ジョージ北峰の日記
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2002年10月20日(日) 憂鬱ー湖畔のホテルでー

 晩秋の夕暮れ、
 比叡の山の端にほのかに夕日が残り、
 麓に灯りがともる。
 最後の獲物を諦めたトビが1羽、
 忙しくはばたき去っていく。
 どこか淋しげに映る。

 しかし今夕、何故か心は高揚し
 生の喜びが密かにこみ上げる。
 世界のいたるところで、
 恋人達、家族の悲しい別離、予期せぬ死に
 悲嘆にくれる人々がいると言うのに。

 此処では心配も、恐怖もなく、笑顔があふれ、
 コーヒーが人々の心を癒す。

 神は不公平なのか。
 ほんの一握りの人だけが幸せでいいのか。

 すっかり日も暮れた漆黒の山腹、
 ちりばめた宝石のようにヘッドライトが瞬き、
 緩やかに波打つ湖面、ショーボートがきらきら滑るように
 移動していく。

 人は何も出来ないのか?
 この幸せが幻でないことを神に祈るしか無いのか。
 せめて自分達の周りが平和であるよう祈るしかないのか。

 この利己的な願い、
 静かなメロディーの流れる、湖畔のホテルの喫茶にて。


ジョージ北峰 |MAIL