『 hi da ma ri - ra se n 』


「 シンプルに生き死にしたかった 」


2008年05月26日(月) 轟音灰模様。

微かなもの
ものおと
気配

それでもつきさせることができるわたしの皮膚

しずかにすぎていかない
時間は轟音を立てて
からだを押しつぶすのだけど


いちいち、伝えていられない

うまく、いえない。


しあわせとひとは呼ぶだろうものもの、それにかこまれて
血のいろ、を棄てられないで、ぐるぐると旋回する
ものいわない刃物がまぶたのなかでちらちらとひかって
あたしは、それにむかって飛んでいくばかものをただ
押さえつける
理由をときどきみうしないながら

ちっぽけな隕石がまっすぐにひかれて燃えあがったらきっとその火はきれいなのに


あたしはどこあたしはここあたしはどこあたしはどこどこどこ


あなたはわからない顔ばかりする
だから必死にしゃべる
からっぽのようにみえてしかたない泥だまりのなかから言葉を
ひろいあげて組み立ててあなたがたに向かって
もつれた舌で、放る。

すでに、なかば、
絶望しながら
返答がかえってこなくても
しゃべろうと
つながれようと
つかれはてていくのが「あたしのしごと」なのだって
不可解な顔をしたひとへ言葉を伝える
伝わらないのに
すぐさま壊れる橋をかけること
ずっとずっと、ずっと


遠い遠い遠い遠い国にすむきみへ。


もう
いなくていいようにおもってしまう
なにかがまちがえたらいいと思う
悲しみなんて知らないと無責任に言い放ち
とびだしてしまえたらいいと思う

けれど、

しあわせといわれてほほえんでいる
ほほえんでいる
腕をふりまわして叫びたいのを投げ出したいのを

ほほえんでいる


わたしの皮膚が
ふくらんで、たとえばうろこに近づいていくから
夏が近づくのを知った。

見つめたくない。
泣きたくなんてない。

そう言っている言葉をつきやぶってやわく硬いわたしをこわして
ひきずりだしたなまみを、ほんものの声をきいたとよろこぶひと
赤むけの皮膚はいたいのですよ
自己修復は、のろのろとしかすすまないのに
こじあける手はいそがしく働いて
わたしは
ときどきとても
くたびれてしまったとおもう


だれもいないひるまの天井をながめながら。

ほうりだした腕のおもたさや時間ののろまさや
それでもココニイルコトに、ひとつひとつ
気づいては棄てて。

なにもわからなければ、らくに今日をすごせるだろか。


曇り日。



2008年05月12日(月) 粘土細工ぴえろ。

あるはずのオクスリがみつからなくて
あちこちをひっくりかえしてしまう、午前3時。
そんな時間に目をさましたことに、あたしがいちいち律義に反応する。
またかまたかまたかと
ああやっぱり駄目なんだと
あたしはあたしをしんじない。

失せものはにがてだよ。
あなたは捜すのを手伝ってくれない
あたしの頭は感情でぐちゃぐちゃになっていて
言葉がもつれて出てこない、無性に
不機嫌になっていくばかり。
通じる言葉で説明しろと言う、その態度がにくらしいくらいに
もつれる。

うまく吐き出すことをはやくおぼえたい。
感情も、思考も、食べものも
わだかまるこの濃いグレイの嵐を、抱かないでそとに
ふはり、と
溶かしてしまえる方法。ごまかしでなく。

だれかにぶつけながら意味がわからないままたくさんの手段で泣くのね
あたしのなかの箱をあけて暗いカーテンをひきさいて
……そうしたら、こわれそうな気がする
後生大事に持つものではないと、それはわかるけれど
あのドアのない人形の部屋

たとえばきみがそこをどうしてかこじ開けたとして
部屋はあかるくなるでしょう、そうして
なにかが修復不可能になるような
がらがらと、あたしが、あたしが、ぼくが
崩れて物言わないゴーレム。

・・・・・・・・・・

喪服が、似合わないよりは似合うほうが
いいのかな…とふと思ったけれど
鏡をのぞいたら知らない顔がみていた。
やや相応に大人びて、人好きのするしっかり者のだれか
黒いワンピース白いブラウスまとめ髪。目付きまでちがう、凛々と見てる

「なんだか、まっとうな人間、みたい」

人は猫をかぶるらしいけど
あたしは人をかぶるのか

ヒトの時間はやみくもにつきすすむ。
かえしてほしくても、あとのまつり。
霧のなかで夢中なうちに
みんな去ってた。せかいのじかん。
穿たれた穴のなかの出来事、うまく思い出せない、いつものように
ハイスピードあたしわらう頷く洗い物するわらう尋ねるお茶を出すわらう聞く。

がたごとゆっくりな各駅停車でいいのに
この出来事どもを刻み込むには、それでも
たりないくらいなのに



2008年05月01日(木) 手さぐれば霧のなかみ。

外に出るのが「こわい」とか
人との約束が「こわい」とか
その下の下にはなにが息ひそめて力をふるっているのだろう、とか
そもそも「こわい」の意味合いがチガウだろう
と朧げにかんじながらもその違い(違和感の正体)をつかまえるのが
なぜかとてもむずかしかった雲日の午後。

言葉や記憶ど何重にも蓋をした奥にあたし(ぼく)がいて
たとえばおびえる、たとえばこわがる卵をたいせつに抱え
からだを支配して、そして卵の殻をみずからを覆う天井を
強く厚くしている……そのことは感じられ

どうして卵はうまれたの
なぜ
そんなようにたいせつにあたためられ護られることに
なったの
なって、いるの

靴をはけば襲う
吐き気とめまいのようなものと、力が抜けていくことと、それからあれこれ
ぼくはじぶんとじぶんのカラダにケンカをして
負けたり負けなかったり妥協したりする
くりかえされるおなじみの、ひとりの攻防

道路がよぶ
線路がよぶ
従ってはだめだとうしろへ下がり目をつむる意識をもっている

だからまだ
いいんだ

うまくしゃべることはできても
話すことはできない、嘘をつかないよう
手をのばしたら深いしろい霧があたりをつつんでいて
これじゃだめだとだけわかった、曇日。

外のひとがみんなみんな
殴るような刺激であり
でもそのせかいのなかで
あたしは、「いきてゆくひつようがある」から。
かくれんぼするみたいに
でも。

……ミナミノシマの夢をみたい。


16:54


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