恋文
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一度 全部 空っぽにして 拾いなおしてみよう
いつのまにか 紅くなった木々 息をつく
萩の花が 落ちて
土に やわらかい みどり
不思議に明るい空
こんなに まぶしかったかしら
すっきり晴れた空 ベーカリーから漂ってくる パンの匂い きんもくせいの香りとまじって お菓子のよう
雨を
香り 眺め 聞く
しっとり 濡れる
雨の中を走る 車の音が 海鳴りのように 響く
夜が更ける
朝の通りにも 夕方の公園にも 香りがみちている
霞んだような夕焼け 通りもくすんでいる
悲しい夢ではないことを信じて 眠る
鴨が飛び立っていった
川べりに じゅずだまの実が 硬かった
一日を 過ごすこと
ついてくるものと 一緒に
心地よい 夢をみていて 目覚めを 遅らせる
風をうけて 光が冷める
新幹線から 見ていたけれど
富士山は ずっと雲隠れ
くすんだみどり 雨の田園
彼岸花が 灯りのように
歩いてゆけるところに 自然がないって
こころが つまる
住めば都というけれど いまだなお 懐かしい かつて住んでいたところ
確か金木犀だと思っていた 公園の木から 香りがしない 花のない 影のように
窓のブラインド越しに 見える空の縞模様 今日は 灰色
やがて 朝になる まだ暗い部屋のなか 影といっしょに 沈む
夢を反芻する 時間は静かに 滞る
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