恋文
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2007年10月31日(水)

霧は
音を吸い込んでしまうのだろうか

夢のなかに
入り込んでしまったような
気がするのは
そればかりではない

見るもののかたちが
うすれて
とけてゆく

忘れてゆく 途中なのか
思い出す 途中なのか
それも
さだかではない


2007年10月30日(火) 雨のなか

秋の葉は
雨に濡れている

舗道に
散っても
また

けむっている
林のなか

けものたちが
落ち葉を踏むように

町のなかを
ひそやかに
歩く


2007年10月29日(月) 秋の日

あなたは どこに
隠れてしまったのでしょう

木々は だんだん
葉を落として

影は もっと
はっきりと
照らし出されて

どこにも
隠れるところが
ないはずなのに

朝の靄のなかから
出てはこないのでしょうか



2007年10月28日(日) いちにち

ここが どこであろう
いちにちは
あたりまえのように
過ぎてゆき

秋の木々は
すっかり
黄色や 赤にそまり

舗道も 草地も
散らばった
葉っぱで 覆われて

またも 知る

繰り返す
その いちにち


2007年10月27日(土) 壊れる

いつに
どうにでも
壊れてゆけるかと

できるかもしれない

かんたんに
お酒があれば

壊して
しまおうかと

思わなくても

いま 酔っ払いは
そんなことを
考えている


2007年10月26日(金) お祭りの前

いつの間にか
広場には
遊具が設えられて

まだ動かない
それらは
何もなかったのと
同じように
佇んでいる

灰色の空に
なじんでいる


2007年10月25日(木) 最後の記憶

遠く離れた
その国で
いま 何が起こっても
知らない

最後の
記憶をとどめて

雨の朝に
つながってゆく


2007年10月24日(水) 風の夕

木の枝が
おおきくたわんで
揺れる

鳥のはばたきが
聴こえるように

葉が 揺れて
さざなみを
見ているように

夕日が
照り返す


2007年10月23日(火) 夢のあと

かなしい夢のあとに
目がさめる

夜は まだ
明けない

風が ブラインドを
鳴らし

月は 白々と
ひかりを投げているだろうか

ベッドを 抜け出してみる

夢の世界が
もう終わってしまった


2007年10月22日(月)

靄を透かして
向こうの橋に
ぼんやり
灯りがみえる

影のように
自転車が
横切っていった


2007年10月21日(日) 今日

わたしが
生きている
今日

ひんやりと
風をうけながら
歩いています

もうすぐ
雪になりそうな
雨が 降ってきました

こんな日が
いつかあったな と
思い出します

どこにでも
わたしの 一日は
あります


2007年10月20日(土) 夕暮れ

ポプラの木が
炎のように
揺れている

鳥たちが
行き交う

雲も 朱色


2007年10月19日(金)

影が 重なりあって

薄い影
濃い影も

ひたひた
歩く足元に
踏んでゆく

ときおり
通り過ぎてゆく
ヘッドライトが

消してしまう

波のように


2007年10月18日(木) 朝の雨

ひんやり
雨の匂いがする

暗い小道に
散った赤い実

線路のあいだの
みどり

街灯の下で
硬くひかって


2007年10月17日(水) 夕日

木々の葉は
その中から 
ひかりを発しているみたい

ひかりを
分け与えたように
もうすぐ
日が沈む


2007年10月16日(火)

靄が 川面を
おおいかくして

橋を
わたってゆく

ここではない
ところに
ゆくみたい

まちも
白く ぼんやりとしている


2007年10月15日(月)

この道を
いくども通ったのだ と
思いながら

そのたびに
見知らぬ 道のように
姿をあらわす

かたわらを
まるで誰も乗っていないような
窓を白く輝かせて
トラムが
過ぎてゆく


2007年10月14日(日) 夢うつつ

もう これで
終わっていいのなら

覚めなくても
いい

夢うつつ


2007年10月13日(土) 秋の散歩

流れが ゆっくりで
川の底まで 見える

鴨が 休んでいる

木の葉を 透かしている
ひかりを 見上げて

まだ歩いている

オレンジ色の 蝶々が
飛び立った

まだ みどりの小道


2007年10月12日(金) なんにもない

なんにもないと
いうことは

曇り空と
灰色にけむる森の
あいだ

いつか
雨になりそうだ


2007年10月11日(木) なんにもない時間

からっぽの
なんにもない時間がいい

たとえば
山道をひたすら登っているときのような

じぶんの 息を 
身体の 音として
聴いて

山々の
緑も茶色も赤も
わたしのなかの色のように
見ている

騒々しいくらいの
音や 色なのに

からっぽになっている


2007年10月10日(水) かげる

夜になるには
まだ早いけれど

傾いた ひかりに
すすきの穂が
かがやいていて

かげってゆく
ことを考えている


2007年10月09日(火) 眠る

朝には
靄で真っ白になる
丘の上は
まだ眠っているみたい

真っ赤な葉が
真っ青な空の下
揺れている
午後までに

まだ しばらく
眠いと
言っている


2007年10月08日(月) 広場

午後の広場で
立ち止まる

鳩が 水浴びをしている

木陰が こんなに
暗くなって

もうすぐに
傾いてしまうだろう

陽のひかり

赤い葉ばかり
燃えているみたい


2007年10月07日(日) 秋から どこへ

あなたと あなたと あなたと

数えられるくらいしか
わたしのことを
知っている人はいないの

今日は 秋の空がきれいになりました
中天には、白い月がまんまるでした

みどりと オレンジ
森は ずっと深かった

坂道は まだまだ 続いています
ときどき はぁはぁ と息をつきます

霧が晴れたらいいなぁ
もう少し行ってもいいよね

わたしだって
違う人になるもん


2007年10月06日(土) うさぎの耳

戸棚から
落ちてきた
小さなお弁当箱

その頃
娘は うさぎになりたかった

お弁当にいれる
りんごを切るとき

いつも 皮を耳に残して
うさぎのかたち


2007年10月05日(金) 気にする

いつまでも続くなんてしんじてない
だから終わりを気にしている


2007年10月04日(木) 雨音

雨の飛沫のように
ばらばらになって

夜の闇に
散らばってゆく

音も わたしも


2007年10月03日(水) 朝に

いつのまか
鳥たちは
去ってしまったのだろうか
まだ 暗い朝に

影になって
空の色と混じりあっている
木々の枝から


2007年10月02日(火) 匂い

草を刈っている
音が聞こえている

草の匂いがする

花の匂いを忘れて
もう 季節が移る


2007年10月01日(月) 明日

遠い未来は
わからない

ほんのすぐ近くの
明日のことすら
曖昧な影のようだ

夕日が
沈んでゆくあいだ
長い影を
見ている


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