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2015年06月21日(日) 優勝だけど通過点って、なにそれ.――サッカーJ1リーグ

J1第一ステージ(1St)は浦和が無敗で優勝を飾った。優勝した浦和を貶めるつもりはないが、「あれ」という感じしか残らない。浦和優勝を無意味とはいわないが、日本のサッカーのレベルを上げるに資するものではない。前後半制度+ポストシーズンという、広告代理店主導のJリーグ改革だが、優勝決定後のスタジアムに登場したJリーグチェアマンに対し、観客が大ブーイングを浴びせたことが証明するように、ファンが納得する制度ではない。筆者が以前、拙コラムにて力説したとおり、味気ない結果でその半分が終了した。

あたりまえのシーズンならば、浦和が開幕から飛ばして無敗で前半を首位で折り返した、あるいは、柏やG大阪がACLで苦労している間、早々とACLから脱落した浦和が優位に立った――くらいの感覚だろう。現場の指導者及び選手にまったく非はないが、浦和の選手がコメントしたように、この「優勝」は、単なる通過点に過ぎないのである。

浦和が2Stにどれだけモチベーションを維持できるかわからない。ツーステージ制度の場合、2St優勝者がポストシーズンで優位に立つことが多い。浦和が2Stで調子を崩せば、トーナメント方式のポストシーズンで敗退する可能性も高い。つまり、1St優勝のもつ価値はあまりにも低い。

総合優勝を目指すならば、1Stは“ならし”でいい。ベテランを温存し、故障者は無理に使わない。2St勝負をかけるべく、満を持してベテラン選手を投入してくるだろう。そのほうが、ポストシーズンを突破しやすいし総合優勝する可能性が高くなる。当然のことながら、年間とおして活躍できるタフな、すなわち、国際舞台で活躍できる選手は育たない。短期で優勝できる選手起用は、日本のサッカーレベルを低める。

選手の真の価値を見極める尺度も曖昧になる。1St活躍しながら、2Stに力を抜いた選手、あるいはその逆の選手をどう評価すべきなのか。代表選手としての資質(実力)を見極めることも困難となろう。

弊害だけの前後半制度+ポストシーズンはとにかく一刻も早く廃止し、グローバルスタンダードに戻すべし。



2015年06月17日(水) やっちまった、ハリルホジッチ

サッカーロシアW杯2次予選E組、日本代表(FIFAランキング54位)はホームで初戦の相手シンガポール(同154位)に0−0の引分け。勝ち点1にとどまった。格下と思われたシンガポール相手にまさかの引分けに、関係者、代表サポーター等の間に衝撃が走った。

決定力不足は永遠の課題か

試合展開については省略する。すでにマスメディアに多くが報道されているとおり。ハリルホジッチ監督は、試合後のインタビューで「このような試合展開は自分の経験の中ではきわめてまれな出来事だ」というような意味のコメントを発していた。もし、ハリルホジッチのコメントが本心ならば、日本及びアジアのサッカー事情を知らなすぎる、あきれたコメントといわざるを得ない。この試合を見た人(TV観戦を含む)の中には、「やっぱり」という感想を持った人も少なくないのだから。日本のサッカーファンには見慣れた光景なのだから。肝心なところで得点力(決定力)のない“わが日本代表”をなんとか鍛えなおしてほしい、というのが偽らざる心境なのだから。

日本はほぼベストメンバー(左SB長友が欠場)を組んで初戦に臨んだ。ブラジル組を主軸として、国内組の新戦力が“上積みされた”布陣といえる。前出の左SB大田、右SB酒井宏、CB槙野、CMF柴崎、FW左S宇佐美が新戦力。ブラジル組は、GKの川島、CBの吉田、CMFの長谷部、トップ下MFの香川、FW右Sの本田、CFWの岡崎――という色分けになる。この11人が混然一体となってニューパワーを発揮する、誰もが期待に胸を膨らませたことだろう。

ところが予想と期待は見事に外れた。試合内容は、これまでの日本代表とかわらない、「自分たちのサッカー」そのものだった。「ハリルジャパン」は負の遺産を忠実に受け継いで劣化している。ハリルホジッチの情熱指導のかいもない。負の遺産とは、▽決定力のなさ、▽工夫、創造性のなさ、▽パワーのなさ、▽選手層の薄さ(同じタイプの選手ばかり)、▽闘争心の欠如…といったところか。

多様な戦術を駆使できるような練習が必要

ところでハリルホジッチは、日本代表監督に就任して以来、チームに速くて、手間をかけない攻撃の意識を植え付けてきた。この問題意識は当然であり正しい。しかし、その一方で、相手に引かれた場合の戦い方については、あまり注意を向けなかったのではないか。たとえば、練習方法において、相手を15人にして戦ってみるとか、ハーフコートで細かい攻撃パターンを何通りか構築して、それを徹底的に練習するとかだ。セルジオ越後氏が、フットサルを例示していたけれど、それもアイデアとしは“あり”だろう。サイドからのクロスに合わせるパターンも基本。ただし、この場合、だれをターゲットにするのかが明確でなければならない。前半、0−0で打開策が見つからなかったこの試合のような場合、CFWに長身でフィジカルの強い選手を入れ、その選手に合わせるパワープレーも有効となる。ペナルティーエリアのこぼれ球からシュートチャンスが生まれるかもしれないし、相手DF陣のOGやPK獲得のチャンスも生まれる可能性も高い。つまり、空中戦で相手の規律を揺さぶる攻撃、プレッシャーを与える攻撃である。

アジア相手に有効な空中戦を放棄するな

いまの日本代表にクロスの受け手となる選手はいたのだろうか。原口か?大迫か?いずれも「ノー」。Jリーグ、海外組を含めた日本人選手の中では川又、豊田の2人がその資質を備えているが、川又は選考されたが故障で辞退、豊田は選考されなかった。アジアのチームを相手とする場合、長身CFWを交えた攻撃パターンは不可欠だと筆者は考えている。空中戦という戦術を放棄する必要はない。



2015年06月16日(火) 読売野球の劣化、原監督を更迭せよ

交流戦で失速したDeNAと読売

日本プロ野球では、読売の調子が悪い。交流戦後半の3カードで1勝8敗。ソフトバンク、ロッテにスリープを食らって完全失速のまま、交流戦を終えた。ところが、セリーグ2位のDeNAが読売以上に調子が悪く、9連敗で交流戦を終えようとしている。そのため、セリーグの首位は依然読売のまま。

交流戦で読売がパリーグ球団に負け越しても、セの他球団もパの球団に負けているので、順位に変動がない。その結果、首位読売の貯金は2、勝率515だ(6月14日現在)。同じく2位DeNAは借金1、すなわち勝率5割以下。首位・読売と最下位・広島(勝率444)とのゲーム差は4.5にまで縮まった。いわゆる団子レースとなり、優勝争いはいよいよ予断が許されなくなった。

筆者の開幕前予想順位は、セリーグが広島、パリーグがオリックスだったので、現在のところ、ともに最下位と大幅に外れている。パリーグのオリックスは首位との差14.5ゲーム差なので優勝の目はなくなっただろうが、セリーグは広島が首位に立つチャンスもなくはない。

阿部慎之助、1B→捕手→1Bと迷走中

読売のチーム状態は最悪に近い。野手陣では、阿部、村田、片岡、寺内、金城が故障。長野、橋本、セペタが絶不調。急きょ補強したフランシスコも調子が上がらず、登録に時間がかかりそう。トレードで放出した矢野が移籍先の日本ハムで大活躍とはなんとも皮肉だ。投手陣は、菅野、内海、西村が登録抹消中だが、開幕前の補強がうまくいって、いまのところ大崩れの心配はない。防御率はリーグNo1だ。菅野は交流戦明けから復帰の見通しが立っている。

その阿部の1B(一塁)への再コンバートが発表された。とはいえ、捕手に戻ることは絶対にない、といいながらの先の捕手カムバックだったから、この先、再々捕手転向もあり得る。原監督の「ない」は「ある」と同義語だ。

読売不調の主因はいうまでもなく、野手陣の打撃低調に尽きる。筆者は読売の高齢化をずっと指摘し続けてきたし、「阿部限界説」「内海限界説」は開幕前の拙コラムに書いたが、残念ながら、この予想は的中しそう。

阿部の場合はその兆候が2013年のポストシーズンには出始めていて、2014年は成績を落とし、今シーズン開幕前に1Bコンバートが決まった。阿部が現役選手としては危険水域にあるという認識は、筆者だけでなく、球団も同じだった。つまり、阿部の1B転向は自然な選択であって奇策ではない。

阿部の下手な1B守備は読売の足を引っ張る

このシナリオの崩壊は阿部の1B守備のまずさが発覚して狂い始めた。読売寄りのスポーツマスコミは、相川故障で「非常事態」と喧伝したが、誤報だ。正捕手候補・小林が思った以上の成長を示せなかったこともあるが、表向き相川の故障を建前として、阿部1Bコンバートを原監督が断念したのは、阿部の守備のまずさから。となると、今後の阿部は、打撃面及び守備面を併せた総合的能力において、アンダーソンらと正一塁手の座を競うことになる。アンダーソンの守備もたいしたことはないが、阿部がアンダーソンの守備を下回り、打撃面でも実績を示せなければ、代打要員となろう。

阿部の1B守備はなぜ、上達しなかったのだろうか。もちろん、練習不足から。それ以外にない。今シーズンキャンプ、阿部は故障で守備練習に十分取り組めなかった。コンディションも万全ではなかった。つまり、阿部は1Bでも(もちろん捕手でも)万全でないままシーズンインしてしまった。

阿部は1Bでも、捕手でも身体ができていなかった。激務の捕手なら、なおさらのこと。コンディションの整っていない阿部を捕手に戻した読売首脳陣の非情采配(選手起用)及び選手の健康管理に係る不手際は、非難されてしかるべき問題だ。

阿部の1B守備でのつまずき、加えて相川の故障、小林の力不足というトリプルパンチに見舞われた4月3日の時点で、読売は何をなすべきだったのか。阿部を1Bにおいておけば、内野守備の崩壊により試合を落とす確率が高くなる。相川不在の捕手陣は、小林、実松、加藤の3人体制で、これまた脆弱極まれる。ならば、相川が復帰するまで阿部を捕手に戻す以外はない――このように書くと、いかにも切羽詰った状況に思えるが、まだまだシーズン序盤のこと、焦る必要はなかった。

挙句、原監督の焦りが阿部を壊し、チーム状態は最悪のまま、交流戦を終えた。交流戦では相川は打撃好調を維持したものの、成績は7勝11敗で順位は下から2番目。セリーグの首位、2位が交流戦のワースト2チームだ。読売はセリーグの順位では首位を辛うじてキープしたものの、勝率は5割すれすれまで落ちた。つまり、阿部の捕手復帰から得るものは何もなかった。

内野手を育てられない原辰徳、今季で監督退任が筋

セリーグは交流戦でパに大幅に負け越した。しかも内容が悪い。短期戦とはいえ、実力差が明白になった。とりわけ読売はその脆弱さをさらけ出した。リーグ戦では相手にプレッシャーをかけて接戦で勝ってきた読売だが、交流戦では逆に相手にプレッシャーをかけられ、負けている。このことは何を意味するのか。

セリーグ弱体化の要因としては、DH制をしくパリーグのパワー・ベースボールの流れにセリーグが屈したこと、人気のセに対するパリーグの選手の意地、フィジカルの強い選手がパリーグに集まっていること…と指摘されているが、結局のところ、「巨人」人気に長年依存してきた結果だ。

FA制度に依存するセリーグは、ドラフト対策、育成方策、選手起用等に注力せず、峠を過ぎた選手を安易にレギュラー起用し続けてきた。広島、中日が育成重視に舵を切ったが、まだ道半ば。読売にいたっては、ドラフト対策に一貫性がなく、FAや自由契約で移籍してきた他球団のベテラン選手が若手のプレー機会を奪い、若手が経験を積むのを阻害してきた。一軍に上がって結果が出なければ、即座に二軍に落とされる。モチベーションもなくなる。とりわけ内野手を育てるのが下手で、ドラフト高順位でレギュラーを獲得した内野手は、坂本ただ一人。打てる内野手を育てられなかったことは、原監督の指導者としての限界を証明している。

たとえレベルの低いセリーグで読売が今シーズン優勝できたとしても、ファンは「原野球」に魅力を感じていない。原監督の早期退陣こそが、プロ野球発展に資することだけは間違いない。


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