日々妄想
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ジェイド誕生日話の元設定話。 別名義サイトで書いた一発書き小話を二つです。深く考えたら負けです
ガイが小さくなりました
「ヴァンデスデルカ!!ヴァンデスデルカでしょう!!」 その声の主に、ヴァンは瞠目する。 破顔して、ヴァンの名を呼びながら駆け寄ってくるその姿は。
「これはどうした事だ」 努めて冷静を装って問いかけるラスボスに、ルーク達は一斉に無言で青い服を纏う軍人へと視線を送る。 この微妙すぎる空気を全く気にかけることなく、快活に笑うと 「私の薬が原因のようですね」と悪びれもせずに言ってのけた。 世界の命運をかけた闘いが始まるはずだったというのに、今、ラスボスであるヴァンが胸に抱くのは5歳の幼いガイである。 しかもクスンクスン泣いている。 ヴァンの姿を目に捉えると、皆の制止の声をふりきってヴァンの向かって一生懸命駆けて、駆けて、そして、こけた。 それはそれは見事に。しかも手をつくこともなく、顔からこけたのだ。 刹那、キーンと耳鳴りが聞こえるくらいの静寂がエルドラントに満ちた。 そして次の瞬間、うわあああああん、と火がついたようにガイが泣き出したのだ。 「ガイラルディア様、大丈夫ですか」 幼少の習性とは恐ろしいもので、再現されたホドの光景の後押しもあり、ばっと光の速さでヴァンはガイに駆け寄った。 「いたいー、ヴァン、いたいよぉぉ」 「だ、大丈夫です。大丈夫ですから。今から治癒術をかけてさしあげますから、ほら、泣かないで」 背を丸めてあたふたとするヴァンを、どうしたものかとルーク達はその様子を見守るしか術はなかった。
「ガイが泣き虫っつーのは、本当だったんだな」 「泣き虫っつーよりは、すっごい甘えん坊だよね。髪切る前のルーク以上じゃん」 「子供ですのよ、仕方ありませんわ」 「あの頃の兄さんが戻ってきたようだわ」 「いやいや、微笑ましい光景ですねえ。ヴァン総長を神聖視しているオラクルの皆さん達に見せてあげたいくらいですよ」
治癒術をかけて傷は治ったが、それでもガイは泣き止まない。 仕方ないので幼いガイを抱きかかえてあやしながらの、問いかけが前述のものであった。 その姿はまるで親子のようで微笑ましいのだが、妙な怒りのオーラをヴァンが纏っているために、皆必死で沸き起こる笑いの衝動を抑えて頬を引きつらせている。 「最終決戦前にグミを食ってたら、ガイが急にボンって音と煙に包まれて、んで煙がなくなったらそこには」 「幼いガイラルディア様がいらしたというわけか」 「恐らくグミ袋に私の実験用の薬が混じっていたようですね」 「管理不行き届きすぎぬか、死霊使い殿…っっつ、ガイラルディア様、髭を引っ張らないでください」 「おひげー!ヴァンのお髭柔らかいー」 泣き止んだガイがご機嫌な様子でヴァンの髭を引っ張ったり、僧衣の飾りを弄り始める。 「…………」 「………プッ」 「…………ここは、後日、改めて仕切り直そうではないか」 「構いませんよ、こちらも戦力ダウンになっていますしね。さあ、ガイ、こちらに」 「やだっ、ヴァンデスデルカが知らないおじさんについていっちゃダメって言ったもん」 手を差し出したまま固まるジェイドの背後で、我慢できずにブブーっと盛大にルークとアニスが吹く。 「ちょ、ダメだよ、ルー…クっ」 「アニスだって…わらって……クックク」 「ガイラルディア様、あちらには私の妹のメシュティアリカがおりますので、安心してください」 チラリとガイはティアを見るが、すぐさまヴァンの胸に顔をうずめて「やだ、ヴァンがいい」と一蹴する。 「……参ったな」 「薬の効能はそう長くは続きませんよ」 「ならば、元に戻ったら直ぐ様そちらに戻すことを約束しよう。では、とりあえず行きましょうか、ガイラルディア様」 「うん!ねえ、ホットケーキ作って!ヴァンのつくるお日様ホットケーキ食べたい」 「ちょっ!!ガイラルディア様、しーっ、それはシーッ!!」 幼いガイの口を塞ぐと、脱兎の如く駆けていくヴァンの背を皆で無言で見送る。 「総長がホットケーキだって」 「しかもおひさま?なんだそれ」 「チョコペンでニコニコお日様をかくの。ああ、昔の兄さんが戻ってきたわ」
数時間後 「俺、どのツラ下げて戻ればいいんだ」 見事に身体は戻ったが、その時の様子を詳細に聞くと、ガイは手で顔を覆って、しくしく泣いた。 目の前にはホットケーキが数枚積まれている。 「ガイラルディア様、それは私もです」 幼いガイにせがまれてエプロンどころか三角巾までつけたヴァンが沈痛な面持ちでこぼした。
もう世界なんてどうでもよくなってしまったヴァンであった。
地下のアッシュ 「俺達の総長に隠し子が!!!」「神はいないのか!!!」 一斉に剣を放り出しておいおい泣き出したオラクルに戸惑っていると、扉がシュンと音を立てて開かれる。 「お、いたいた。アッシュー、師匠との闘い延期になった」 「延期だと!何ぬかしてやがる!運動会じゃあるまいし!」 「仕方ねーじゃん。ガイがちっちゃくなってさあ」 「はあ?ガイに何があった!はっきり説明しろ」 こんな感じで元気。
終
そしてその前
「うっひょー、ちっちぇー」 ちいさくなったガイをルークは脇に手を差し入れて、抱え上げる。 「かりぃー」 抱え上げてぐるぐる回して、満足して大理石の床に下ろすと、次は自分が腰を落として片膝をつく。 「俺が屈んでおんなじくらいか」 掌を自分の髪の天辺に触れながら測る。 「ルーク。ガイはあなたのおもちゃではありませんのよ」 「あーあ、ありゃ相当浮かれてるね」 「ルーク、いい加減になさい」 「背の低い劣等感から開放されてご機嫌なんでしょう。放っておきなさい」 ナタリア達の諌める声は右から左に流れたが、最後のジェイドの言葉だけはしっかり耳に残ったらしく、ルークはくるりと振り返る。 「うるせー、いっつも見下ろされてきた俺の気持ちがわかるかっ」
事の起こりは、セーブポイントで決戦前という事で体力気力を回復すべく皆でグミを口にした。 その時、何故かガイが小さくなったのだ。 ジェイドの試験薬のせいらしいが、張本人は涼しい顔をして「おやおや、大変な事になりましたねえ」と他人事であった。 小さくなったガイは、記憶もそのまま幼少児のものになっているらしく「え?え?お兄さん、お姉さんは誰?」と言った具合だ。
ルークのはしゃぎっぷりに驚いてなすがままであったガイが漸く状況に慣れてきたらしい。 少しもじもじしながら、こわごわとルークの髪に触れる。 「あかい…かみ」 「へっ、ああ、まあ、赤いな」 「赤い髪の人、ぼく、初めてみた。綺麗だね」 髪を一房掴んだまま、少しはにかみながら、幼い口調で話す。 「そっか、ルークの赤毛は珍しいもんね」 「キムラスカでも希少ですもの。マルクトならば尚更ですわね」 「…ルーク、あなたどうしたの!震えているじゃない」 幼いガイの肩をがしっと掴んで、ルークは俯いたまま肩を大きく震わせている。 「………ぃぃ」 小さく震える声に、女性陣が聞き漏らすまいと近寄る。と、同時にルークは顔をがばっとあげる。 「かわいいなぁぁぁ!!ガイ、お前はこれからずっとこのままでいろ!これ、命令な!」 「ルーク!馬鹿な事を言わないの!!」 「そうですわ。ガイとあなたは、命令とか、もうそのような関係ではなくなったのでしょう」 「ナタリア〜、突っ込むところが違うよ」 「だってさ、今まで俺はガイの世話になってきたわけだろ。これからは俺がガイの面倒をみてやるんだ。 風呂もいれてやるし、ごはんも食べさせてやるし、歯も磨いてやるし、寝る前は本を読んでやるし、おねしょも隠してやるし」 立ち上がって女性陣に対して力説するルークに、アニスがニヤニヤと笑う。 「へー、おねしょ、かくしてもらってたんだ」 「ちがっ、こ、こ、言葉のあやって、やつだ!!」 「薬の効能時間は限りがありますよ。それよりも宜しいのですか。あの先にはヴァンがいるはずですが」 その言葉にばっと弾かれたように階段をみると、一段一段のぼっているガイがそこにいた。 「うわああああ、ま、まずい!つーか、ジェイド、あんた見てないで止めろよ!!」 「子供はどう扱ってよいのか」 と笑って肩をすくめてみせる。 「まて、まてええ、ガーイ!!そっちはだめだああああ」 ルークの絶叫がエルドラントで再築されつつあるガイの屋敷に轟いた。
終
| 2010年11月28日(日) |
更新 別館アビス 裏 |
昨日更新しました。というか、別名義サイトでも同じのをあげています。 今月こちらを更新しないままだったので、つい… あっちはえろすオンリーなので、こっちに持ってくるのは勇気が入ります。 私のえろすは色々変態すぎる。
先走りマイソロ3妄想
そして俺達は旅に出る アッシュ編
一礼して部屋に足を踏み入れたガイに、憮然とした面持ちのアッシュの鋭い叱責が飛んできた。 「遅い!」 「申し訳ございません、アッシュ様」 頭を下げて謝罪を口にするガイに、ますます眉間の皺を深く刻む。 「呼び捨てにするように言ったはずだ。はっ、身分を伏せて旅をするのに、今からお前がそんな調子じゃ先が思いやられるな」 目の前の王子の地雷はそこかしこに埋まっていて、うっかり踏んでしまえば毒が混じった叱責がすかさず飛んでくる。如才なく立ち回れるガイでさえ、アッシュの扱いにはかなり手を焼かせてもらっている。 大人しく、はいはい、と流せばいいと理性では認識している。だが、思わず反論をしたくなる衝動を抑えきれないでいる。 ルークの時は、さらりと流せることも、アッシュ相手だとつい引っ掛かりを感じ、嫌味で返したくなる。 「……ですが、今は城内です」 そのガイの精一杯の反抗をフンと鼻で笑う。 「屁理屈を抜かすな」 「……アッシュ、人目があるんだよ。こっちは悲しい宮仕えなんでね。隙あらば足を引っ張ってやろうと手ぐすね引いているような連中ばかりだ」 はあっとガイはみよがしな溜息と共に、アッシュが望むような砕けた口調で本音を零す。 王子の前で溜息つく行為だけでも不敬と騒ぎ立てられる城内だ、慎重にならざるを得ないのもわかってほしい。そうガイが胸の内だけで愚痴る。 「そこで足を引っ張られるなら、お前はそれだけの器だという事だ」 「手厳しいねえ」 やれやれとまた溢れる溜息と共に肩を竦める。そしてガイは毎度このやり取りに困惑する。 共に旅をすると命が下った後、ガイは頻繁にアッシュの私室へ呼び出される事となった。 ある時は「俺はあいつと違って甘くねえからな」と延々ルークとの違いを一方的に話され、ガイの我慢がブチ切れそうになるくらいにルークをけなしてみせたり。 ある時は「お前が俺の護衛として相応しいか判断する」と一方的に剣の勝負やら、一般教養問題を解くように命じてみたり。 最近のアッシュのブームは「タメ口」にあるらしく、ガイに執拗に「タメ口で話せ」と強要する。 愛想など微塵もなく眉間に深く皺を刻み、いつも憮然とした面持ちで腕を組んでいる相手にタメ口で話すのは、ガイにとって相手が王子というだけでなくかなり気の重い事だ。 ルークやガイの失態に口の端を皮肉げにあげ微笑う事はあっても、普通に笑った顔など見せてくれた事もない。 一使用人をネチネチとイビッて何が楽しいのかさっぱりだが、アッシュ付きのメイドから「ガイが顔を出すようになってアッシュ様の機嫌が凄くいいのよ」と感謝された事を考えるに、少なくとも憂さ晴らしの相手にはなっているらしい。 旅先でもこんな調子なのかねえ、とそっと溜息をつく。
「あいつ、旅の支度を自分でするって宣言したらしいがもう終わったのか」 アッシュがあいつ、と指すのはルークの事だ。 「まあ、なんとか、な」 俺が手伝ったのは内緒だな、と思うガイの胸の内を読んだように 「どうせお前が全部やったんだろ」と皮肉交じりに吐き捨てられる。 メイドが運んできた紅茶を口に運びながら、ガイは「ジェイドといい、アッシュといい。俺の行動はそんなに分かりやすいのか」と内心でがっくり肩を落とした。 「まあ、ルーク様も必要に迫られればこなしていきますよ」 「おいっ!」 「あ、…わりい。気を抜くとすぐこれだな」 後ろ髪を掻いて苦笑いをするガイに、アッシュは眉を顰める。 俺相手に気が抜けると、あの口調になるって事か。 ズキリと胸の奥が痛む。
いつでも両親は俺達を平等に扱ってきた。常に同じ物を等しく与えてきてくれた。 だけど、世の中、一つしかないものはある。 それは、王冠であったり。 そして、それは。 昔の情景が蘇る。 ルークが「父上、ガイを俺付きにしてください」と上申しているのをみて、僅かに遅れて負けじと「父上、私もガイのような年の近いものを傍に仕えさせたいと考えております」と乞うた。 父の手はルークの頭上に置かれ、ガイはその日からあいつ専任になった。 一つしかないものは、全てあいつのものになるのだ。 そのくせその僥倖にひとつも気づいておらず、ただ享受するだけ。
「今度気ぃ抜いたらおぼえておけよ」 「物騒だな。何する気だ」 理不尽な事をまた言われるのかと、思わず身構えるガイの後頭部に指を差し入れると、ぐいっと引き寄せて唇を重ねる。 すぐさま離すと、常と変わらない不機嫌な顔で 「唇を塞ぐ」と答えた。 一瞬の出来事は現実感を伴わず、「え、あ、え?」と目を瞬かせるガイの様子に、初めて柔らかく笑ってみせた。
終
はじめてまともなアッシュガイを書いた、と思います。 毎回アッシュが不憫なので申し訳ない。
| 2010年11月27日(土) |
先走りマイソロ妄想 小話その1 |
ゲーム情報サイトさんで、アッシュの項目に「ガイとヴァンと修行に〜」の文字に激ったのに、すぐヴァンの文字が消された時に嘆いて、そして先走って別名義サイトで書いたもの。
ルーク編、ジェイド編、アッシュ編でしたが、ジェイドはどう考えても蛇足なのでルークとアッシュだけこっちに。 アッシュはちょっと書き換えたいので、ルーク編のみ。明日あたりにアッシュ編をあげたい。 何故急に動き出したかというと、マイソロ3公式サイトにルークが出てきたから!!!長髪だったからー!!!ルーク、好きだぁぁぁぁって想いが激って仕方ないから。んな感じです。
そして俺達は旅に出る ルーク編
どうしたものか、と天井を仰いで溜息ひとつ。 ガイやアッシュが持っていたリュックは実は魔法のリュックなんじゃないだろうか。 そんな子どもが思いつきそうな事を考える程に、ルークは困っていた。 「やっぱ頼めばよかったのかなあ」とひとりごちる。 いや、んなカッコわりぃ事出来るわけない、と直ぐ様その考えを振り払うように、頭を軽く振ってから、再び取り掛かる。 所謂「旅の支度」に。
見聞を広めるために、双子の弟と、そして自分の護衛騎士でもあり親友でもあるガイと共に修行の旅に出ることになったルークだが、その旅立ち前に躓いていた。 今まで黙って立っていれば衣服を着させてもらっていたため、まずはボタンを留める練習から始めたほどルークは世間知らずだ。 それもそのはずで、ルークは所謂「王子様」というやつだ。しかも第一王子である。 そのため、自分で身の回りの支度をする事など一度も経験したことがなかった。 ただこの国では、王になる前に、試練が課される。それが修行の旅だ。身分を明かさずに、少なくとも一年は国中を回らなければならない。 ただ、身分を伏せているとはいえ、腕のたつ護衛騎士をつけ、そして王子達が回るルートは事前に各都市に知らされているため、きつい試練というわけではない。 盗賊や強盗は事前に、王子たちには秘密裏に軍が出動し殲滅させている。ただ、魔物だけは殲滅は難しく、そのための護衛騎士である。 三人で旅をするのは初めてで、そしてこれでようやく一人前と認められる旅ということで、ルークは俄然張り切った。 だから用意しようとするメイドに告げたのだ。 「これくらい俺一人でやれる」と。 双子のアッシュはとうに支度を済ませている。あいつに出来るんだから、俺にも出来るに決まっている。 そんな根拠のない理由で手伝いを拒んだ事を、今、ルークは凄く後悔している。
そんなルークの耳を震わせたのはガイの声だった。 「準備手伝ってやろうか」 窓の向こうから「何もかもわかってるぞ」という表情で立っているガイが救世主にみえた。 だが、素直にその提案に飛びつくのも躊躇われる。なにせガイはルークを事あるごとに子供扱いするのだ。 それがルークには面白くない。 この事も間違いなく「子供みたいな意地はるな」と軽口を叩くに違いない。それが癪にさわるのだ。 「いーよ、もうすぐ終わるから」 終わる気配など全くみせていないが、ルークはつい意地を張る。 「そっか、そりゃよかった」 そう言いつつ、窓枠に手をかけると、ひらりと音もたてずに室内に飛び入る。 チラリと散乱した衣服をガイが一瞥する。小言がくるか、とどこかで腹をくくったルークに、ガイは 「ま、そうだな。じゃ、アドバイスだけはしてやるよ。シャツは、ほら、こうやって丸めるとかさばらないだろ」 インナーをひとつ手にとると、器用にくるくると巻いていく。 翡翠の双眸は、その動作に釘付けになり、少し開いた口は、声に出さないものの「おおー」と感嘆の形だ。 「旅では洗濯するから、ここまでは必要ない」 せんたく?せんたくってなんだ?と思いながらも、とりあえず服はそこまで必要ないという事なのだとわかり、ルークは素直に頷く。 「ただタオルは数枚は持っておけ。獣を斬った後は剣についた血と脂を拭わないといけないからな」 タオル、そうか、タオルだな。と胸の中で密かにメモをとる。 「そして、ここが一番のポイントだぞ。よく聞いておけ」 なんだ?とずいっと身体ごとガイに寄せる。 「お前が家が恋しくなった時に必要だから、何か大事なものを持っていけよ」 「……ばっ、ばっか!恋しくなるかっ!」 「というのは冗談だが、でも一つでも思い出のあるもの持っていると、結構心強いもんだぜ」 「……ねえよ」 「そうか?昔はお気に入りのぬいぐるみを抱かないと眠れなかったじゃないか」 「おっ、おい!いつの話だよ!」 ははは、と笑いながら、ガイの手はさっさとルークのインナーやシャツをどんどん綺麗に丸めていく。 あとはリュックに詰めるだけ、の状態にまで整えられていた。 「あ、悪いな。説明するだけのつもりが、手が勝手に動いちまった」 そういって、眉尻をさげて笑ってみせるガイに、内心感謝しつつもぶすっと膨れてみせて「ちぇ」とうそぶいてみせる。 「俺はこれからアッシュ様のところに顔を出してくるから、お前はその間、タオルの用意しておけよ」 そう言うと、背を向けて、また窓から去ろうとするガイの服の裾をギュっと掴む。 鋭角にきりとられた裾は掴みやすい。 「っと、なんだ、まだアドバイス欲しいのか」 「そうじゃねえよ、お節介ガイ。わりいな、助かった」 ガイが背を向けてくれているなら、素直に言葉に出来る。 いつからこうなったのだろう、面と向かって礼を言うのが照れてしまって、つい憎まれ口を叩いてしまうようになったのは。 その憎まれ口さえも笑ってガイが許すから、俺がこんなにわがままになったんだ。 そんなルークの胸の内などガイは十分把握しているのだろう。振り返りもせずに「俺が好きで勝手にやった事だ」そう言葉を返す。 城が恋しくなる時なんて絶対来ない、とルークは思う。 大事なものは、今、この手の先にあるのだから、と。
終
9月上旬くらいに書いていた。ははは、先走りすぎだろうって話です
| 2010年11月22日(月) |
ジェイド誕生日おめでとう小話 |
別名義サイトでガイがグミを食べて小さくなった話を書いたのですが、その設定で。
CPなし。ジェイドとピオニーとルークとガイ
蒼と白で統一された長い回廊を二人で並んで歩く。 「嫌な予感がしないか?」「俺は陛下の私室の扉叩くたびにその予感に襲われている」 ルークはガイの肩をポンポン叩いて 「お前、ほんっっっとうに苦労してんなあ」と同情の視線と言葉を送る。 部屋付きメイドは今日は下がらせているようで、二人は誰に案内されるわけでもなく自ら扉を叩く。 名乗る前に中からご機嫌な様子で「ルークとガイラルディアだろ、入れ」と声がかかる。 その言葉に益々予感が確信になっていくのを二人で感じて、顔を見合わせる。 同時にため息をついてから扉を開く。 そして、そこには。
「ほーら、小さなジェイドだぞー」
まるで自分の甥っ子を紹介するように、少年の両肩に手をおいて、二人に紹介をする。 ご機嫌な様子のピオニーとは対照的に、絶対零度の表情で無言で立っている少年。 髪は短いし、胡散臭いと称される笑顔もないが、赤い瞳で興味なさ気に一瞥をくれる少年は確かにジェイドその人であった。 「ほら、ガイラルディアが小さくなって世界は救われただろ。なんだったか、おひさまホットケ」 「うわあああああ、もうそれ思い出させないでください、お願いですから」 ピオニーの言葉を遮って慌てふためくガイの様子をみて、ルークは気の毒そうにため息をこぼす。このネタで毎日のようにからかわれてんだろうなあ。 「そのグミ面白いなあ、って思ってさ。ジェイドのところから一個くすねたんだ」 とてもとても皇帝陛下のする事じゃありませんよ、とルークとガイは胸のうちだけで突っ込んでおいた。 「よくあのジェイドが食べましたね」 ガイの疑問にピオニーがしれっととんでもない事を言い放つ。 「ここ数日ハンパない仕事量与えて、徹夜明けで思考が鈍っている時に「グミでもくえ」って無理やり食べさせたら簡単にいったぞ」 ひぃぃぃぃ、と声にならぬ悲鳴をあげてガイとルークは二人で手を取り合う。 「薬の効能はどれくらいだった?」「覚えてない、気づいたら目の前にホットケーキが」「俺、絶対ジェイドが戻った時に居合わせたくない」「それはおれもだ」 とひそひそと声をひそめて話す二人に、ピオニーがとんでもないことを言い出す。 「そしてお前たちを呼んだのは、小さいジェイドの話し相手になってやってくれ。俺はどうしてもはずせない用事があってな」 「えっ」「は?」 二人同時に声をあげる。 「メイド達よりも、気心しれたお前たちの方がいいとおもってな」 「気心って。この時代のジェイドと俺達は全く関わりがありませんよ」 「戻った時の事だ。あいつ、絶対怒るからな」 からからと笑ってみせると、じゃ頼むな、と言って部屋を出て行く。 パタンと閉められた扉をじっと見つめ、ピオニーの尻拭いを押し付けられた事に、二人は深く深くため息を同時に零す。 ただそう絶望視していても仕方ない、そう考えたルークが先ほどから抱いていた疑問を口にする。 「なあ、あのグミでガイは5歳ちょい前くらいに戻ったけど、こっちのジェイドはもっと大きいよな」 「そうだな。大体10歳ってところかな」 「何が違うんだろ。元の年齢かな」 彼らのよく知る方のジェイドが耳にしたら、にこにこ笑顔で意趣返しが待っていそうな事をルークは言い放つ。 「さあ、どうだろう。あの後、趣味で研究をすすめていたようだから、ジェイドが口にしたのは改良品かもしれないぞ」 「ジェイド・バルフォア。赤いのと、そっちの黄色いの。名前は」 二人の会話を遮るように、これ以上にない簡潔な自己紹介をし、そしてそっけない口調で二人に自己紹介をしろとせまる。 それに、はっと気づいて、慌てて笑顔を取り繕いながら 「ガイラルディア・ガラン・ガルディオスだ、よろしくな、ジェイド」 「ルーク・フォン・ファブレだ。えーと、なんか照れるけど、よろしくな」 と手を差し出す。 差し出された手に一瞥をくれるだけで、少年ジェイドは手を差し出さずに問いかける。 「ガルディオス伯爵家縁の者と、ファブレという名とその赤い髪、キムラスカの公爵家の息子、というところかな」 所在なさげな手を下ろして、まあそんなところです、と少年の雰囲気に圧倒されて二人は応える。 「そう、じゃ、ガイラルディアにルーク。煩いからおしゃべりなら向こうでやってくれないか。 今の僕と未来の僕との差異を見つけてあれこれ騒がれるのは、煩わしい以外のなにものでもないからね」 無表情のまま冷たく言い放つと、手近な椅子に腰をおろして本をひらいて読み始める。 その勢いにおされた青年二人は「はい、すみません」と叱られた子どものような有様であった。
ジェイドの指す向こうで二人は身体を寄せ合って 「おれ、あの胡散臭い笑顔を懐かしいと思う日がくるとは思わなかった」 「それは俺もだ」 とこそこそと愚痴りだす。 愛想の欠片もなく一貫して他を拒絶する態度に、二人は戸惑いを隠せないでいる。 その二人の背に向かって 「キムラスカの貴族があいつの私室に出入りできるって事は、両国は友好関係にあるの」 と問いかけられる。 おおっ、なんか知らないが急に向こうが歩み寄ってきたぞ、と二人は笑顔で振り返る。 「ああ、そうだ。ピオニー陛下は即位後から両国の和平に向けて積極的にはたらきか」 「へえ、あいつがね」 ガイの説明を遮って、皮肉げに、どこか小馬鹿にしたように言い放つジェイドにルークは戸惑う。 「陛下とジェイドって昔から仲良いんじゃないの?」という疑問をルークは口にする。 「僕とあいつが?さあ、どうだろう」 そう言うと、もう話は終わりだ、とばかりにページを捲りはじめる。 意識は目の前の文字を追うことに注がれ、ルークとガイの存在は忘れ去られたようだ。 少年ジェイドの言葉に不安そうに顔を曇らせるルークとは逆に、ガイは込み上げてくる笑いを必死に抑えている。 ぐいっとルークの腕を掴んで部屋の端に引っ張っていくと「仲良いよ、あの二人は」と確信に満ちた様子だ。 それにルークは首を傾げる。 「ただジェイドは昔から、『ツンデレおじさん』なだけだって事さ」 その言葉に益々??なルークに、ガイは笑って見せる。
するとその時、扉が叩かれる事なく開かれる。三人の視線が一斉にそこに注がれる。 「おーい、用意できたぞー」 カラカラとワゴンをこの国の皇帝が押している。慌ててガイが駆け寄って「俺がやります」とかわる。 じゃあのテーブルまで頼む、とピオニーは少年ジェイドに笑顔を向ける。 「お、良かった、まだ小さいままだな。ほら、こっちこい」 手をふって招くと、少年ジェイドはこれみよがしに嘆息してから本を閉じる。 ワゴンの上に半円型のカバーをとると、そこにはホールケーキがあった。 「え?」 思わず驚きの声を漏らしたガイに、ピオニーが笑う。 「今日はこいつの誕生日なんだ」 「え、そうなの?ジェイド」 ルークが緑の双眸をまん丸にして問いかけると、言いにくそうに「ま、まあ、そうだけど」と初めて子どもらしさをのぞかせる。 「で、実は甘いもの好きなんだよな。さ、ろうそく立てて祝ってやろうぜ」 ピオニーの言葉にガイは頷くとケーキにろうそくをたてる。 少年の年齢でいいのか、それとも実年齢の方が良いのか迷うが、用意されていたろうそくをとりあえず全て立てておく。 マッチを擦って、火を灯していく。 「火を消す前に願い事考えておけよ」 とピオニーがジェイドの背を軽く叩く。ジェイドは眉を顰めるが、すぐさまケーキに向き直ると、僅かの間じっと見つめてからふーっと火を消す。 パチパチと皆が手を叩いて「おめでとう、ジェイド」と声をかける。 「生まれた日というだけで、めでたくはないと思うけど」と皮肉に返すが、ルークも先ほどのガイの「昔からツンデレおじさんなだけだ」の言葉が漸くわかってきたらしく、気にした様子もない。 取り分けましょう、と使用人生活の長かったガイが手際よくケーキナイフを入れて取り分けていく。 ジェイドのケーキの上には「ジェイド誕生日おめでとう」とチョコペンで書かれたプレートがのせられている。 「子どもじゃあるまいし」と言い放つジェイドに「えー、今お前子どもだろ。なあ」とピオニーが鷹揚に笑う。 しぶしぶという風にジェイドはそのプレートを手にして口にする。 美味しい、と初めて笑顔をみせた時、ボンと煙と音が少年ジェイドを覆う。 煙が消え去った時にいるのは、当然、ジェイド、その人である。 手にしたプレートをみて、それから顔面蒼白になったルークとガイに視線を送り、最後に部屋の主を見据える。無言で。 部屋の空気が硬化したのをガイ達は感じた。 だが「やーい、お前もとうとう俺と同じ年齢だな」とからかう言葉を真っ先に口にしたピオニーを、ルーク達は深く深く尊敬し、これから先におこるブリザードをどう避けたものかと考えを巡らせた。
す、すみません。拍手コメに長々気づかないままでした。申し訳ございません。
11月6日にメッセージをくださった方へ
返事が遅くなってしまって本当に申し訳ございません。 ハロウィン話を読んでくださって有難うございます。 過去の情景は、ガイの「はじめてのおつかい」みたいなもので、兵士さんたちはあのカメラマンの如く木の影でガイの一挙一動にそわそわしていればいいなあ、とか、マリィ姉さまは心配で心配でずっと玄関で帰りを待ち続けそうだ、とか。 トリック・オア・トリートは、イベントを満喫できるように、皆が幸せに暮らしていればいいなあっていう願いもこめています(笑 ガイのおうちは結構人気なので、子どもたちは皆最後はガイの家!って感じで回っていればいいなあ、とか、ルークが子どもたちに混じったあたりの会話も頭の中で妄想しているので、いつか小話でいいのでかければいいなあ、と思っています。 ED後は、ガイも皆も幸せだったらいいなあ、という想いだけで書いているので、嬉しくなりました、とおっしゃっていただけて凄く喜びました。有難うございます。 メッセージを本当にありがとうございました。気づくのが遅くなって本当に申し訳ございませんでした
| 2010年11月01日(月) |
たまにはちゃんと日記を書いてみる |
10月最後の週は水曜日からお花、お花、とにかくお花の事で頭がいっぱいでした。 バザー品作ったり、花の展示品を作ったり、水やりいったり、バザーの店番したり、撤去しにいったり。 すっごく疲れました。 で、今日はそのバザーで収益がでたので、みんなでランチに行ってきました。 美味しかった。パスタランチうまうまー それからパンのオススメのお店教えられて遠出してみたものの道に迷って大変でした。 でも、これでお花ででっかい事は当分ないから、のんびりできます。
あ、あと、ガイルクガイサーチさんにルクガイサイトで登録させていただきました。 よろしくお願いします。
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