lucky seventh
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2006年12月17日(日) (仮) 黒屋の双子と銀色

そして君は死なずとも…ってナァ?


















「おやおやおや、これは珍しいことに、
お客さんでヤンスか?」

「そいつはどうかナァ?」

カランカランと店の扉が音を立てて開いたのに
店主の男は振り返る。
特徴的なモノクロームを付けた店主が
そう言って扉から入ってきた客人に微笑みかければ、
いかにも不精な出で立ちの銀髪のボサボサ頭が扉の前に突っ立っていた。
店主の声に目を覆うほど長い髪から覗く、紅い唇が妖艶に弧をえがき、
そいつは陽気に笑っていた。


「冷やかしなら、帰っておくれでヤス」

「ヒデぇーナァ、ヒデーナァ?
偶にあった友人にそれは酷くねぇカイ?」

「商売の邪魔でヤンス」

「この金の亡者め!!」

「アァ?どの口がほざいてんでヤスかぁあ??」

「ギャアァァ!!???…テメッ!燃やす奴がアルか!!?」

「五臓六腑売り飛ばされたくなけりゃあ、とっととお帰りヤスぅ?」

囲炉裏から今正に焼けた炭を投げつけ、
店主の笑顔が凍てつくような氷の微笑へと変化した。
心なしかその額には青筋ういている。
その表情に思わず銀髪から覗く口の端が引きつった。

「クロト、そうカッカカッカすんじゃネェよ。ナァ?」

「黙りヤス、ギンネズ。
どうせアンさんのことでヤンスから、
ひー様の近くにワイテてぇーや、嬢ちゃんに追い出されたんしょ。
自業自得でヤンスよ」

店主、クロトの言葉に
キンネズと呼ばれた男はどこか遠いところを見つめ薄ら笑いを浮かべた。
ひー様こと二人の主(クロトにとって主が同じなんぞまったくもって
不本意なことだが)のお姫様には通称 御嬢(オジョウ)と呼ばれる
親友がいる。
ふんわかしてちょっとばかりぽやんな姫さまの幼馴染である御嬢は
ひー様よりも小柄な体躯で、控えめで病的なほど白い肌に弱弱しく
微笑む様は、正に一見すると深窓の令嬢のように見えなくもない。
(むしろ、普通の人が見たら高嶺の花といっても過言だろう。)
しかし、何を隠そう彼女の正体知る者にとっては
身の毛もよだつモンスターである。
ひー様のことになるとちょっくら回りが見えなくなったりするのはまだいい方で、
なまじ武道派なだけあり生半可にかかわると半端なく死ぬ思いをする。
鉄拳制裁なんてなんぼのもんじゃい。
おんどれの正義貫きたいなら死ぬ気でかかってこいヤァ!!
という闘士を漲らせた猛者であるのだ。
今まで作ってきた戦歴も伊達ではない。
目下、その被害者ランク上位者がこともあろうがこのギンネズだったりする。

「って、オイ待てゴルアァ!!?
…なんで原因がソレなんだよ?もっと他にもあるだろがぁナァ??」

「そうでヤンスか?」

「何だよ。その興味ネェーヨ。
お前のことなんざ知ったこっちゃネェよな顔はよぉ!!」



「よーぅ、分かってはりますやがナァ。
兄(に)さまはアンさんに関わっとる暇がねぇですよってからにぃ。」

「おや、クロウ。
仕事は終わったでヤンスか?」

「はいな。
ちゃちゃっと片付けてきたでヤスよってからに。
そやから兄さま、コイツは如何様に致しヤスかいナァ?」

突然、割り込んできた声にギンネズは嫌な顔をして振り返った。
するとそこには案の定、店主と瓜二つの顔を持つ男が立っていた。
男の名はクロウ、クロトの年子の弟でありながらも
そのすべてはまるで双子のようでもあった。
そんな二人のかろうじて違いがあるとすれば兄のクロトが
特徴的なモノクロームを付けているのに対し、弟のクロウはシンプルな
眼鏡をかけている。

「相変わらず、お前らはクローンのようにそっくりだナァ?」

「アンさんは相も変わらず溝鼠みたいでヤスよぉ?」

「…クロウは俺に冷てぇーなぁ。」

「兄さまの手を煩わせる奴ぁあ、ゴートゥーヘルですよってからにぃ。」


2006年12月12日(火) 果てのない思い

ひとりにしないで…


そう、呟いた声が風にのって
きみに届く前に消えればいいのに。



にじんだ声、
かすんだ声、
届いて、届かないで
どうか、どうか…











この寂しさを忘れても
私はきっと、きみを思ってまた嘆くんだろうな。


2006年12月07日(木) 愛の許可書。 レッスンワン 愛から格下げ、恋い慕うということ。

「二度と来んなや」
















彼女に会ったのは、引っ越してきた最初の日に
挨拶に行ったその一度きりで、その時は私の中での彼女の印象は
地味な服装にゆるく結わえた黒髪、おまけに眼鏡のこれまた絵に
描いたような典型的な暗い文系の女性であったわけで、

「私は弱いんです。
だから……テメェーを思い続けられるほど強くわねぇんですよ。」

オーケィ?
そう言って笑う、隣の部屋の住人を見たときに、
あぁ、人を見た目で判断してはいけないとあれほど口をすっぱくして
言われたことをまざまざと思い出したのだった。

場所はマンション
私の住んでいる部屋の隣で、今正にこの修羅場は繰り広げられていた。





その男は、キレイな顔をしていた。
その男の母も、またキレイな顔をしていた。
その顔だけで男を捕まえ、その顔だけで男に取り入ろうとして、
策略も計算のできない頭の使えない女だった。
けれど、バカな男はたくさんいた。
そして男の母は、1人の男の愛人となった。
男は裕福な家で生まれ、その家の庶子として育った。
頭には使える脳みそが入っていたことが幸いして
男は自分の周りにどんな人間が集まるのかということをよく知っていた。
だから、男は偏愛され狂愛されることはあっても
それらを愛することはなかった。

「だから、私はあなたを愛することをやめます。」

だから、そう言った目の前の女を
愛してしまったことに、愛さないと言われてやっと気付いた。

「あなたを愛して傷つくのが痛いから、怖いから
私は自分が可愛いから、あなたを捨てます。」

それでも女を愛しているということに。
これまで幾度となく、傷つけ泣かせた女は、

「…けれど、あなたが私を愛してくれているのなら
私は、あなたが私を愛することだけは許してやるよ。」


どこまでも優しかったということに。


2006年12月06日(水) 願うはキミの死 (途中)

笑う

笑う

わが背の君よ。


泣かないで、もうその涙をぬぐう手の持ち主は ここにはいないから…





















「安樹(アンジュ)さま」

小さな小さな子どもは、いつだってそう呼びかければ
微笑んでくれる彼女のことが好きだった。

「梢寿丸(ショウジュマル)」


ナナナ

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