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2016年02月12日(金) [番外編]NPB2016シーズンを展望する

日本プロ野球2016シーズンの順位は既に予想を終えた。今回は順位以外に注目すべき事項を整理しておく。

2016シーズン、野球が変わるルール改正

今年は野球が変わるといってもいいくらいのルール改正があった。大雑把にいえば、走塁について攻撃側が圧倒的に有利になったということ。

捕手のブロックは事実上禁止に

野球の最大の醍醐味の一つといえば三塁走者の本塁突入。走者三塁、外野フライ、内野ゴロで走者が本塁に突入する、捕手はそれを阻まんとしてブロックする、両者はホームプレート(HP)上で激突する。それがこれまでの展開だった。ところが今年から、事実上、捕手のブロックは禁止となる。捕手は走者のためにHP上の一角を空けなければならなくなった。

捕手は、マスク(顔面)、レガーズ(下肢)、プロテクター(胸部)、ヘルメット(頭部)の4種類の防具で身を固めている。本塁突入プレーではマスクは外しているので、残り3種類で身を守る。捕手はこれまで、ボールを保持していなくてもレガーズでHPを塞いで走者の侵入を阻止してきた。そのため走者がまともに足から滑り込めば、硬質樹脂製のレガーズに激突して足を痛める。そのため走者は捕手にタックル(体当たり)して跳ね飛ばし、HPを空けて生還する道を選ばざるを得なかった。

この走者の体当たりプレーが賛否を呼んできた。危険が伴うからだ。走者側は捕手がHPを空けないのがいけないといい、捕手側はタイミングとしてアウトであるにも関わらず、無理やりタックルをかます、危険プレーだと主張してきた。両者譲らずである。

両論とも正解である。全力疾走する走者が自分でアウト、セーフを判断できるはずがない。アウトになったらたいへんだから、捕手が走路上であるにもかかわらずHPを空けていないと確認した時点でタックルせざるを得なかった。明らかにアウトであるにもかかわらずタックルしてくることもあるが、これは一目でラフプレーだと判断できるから、MLBの場合、次に打席に立ったときに報復(デッドボールを食らう)される。

NPBの場合、タックルは業界内で自粛されているので、日本人選手ではあまり見かけなかった。タックルは概ね外国人選手であることが多かった。日本人選手は足からHPの外側に滑り込んで、手でタッチするプレーが多かった。しかし、このプレーではアウトになる確率の方が高い。手でタッチするほど、HPは空いていないからだ。

どちらにも一理あるHP上のクロスプレーであるが、結局、「捕手はボールを保持していない状況での走路を塞ぐブロックが禁止、逆に走者はライン上にいない捕手に対してタックルが禁止となる。つまり、捕手はHPの一角を空けること」で決着した。こうなると、激突プレーはなくなる。捕手が事前にHPをレガーズで塞げば、捕手の妨害プレーが自動的に認定され、本塁に生還できなくても判定はセーフ。走者は無理する必要がなくなった。セーフを承知のうえレガーズでHP塞ぐ捕手がいれば、悪意ある妨害行為。ゆえに走者は、捕手がHPを塞ぐ行為を認めた時点で走力を弱め、アピールすればよいし、その余裕がなければ、捕手をよけて(=HPの外側)にスライディングすればよい。この場合、HPにタッチしていなくても判定は「セーフ」となり得点が認められる。このルール改正により、走者が圧倒的に有利になった。タイミングがセーフながら捕手のブロックでこれまでアウトになってきたプレーが、今年からすべてセーフへと逆転する。

強肩、走力、正確な捕球態勢から素早い送球を求められる外野手

プレーの変化は外野手の能力に及ぶ。捕手のブロックがなくなるわけだから、外野手には、これまで以上に速くて正確なコントロールの返球が要求される。強い肩はもちろんだが、ゴロヒットの場合は打球に接近する走力が、外野フライならば適正な捕球態勢及び捕球から送球に至るスピードが要求される。NPBの場合、肩が弱く走力のない野手が打撃力を買われて外野を守るケースもあったが、そのような外野手はこのたびのルール改正で淘汰される。

三塁コーチの判断力がより重要に

それだけではない。当然、三塁ベースコーチの判断力がこれまで以上に重要になってくる。これまで三塁突入をためらってきたタイミングの判断では、逸機を招く。これまでだめだったタイミングでも突入を命ずるべきだ。

俊敏さ求められる捕手

捕手は全選手が不利になったが、とりわけ劣勢に立たされたのがベテラン捕手。その筆頭が阿部(読売)だろう。阿部は今シーズンから捕手に再転向したが悪いタイミングである。阿部が捕手としてどの程度、身体のキレを回復させているかわからないが、年齢からみて、昨年以上のキレを求められるだろうか。ブロック禁止になれば、クロスプレーで必要なのは捕球からタッチまでのスピード。阿部にスピードを要求するほうが無理。微妙なタイミングならば、走者が足からHPにタッチできる確率は高いだろう。他球団の三塁コーチは、阿部が捕手のときは浅い外野フライでも本塁突入を命ずるべきだ。ほかにも、体重増で動作が緩慢な捕手はすべて苦境に立たされる。

バレンティンは外野手として失格

外野手で淘汰されると思われるのはバレンティン(ヤクルト)、アンダーソン(読売)あたりか。アンダーソンは一塁も守れるが。バレンティンは肩が弱いうえに走力も乏しい。このたびのルール改正がなくとも守備は失格だった。彼の打撃を生かすには、DH制度のあるパリーグ移籍が望ましい。


内野手では、一塁で起用されたブランコ(オリックス)、同じく阿部(読売)、アンダーソン(同)も危ない。打撃力のあるベテラン選手を救済する意味でも、セリーグはDH制度を導入すべきだ。

ルール改正をファンに徹底するためPR活動必要

最期に主審の力量も問われる。ルール改正を忘れた捕手が完全アウトのタイミングであるにもかかわらずレガーズでHPを塞いだ場合、主審は勇気をもって「セーフ」と声をあげられるだろうか。得点にからむHP上のプレーだけに、カメラ判定の導入を必要とする。

完全アウトのタイミングで「セーフ」の判定が下された場合、球場に来た観客には訳が分からない。無用な混乱を避けるため、球界はルール改正をファンに強くPRすべきだ。また、微妙な判定については、責任審判による適正な説明も必要となろう。MLBが導入している「チャレンジ」も制度として見習うべきだ。



2016年02月03日(水) 日本プロ野球2016シーズンを展望する(パリーグ)

日本プロ野球(NPB)はすでにキャンプイン。今回はパリーグの順位予想である。

昨シーズンの順位は以下のとおりだった。

(1)ソフトバンク、(2)日本ハム、(3)ロッテ、(4)西武、(5)オリックス、(6)楽天
筆者の予想は、1-オリックス、2-ソフトバンク、3-日本ハム、4-ロッテ、5-西武、6-楽天、であったから、大外れ。ソフトバンクはぶっちぎりの首位独走だったわけで、そのチームを2位と予想したことはわれながら情けない。同時に優勝と予想したオリックスが5位。しかも優勝争いどころかAクラス争いにもかかわることなく低迷したことは意外だった。

ソフトバンク優勝はかたいところ

そのソフトバンクだが、主砲李大内、先発の一角スタンリッジが退団し、和田(MLBから復帰)、スアレスが入団した。スアレスは中継ぎのようだから、スタンリッジの穴は和田及び既存戦力の底上げで埋めるつもりか。捕手及び野手は、李大内に代わる選手としてFA、トレード、外国人による補強はない。戦力は有り余るほどある、という自信の表れだろうか。この球団の強みは主軸が若いこと。まだまだ伸びる。

松坂に期待できない

話題性に乏しいソフトバンクにあって注目されるのが松坂の動向だ。昨年は完全離脱して、自軍の優勝にまったく貢献しなかった。松坂は不要と思われるソフトバンクの戦力の充実ぶりだが、球団としては、興行的に活躍してほしい選手の一人だろう。

自主トレの松坂のTV映像しかみていないが、キャッチボールしている彼の投球フォームは極めて悪い。肘の故障を機にその負担を軽減するためか、腕のふりと上体の動きの連動が早すぎる。日ハムの大谷の投球フォームと比較すれば一目瞭然だが、右足に乗せたパワーを肩〜腕〜左足を使ってボールに乗せる(=投げる)という一連の動作に溜めがない。上体ごと腕を打者に向かって放り出すようなフォームである。このフォームだと球にパワーが乗らない。肘は下がるから球はシュート回転で威力はない。必然的に故障が再発する可能性が高い。よって、この癖がそのままならば今シーズンの松坂は期待できない。もちろん、キャンプ中に投球フォームが修正される可能性もあるが。

日ハムは大谷に続く先発投手陣が不在

日本ハムも目立った補強はない。投手陣では、バース(マリナーズ)、マーティン(ヤンキース)が入団。バース、マーティンは実績から見るとリリーバーだが、日本ハムの台所次第では先発にまわる可能性もある。このチームの注目は大谷。2016シーズンも「二刀流」を継続するらしいが、先発に固定して20勝を達成してほしい。しかし大谷に続く2番手以下の先発投手の力量不足が明らか。加えて、クローザーの増井は昨年秋のプレミア12で打ち込まれた。自信喪失していなければいいが。

2強(ソフトバンク、日ハム)、4弱(西武、ロッテ、楽天、オリックス)

パリーグの場合、Aクラスはこの2球団で決まり。残り4球団はBがなくてCクラスの実力だ。2014シーズン、大ブレークして首位争いをしたたオリックス。2015シーズンの不調を機に、2014シーズンのチームからスケールダウンしてしまった。福良監督は古いタイプの、いわゆる「細かい野球」を目指していて、パリーグのパワーベースボールの流れから取り残されている。

ロッテ、西武は今シーズンも投手陣が手薄なまま

監督の若返り傾向に背を向けてベテラン梨田を監督に迎えた楽天。ここも先発投手陣が駒不足。野手では今江をロッテ(FA)からとったが、Aクラス入りは新外国人の活躍次第というお寒い状態だ。パリーグ優勝、日本一となった2013シーズンは打撃陣でジョーンズ、マギーの助っ人が大活躍。投手陣では田中が絶対エースとして勝ち星を上げた。投打における主軸が固まらないと上位は難しい。

パリーグは、球団経営に積極的なソフトバンク、日本ハム以外、チームづくりに期待が持てない。幸い、いまのところは各チーム実力者がそろってパワーベースボールを維持できているが、このままほおっておけば、停滞期に入る。そんな傾向がはっきりするのが2016シーズン。とりわけ、下位4球団に積極経営を求めたい。

3位以下の予想は難しいが、順位予想は以下のとおりとする。
(1)ソフトバンク、(2)日本ハム、(3)西武、(4)ロッテ、(5)楽天、(6)オリックス


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