lucky seventh
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2005年09月07日(水) 君だけに

アイツは、俺のようには言わなかったから。


















“君だけに”














「いつか、誰も人がいないところで二人だけで暮らしたい。」

ぽつりと、彼女は言った。

「これ以上誰かを憎むことも、愛すこともせずに…」

その濁った瞳は、はるか遠くを見ていた。
もう、ほとんど見えていないのだろう。


「二人だけの完結した世界で…」

その眼差しだけが、はるか遠く、遠く。


それが、初めて聞いた彼女の弱音だった。








それからほんの瞬きの間のような数年、
俺は彼女と彼女の望んだ岬の家で暮らした。

幸せだった。

なんでも一通り器用にこなす事のできる自分の能力に感謝した。
失敗作とはいえ、それでも人並み以上にコーディネートされた俺は
身体能力もさることながら、その頭脳も通常の人より少ない経験で、
知識を吸収することができた。

はじめて作った料理。
最初は少し自身がなった。
なんて言っても未知の体験だったから。


「美味しい」

彼女は笑って言った。


幸せだったんだ。






「ねぇ?アンタは幸せだった?」

たたずむ、白い墓石の前で 優しく微笑みながら言う青年。
岬の断崖にあるその墓に居るのは美しい青年。
長い髪が海風に揺れる。

「俺は幸せだったよ。」

そっと墓石に触れて、冷たい石に口付ける。

「幸せだった。 アンタがいたから。

一際強い波風に、
その呟きは風にさらわれ、彼女の元に届くのだろうか?
青年はぼんやりとそんなことを考えた。

(届けばいい。アンタだけに…)

いくら言っても足りない。
だから、少しでも届いて欲しい。
そんな風に思う自分に自嘲して、青年は笑う。

「そろそろ、行くよ。名残おしいけど…」

愛しそうに、目を細め、



「アンタの世界は守るから。」



青年は獰猛に笑った。














すべてを偽り、
すべてを欺き、


正義も
運命すらも、喰らい尽くす。

ただ己が為に、
ただ一人の為に、




神は死んだ。
残ったのは神に対する信仰。
それは神の死によってよりいっそう深いものとなった。。。
















******
04,12/22.24の続き。




2005年09月03日(土) 桜の塚の守人。



あの日々は、いつかは色褪せるのだろうか?
君たちと私の
あの思い出の日々は、そしていつかは忘れ去られるのだろうか?


その答えを 私はまだ知らない。

















彼の手を取った瞬間、視界は目が眩む様な光に包まれ、
気がつけば、私はボロボロの身体を抱え込むように、地へ降り立っていた。
見知らぬ風邪の匂い、先ほどまでとは打って変わった気配、
伏せた顔を上げると、そこには見知らぬ人々がいて、
その中で、私は知らず知らずのうちに白い人へと視線が吸い寄せられた。


「やぁ」


片手を挙げて、白い人。彼女は笑った。
待っていたよ。と、そう言うかのように。


その人の頭髪は、私の黒々とした髪質とは間反対に、
まるで年老いたかのような白髪(はくはつ)で…

何故だか、私は彼女から目を逸らすことができなかった。


「君がここに来るのは分かっていた。」

彼女は言った。

「それが何時かになるかまでは分からなかったが、
それでも、君がいずれワタシの前に訪れるであろうことは分かっていた。」

その瞳はどこまで優しく、
どこまでも愛おしそうなまま、そっと私の手に触れた。

「初めまして、やっと会えたね。」

壊れものに触れるように、そっと そっと。
その瞳は、微かに潤んでいた。


「すべてはここから、そしてまた永遠はここに…

彼女は幸せそうに、ぽつりと微笑み言った。


私は何故だか、会ったことも、話したこともナイ彼女から
どうしようもない既知を感じ、何故だか無償に泣きたくなった。








あなたは一体、誰なんですか?










「あなたは?」

私の問いに、彼女は返した。

「君は?」

質問を質問で。










夜明けの来訪者は、明けぬ夜の放浪者に会い、
そして、ここからすべてが始まった。




ナナナ

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