不安な素振りは一切見せず、パトラは天真爛漫に振舞っていました。勿論女王としての威厳は失ってはいませんでしたが。

宴会が終わって、私が部屋に戻りますと、暫くして、召使が「女王様がお呼びです」と迎えに来たのです。
パトラの寝室は、蝋燭の様なほのかに明るい灯りに照らされ、まるでベルサイユ宮殿の女王の寝室に見られるような、普通の人なら圧倒されそうな豪華なベッドに加えて美しい調度品が飾りつけてありました。そして一方の壁は水族館の様なガラス張りで、海側は青紫の光にライトアップされ美しく輝き、珊瑚礁がほんのり見えるのです。
パトラと言えば体にぴったりフィットした薄いベージュ色のドレスを着てベッド傍のソファにゆったりと休んでいました。薄明るくほんのりとした部屋の灯りと青紫色に輝く海の灯りが渾然一体となってパトラの衣装は七色に輝いて見えました。
彼女の様子からは何時もの格闘家のような雰囲気はまったく消え、本物のクレオパトラが座っているように見えたのした。
その夜私は随分酔っていたこともあって、彼女が御伽噺の人魚の様にも見えたのです。
テーブルにはやはり、ぶどう酒の様な少しアルコール分の弱い美味しいお酒と銀の杯がおいてありました。静かな音楽が流れていました。
あまりにも豪華な創りの寝室、そしてパトラの美しい姿に私は圧倒されていました。
こんな立派な部屋は、私には不釣合いな印象を受けましたが、酔っていたこともあったのでしょうか。私はそんな圧倒された様子もなく、ただ呆然と起ちつくしていたのだと思います。
私が部屋に案内されたのを知ると、パトラはゆっくり立ち上がり、召使に下がるように命じ、そしてまるで母親がするように私を懐深くに抱きしめ、両頬に軽く接吻すると、深酔いしている私をいたわるようにしてベッドに導いてくれたのです。
その夜私は、どうしても彼女を抱きしめていたい衝動にかられていましたので、彼女を離さないまま、しっかり抱きしめていますと、パトラはそのままベッドへ倒れこみました。
 その時私は、パトラのドレスの裾が乱れ太腿が露になるのがチラッと見えたのです。
ほのかな七色の光に浮かび上がった彼女のふっくらした太腿(ふともも)が、すでに理性を失っていた私にはとても官能的に見えました。
一方パトラもその時すかさず、私の興奮が蘇ってくるのを、自分自身の手で確認したようでした。
そして、いつもの性習慣とは違って、パトラは私の下ヘ潜りこむと、下からから私を抱きしめようとするのです。
「そうなのか!」--彼女の気持ちが、何も話さないのに私にはジンジン伝わって来たのです。
私は深酔いしていました。
思うように自分の体をコントロール出来ないもどかしさを感じながらも、パトラの思いが嬉しく愛しさのあまり彼女を思いっきり抱きしめていました。
パトラはパトラで私の興奮を、自分の手でしっかり握り締め確認しているようでした。


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