恋文
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2008年11月30日(日) 行く先など

いじけようが、拗ねようが。
いずれ時は過ぎてゆくではないか。

知らない未来は 誰にも 知られようがない

遠くに、なんにもなかったら。
なんだか探してみよう。

探してなんにもなかったら。
その時には、不貞寝でもしてみようか。

不貞寝をしているあいだにも。
どんどん、時がたっていって。

いずれにしても 未来は知られないままで

黴がはえたからといい。
だれに文句がいえようか。

もう一回でも、何度でも。
起き上がるしかないではないか。


2008年11月29日(土) 息切れ

どこまで
いっても

どこに
たどりつくのか

わかんないもん

鐘のおとは

知らないところ


2008年11月28日(金) 冬の道

太陽も
凍えている

まっすぐ
見つめても
白い

枯れ果てた
小道に
鳥の声もない

じぶんの
息だけを
たよりに
歩いている


2008年11月27日(木) 廃城

遠くまで
白く かすんで

取り残された
石組みに

もう ひかりが
冷めてゆく

鳥の声も
ない


2008年11月26日(水) 夢でなくとも

さまよっている
うちに 

いつか

覚めても
同じ くらさ


2008年11月25日(火) 後ろ

少しづつ
遅れてゆく

同じような
毎日なのに

からだひとつ
後ろに

いる自分


2008年11月24日(月) 寒さ

どこか
はずれているような
いちにち

どこからか
焚き火の
においがする


2008年11月23日(日) 冬日

小さなともし火のように
赤い実がなっている

葉を落としてしまった
木々の向こう側が
遠くまであかるい

夏に白く光っていた
道を今日も歩く

道はまだ
まっすぐに白い


2008年11月22日(土) 木枯らし

凍えるような
風に
木々は
ざわざわと鳴る

かすかに
遠くから
鳥の声


2008年11月21日(金) ともし火のように

目を閉じたら
うかぶ

どの町にも
あった
街灯のしたの
ちいさなあかり

いつの時にも
あった


2008年11月20日(木) 雪を待つ夜

鈍色の空も
隠れてしまい

わずかな
灯りのなかを
歩く

頬に ふれる
しめった風


2008年11月19日(水) 一日の終わり

いくつかのことを
思い
いくつかのことを
忘れ

なにも変わらなかったとしても
一日は終わる

思ったよりも
変わってしまたかも
しれない


2008年11月18日(火) 雨あがり

曇りガラスの
向こう側にも
ちゃんと
世界はある

雨のあがって
水溜りに
街灯のひかりが
きらめいている


2008年11月17日(月) 休息

空の色も
町の色も
おなじ灰色

わずかに残った
木の葉も
やがて落ちる

休息の時


2008年11月16日(日)

霧のような
雨がふる

空をよぎる
架線に

影絵のように
鳩が 寄り集り
並ぶ

一羽 飛びたち
また 誰か
やってくる

ふたつ
白い鳩がいる
黒い列の 
真ん中


2008年11月15日(土) 歌う

もう きっと
逢うこともない

その 歌声を
くり返し
よみがえらせる

そうして まだ
歌えるよ

どこまでも
続いているから


2008年11月14日(金)

満ち足りていた
眠りのあと

脚は まだ
熱を おびて

差し出す
暗闇のなか


2008年11月13日(木) 夜のしじま

とぎれない
今日があったと
いうこと

また 明日に
つながるであろうと
いうこと

思いを馳せる


2008年11月12日(水) たそがれ

見知らぬ人々が
たたずみ
歩き

町の風景も
いつか
知らない

どこに続く
この道


2008年11月11日(火) 落ち葉

渦をまいて
落ち葉が
舞い上がる

やがて 雨が
なだめてしまう 

濡れたままの
落ち葉


2008年11月10日(月) 紅い実

すれ違う
誰も
知らない
顔のまま

道は 白く
ひかっている

枯れてゆく
草むらに

まっすぐ
立っている
一本の木に

紅い実が
ついている


2008年11月09日(日) 午後

足元に
落ち葉を
踏んで

傾いた
陽のひかりが
もう
冷めてゆく

特別ではない
一日の午後

いつまで
こうして
いられるだろう


2008年11月08日(土)

向こうがわに
ゆきたい
わけではない

岸辺に 
打ち寄せる
波を 見ている

ずっと 遠いように
思った
向こう



2008年11月07日(金) たそがれ

もう 夢のなかに
帰ってきてしまったのだろうか

だれも かれも
わからない
うすくらやみに

いつしか
遠ざかっていった
音さえも


2008年11月06日(木)

夢のなかに
閉じこもって
いられないから

起き出す
まだ 夢のように
くらい


2008年11月05日(水) 行く先

振りかえって
はじめて
物語になる

いまは ただ
行く先を
見つめている


2008年11月04日(火)

霧のなかをゆく

いつか
晴れたとき

どこに
立っているか
わからないとしても


2008年11月03日(月) 流れ

明けてゆく
空は まだ群青色

川面に 波が
わずかに 光る

また 一日が
はじまる


2008年11月02日(日) 流れ

流れてゆく

かたちは
もう
かたちではない

水底で
ゆらり ゆれる
ひまもなく

そんなに 早い
流れのなかに


2008年11月01日(土) そのまま

なにも
かわらない

なにも

過ぎて ゆけば
いい

そのまま
わたしは
いるだろう


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