恋文
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2005年08月31日(水) 夏の終わり

まだ木々が
眠っているように
くらい

朝は
もう ずいぶん
ゆっくりと
やってくる

すでに
冬の仕度に
かかっている
みたい


2005年08月30日(火)

肩に 背に
ふれる 髪を
かんじている

そのままの わたし
しらない わたし


2005年08月29日(月) 狂う

狂うほどに
取りもどす
わたし

季節は
狂え と
いう

そのときに

どうして
狂わずには
いられようか


2005年08月28日(日)

海を 夢見て
ねむる

波に
ただよっている

きょう
みどりの海に
ただよう

遠くの
海に
ただよう前に


2005年08月27日(土) 知られないように

どんなにか
わたしのままに
いたいけれど

隠すのも
わたし

誰もが
見過ごしてしまうように

黙って
たたずんでいる


2005年08月26日(金) 待っている夏

草も 木も
息をする

朝の
そのときに
吐く息が
もう しろい

鳥の
さえずりも
いつか
遠くなる

それでも
まだ
夏を待っている


2005年08月25日(木) 変わる

なにも
変わらないように
思っていても

いつか
知らないわたしを
見る

もう
すっかり
見てつづけているのに

また
何度でも


2005年08月24日(水) ほどく

おだやかに
風がやってくる

あなたに
届くように

ほどいてゆく
わたし


2005年08月23日(火) おりる

夜を
降りてゆく

わたしは
わたしのなか

髪をほどいて
せなかにおとす

うなじに感じる
それはわたし

もっと
わたしに
下りてゆく


2005年08月22日(月) 残っている

いつでも
わたしのはずだった

いつか なにが
すりぬけて
しまったのか

残っている
わたし


2005年08月21日(日) 雨の日

ずっと 雨で
空も とけてしまった
みたい

ついでに わたしも
あらい流して
くださいな


2005年08月17日(水) いさかい

傾きはじめると
もう 戻れない

きもちが
乾いてしまって

すりきれて
しまうよ


2005年08月16日(火)

もう 雨かもしれない
くすんだ空の色

草は ちゃんと立っている
花がしぼんだって

なにも 変わらないものはない
いつだって 

頬杖をついて
空を
見上げている


2005年08月15日(月)

わたしを
知らないと
いう

わたしを
閉じ込めたくない
けれど

開きかけた
扉が
とても 重い


2005年08月14日(日) ことば

書いて
消す ことばもある

それも
わたしの
ことばだった

それも
わたしの
こころだった


2005年08月13日(土) 一緒にいるよ

思い出して
たどると
今に つながっている

その 幾たびもの時間

夢のなかでも
見つけたよ



2005年08月12日(金) 夜の雨

いつか
その音に
気づく

窓が
ひとつ
ひらいている

もう
あたりは
すっかり暗くなって

街灯に
きらきらと 
ひかっている

草むらも
みどりに
ひかる


2005年08月11日(木) 夜へ向かう

向かいの窓に ぽつんと
灯りが ともる

だんだん
濃くなってゆく 空

もう 手許も
おぼつかないのに

娘が 弾いている
ピアノの音が

じんわりと
伝わってくる


2005年08月10日(水) どうしても 知らない

すぐに
わたしを 見失う

目を閉じて
思い出そうとする

どうやって
見つけようか

知らないな

知らないなら
いいや

もう
知らない


2005年08月09日(火) いつかの夏に

真っ暗な小道
露に濡れた 草が
足に触れる
風もない

そこかしこ
ほたるが 
瞬いている

虫の声が
どこからも
聞こえている

そのとき
息をひそめていた
だろうか


2005年08月08日(月) 秋へ

すこしづつ
そらが
遠くなる

肌に
きりりと
ふれる
朝の大気

あかい木の実の
散り敷く
小道をあるく

草も 花も
露ためている


2005年08月07日(日) まつよいぐさ

鈍色の雲のあいだ
空は わずかに
あおい

いつか 雨になる
音もなく

そして
空が
もどってくる

まつよいぐさ
揺れている

ひかりのように


2005年08月06日(土) 結ぶ

知っていた
あなたも

知らなかった
あなたも

そのまま
あなた だった

結んだ手は
ずっと
あなたを
伝えてくれる


2005年08月05日(金)

といた髪に
マグノリアの
かおりがした

きょう一日の
なごり


2005年08月04日(木) いない わたし

どこからか
声が
聞こえてくる

見るでもなく
なにかが
目にはいっている

わたしは
いない


2005年08月03日(水) ひとりで

ときどき
隠れてしまいたくなるよ

誰にも
知られないように

かたくなに
ひとりでいよう

誰も
知らないのだから


2005年08月02日(火) 雨の日

雨が
音を吸いとって
しまった
みたい

黒くぬれた
地面にはねる
しぶきを
みている

もう
わたしは
ここにいない
みたい

幾多もの
思い出の
なかにいる


2005年08月01日(月)

森のなかで
横たわる

見上げる 空は
こんなに
狭いのね

枝は 広がって
葉は 繁って

どこに
空があるのだろう

落ちてくる
ひかりに
くるまっている

とおくに
おおきな 空を
見ている


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