恋文
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2003年03月31日(月) 小さなこと

小さなこと
それだって大切でないわけではない

そんな小さなことに胸が痛い


2003年03月30日(日) 変らない

ブラックバードが囀る
この穏やかな午後
連翹や桜や辛夷のような
見慣れた木々を見る

こんなにも遠い国で
ずっとわたしは繋がっている
きっと変らないんだ


2003年03月29日(土) 過ぎてから

いろんなことが過ぎて
きっと、昔のことのように
笑えることができたらいい

きっと、そうなると信じていたい


2003年03月28日(金) 遅れる

時間は過ぎてゆくばかりで
いつまでも佇んだままのわたしは
どこかしら遅れてしまった

あなたがいつも進んでいる間に
わたしは遅れながら
実は、もっと遅れてしまいたい

遅れるどころか時間を遡って
そうして小さな女の子になれたらいいのに


2003年03月27日(木) 春の一日に

わたしだけが
場違いなところにいるように佇んでいる

こんな暖かい春の一日に
思わず身をすくめる

昼間のそんなことを思い出しながら
また、あなたに手紙を書きます

わたしは元気だと


2003年03月26日(水) 同じ時間

いつかしら便りが途絶えたりする
それがまた、いつの間にか繋がっている

いつも、いつでも
わたしたちは同じ時間のなかにいるのね


2003年03月25日(火) 変らないもの

連翹が眩しいほどに咲いている
草地には小さな花々がさまざまに彩る

もう春
ここでも、あの頃と変らないように

失わないように
いつも変らないものは
ずっと心の奥底に秘められているのだから


2003年03月23日(日) なんでもないのに

なんでもないのに涙が流れる

大きな大きな空があって
風がふるえる
誰かを呼ぶように

どこかで失われてゆく
そんなことを
思うと


2003年03月21日(金) 夜の空

ひんやりとした夜の空気
暗い空を飛行機の灯りがよぎってゆく

星の位置も違うここで
あのときと同じ空を見ることはないのだけれど
風が思い出させてくれた
あの夜の空

そして
あなたの体温も


2003年03月20日(木) 無くする

身体を重くしてみよう
地面に吸い込まれるように
自分の中のなにもかもが
落ちていってしまうように

なにも無くなって
空っぽのわたしが
ふんわりと浮かぶように


2003年03月19日(水) 心ひとつで

連翹のような黄色い花が
咲き始めている
桜だろうか
薄桃色の花も咲き始めている

こんなに遠くにいるのに
同じような景色が見れるなんて

今晩は満月
うさぎのかたちは違うけれど

心ひとつで変れるなら
何を思い煩うことがあろうか


2003年03月18日(火) その季節

芽吹く
風が過ぎる
露に湿った若草の合間から
するすると伸びた枝のそこここから

もう、あの季節なんだ
あの頃、わたしはあなたを求めて乾いてた

いまは、あなただけではない
そのときわたしのものであった、すべてのことに乾いている

その季節なんだ
あなたが好きだった
それから、わたしに関わるみんなが好きだった


2003年03月16日(日) みんな

みんなみんな
好きだった

みんなみんな
わたしを好きだったよね

夜が、染み込んでくる
身体の中に
このまま、ずっと眠ってしまおうか

いえ、眠りたくないの
みんなみんな
失いたくないの

まだ、ずっと
みんなみんな
大好きだから


2003年03月15日(土) 水底

あぁ わたしはどこに漂っているのだろう
ふわり
一人でいる
この不思議に明るい水底

もう、聞こえないよ
あなたの声

このまま、ずっと
暖かくて明るい
ここにいて
目を閉じていようか


2003年03月14日(金) 春よ、春

あのときの春は
わたしは、ただの一人の少女でありたかった
そうではないわたしが
うらめしかった

いまの春も
まだ、わたしは少女でありたい
かなえられるべくもない
ただ、こころもちとして

春、春
その響きの中に
今年は、ミモザの黄色い
ちいいさなふわふわ

それが欲しかった


2003年03月13日(木) 呼びかけ

振り返っても
誰もいなかった

呼びかける声が聞こえたような気がした

街路には色とりどりの紙吹雪が
そこや、ここに
散っている

ミモザやバラを抱えた人々が
それぞれに家路につく

まだ、町には名残の喧騒が続いている

ただただ
この異国の町のなかで
わたしは誰かに呼び止めてもらいたかった
やぁ、元気かい? と


2003年03月08日(土) 記憶の中

まだ風の冷たい朝
通りを横切って駅に向かう

まだ見慣れない風景
今ここにいることが不思議に思える

もうすでに
あなたと話しながら通った道は
記憶の中にしかない


2003年03月06日(木)

また少し寒くなった
窓の外には
煙るような雨の中
木の枝には芽吹きかけた葉が揺らいでいる

あなたとは違った時間だけれど
でも、春は近づいている


2003年03月03日(月) 時間

雨音のようなパタパタと叩く音を聞きながら
暗闇の中で横たわってる
最初の夜が過ぎて行く

ここでは違った時間が流れる
この今の時間に合わせてゆく
身体が沈むような感覚だけれど

また、戻ってくる


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