恋文
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2005年10月31日(月)

トラムは
まばらな 乗客を
はこんでいる

まちは
オレンジ色の
ひかり

なにか 声を
聞いていたかもしれない

もう過ぎてしまった 


2005年10月30日(日)

緑のくきは
まっすぐ のびて

さきっちょの
白い さやが
ほころびて

赤い舌のように
わかれていった

もう
咲きたいのだ


2005年10月29日(土)

いつまでも
続いていたら
いいのに

青い空を
たどる


2005年10月28日(金) 冬の前に

わたしを
探してね

わたしを
抱いてね

空は
暗かったから

じっと
待ってるから

あのとき
そのまま

いるからね


2005年10月27日(木)

少しのあいだ
殻のなかにいる

そっと
のぞいて

また
出てくるから


2005年10月26日(水) まどろみ

まるで
夢から抜け出した
みたい

夢の中の
自分を
みている

あしたのことは
おまえに任せて

わたしは
眠っているよ


2005年10月25日(火)

錘は
降りるものだ

降りた先は
暗闇なのだろうか

重力にしたがって
降りてゆく

その底に
錘とともに
下りてくる

それを
待ち望む


2005年10月24日(月) ゆめ

ゆめに 
あそんで

わたしを
みていた

おいかけて
いってしまおう

もう
もどってこないだろう


2005年10月23日(日)

からだ ぜんぶ
ひろげて

風の とおるのを
かんじる


2005年10月22日(土) 雨の音

しばらく
聴いていよう

わかっていること
わからないこと

耳を傾けて

なんにもないな
と 知って

ただ きれいな
音がする


2005年10月21日(金) 疑問

わたしの
かたちになって
立っている

どこにいるのか
どこにゆくのか


2005年10月20日(木) 茅野

その海を
渡りたいと おもう

波は
銀色に ひかって
いるだろう

いつか
わたしも そこにいた

海の かなた


2005年10月19日(水) ひとり

じっと
みている

窓のむこうも
こちらがわも

音も
しないかの
ようだ


2005年10月18日(火) 毟る

女になりたいのか
女でありたいのか
なんともわからない
絶望的にわからない

女になれないのに
今日も毟り取るのは
男のわたし自身


2005年10月17日(月) 帰宅

陽を透かして
葉が 金色になる

すこしづつ
こずえが
翳ってくる

頭の半分ほどもある
赤い実を くわえて
小鳥が
よぎっていった




2005年10月16日(日) 花芽

いつか
空にむかって
のびている

やわらかな
皮に
くるまれて

すきとおった
うすみどり


2005年10月14日(金)

雨を
むかえる
雨を
わたしの
うまれた
海につなげる


2005年10月13日(木) からっぽ

少しづつ
捨ててゆくこと

いつか
わたしを
からっぽにして

あなたを
迎えいれられたら
いいのに


2005年10月08日(土) ひとこと

あまりにも
遠くて

聴きつづける
こえ

どの
ひとことも
のがさないように

また
はなしかける

どの
ひとことも
つたわるように


2005年10月07日(金) 居場所

ぼんやり
してるって
いわれなくたって

あんたに
わかるもんか

どんなに
わたし

ここに
いたいと
おもってるなんて


2005年10月06日(木) いびつ

わたしを
いびつだと
知って
あらがわない

だから
わたしは
狂わない

そのかわり
すこしづつ
歪んでゆく


2005年10月05日(水) わたし

いつのときも
わたしであった
はずなのに

いつか
みつけられなく
なっていた


2005年10月04日(火) はじまりの秋

曇り空に 
くすんで

はじまったばかり
秋は

まだ みどり

とおざかる
夏の
うしろ姿


2005年10月03日(月) ばらの眠り

まだ 夜着に
ばらの かおり

外は 雨
霧のように 

雨に打たれた
ばらのように
ねむろう



2005年10月02日(日) わたしを

腕をみる
脚をみる

それは すべて
わたしなのだろうか

この わたしの
部分に

否と いえるのか
いえない

あ まだ
雨の音が聞こえる

まだ
見つめている


2005年10月01日(土) あまの川

いつか
雨になっていた

はいいろの
空に

さらさらと
音がする

いくすじもの
流れのように


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