恋文
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2003年10月31日(金) 壊す

もう いらない
わたし なくなってしまおう
こわす

わたしは
きっと あるよね

まだ いるよ
まだ いきてるから

また きっと
あるはず この さきに

でも いちど
こわす

もう いっかい
もう いっかい

もっと
もっと

わたし わかんないから
壊してみよう


2003年10月30日(木) 夕暮れ

雨にくすんだ夕暮れ
置き去りにされたような時間
どこかに
わたしも取り残されてしまう


2003年10月29日(水) 繋がり

あなたと
こんなにも細くても
繋がっていられるなら
今も 生きていられる

過去の どの時間を
共にしたのか
思い出すだけでも
それは 繋がりなんだ

だけど この瞬間に
どこかしら繋がっている と
感じること
そうでないと

生きているように
あなたの幻を見てしまう





2003年10月28日(火) 収穫祭

そこには
忽然と現れた
テントの群れや
遊園地の遊具

収穫を祝う
お祭りの灯りが
薄暗がりの空の下に瞬く

わたしは
ただ
静かに通り過ぎる


2003年10月27日(月) 夕暮れ

向こうに見える丘は
まだ白く雪に蔽われていた

わたしの足元にも
まだ、氷になった雪が残っている

風が頬に痛い 
すれ違う人たちと
コートに身を縮めながらも
挨拶をかわすと
互いに微笑みあう

ここにある
わたしの日々


2003年10月26日(日) 雪の後

凍ってしまって
まだ 緑のままの葉も
すっかり落ちてしまった

ただただ 空は
青かった


2003年10月25日(土) 思わなくても

ただ この瞬間に
わたしはいなくなってしまうんだ
簡単なこと

なんだ
そうだったら
消えたいなんて
考えることないじゃない

いつでも
わたしなんて消えてしまえるよ


2003年10月24日(金) 雪、ゆき

いつしか雨は雪にかわっていた
この街ではじめての
冬を迎えようとしている

まだ緑色の草地も
まだ赤や黄色に色づいたままの木立も
薄墨のような夜のはじまりにもまして
白さを増してゆく雪の中に
影のように沈んでゆく

思いに沈む
どこまでいっても
あの時の雪は
もうないのに


2003年10月23日(木) 髪を解く

暗い停留所でトラムを待つ間に
髪を解いてみる
冷たい風に放して
縺れた一筋一筋を
指で梳る

どこまでも遠くなってしまった
記憶を
手繰る仕草のように


2003年10月22日(水) 夜から夜へ

街路は雨に
窓は曇り
姿はみんな
ぼやけて にじむ
まだ 夜が続いている

それは 今日を包んでいる
また 次ぎの夜までの
始まりの景色


2003年10月21日(火) 崩れる

夢だったかのように
思い出している

こんなに暗い外の風景に
灯りが滲んで 
もう 風景の形すら
崩れていってしまう

それは雨のせいだったのか


2003年10月20日(月) 忘れる

ときどき 思い出すと
忘れていたことに気付く

わたしの中に
ずっとあるのにね


2003年10月19日(日) 巡り合う

いつか
巡り合える
それは 本当かもしれない

知らされないうちに
突然

まるで始めてあったときのように
何度でも


2003年10月18日(土) また 冬日

ここにいる
ここを歩く
ここに佇む

ここで 誰かに会う

切りつけるような風の中でも
あなたに会う

それは 紛れもなく
あなたかもしれない


2003年10月17日(金) 冬日

髪が頬に散り
突き刺さるような風

一人で歩いている
一人で佇んでいる

ただ 過ぎてゆくものを
厭いはしない

みんな行ってしまえばいい
わたしは ここにいる


2003年10月16日(木) 欠ける

欠けたもの
そんなのは沢山あって
数えられない

欠けたままの
わたし

まだ 欠けてしまっても
そのままでも
なにが足されても

やっぱり
欠けたままの
わたし




2003年10月15日(水) 消えてみる

隠れる
離れる

見えないように
誰からも

風にさえ
みつからないように


2003年10月14日(火) 朝は夜の続き

夜の名残の中を歩き
今日の一日は始まる

夜に近づくように
一日の終わりに帰ってくる

いつもと同じなのに
いつかと同じなのに

どこか違ってしまっているんだろう


2003年10月13日(月) 一人きりって

ねぇ 一人っきりになってしまうって
想像できる?

できないから
こうやって 話しかけるんだよ


2003年10月12日(日) わたし

ここにいる

どこにもいない

見つけてくれる?

いつも 待ってる


2003年10月11日(土) 会話

いつかした会話も
今日の会話も
なにも違いはないんだ
いつまでも
わたしたちは一緒にいるね


2003年10月10日(金) 一部 欠けてしまったもの

捉えられなかった
そのもの
わたしの一部であったもの

あなたに仮託してみても
それは あなたのものでしかなかった

だから わたしの欠けてしまった
そのものは
自分で捜すしかない


2003年10月09日(木) ぷつり

なにか 切り離されてしまった
のかな 宙ぶらりん
みたい

いとが なくなって
とても 自由なはずなのに
へんね

だから いつものように
そこに いとがあるみたいに
過ごす


2003年10月08日(水) 風が吹く

こんなに風が吹く

夜は もう間近

雨がしぶきになる

いつか聞いた 海鳴りのように

記憶をまさぐっている


2003年10月07日(火) 沈む

まどろんでいる

雨が降っていて
水溜りの底に
揺れているように

沈んでしまおう
まどろみながら

雨粒は いつも輪を描いて
慰めてくれるだろう


2003年10月06日(月) 思い出す

急いだわけではなかった
ただ この間だけだと思った

幸せだった
たとえ 悶え 泣き 喘いでも
その瞬間ですら

だから もう忘れない
あなたの温度も
じっと 抱き合った時の

深く 深く
沈んで行く
その 感覚

わたしの身体
ぴったりと あなたに重なり
その間だけ
沈んでいった

今は 思い出す
それだけでいい


2003年10月05日(日) 失う

失うこともいい

失わなければ
もう一度 満たすこともできない

いま少しづつ 失おう

いままでも
そうしてきたように

そうして
また 少しづつ
満たしてゆく



2003年10月04日(土) 自然

自然なこと
それが何かと考えなければいけないほど
わたしは 不自然なのだろうか

ただの わたしであるために
思い悩むことなど ないはずなのに

ときに 怯えるよ


2003年10月03日(金) 止まる

終わってみる
止めてみる
もう いらない

休んでみる
もう前には進まない

帰る
戻る
行ってしまう

眠ってしまおう
じっとしていよう
どこにも行かない

息だけを
聞いている





2003年10月02日(木) あなたと

あらかじめ考えたこともなかった
出会い始めてから
時間が流れるとともに
驚きでいっぱいだった

いま 少し時間を遡ってみる


2003年10月01日(水) いなくなること

考えてみる
わたしが いないこと

いつものように
日々は過ぎるだろう

たまに誰かが
わたしを思いだすかもしれない

それだけのこと


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