トラキチの新着レビュー...トラキチ

 

 

『椿山課長の七日間』 浅田次郎 朝日新聞社 - 2002年11月30日(土)

デパート勤務の椿山課長、ヤクザの親分の武田勇、小学生の根岸雄太。
それぞれ過労・人違い・交通事故と不慮の死を遂げて冥土に着くのだが、異議を申し立てて現世に3日間戻る事を認められる。必ず守らなければならない3つの約束事を胸に、各人のやり残したことや疑いを晴らす為に戻るのであるが・・・

とにかく、登場人物がすべて(脇役も含めて)、それぞれの持ち味が素晴らしく表現されていて一気に読ませてくれます。展開的には、予想だにしなかったことが次々と現われてきて目が離せません。思わぬところでいろんなことが繋がっていて、嵌って読んでしまいます。姿や性別を変えて戻ってると言う所も上手く趣向を凝らしてるなあと思います。
普通、主人公の椿山だけが目立ってしまうということが充分に考えられるが、3人とも同じぐらい目立っている。やはり“残された人々の幸せを祈って行動してる”ところが胸を打ちます。私は特に椿(椿山)と佐伯知子が一緒に酒を飲む場面が一番好きですが、読み手によって違ってくるとも思います(笑)
また、適度にギャグが入ってるところが浅田さんらしくリラックスさせてくれます。久々に浅田ワールドを堪能しました。純粋な気持ちで読むことによってより感動が深まります。
ハートウォーミングという生半可な形容じゃなくて“死を恐れなくさせてくれる”物語です。果たして約束を破るのは誰でしょうか。未読の方是非お読み下さい。

評価9点。 オススメ!


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『ゲームの名は誘拐』 東野圭吾 光文社 - 2002年11月27日(水)

評価7点。感想は後日書きます。


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『剣客商売』 池波正太郎 新潮文庫(再読) - 2002年11月24日(日)

捕物帖日記参照。評価9点。オススメです。


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『きよしこ』 重松清 新潮社 - 2002年11月21日(木)

7編からなる連作短編集です。まるで重松さんの分身のような主人公だ。
吃音のために小さい頃から思ったことを言えないで苦しむ少年を大学受験の頃まで描く力作です。あまりに短いので2回読んでみました。

親の仕事の都合で小学校の頃から何回も転校を繰り返す少年が、さまざまな苦しみ、悲しみを乗り越えていくところは読んでて涙物ですが、少し辛すぎる面があるかなあとも思いました。
親の出世の状況が、転校場所に反映されていく点(段々田舎になって行く)は重松さんらしい設定かなあと思いました。でもこの作品はいつもの重松さんより母親を上手く描いてるかなあとも個人的には思います。

『ナイフ』が嫌いな方にはあまりオススメ出来ませんが、男の子を持つ母親には是非読んでもらいたい作品ですねえ。重松さんの暖かいまなざしがわかって貰えるんじゃないかなあと思います。

主人公の年代の設定(万博の年に小2)や名前(きよし)や“まえがき”並びに“あとがき”などを考えると、重松さん本人を投影されて読まれた方も多いはずです。

小説としては『エイジ』や『半パンデイズ』で披露している子供の頃特有のほろ苦さやうしろめたさを巧みな言葉で描いていて、さすが“重松節”だなあと唸らされますが、やるせなさという点では本作が一番かもしれませんね。

最近の重松さんの得意のパターンである、ラストの爽快感も少し薄いような気がしますが読み手によって違うのかなあ?

最後に全7編中「北風びゅう太」は「せっちゃん」(『ビタミンF』)や「エビス君」(『ナイフ』)に匹敵する感動作であることを書き留めておきます。
この一編だけでも本作を読む価値があると言っておきましょう(^O^)

評価8点。


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『落花流水』 山本文緒 集英社文庫 - 2002年11月16日(土)

正直言って、山本文緒がこんな小説も書けるのかなあと驚いた面もありますし、逆に予想より面白くなかったとがっかりした面もあります。
評価の分かれる作品といえそうですね。

はじめ、マーティルが主人公かなあと思ってましたが(笑)・・・
1967年から2027年まで10年ごとに毬子という主人公の“女の一生”を本人、友人、母、義弟、娘によって描かれてます。

なんと波乱万丈な一生なのでしょう。小説の世界とはいえ変化に富んでいて面白いです。
家族より愛を優先しすぎてるところが読者をひきつけるのでしょうか?

1編1篇はそんなにたいしたことないのですが、読み終わった時の充実感はさすがと言いたいです。
人物設定の上手さはいつも脱帽、特に母親の“律子”さんには参りました。“血は争えない”というのが率直な感想です。
毬子さんの人生に拍手を送って本を閉じました。

評価7点



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『フォー・ディアー・ライフ』 柴田よしき 講談社文庫 - 2002年11月13日(水)

評価8点。感想は後日書きます。


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『御宿かわせみ』 平岩弓枝 文春文庫(再読) - 2002年11月11日(月)

捕物帖日記参照。 評価8点。


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『風に桜の舞う道で』 竹内真 中央公論新社 - 2002年11月07日(木)

評価8点。感想は後日に書きます。


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『ふたたびの虹』 柴田よしき 祥伝社 - 2002年11月03日(日)

柴田さんの従来のイメージをいい意味で払拭する、しっとりとした切ない連作短編集です。
まず、主人公の「ばんざい屋」の女将が謎めいていてとっても興味深く読めること間違いなし。とってもいい女なんで、何故名前が変わったのか、過去を知りたくて知らず知らずページをめくっちゃいます。恋人(?)清水の存在も否のうちどころがなく男としての優しさ満載で、2人の恋愛の成り行きも読み進めていくうちに興味が湧きます。

随所に食欲をそそられる料理の話やアンティークの話が散りばめられており、1編1編楽しく読めることも付け加えておきましょう。まず、1編目の「聖夜の憂鬱」から引き込まれていくでしょう。

ラストの2編においては女将の過去があらわになってくるのですが、感動物で柴田さんの卓越したストーリーテリングが充分堪能出来る作品と言えるでしょう。

読み終わって、“心が暖かくなる物語”です。

1冊でミステリーと恋愛小説の2冊分楽しみますよ。

評価9点。オススメ!


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『翼 cry for the moon』 村山由香 集英社文庫 - 2002年11月02日(土)

 ショート委員長おすすめの普及委員会の作品です。村山さんは初読みだったのですが、抱いてたイメージと全然違うスケールの大きな物語です。
 トラウマを持った主人公真冬(マフィ)がニューヨークで過酷な運命に会い、そしてアリゾナの地へ・・・ 人間的に成長して行く姿を描いた秀作です。
 なんといってもブルースのキャラクターがとっても良く、物語を盛り上げてます。同性として憧れる面が多々あります。真冬に関しても、トラウマを持っていても強く生きようと言う姿勢(弱い部分もありますが)には胸を打たれました。

 ラストは賛否両論あると思いますが、私は良かったと思います。ティムのためにも・・・
 その結末により、読者に勇気を湧かせてくれる作品に仕上がったと思います。

 運命は逆らえないけれど、人生は自分で切り開いて行かなければならないとこの作品は教えてくれました。
 舞台をアメリカにおいてるということで、恋愛だけじゃなく家族愛や人種問題、あるいは冒頭の幼児虐待などの多様なテーマを読者に投げかけてくれていて、考えさせられることが多かったです。特に、後半のアリゾナにおけるネイティブアメリカンに関することはとっても印象的で、この作品のレベルを1ランク上のものとしているような気がしました。

 タイトルのつけ方も秀逸です、理由は読んでのお楽しみということで・・・

評価 8点。


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