015・もう一つの‥。

 
 円塔のレストランは昼食時、沢山のお客で賑わっていた。
最上階にあるレストランは、ライン河や中庭、劇場館などが見渡せる様に、ほぼ全面が窓になっていた。
 メインディッシュを終え、楽しい昼食もあとはデザートと飲み物だけとなった。
そんなおり、突然アルが、

「あれ?そういえばラインツさんがいませんね?」

 一同が”今まで気付かなかったのか‥?” と、呆れた事は言うまでもない。

「リハーサルで都合がついたらって別れ際に言ってたじゃないか」
「あはは、そうだったっけ」

 頭をかきつつ、照れ笑いをする。
さっきから、少し調子が狂ってる様だ。アル自身は気にしていないつもりだが、やはり、先程の事が心にどこかに引っ掛かっているのだろう。
しかし他の皆は、その些細な変化には気付かない様だ。実際、食事中普段と変らなかった。
一緒にいて知っているサーマスは、何となくそう思っただけだ。
 そこへ漸くデザートがやって来た。アルは喜々として、ソレに取り組む体勢を取る。
 またサーマスとは違って、アルを観察するのは、ピエトロだ。
食の細い彼は、アルの食べっぷりがちょっぴり羨ましいかったりする。美味しく食べれると言う事は、幸せな事だと思う。

「こうなったらぼくがラインツさんの所に行ってあげますよ!きっと寂しがってますよ〜」

 アルは食べながら、張り切って言った。
ピエトロはこれで何度目だろうと思いつつ、注意する。食べるか喋るか一つにしろ。
放っておけば良いのに。
 アルはすくっと立ち上がった。

「じゃ、ぼくライさんの所に行って来ますね!上手くいけばここまで連れてきます!コーヒーくらい一緒に飲みたいし」

 と言って、サーマスの手を掴んだ。不意を突かれて、引きずられて行ってしまった。

「えっ?オ‥オイ!なんで、オレが‥っ  つかケーキまだ残って‥」

 猪突猛進。



 同じ階のレストラン。ジェイムス達が居るテーブルから少しだけ離れたテーブル。一人の利発そうな女性が声を潜めて話す。

「これは私が独自に調べた情報なんだけど、このお城、色んな国の廃虚になった城などから、資材を集めて建てたらしいのよ」
「それはやっぱり、あれでしょう。資材費を安く上げよう、とか言う」

 眼鏡を掛け、ひょろりとした男性が呑気な様子で口を挟んだ。

「バカねぇ、掘り返したり許可取ったり、そっちの方が高く付いたりするのよ!そうじゃ無くて、資材にした廃虚の方に問題があるの」

 もう一人の、体躯のガッシリした男性が苦笑を浮かべつつ、言った。

「こういう時はな、黙って話を聞いてた方が身の為だぜ、ビンセント」

 眼鏡のビンセントと呼ばれた彼は、そうでしたねぇ、と相づちを打った。

「アレックス〜〜!!」

 どちらにしろ茶化された彼女は、怒りマークを顳かみに浮かべて、睨み見る。
アレックスは手を前に広げて、脅えた振りをしてみせながら、先を促す。

「おおっと。そんな事より、問題ってどんな事だよ、モーガン?」

 彼女の話に寄ると、資材に使った物の半数以上に、表には出ていない、怪しい伝説があるらしい。残りの場所にも、確認出来ていないだけで、何かがあるのかも知れない。
そして今回最も怪しい人物がここに居る事。

「ラインツ・レーンベルク。少し調べて来たんだけど、結構怪しい行動をしてるのよ」

 そこで、話を切って一息吐く。周りの話声に、意識が引っ掛かった。

『じゃ、ぼくライさんの所に行って来ますね!』

 ふぅん、ラインツ・レーンベルクの知り合い、かぁ‥。モーガンは思いを巡らす。

「あ、そうそう今回の私達の費用ね、草壁のケンちゃんから出てるのv。彼ももう来てる筈なんだけど‥」



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コメント。
今回はしろくまちゃんに助けてもらいました。それでも時間掛かっちゃったけども‥;;; ‥又ギリギリです(汗)‥しっしまったぁ!書きたい所まで書けなかった ちきしょう!!
五条猫。


 2007年07月25日(水)
 014・謎

 
「‥謎の部屋のガードマンは?」

 アルに言われてサーマスもはっと気付く。自分達が隠れていた時、カバーの隙間から見えたのは、マントの男と年配の男のものだと思われる靴だけだ。怪しい二人が出て行った後、その二人がいた部屋の入ったがその時はもう誰の姿もなかった‥。

「二人そろって見逃してたなんて事は考えにくい。‥隠し扉でもあってそこから出て行ったのかもしれないな」
「そういえばあのあやしげな部屋はあんまり調べなかったし‥あの部屋にならかくし扉くらいあったっておかしくないよね‥」

 そう、神妙な顔をして話すアルを見てにやりと笑い、

「‥あいつ人間じゃなかったりしてな」

 と、声をひそめてからかう。案の定アルは息を飲んで、心底嫌そうな顔をして叫ぶ様に言う。

「やめてよぅ〜!!もしそうだとしたらなんかますますあのマントの人がぁ〜」
「マントの男が?何だよ、心当たりがある様なこと言ってたけど、一体誰に似てるっていうんだ?」

 気になってアルを問いつめると "う‥" と口ごもって俯く。
上目使いで、うかがう様にサーマスの顔を見た。

「ど〜〜〜〜〜っしても聞きたい?」

 今度はサーマスが脅かされる番だった。ただならぬ(?)アルの雰囲気に多少引き気味になる。

「な‥何だよ、気持ち悪い奴だな!!言えよ!気になるだろ!!」
「う‥わかった‥実はね‥」

 重い口を開き、アルは話し出した。‥思い出すのも嫌そうに、スワッツヴェルダーと名乗ったヴァンパイアの事を−−−−−。
話を聞いている内にサーマスまでが、うんざりだと言う様に表情を引きつらせた。

「本当(マジ)かよ‥あのマントの男がそのヴァンパイアだってのか?」
「似てるってだけだけどね‥それも声しか聞いてないし‥」
「この場合確証が無いってのが唯一の救いだな‥。でも、もし、そうだとすると‥」
「そうだとすると‥って、何?どうしたの?」
「落ち着いて聞けよ‥もし、そうだとすると、オレが感知した魔力の事も説明が付く」

 謎の部屋のソファに触れた自分の手を、汚らわしい物の様に見た。

「黒魔術には違い無いが‥あんな薄っ気味の悪い感覚は初めてだったぜ。纏わり付いてくる様な‥なまあたたかい、ドロドロした血溜りに手を付いたの様な‥とにかく嫌な感じだった」

 しぃん‥とした静寂が部屋の空間を支配していく。

「まさか‥な」
「まさか‥ね‥」

 思いがけず辿り着いてしまった最悪の予想に、二人顔を見合わせたまま、ははは‥と力無い引きつり笑いを浮かべる。
ふと、時計が目に入った。

「そろそろ約束の時間だな‥行くか」
「そ‥そうだね!!そうしよ!!もうお腹ぺこぺこだよ−−」

 ムリヤリ元気づいたアルがそう言って二人同時に立ち上がると、アルのお腹がタイミングよく "ぐう〜〜" と鳴った。
ちょっと赤くなったアルが「えへへ」とテレて笑い、サーマスが溜息を吐いたのは12時丁度の頃だった。



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コメント。
4Pにわたってお子様コンビ書けてしあわせでございます。でもたいして進展しなくってごめんなはひ〜。次はラインツ出して〜!!
都大路しろくま。


 2007年07月11日(水)
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